表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁鬼乱舞  作者: ひろゆき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

226/235

 第三部  第五章  5  ――  靄を帯びる  ――

 第二百二十六話目。

 こいつも限界だな。

                     

            5



 首に添えた大槍を強く握り直し、そのまま首を切断するべく振りかざそうとすると、不意にバルタは柄を握る。


「いくら年寄りとはいえ、こうバカにされると、さすがにムカつくもんだね」

「それがお前の限界というものだ。諦めて手を放せ」


 最後の抵抗なのか、バルタは強く握って抗ってくる。

 無理矢理放そうと力を籠めたとき、異変に気づかされる。

 大槍がピクリとも動かない。バルタの力が異様に上がっていた。


「なんのつもりだ?」


 問いかけると、バルタは不穏なことを思いついたのか、口角を吊り上げる。


「落ちぶれたみたいだな」

「何が? 僕は何もしていないよ」

「自分で把握していないとなれば、重症だな」


 まだ言葉の意味を受け取れていないのか、バルタは途方に暮れて、瞬きをしている。

 幻滅して視線を落とすと、バルタの足元には黒い靄が立ち込めようと、薄っすらと渦が生まれようとしていた。

 いずれ、こいつも贋鬼へと堕ちるだろう。

 そうなれば自滅するだけ。こんな奴とはもう戦う必要もないな。

 ワシの視線に気づいたのか、バルタは視線を伏せ、足元の靄を確認した。

 一瞬、得体の知れない靄に表情を曇らせる。

 当然の反応だな。

 このまま恐怖に呑まれるのかと伺っていると、あろうことか、足元の靄に右手を伸ばしてしまう。

 自ら靄に己を侵食させていく。

 細い指先に靄は触れていくと、白い肌を次第に灰色に染めようとする。

 指先が汚れることに呼応し、大槍を握る手の力も強まっていく。勘違いではなく、確実に首から刃を離そうと抵抗してくる。

憎らしいことに、ワシも腕に力が入って大槍を止めようとする。


「不思議なもんだね。靄に触れると力が出てくるみたいだ」

「呆れたものだ。贋鬼の存在すら知らんとは」

「なんだいそれ? そんなこと言われても知らないよ。別に僕は鬼に詳しくなりたいとも思わないからさ」


 手の平をひらひらとさせ、纏わりつく靄の様子を眺めて蔑むけれど、バルタには通用せず笑う。

 だが、靄に対して自我を保てることは、やはりこの鬼は異質な者か。


「そいつは鬼としての恥だぞ」


 忠告したつもりでいると、不意にバルタは大槍から手を放す。


「面白いじゃないか。これのおかげで強くなれるのなら」

「鬼としての誇りは捨てたか」

「強さを求めるのは鬼として当然だろ? そこに方法なんて関係あるのかい?」


 こちらを試すように笑うと、おもむろに立つバルタ。それでも傷は治っておらず、まだ足元が覚束ない。

 靄のせいで、疲弊が重なっているのかもしれない。目は充血し、肩が大きく揺れていた。


「いずれ、あんたを殺すのが楽しみだ」


 バルタはワシを指差すと、ケラケラと笑う。相変わらず腹立たしい顔だ。

 まだそんなことを言うか。


「調子に乗るな」


 依然、減らず口のバルタに対し、再び刃を突いた今度は手を抜かず、バルタの胸めがけて。

 しかし、刃は空を突くだけ。

 突如姿を消していた。地面に数滴の血の痕を残して。

 ふんっ。ここでも挨拶なしに消えたか。

 まったく。人を苛立たせるのは一人前のようだ。

 これではまだバカ娘やあの混血の方が礼儀はあるということか。

 それとも、ワシが舐められているのか。

 治まらない苛立ちが強まるばかり。腹立たしさをごまかそうと、つい大槍を振る下して地面を裂かせた。


 舐められたものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ