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第七話

 明朝、山間から朝日が顔を出そうとしている時、オルスは起きた。

 

 ベッドから起きると、鞘に入ったロングソードを持ち、静かにドアを開ける。外に出ると、近くの森の中に入っていった。

 

 両手で頬を叩き、基本の素振りから始めた。体が温かくなりだしたら、次に突き、横切りなどを行う。最後に、過去に闘った魔物を思いだしながら、戦っていく。

 

 終わる頃には、汗だくになっていた。同時に、心地よさが戻ってきた。自然と笑みが戻る。

 

 宿屋に戻った。ここで働く者達は、朝食の準備に忙しそうだった。オルスは静かに自分の部屋に戻り、汗を拭くと二度寝を始めた。


 次の都市でも、オルスは歓迎された。仲間同士の闘いも拍手喝采。夕飯の時に出てくる料理は上手かった。お世辞にも、作り笑顔で答えられるようになってきた。

 

 五つ目の都市に向かう時だった。馬車の前で、ウラシュが兵士に何やら指示を出している。


「馬車に乗るぞ。出発だ」

 

 二人が乗ると、動き出した。ウラシュは何も言わずに、ずっと窓を見ていた。オルスは何も出来ず、同じように景色を見ていた。


「お前に挑戦したい者がいるそうだ」

「戦うってことですか?」

「ああ。領主の、わがまま息子らしい。父親が止めようが、言うことを聞かないみたいだ」

「はあ……」

「父親から、徹底的に倒してほしいとの願いだ。これを機会に、性根を直してほしいのだろう」

 

 ウラシュは笑いながら、そう言った。オルスはバツの悪そうな顔をしている。

「できるか?」

「やります。ただ、相手はどれくらい強いのでしょうか」

「兵士になって二年らしい。君と同じ、魔物とは闘ったようだ。ただ、ガイコツ騎士より上は闘ったことはない。まあ、楽勝だろう」

「はあ……」

 

 都市に着く。馬車を覗く視線には少し慣れてきた。その後も、いつもと同じ事をやるまでだった。

 

 兵士が口上をし、オルス対三人の兵士が戦う。拍手喝采と歓声が起こった。

 

 オルスはその時いつも、ホッとした表情をする。


「ちょっと待ったぁ!」


 がなり声と共に、一人の大柄な青年がオルスの前に立つ。


「オルス、この俺と勝負しろ」


 背丈は、周りの住民の頭二つ分高い。誰もが見上げる。眉毛が繋がっていて、頑丈そうな歯を見せながら笑っていた。


 体格も、一緒に来ている重装兵の鎧より、大きい。さらに、バラや竜などの模様が、至るところに入っている。特注の鎧だとすぐにわかった。


 太もものような腕で、オルスの胸ぐらを掴もうとした。


 オルスは反射的に、息子の手を払い除ける。一歩下ると同時に、木剣の柄を握った。ハッとする息子。慌ててさがり、大剣の柄を握る。


 剣先をオルスに向け、駆け出した。一瞬、大剣を引いた。オルスはその場から動かず、呼吸をやめる。


「ふん!」


 大剣がオルスの胴めがけて横切り。オルスは右斜め前に向かって、飛んだ。木剣の柄で、息子の手の甲に当てる。


 大剣が落ちる。剣先を、相手の喉元に刺した。


「うっ!」 

「そこまでだ」


 ウラシュが言った。オルスは木剣を下ろし、一礼し、その場から去ろうとした。拍手も歓声もない。民衆は静かにオルスを見ていた。


「まだだ!」


 息子は急いで大剣を拾う。そして背を向けたオルスに向かい、今度は振り上げた。オルスは首だけを後ろに向けた。息子は一気に振り下ろす。


 ドン、という衝撃音と、土煙が上がった。


「ぎゃっ!」


 次の瞬間、大剣が再び落ちた。同時に、大柄な体がぐらりと揺れ、地面に倒れる。


 息子の左側に、オルスが立っていた。オルスは、ゆっくりと木剣を下ろし、その場から去っていった。


「これにて、終わりです」


 ウラシュが言った。だが民衆は動けず、オルスの姿をじっと見ていた。


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