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第五話

「いいか。すでに役人達が、目的の村に行き、オルスが魔王を倒したと触れ込んでいる。オルスと三人の仲間達が、魔王城に乗り込み、強敵を倒していった。そして二階に上がると、そこに魔王が降臨。死闘を繰り広げる。最後の一撃はオルスだった。魔王の前で高く跳び、神から頂いた勇者の剣を、脳天に喰らわせた。そして、魔王は死んだ」

「……はい」

「その後、君の剣術を披露する。兵士三人を木剣で倒してもらう。最後に、シールドで高く跳んでもらい、相手を倒しす。それで終わりだ。練習は、何度も行ったのだろ」

 

 ウラシュは、念を押すように言った。


「ええ、三日間みっちりと」

「では、問題がないようだな」

「まあ」

「何か問題でもあるのか」

「あの、お言葉ですが。確かに、最後の一撃を食らわしたのは、私です。ですが、四人で戦いました。四人がいたからこそ、魔王を倒したのです。私だけでいいのでしょうか」

「そっちの方がわかりやすい。登場人物が幾人もいると、混乱してしまう。いいか、住民達はそこまで賢くない。複雑だと、理解できない。これでいい」

「わかりました」

 

 太陽が真ん中に来た時、ようやく目的地に着いた。木材でできた正門から入っていく。

 門をくぐると、すでに人だかりができていた。住民達は、馬車の方を見ている。


「みんな。お前の事を見ているようだな」

「こんなに……」

 

 オルスは生唾を飲み込み、窓から見る光景を見ていた。みな、一心に馬車の中をのぞき込んでいる。

 

オルス達一行を乗せた馬車が、大きな広場に入る。そこにも、人だかりが出来ている。兵士達が、下がれと住民達に指示を出しながら、馬車から遠ざけていった。


「いいか、表情を作れ。勇ましい顔をしろ」

 

 オルスは指示に従った。訓練を行う前の感情を心の中で呼び出す。深呼吸を何度もする。


「……よろしい。行くぞ」

 

 ウラシュとオルスは、馬車から出てくる。周りは静けさに溢れていた。様々な視線が、オルスに集中している。足取りは重かった。

 

 馬車が広場から出ていく。中央に立つのは、オルスとウラシュだけ。そこに、兵士と領主がやってきた。ウラシュに対して、深々とお辞儀をしている。


「席を用意しておりますので、こちらに」

「ありがとう。オルス、後は頼んだぞ」

 

 中央に一人残されたオルス。そして、兵士が熱弁を振るった。

「皆様、私たちはどれだけ、あの魔物どもに苦しめられてきたでしょうか。愛する者を失った者もいます。畑を荒らされた者もいます。魔物どもがいなかったら、私たちは平和に暮らせていたのです。ですが、そんな当たり前な願いを、魔王によってうち滅ぼされてきました。それを終わらせたのが、ここにおられる勇者、オルスです」

 

 市民達は、じっとオルスを見ている。オルスは真剣な顔を、なんとか保っていた。


「勇者と三人の仲間が、魔王城に乗り込み、数々の強敵を討ち滅ぼしました。そして魔王と対決。死闘を繰り広げた末、神により剣を授かり、魔王を打ち倒しました」

 

 歓声も何もなかった。ただ、ボソボソとささやき合っているのは聞こえる。


「まだ若いね」

「プラッカー王国の兵士だって。学校に通っていたらしいよ。文字も計算もできるんだって」

 

 兵士は改めて大きな声で聴衆に言った。


「それでは、勇者オルスの剣術を観てもらいましょう」

 

 熱弁を振るった兵士が、隅に避ける。入れ替わり、三人の仲間が現れた。ロングソード、槍、斧。すべて真剣である。

 

 練習通り、横一列に並び、武器を構えた。オルスは目を瞑り、ふうっと息を吐き、木剣を引き抜いた。

 

 互いに構える。聴衆はざわついた。段々と、静かになっていく。

 

 ざわめきが消え、空気が張り詰める。

 

 仲間三人、一気に駆け出し、オルスに襲いかかる。槍が足払いをしてくる。オルスは真上に飛んだ。

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