第三部 第六章 1 ―― 軟禁 ――
第二百二十七話目。
じっとしていられないんだけど。
第六章
1
奇妙な細目の鬼の襲撃を受けて5日が経とうとしていた。
細目のにやけた顔を思い出しただけでもイラついて、背中がムズムズしてしまう。
何より、あの咆哮を聞いてから、どうも落ち着かない。
嫌なことを無理矢理思い出させられたみたいな、胸苦しさがずっと残ってしまい、気持ちが悪い。
しかも、火に油を注ぐようなコスモスの態度が気に入らない。
ジェスタに戻され、牢獄に戻るという最低の対応をされる暴挙は間逃れたけれど、「自由にする」というのは名ばかりであり、しっかりと私とアカネは監視をされていた。
宿に軟禁させられ、幾分自由はあるものの、気分は優れない。
「ねえ、殺しておく?」
宿のベッドに座り、隣りのベッドで横になって休んでいるアカネに、扉の外で監視するコスモスの者を指差して笑う。
私の冗談に、横になって頬杖を突いて呆れるアカネ。
「何、言ってんの。牢屋に入れられるより、マシと思わないと。ご飯も食べられるし、ベッドでも寝れるんだから快適と思わないと損よ」
どうやらアカネは今の状況に満足しているらしく、大きく腕を伸ばして体を休ませる。
どうもアカネは軟禁状態を満喫しているようね。私としては、窮屈で物足りなさが嫌なんだけど。
「でも、ゲイリィは全滅ってのは残念だったけれどね」
優雅に眠っているのだと思うと、急に神妙な口調になるアカネ。腕を枕代わりにして天井を眺めて呟いた。
「もしかすれば、助けられなかったことを責めていて、軟禁、ってことかもしれないけどね」
髪を掻き上げてぼやくと、よりアカネは表情を曇らせる。それに釣られ、私も口を噛んでしまう。
「多少なりともあの坊やや、修羅に対しての情報も手に入れることはできなかったしね。この苛立ち、あの鬼に払わせておけばよかったかしら。それとも、コスモスの1人でも殺してみる」
情報がなく、空振りなのもさることながら、あの鬼に逃げられた悔しさに、息を呑んでしまう。
「だから、止めてって。余計に恨まれちゃうわよ」
行く先は暗雲立て込めているけれど、アカネは楽しそうに手を振って制してくる。
気持ちとしては、塞ぎ込んでいるわけではなさそうね。
「さて。じゃあ、これからどうする?」
行く当てもなく、途方に暮れていると、アカネも気持ちを引き締めたのか、体を起こして髪の毛を撫でて整える。
「こうなったら、コスモスに言って情報を分けてもらうとか?」
しばらく思案してから顔を上げるアカネに、苦笑してかぶりを振る。
「それはきっと無理でしょうね。あの隊長さんはともかく、ロブソンとかは憤慨してまた拘束するわよ。変な因縁をつけてね。かなり私たちを嫌っているみたいだから」
お手上げ、と首を竦めてみると、アカネは納得、と笑った。
「じゃあ、セタは? 彼だったら信用できるんじゃない?」
セタね。まあ、一番私らに心を許しているでしょうけれど、上手くいくのかしら。
「そうね。それもダメなら、やっぱり一人ぐらいは脅迫してみるのも……」
「だから、そんなことをしたら、あのロブソンって人に余計に責められちゃうよ。そうなったら…… どうかした?」
なんだろう。何か空気が変わった。この感覚は。
「どうかした、ヒスイ?」
不思議がるアカネを無視して、不意に立ち上がると、部屋の外を眺めてしまう。
今になって背筋が寒くなってしまうと、頬が引きつってしまう。
「……ヒスイ?」
突如動いた私を怪訝に思い、立ち上がるアカネ。振り返る余裕はない。
「……オヤジ様が戦っている?」
……まさか、ね。




