鍛治の村−8
師匠が鉄下駄を地面へ置き、静かに命じる。
「村一周」
「兎跳び」
サファイアは一切ためらわない。
「はい!」
鉄下駄を履くと、軽く膝を曲げる。
そして――。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
十キロの鉄下駄を履いているとは思えない軽やかさで、村道を跳ねるように進んでいく。
国王は思わず目を見開いた。
「速っ……」
慌てて自分も鉄下駄を履く。
ガン!
最初の一歩で地面が鳴る。
もう一度。
ガン!
重い。
昔の感覚を思い出す間もなく、脚へずっしりと負荷がのしかかる。
それでも歯を食いしばり、兎跳びを始めた。
熊公も横から並走する。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
なぜか軽快だった。
国王は息を切らしながら叫ぶ。
「熊公!」
「お前まで速いのか!」
熊公は振り返り、不思議そうな顔をする。
「四足歩行に近い動きですので」
「熊に有利な競技だったんですね」
その一言に、サファイアは思わず吹き出した。
「王様、遅ーい!」
「それで勝つ気?」
国王は汗を拭いながら笑い返す。
「まだ始まったばかりだ!」
その声を聞いた師匠は腕を組み、満足そうに頷いた。
「そうだ」
「修業ってのは、ここからが本番だ」
国王は吹き出す。
「まだやるのか、それ」
「当たり前だ」
「基本だからな」
師匠は平然としている。
やがて二人は黙々と鉄を打ち続けた。
サファイアの槌は軽快で無駄がない。
国王の槌は力強く、それでいて正確だった。
師匠は腕を組み、何も言わず見守っている。
やがて二足の鉄下駄が完成する。
黒く磨かれた鉄の台。
分厚い歯。
そして頑丈な金具。
最後にサファイアが手際よく鼻緒を取り付ける。
熊公執事は恐る恐る片方を持ち上げた。
「……重い」
思わず両手になる。
「一足で十キロほどだ」
師匠は平然と言う。
熊公は固まった。
「履くのですか……これを」
「当たり前だ」
国王は完成した下駄を見つめながら苦笑する。
「先生」
「昔より重くなってません?」
「軽くした」
「……嘘ですよね」
「年寄りに嘘つき呼ばわりとは偉くなったもんだ」
工房へ笑いが広がる。
しかし、その笑いは次の瞬間に消えた。
師匠が鉄下駄を地面へ置き、静かに命じる。
「村一周」
「兎跳び」
サファイアは一切ためらわない。
「はい!」
鉄下駄を履くと、軽く膝を曲げる。
そして――。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
十キロの鉄下駄を履いているとは思えない軽やかさで、村道を跳ねるように進んでいく。
国王は思わず目を見開いた。
「速っ……」
慌てて自分も鉄下駄を履く。
ガン!
最初の一歩で地面が鳴る。
もう一度。
ガン!
重い。
昔の感覚を思い出す間もなく、脚へずっしりと負荷がのしかかる。
それでも歯を食いしばり、兎跳びを始めた。
熊公も横から並走する。
ぴょん。
ぴょん。
ぴょん。
なぜか軽快だった。
国王は息を切らしながら叫ぶ。
「熊公!」
「お前まで速いのか!」
熊公は振り返り、不思議そうな顔をする。
「四足歩行に近い動きですので」
「熊に有利な競技だったんですね」
その一言に、サファイアは思わず吹き出した。
「王様、遅ーい!」
「それで勝つ気?」
国王は汗を拭いながら笑い返す。
「まだ始まったばかりだ!」
その声を聞いた師匠は腕を組み、満足そうに頷いた。
「そうだ」
「修業ってのは、ここからが本番だ」




