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第八話

 翌日、オルスはいつも通り、馬車の中から移り行く風景をじっと見ていた。


「昨日の息子は、どうだった」

「まあまあ、強かったです」

 

 その言葉に、ウラシュは笑った。


「久々に、緊張感が持てました。稽古の時と、魔物の時にしか出てきませんからね」

「オルスは毎朝、森の中で稽古をしているな。あの三人もそうだ。暇を見つけては、森の中で稽古をしている」


「兵士ですから。魔物がいなくなっても、強くなり続けないと。何が起こるかわかりませんから」

「これが終わったら、また勇者の所に稽古しに行くのか?」

「はい。教わる事が沢山ありますので」

「そうだな。お前の名前だけで、クレチア王国が怯むくらい、強くなってもらわないと」


 その言葉に、オルスは不思議そうな顔をしていた。


「お前に二つ、伝えなければいけない事がある」

「良い事ですか。悪い事ですか?」

「両方だ。まず良い事。お前と手合わせしたい者が、どんどん現れてきた。昨日の闘いが凄かったようだな。勇者の剣さばきを、受けてみたいと言ってきている。これから訪れる都市、全部でだ。それを受けてもらう」


 オルスは軽くため息をついた。


「安心しろ。一つの都市につき、一人だ。自称腕自慢の奴等が今、トーナメントを開いて、闘っている最中だろう。それに、そこまで強くはない」

「悪いこととは?」

「クレチア王国が、我が領土を侵してきている」


 オルスは目を見開き、ウラシュの顔をじっと見つめた。


「わが国の領土に入っているかいないかの場所に、小さな城を建設し始めた」

「どうして。今まで仲良くしてきたじゃないですか。物資だって送ってきてくれた。魔物との情報も共有してきたし。それに、テッドの石板の解読を、一緒にやっているんですよ」


「クレチア王国の魔法使い達は、昨日でいなくなった。これ以上、参加はしないと言ってきた。お前もわかるだろ。兵力も物資も、魔法も、クレチアの方が数段上だ。年々、差が広がっている。今までは、魔物という共通の敵がいたから、国同士の戦争が起こらなかった。だが、もういない。国が繁栄するには、領土を広げていくしかない」


「旅をしている場合じゃ、ないでしょ」

「我が国に勇者あり。そうすれば、まず相手の兵士達の戦意を挫く事ができる。お前が先頭に立っただけで、相手が逃げ出す。そうすれば、相手は寄ってこない。後は話し合いだ」


 ウラシュはしっかりと、オルスの目を見ながら言った。ウラシュの瞳に映っていた自分は、怯えていた。


 それから数週間後。長旅を終え、夕方にプラッカー王国へと帰ってきた。王様が待つ部屋へと出向いた。


「長旅、ご苦労だったな。オルスよ。お前の活躍、こっちにも届いているぞ」

「ありがとうございます」

「ウラシュ。さすがだな。周辺の国々は、オルスの話題で持ちきりだそうだ」

「有り難い御言葉です」

「二人とも疲れているだろう。充分休息をとって、現場に戻りなさい」


 二人は部屋を出た。


「オルス。しっかり休め。次の戦に備えろ」

「……はい」


 オルスは家路に就く。足取りは重かった。繁華街から賑やかな声が聞こえた。危うく前の家に帰りそうになっていた。

 新しい地区に向かい、自分の家を探していた。どんな形をしていたか、思い出しながら歩いていく。

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