幕間 butterfli effct side3
真っ白だ、何もない。上も下も右も左も、ただ歩いているのだけは解った。ああ、ここは一番最初の世界だ。手を広げてみれば、ぼやけた輪郭の指が見える。中指のリングはないから、私は私から抜け出たらしい。
「おかえり。ジュリアス」
ヘタレが言っていた。自称神か。
「きみまでそんな言い方しないでよ」
どうやら、所々透けてはいるが、前の姿をとれているらしい。動かす足元に私が好んで履いていたカリガ(サンダル)が見える。
遠いのか近いのか、マリアベルとリュミエールの姿が見えた。コリンヌの姿はない。
「あの子はね、思い切りよく行っちゃったよ」
三悪愛男に触発されたのか、元の性格か彼女は先を進むことにしたらしい。
「さて、君たちには迷惑をかけたからね。輪廻の輪に入れるように頼んでおいた」
この自称神も随分と変わったものだ。物言いが柔らかくなった気がする。
「違うよ。君たちが変わったんだ。受け取れる力がついた。人らしくなった」
少し嬉しそうな気配が動く。
言い得て妙だ。もともと私たちは人だったはずだが?
「うん。でも役割があったからね」
「あの子たちは大丈夫なの?」
少し勝気な言い方は元のマリアベルそのものだった。
「どうかな?この間災厄の魂を入れ替えたけど…ガワは最高傑作だからね」
「うちの子はまだ、連打も無理なら、自らの加護(炎)の暴走を止めてくれる相手さえいないのよ?」
うちの子って言ったな。マリアベル。
「なによ?」
仁王立ちをして、腕組み。瞳の強ささえわからないが、私を睨む。ああ、これは私の知っているマリアベルだ。
「マリアベルに入れた魂は、元来大人しい。君はとても上手く融合をしてくれたからね。それがここまでは上手くいっただけだ。アイシュア推しだったのも良かったな。今はとても仲の良い兄妹だ」
「……あの子が自らの炎に巻かれて亡くなるのを見ているつもり?あの子なら、後先考えずにやるでしょうね、お兄様のためなら!」
いやな沈黙だった。
「忘れないでよ、マリアベル。蝶が羽ばたいたら干渉はできないよ。後は運を天にまかせるだけだよ」
ああ、彼女の炎が渦巻いているのがわかった。
「あなたが…天なのではないの?」
これ以上はまずい。そう思った時だった。
「……そこまでよマリアベル」
凛とした声が響く。何もないはずなのに、急に空気が治まったような静寂。
「リュミエール」
「この方は、止める術がないのだわ。そう決まっているのでしょう」
「ご名答」
少し自嘲する言い方だった。
「でも、私たちをさっさと輪廻の輪に入れずにいる訳はなに?」
ふわりと、手が動いた気がした。いや広げたのか?
「クライマックスまで…観たいと思って」
「え?」
「最後まで観たいでしょ。だから…おいで。僕の内に少しだけ匿ってあげるよ。そうすれば魂が乾かないからね」
乾くのか?魂が?
「留まりすぎると魂も澱む。時間の流れに逆らえず壊れやすくなる。だから器が必要。抜いた魂はさっさと入れる。これ基本、テストにでるよ!そして入れてしまうと記憶が失いやすい」
…だから?
「あーもう、最後まで言わさないでよ。お詫びに一緒に観よう。この世界の後先をさぁ、もちろん干渉はできないよ、それでも…良かったら」
マリアベルが、広がった腕?の部分に何も考えずに飛び込んだ。
「観るわ!」
「そうね。気に…なるもの」
リュミエールが動く気配がする。
「ジュリアスは…どうする?」
もういいかと思っていた。自分の役割は終わったのだと。でも…。
「ヘタレを置いてきたからね。ふむ…」
踏み出した自分のカリガが見える。どうやら自分は決めたらしい。
「観るなら、カウチとスナック菓子も欲しいな」
ヘタレの記憶の中で、あれは楽そうだし、美味そうだった。
「妙なもの覚えちゃったなぁ」
可笑しそうに自称神が笑った。
「じゃあ、クライマックスまでご一緒に」
…私たちの意識は、自称神に溶けた。
お疲れ様です。
いつも読んで下さってありがとうございます!
100回目です。あとがきを書かせていただきました。
ここからは甘酸っぱいが加速します。よろしくお願いいたします!




