第499話 お求めの物
「失礼します」
「ん? おぉ~~~~、ぼんぼんたちか」
そろそろ食堂へ行こうかとしていたタイミングで現れたのはルーディたちであった。
「ぼっ……どうも、イシュドさん」
「おぅ。んで、俺のとこに来たってことは、俺が満足できそうなもんを持ってきたっと思って良いのか?」
「えぇ。かき集め、しっかりと視てきました」
かき集めた、というのは……言葉通りであり、ルーディだけではなくあの場にいた全員が持ち金を集め、親に頼み込んで代金を送ってもらい……小遣いを前借りした者もいた。
そして使える額を確認した後、彼らは改めて王都に売っている逸品の中で、イシュドが気に入るであろう物を探した。
「これならば、あなたを満足させられるかと」
そう言いながらアイテムバッグから取り出した逸品は……一振りの刀であった。
「へぇ~~~、割と俺の事を調べた感じか?」
初対面である指導にいきなり真剣勝負をしてくれ!!!!! と迫ったことがあるため、割と知られていない情報ではないが……調べようとしなければ耳に入らないイシュドの好みでもある。
「えぇ、多少は。その上で選んだ品で」
「ふ~~~~~ん……っ……………………ふふ、ふっふっふ、あっはっは!!!!!!!!!!!」
鞘から引き抜き、刃を眺め始め、いきなり高笑いをしだしたイシュドに警戒して構えるルーディたち。
対してガルフやフィリップたちはいつも通りだが……彼らの中でイブキだけが警戒心を強め、柄に手を伸ばしていた。
「落ち着け落ち着け、別に俺は気が触れちゃいねぇよ。つかぼんぼんども、お前らが選んだ武器だろ」
「えぇ……しかし、理解しているからこそ警戒してしまうものです」
「なっはっは!!!!! それもそうか」
「えっと……イシュド、それは普通の刀じゃないの?」
「おぅ。こいつは名刀っちゃ名刀だが、その中でも妖刀に分類される刀だ」
「よ、ようとう?」
「そうだ。いわくつきの刀ってやつだ」
フィリップやアドレアスは妖刀というものがどういった物なのか即座に理解。
そして、心の中で「ニヤニヤしなら持つものじゃないだろ!!!!」と、鋭くツッコむ。
「ランクは七か、八か…………へっ、良いもん見つけたじゃねぇか」
「ランクは高くとも、イシュドさんならそれだけの武器であれば既に有しているかと思いました」
「よく解ってんじゃねぇか。だからこそ、妖刀か……選んだのはぼんぼん、お前か」
「…………最終的な意見を纏めたのが私です」
普通の物では釣れない。
それはミシェラとアドレアスからのアドバイスからも解っており、どういった物が普通ではないのかと色々と話し合った。
そこからイシュドは侍が、刀が好きだという情報を手に入れ、最終的に妖刀を購入しようという結論に至った。
当然と言えば当然だが、バーサーカーに妖刀を渡せばその魅了に心を奪われ乱心状態になるのではないかという意見も上がったが、かき集めた金額と普通じゃない物とはなんなのかという内容から……妖刀以外の何かが思い浮かぶことはなかった。
「そうか……やるじゃねぇの、ぼんぼん」
「………………どうも」
ルーディはチラっとだけミシェラに視線を送った。
彼の意図を察したミシェラは苦笑いを浮かべながら首を横に振り、メッセージを伝えた。
諦めなさい、と。
その返しに、ルーディは心の中で小さなため息を吐いた。
当たり前の話だが、ぼんぼんと呼ばれるのは非常に不愉快で気に入らない。
言えば直してくれるのかと思いはしたが……ルーディの中で敬意を持つ先輩の一人であるミシェラが今だにデカパイという不名誉なあだ名で呼ばれている。
本人からのメッセージもあって、抗議したところで無駄であると悟り、下手に言い返さなかった。
「ねぇ、イシュド。いわくつきの刀っていうのは解ったんだけど、どこら辺が珍しいの?」
「そうだなぁ……妖刀ってのは、鍛冶師が造り上げた段階で妖刀とし生まれるのは稀も稀らしい」
「……こう、闇って感じだったり、呪いって感じの素材を使っても?」
「後半に関しちゃあ、そもそも造り上げられるのかって心配があるが、それらを使って造ったとしても……おそらく、そういう属性の刀が出来上がるだけで、妖刀とはちげぇ」
ガルフたちはこういったイシュドの言葉に慣れているが、ルーディたちは心の中で「なんで狂戦士のあんたがそれを解るんだよ」とツッコんでいた。
「つっても、そうやって生まれる例が珍しいってだけで、あるにはあるらしい。けど、元々は一般的な刀だったのに大量に血を浴び、吸ったりするか……人間や生物の悲鳴、怨念、無念などに触れたりした結果、妖刀に変化する例の方が多い。つか、使い手の精神状態の変化もあるんだったか…………で、合ってるか、イブキ?」
「概ねその通りです」
知識として知っているとはいえ、聞きかじった話であるため、イシュドでもあまり自信を持って語れず、ついイブキに確認してしまう。
「よし。ってわけだから、そもそも刀が主流じゃないこの国に妖刀があるってだけでもクソ珍しいんだよ」
「なるほどぉ……まさに、イシュドが気に入る武器って感じだね」
「なっはっは!!!!! 確かにそうかもしれねぇな」
ガルフだけではなく、フィリップたちも確かにその通りだと笑って頷いているが、ルーディたちとしては全くもって笑えなかった。




