表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は国王である以前に刀鍛冶なのだ ~鍛治師国王が鍛えた武器で、戦場も政争も無双します~  作者: てきてき@tekiteki


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/25

第21話 鍛冶の村−2

 熊公の視線は忙しく動く。


「あれも……。」


庭先には鉄製の物干し台。

井戸には頑丈な鉄の滑車。

橋の欄干は黒く磨かれ、農具を掛ける棚に至るまで鉄で補強されている。


家畜を囲う柵の留め具も、荷車の車輪を支える金具も、村人が日々使う道具のほとんどに鍛冶師たちの手が入っていた。


鉄が暮らしの隅々まで溶け込んでいる。

そんな村を熊公は生まれて初めて見た。


「ここまで鉄を使う村は初めて見ました。」


国王は肩をすくめる。


「ここじゃ鉄は木みたいなもんだ。」

「欲しけりゃ自分で作れる。」

「だから惜しまない。」


少し歩くと、一人の老人が鍬の刃先を砥石に当てていた。


隣では若い女が折れた包丁を工房へ持ち込み、その横では少年が真新しい釘を籠いっぱいに運んでいる。


村人にとって鍛冶場は特別な場所ではない。

井戸や畑と同じように、生活の一部だった。


「壊れたら買い替える、ではなく。」


熊公が呟く。


「直して使う、ですか。」


「ああ。」


「鍛冶師は物を作るだけじゃねえ。」

「直して、長く使えるようにするのも仕事だ。」

「だから、この村じゃ物を粗末にする奴は嫌われる。」


熊公は深く頷いた。

鉄を作る技術だけではない。

物を大切にする文化まで、この村には根付いているのだ。


その時だった。


カン。


カン。


カン。


あちこちから金槌の音が響いてくる。


一軒だけではない。

二軒でもない。

村中の工房から、絶え間なく槌音が重なっていた。


高い音。


低い音。


重い音。


軽い音。


規則正しい音。


細かく刻む音。


まるで誰かが大勢で演奏する打楽器の楽団のように、それぞれ違う音色が村全体へ響き渡っている。


熊公は立ち止まり、耳を澄ませた。


「同じ音ではありませんね。」


「当たり前だ。」


国王も耳を傾ける。


「あれは細工物。」

「こっちは包丁。」

「あっちは農具。」

「その奥は鎧。」


熊公は目を丸くした。


「はぁ……、聞いただけで分かるのですか。」


「音が違う。」


国王は当然のように答える。


「叩く鉄が違えば音も違う。」

「熱さも違う。」

「槌の重さも違う。」

「打ち方まで違うんだ。」


少し懐かしそうに笑う。


「耳のいい職人になると、誰が打ってるかまで分かる。」

「今日は少し疲れてるな、とかな。」


「そこまでですか……。」


熊公は思わず工房の方へ目を向けた。

自分にはどれも同じ槌音にしか聞こえない。


しかし国王にとっては、それぞれが職人の名前を持つ声のように聞こえているのだった。



熊公の視線は忙しく動く。


「あれも……。」


庭先には鉄製の物干し台。

井戸には頑丈な鉄の滑車。

橋の欄干は黒く磨かれ、農具を掛ける棚に至るまで鉄で補強されている。


家畜を囲う柵の留め具も、荷車の車輪を支える金具も、村人が日々使う道具のほとんどに鍛冶師たちの手が入っていた。


鉄が暮らしの隅々まで溶け込んでいる。

そんな村を熊公は生まれて初めて見た。


「ここまで鉄を使う村は初めて見ました。」


国王は肩をすくめる。


「ここじゃ鉄は木みたいなもんだ。」

「欲しけりゃ自分で作れる。」

「だから惜しまない。」


少し歩くと、一人の老人が鍬の刃先を砥石に当てていた。


隣では若い女が折れた包丁を工房へ持ち込み、その横では少年が真新しい釘を籠いっぱいに運んでいる。


村人にとって鍛冶場は特別な場所ではない。

井戸や畑と同じように、生活の一部だった。


「壊れたら買い替える、ではなく。」


熊公が呟く。


「直して使う、ですか。」


「ああ。」


「鍛冶師は物を作るだけじゃねえ。」

「直して、長く使えるようにするのも仕事だ。」

「だから、この村じゃ物を粗末にする奴は嫌われる。」


熊公は深く頷いた。

鉄を作る技術だけではない。

物を大切にする文化まで、この村には根付いているのだ。


その時だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ