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第13話 群雄からの賜りもの

「ふっざけんじゃないわよ!」


落下しながら、必死にウィンドウを開く。

視界の端で、他のプレイヤーたちも同じことをしているのが見えた。


「アイテム、どうにかするアイテム!」

「落下防止のアイテム!? そんなもん持ってねぇ!!」

「【帰還の紋章】……くそ、戦闘中!?」


私もアイテム欄を物色する。


「回復アイテム、鍛造石……あーもう! ろくに買い込んでないわね!」


【帰還の紋章】は案の定、灰色表示。

完全に手詰まり——かと思った、その時。


「あ……?」



視界の端、ステータス欄。

見慣れた数値が、戻っている。


「……ステータス、戻ってる?」


気づいた瞬間、意識が一気に冴えた。


「ステータスが戻ってるわ!!」


声を張り上げると、何人かが気づいたらしい。


「え、マジか!?」

「本当だ! スキルが使える!」

「助かった……助かったぞ……!」


だが、全員が助かるわけじゃない。


「落下ダメージ無効の方法知ってる奴いるか!?」

「俺、魔法職だぞ!? 何すりゃいいんだ!!」

「……無理だ、間に合わねぇ……!」


視界の端で、

抵抗虚しく、そのまま消えていくプレイヤーがいた。


私は歯を食いしばる。

私自身も、確信はない。

可能性があるとしたらあの二つのスキル。

【霞踏み】

【飛燕】


「【飛燕】は……無理ね」


感覚的に分かる。

あれは足場を作るスキル。

この速度、この高度じゃ、発動しても少し早く死ぬだけ。


「残るは……【霞踏み】」


だが、問題が多すぎる。

発動タイミング。

有効範囲。

消失までの一秒未満の時間。

そもそも落下ダメージの有無。


「ミスったら、そのままゲームオーバー……」


下を見る。地面が、もう地形として認識できる距離まで迫っている。


「……はぁ」


ふと、近くで誰かの声が聞こえた。


「頼む……生きてくれよ俺は、タンクビルドだ!」

「次、また会おうぜ……!」


腹を括るしかない。


「……もう、やるしかない!」


【霞踏み】の有効範囲が地面と重なったその瞬間スキルを発動した。

次の瞬間、

体が一瞬だけ軽くなり、輪郭が霞んだ。

そして——

消えかけたその瞬間。


地面と、キスをした。

——ドンッ!!

HP630 → HP1


《スキル【死にぞこない】発動》


「……っ!!」

「……はあ、忘れてた」


戦闘中判定で【死にぞこない】が発動してよかった。

まあ存在自体忘れてたけど。

周囲を見る。


「……生きてる」

「お、おい……大丈夫か……?」

「この三人だけ? マジですか」


残っていたのは私を含めて三名。

一人は重装備の大盾使い。

全身の鎧はひびだらけで、HPバーは真っ赤だ。

もう一人は軽装の魔法職らしく、片膝をついて荒く呼吸している。


「生きてる……生きてるな?」

「……ああ。何とか」


確認するように互いを見るその空気が、やけに現実的だった。

さっきまでの混沌が嘘みたいに、静かだ。


「七人いて生き残りは、三人」


誰ともなく呟く。


「……まあ、全滅しなかっただけマシじゃない?」


そう思いながら各々が回復アイテムを取り出し回復していた。

そんな時システムメッセージが画面に映る。


《『群雄』のシーアッシュプ 撤退》


「これは……クエスト終了って事でいいのよね」


「あれだけの事があったんだ……何か報酬があるかもな。ステータスとかアイテム確

認しようぜ」


確かに、あれだけの死闘を繰り広げたのだ。

もし、なにも報酬がないと言うなら。シーアッシュプの悪質さと言わざるを得ないだろう。

画面を開くと報酬が一覧で表示された。


・『群雄からの賜りもの』

→君は資格を得た、いずれこの資格を持つ者が―――。


・【群雄の鏡鱗】×1


・称号:《見定められたもの》


スキル欄に、新しい項目が追加されている。

【英雄決断】

発動不可。


「……は?」


詳細を開いた瞬間、思わず声が漏れた。

一戦闘につき一度。CT 604800

このスキルは相応しい相手にしか輝きを発しない

次の一撃が、必ず致命となる。

ただし――

攻撃の直前、一秒以内に回避かパリィを成功させた場合に限り、真価を発揮する。

……ん?CTがなにこれ604800?秒数よね。

えーと、一日どころじゃないのは分かる。それに『このスキルは相応しい相手にしか輝きを発しない』


「俺のは『群雄からの賜りもの』と【群雄の鏡鱗】それと称号 《群雄割拠》」

「僕も同じです」

「俺はあんたが気になるぜ、シーアッシュプからなんか特別な扱いを受けてたろ?」

そう言って大柄な男はニヤリとこちらを向いた。


「予想通り私は少し違う。称号が『見定められた者』それとスキル【英雄決断】」


「へえ……」

大柄な男が、私のウィンドウを覗き込むように言った。


「やっぱりお前だけ、明らかに扱いが違う」


「違うって言われてもね」


私は肩をすくめる。


「私が頼んだ覚えもないし」


軽装の魔法職が、まだ息を整えながら口を挟んだ。


「でも……シーアッシュプ、最後に君を指した」


「先導者って言ってたわね」


思い出すだけで胃が重くなる。


「色々考察が捗りそうですけど、考察厨でもないですし……」


軽装の男は、困ったように笑う。


「まあ、それは置いといて。情報交換もできた事だし俺はもう行くぜ」

「またどこかであったら、その時はよろしく頼むぜ」


「じゃあ僕もここで失礼します、指揮ありがとうございました」


そう言って二人が消え、最後には私だけが残る。


「さて、私もそろそろ行きますかね」


最後にもう一度、空を見上げる。

もうそこに群雄の影はない。

あるのは、何事もなかったかのような青空だけだ。


「……本当に、めちゃくちゃだったわね」


ため息を一つ吐いて、踵を返す。

目指すは炭鉱の町レーヴェン。

歩き出して数分、ようやく身体の震えが治まってきた。

HPは回復しているはずなのに、感覚だけが妙に重い。

多分これ、完全に精神的疲労だ。

インベントリを開き、改めて報酬を眺める。


『群雄からの賜りもの』

称号 《見定められたもの》

【英雄決断】


どれも、明らかに先を見据えた内容だ。


「資格を得た、ねぇ……」


『いずれこの資格を持つ者が―――』


途中で途切れた説明文が、やけに気持ち悪い。

まるで「今はまだ知るな」と言われているみたいで。


「……知りたいような、知りたくないような」


称号《見定められたもの》。

名前だけで、ろくな未来が待っていないのが分かる。


「これ絶対、また目つけられてるわよね」


群雄。

シーアッシュプ。

思い出すだけで背筋が寒くなる。

勝てない相手じゃない。

戦わせる気がない相手だった。


「まあ……今は考えても仕方ないか」


そう、今は。

視界の先に、黒煙を上げる街並みが見えてきた。

山肌を削るように広がる炭鉱。

トロッコのレール、金属音、NPCの喧騒。

——レーヴェン。


「やっと着いた……」


街に足を踏み入れた瞬間、

戦闘BGMが消え、環境音に切り替わる。

それだけで、肩の力が抜けた。

やることはあるけど。


「……今日は、無理」


一番に宿に向かい、ベットに潜りログアウトする。

言い忘れていたがベットでログアウトするとHP MP スキルクールタイムが回復する。宿で寝ても同じ仕様だけど。


ログアウトしヘッドギアとアームギアをその辺に投げ捨て。

私はベットに吸い込まれるように倒れ。そのまま眠った。



―――――――――――――――――――――――――


帰還の紋章は空中で使用不可なので戦闘外だとしてもどのみち無理でした。

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