3話 傷
「なんで…ガルドの剣が……?」
俺は全身に嫌な予感が走るのを感じた。
「どうしたんですか?」
気づくと横にはルナがいた。
「この剣、俺の仲間が持っていたものなんだ」
「え……?それって…」
ルナは驚いたように目を見開いた。
だがすぐにいつもの表情になり言った。
「いや…でも、走る時に落としたのかもしれませんし、もう少し探してみましょう」
「あぁ…そうだよな…」
ルナは前向きだな…今はそれがありがたい。
……俺も見習わなくちゃな。
「とりあえず…もう少し奥まで行ってみるか」
「はい」
俺達は、少し足を早めつつ、森を歩いた。
「だいぶ霧が濃くなってきたな…」
「そうですね…10m先も見えないぐらいです」
いくら森の中といえど、濃すぎはしないだろうか?
「ルナ、転ばないように気をつけて…うわぁ!」
足元にある何かにつまずき、転んでしまった。
「そういうアルトさんが転んでるじゃないですか……ほら、大丈夫ですか?」
「あぁ…すまない」
俺はルナの手を取り立ち上がった。
「え……?この色って…」
ルナの顔は蒼白になり、声は震えていた。
「どうしたんだ?急に」
「足元を…足元を見てください」
「足元って………え」
足元にあったのは人間の死体だ。
頭部以外、まともに見える部位はない。
腹部は潰れており、服には赤黒い跡が残っている。
うつ伏せになるように倒れているので顔も見えない。
だが、この髪色は……この目立つ緑色は
「………リオ、なのか?」
なんで
にげたはずなのに
おれがぎせいに
まもったはず
なんで
なんで
「……トさん」
「アルトさん!」
「……はっ」
「大丈夫ですか…?」
ルナは、俺を心配そうに見上げていた。
「やはり、この方はお仲間の……」
「あぁ、リオって言うんだ。赤龍を見ただけで気絶してしまうぐらい気の弱いやつだった。でも、誰よりも優しいやつだったな…」
「アルトさん……
この傷は、赤龍のせいなのでしょうか…」
やはりそうだったか……
赤龍は逃げたんじゃない。
この2人を追っていたんだ……
「そうだろうな…せめて遺品を……あれ?」
荷物がない?リオは確か、依頼の薬草とか魔石とか色々持っていたはずなのに……
「もしかしたら、もう1人の方が持っているのかもしれませんね」
「ガルドか……」
この様子じゃ、ガルドも生きているかわからない。
だが、このまま帰る訳にもいかない。
リオの為にも、必ずこの依頼に決着をつけるんだ。
先に進むこと数十秒、すぐにガルドを見つけた。
その大柄な体格に似合わないほどの小さな傷を負い、
眠るように横たわっていた。
「あぁ…ガルド、お前も駄目だったか……」
俺はガルドの腹部を見た。
「なんで…こんな小さな傷で……」
「赤龍にやられたとは思えない程小さな傷ですね……まるで刺し傷みたい」
「刺し傷か……俺とお揃いだな。ガルド」
俺はちらりとルナを見た。
「?どうかしましたか?」
……まあいいか
俺はガルドの手元に目を向けた。
「袋が2つ…やはりガルドが持っていたんだな」
……2つとも、持って帰ろう。
「ルナ」
「はい?」
「こんな所までついてきてもらって、悪かったな」
「それは良いのですけど…アルトさんは、大丈夫なんですか……?その、お仲間が2人も…」
「正直大丈夫じゃないが…悔やんでも泣いても戻ってくる訳じゃないしな、ルナみたいに前向きにいこうと思うよ」
「……そうですね」
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「はい」
その時だった。
ズン……
地面が揺れた。
忘れもしないこの感覚。
「これは……」
「危ない!」
気づくと俺はルナに突き飛ばされていた。
さっきまで俺がいた所には炎が立ちのぼっていた。
炎の奥から、少しずつ奴が姿を現した。
全身を真紅の鱗で覆い、黄金色の瞳がこちらを見下ろしている。
「赤龍……!」
ーー危険区域との境界付近につき、十分注意すること
危険区域。
俺達は、とっくに境界を超えていた。




