キャラクター
小説家を目指している少年は、ノートを前にあることを追求しようとしていた。
全ての既存の作品に負けないような、最強の主人公を生み出そうと。
ギリシア神話に登場する英雄アキレウスは、冥府を流れる川に浸かって不死となったものの、アキレス腱だけ浸からなかったために、そこが急所となった。
体の一部を射られて瀕死の重傷を負う英雄は求めているものではない。
死がある限りは、それは最強の主人公ではない。
では、死ななければどうか。死を超越した者といえばゾンビや死に神だろう。死んでいるのなら死なない。痛みも感じない。最強間違いなしだ。
しかし、彼らの退治を生業としている者には勝てない。同じ種族なら殺し合うこともできるはずだ。これも没だ。
最強のアイテムを持っているならどうか。
どんなに硬い物でも貫く剣と、どんな攻撃でも寄せつけない盾。これなら最強だ。
いや、これは完全に故事の矛盾になる。これも没だ。
現実では存在しない超能力がいい。
敵を見ただけで殺す目。一言で殺す呪文。予知能力や瞬間移動もいい。時間停止なんて魅力的だ。
どんなに優秀な能力使いでも、体が頑強でなければ意味がない。やはり不死身は必須だろう。それに最強の武器と巨竜のような体格。
IQ300は欲しい。全速力で走るとマッハ5はあったほうがいい。核爆弾攻撃も耐える。
最強魔法グレートビックバンという銀河をも破壊できる呪文を持つ。
心臓は三つあって、同時に潰されないと死なない。超回復能力を持っているからだ。
凶悪な魔獣も召喚できる。能力がまだ心許ない気がする。睨まれただけで相手が動けなくなる邪眼の持ち主だといい。
主人公のイメージを構築し終えた少年は、途中でようやく気づいた。
これ、人間じゃねえ、魔王じゃん!
そして、改めて最強主人公について考える。
自分の中でカッコいいと憧れるようなヒーローが最強。
自分が凄いと認めた主人公がヒーローだ。
ちょっと大人になった少年だった。




