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第24話 我、理想郷。決して変わらず風化せず


私は箔新月を構え、一歩踏み込む。

返答はない。

意思も敵意も感じない。


ただ、そこにあるだけの巨大な胎のような存在。

青白い液体に包まれた膜が、微かに脈打つ。


――次の瞬間。


液体の表面が歪み、黒い影が盛り上がる。

空間を裂くように現れたのは、

細く長く歪んだ腕。


【黒き手】


不定形の存在が無数に蠢き、こちらへ向けられる。

次々と来るその手を避けながらその胎へと近づいていく。


「まずは、そこから引きずり出してあげるわ」


無数の黒き手が、地を舐めるように伸びる。

速くはないが、逆にそれが弾幕を張るように逃げ道を無くす。 

私は紙一重で躱しながら、前へ。

一歩ずつ、胎の中心部へと距離を詰めていく。

手は叩き切れば消えるが、捕まれればろくなことにならないのは確定。


「【霞踏み】」


体が軽くなり、輪郭が歪み霞の様に消え。

ジャガモース付近へと現れる。黒き手は霞を攻撃した。

私には当たっていない。


「近づけた!」


間合いに入った。

箔新月を握り、体重を乗せて突き刺す。


刃先は膜を突き抜け、羊水の液体に触れる。

――だが。

まるで硬質なゲルを突いたような感触。


「……硬っ」


貫通しない。

押し込んでも、膜は歪むだけで裂けない。

だったら、表面だけでもズタズタにしてあげる。

刃を引き抜き表面に傷を増やしていく。

だが、嫌な予感が走った。


次の瞬間。

膜の内側から、脈動が一段強く跳ねた。


――【盤上怨嗟】


紫の衝撃が円形に広がる。

避けられない。

私は即座に踏み込んで距離を稼ごうとするが、

衝撃は足元から爆ぜた。


「くっ……!」

身体が強制的に弾き飛ばされる。


ステージ端まで吹き飛ばされ、地面を滑る。

ダメージは無い。だが距離がリセットされた。


……近づいてダメージを与える、一定ダメージを与えるとさっきの【盤上怨嗟】って技で距離をリセット。

これを繰り返すフェーズって事?

その時、胎の前方に黒い煙が舞い上がる。

それは形を成していく、刃だ。

剣、刀、槍……無数の刃が空中に浮遊する。


――【戒刃呪停】


無数の武器が空中に静止し、次の瞬間――時間差で落下する。

「ちっ……!」

一発目を横転で回避。

二発目は武器で弾く。三発目はジャンプで躱す。

まだグリドマルドの方が避けにくかった。これくらいなら何とかなる。


刃が止むと、再び【黒き手】が波のように襲い掛かってくる。

パターンを変えてリズムをずらし連続行動で私を追い詰めようとしてくる。


「なるほど……」


黒き手が地面を舐めるように走る。

横へステップ。だが次の手は軌道を変え、回り込むように迫ってきた。


「さっきと違う……!」


箔新月を振り下ろし、黒き手を消滅。

横薙ぎの手はしゃがんで回避。

直後、背後からもう一本。


「ッ!」


反射で刀を振る。

黒い腕が弾け、霧のように消える。


(数が増えてる……!)


最初より明らかに密度が高い。


胎が、また脈打つ。

ドクン。

それと同時に手がすべて消え、黒い煙が再び湧き上がる。


「今度は何よ……」


煙は形を持つ。

人型、私と同じくらいの身長に。

そして――


「……は?」


それは、私だった。

箔新月を持った黒塗りの私。

もう一体。

さらにもう一体。

三人。


――【殻の代弁者たち】


「ばっか、言ってんじゃ――ないわよ」


言葉と同時に踏み込む。

一体目が動いた。

箔新月を構え、踏み出す。

刃がぶつかる。

ガキィン!!重い衝撃。

ただ、私の方が競り勝つようだ。

ステータスは一緒じゃない、多分姿形だけ。

単にコピーではないっぽい。


そのまま力任せに押し切り、銀雷を打ち込むとコピーは霧のように崩れていく。

振り向きざま、二体目が跳ぶ。

斜めに刃が走る、すぐさま迎撃。

心臓を貫いたらすぐさま黒い霧となる。

三体目が死角から接近する。

私は、振り下ろされた刃を受け流し、身体を回転させる。次の瞬間、そのまま横薙ぎ直撃し、崩れ去っていく。

……代弁者は強い訳じゃない。

動きは悪いし、ヘルスも少ない。

ただ、趣味が悪い。


代弁者たちを倒すと刃が出現する。


【黒き手】【殻の代弁者】【戒刃呪停】【盤上怨嗟】

……この流れを繰り返し攻略する必要がありそうだ。

とにかく、距離を詰めて膜にダメージを蓄積するしか手掛かりないかな……。

刃を避けながら、再度接近、間合いに。 

箔新月を突き入れ、傷を深めていく。


何度目かの衝撃と、脈動が伝わってくる。


【盤上怨嗟】


また吹き飛ばされる。


「まだまだ行けるって言うのに、あんたは随分びくついてるわね」


胎が震える、まるで怯えているように。

再度、黒い霧が展開手が増えていく。

繰り返される攻撃を潜りながら胎へと近づく、

刃を避け、黒き手を払い、代弁者を斬り、胎に傷を刻み込む。

この繰り返しを、私はただただ続けていた。


「殻の中でぬくぬくして――」


地面を蹴り【飛燕】で跳躍。

次の瞬間、胎の目の前。


「夢見てんじゃないわよ!」


箔新月を突き刺し、自重で下へと引き裂いて行く。

膜が裂ける。

これまでとは違う感触だった。

硬いゲルではない。

裂ける、確かな手応え。

この四回目の繰り返し、ここで異変が起きた。

前と同じ【盤上怨嗟】で吹き飛ばされるかと思ったのに、胎の揺れが、やや早くなった。膜の表面に、微細な泡が浮かぶ。


―――()()だ。


SYSTEM(システム)

【――BOSS PHASE(ボス フェーズ) TRANSITION(トランディション)



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