表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/43

第36話 永遠に夢を見て、刹那に輝きを見出した:十

黒金の翼が、唸る。

 横薙ぎ。

 半歩引く。頬を掠める風圧。

 踏み込む。

 拳を紙一重で躱しながら、懐へ潜りみ股を抜け後方へ。


「――まだ」


 呟く。

 呼吸は荒い。

 だが、思考は冴えている。全部、見えている。

 翼の軌道。重心の移動。殺意の向き。

 ――全部。


 だから。

 まだ、戦える。

 そのはずだった。


「……?」


 違和感。

 ほんの、僅か。

 世界の輪郭が、ぼやけた。

 翼が来る。

 ――速い?

 心臓が、嫌な音を立てる。


 その瞬間。視界の端。

 ログが、落ちた。

《【英雄覇道】 終了》


「――は」

 理解が、遅れる。

 一拍。そして。

「……あ」

 消えた。

 あの、異常なまでの感覚が。

 未来をなぞるような視界が。

 全部。一瞬で。

 剥がれ落ちた。


 感覚の差異が酷く動きに出る。


 正面から来る拳を何とか避ける。


 次の瞬間。


 黒金の翼が、目の前にあった。

「――ッ!!」

 遅い。

 もう、何もかも。

 判断も、回避も。パリィも

 何もかも全部。

 間に合わない。

 咄嗟に影を伸ばす。

 だが、遅い。

 翼が、振り抜かれる。


「――」


 音が、消えた。

 視界が、反転する。

 空と地面が、入れ替わる。

 自分の身体が、どこにあるのか分からない。

 誰かの声がした。


「アルヴィ!!」


 ああ。

 これは――まずい。

 そう思った瞬間。

 世界が、暗転した。



 視界が、ゆるやかに焦点を取り戻す。

 観戦視点だ。

 ゲーム内にもかかわらず。

 冷や汗が――止まらない。


 ★


 side:チュニドラ


「――ッ!!」

 視界の中央。

 アルヴィの身体が、弾き飛ばされる。

 回転しながら。地面を、転がる。

 動かない。

 一瞬で、理解した。


「……嘘だろ」


 アルヴィが。

 こんな、あっさり。

 喉が、乾く。

 ジャガモースが、こちらを見る。

 その瞳。次の獲物を、定める目。


「……チッ」


 私は、前に出た。

 盾を構える。


「マイン!!」

 叫ぶ。


「5秒でやります!」


 焦りがにじみ出る。

 考えてみれば当然、アルヴィのあれだって時間経過で切れる。

 なのにかまけた!

 絶望的だ、でも――やるしかない。


「【完全なる一の直感】」

 マインの声。


 これをかけれるのは最初の一回限りだろう。

 何でもいい。どうにかしても5秒稼いでやる!


 その判断をした瞬間、視線をジャガモースの方に向けながら距離を取る。

 来る。

 そう思った瞬間には、もう遅い。


「――ッ!?」


 次の瞬間。目の前。

 黒金の翼が、既に振りかぶられていた。

 速すぎる。

 反射でジャストガード。

 地面を蹴り、無理やり距離を引き剥がす。

 次々と振りかぶってくる攻撃。

 何とかバックステップを連発して回避する。

 スタミナが消える!これ以上は無理!

 再び振り下ろされる拳。

 翼じゃない!なら


「――【光界】!」


 盾を構え、真正面から受ける。

 轟音。衝撃。

 結界は崩れ、ガードを貫通しダメージを貰う。

 だが生きている!

 赤い紋様が、盾全体に燃え上がる。


「はっ――!」


 その反動を利用して、さらに後方へ跳ぶ。

 距離を、稼ぐ。

 稼げるだけ。

 一歩でも多く。


 ★



 マインが切り飛ばされた私の上半身へと駆け寄ると。

 アイテム欄から最後の蘇生アイテムを取り出した。


「【星哭の雫】」


「先輩、お願いですから。勝って下さいよ」


 小瓶の蓋を開け、その一滴を私死体へと垂らすと。

 淡い光が、私の身体を包み込む。

 視界が、薄れる。

 次第に、輪郭が、蘇る。

 手の感覚。足の踏みしめ。

 意識が戻る。


「ごめん」

「はい。——それより」

 本当に……マインが居てよかった。


「【完全なる一の直感】」


 バフが切れている。

 もうあんな風に耐久は出来ない……。

 普通なら。


【星哭の雫】はスキルのCTすら回復する。

 つまりCTが一週間の【英雄決断】すら再使用を可能にする。


 当ててやる。

 もう一度【英雄決断】を。


「【影纏い】」


 影を走らせ、チュニドラを掴んで。

 こっちに引き寄せる。


「だから、さっきからいきなり過ぎだろ!」

「文句言わない」


「マイン、あとどれくらいあのバフ使える」

「八回くらいです……」


 私は視線を砂時計へと向ける。


「十分って言いたいわね」

 そしてジャガモースの様子も見た。


「……あと何度、生き返る気だ?」

「あれがラストよ」


「おいちょ、それ言っていいのかよ」

「そうか、信じるぞ」


 その言葉を皮切りに彼が肉薄する。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ