第二十四話 再び始まる旅路
これから先の未来に向けて、思考を巡らせる。
「うーん……それじゃ、とりあえずは装飾具探しかな?3つ……あと1つかぁ」
ルシアの言葉に、みんなの視線が一斉に集まる。その中で、大佐が静かに問いかけた。
「2つは分かるのか?」
「うん。1つ目は、東の街アイゼンブルクの鉱山地下。遺物のゴーレムが守ってる。もう1つは、南海岸にある廃塔。そこに棲んでいた妖精が守っていたよ。確か……ネックレスとイヤリングだったはずだよ」
「ネックレスと指輪……もう1つは、イヤリングかティアラかしら?」
悩むような母の言葉に、ルシアは思わず反応をした。
「心当たりあるの!?」
「心当たりはないわ。ただ、そんな言い伝えがあるからね。お嫁に行くときにはネックレスと指輪、イヤリングを付けなさいって。お嫁さんはティアラを付けるでしょ?だから、そうかしら、って思っただけよ」
「そっかぁ」
肩を落とすルシアに近づき、「今日だけでこんなに進んだんでしょ。焦らないの」と母が声をかける。その声に、ルシアがまた顔を上げた。
「そうだね、皆と一緒に国も取り戻さないとだし!」
「前回はどうやって取り返したんだ?」
興味津々、といった様子で身を乗り出した大佐に、「長くなるんだけど……」と、前回の戦いについて説明をする。前回は3年もかかった道のり。
今度は、1秒でも早く取り返す。
1人でも多くの命を、救うために。
「本気でいくよ。ついてきて」
「みんな、同じ気持ちだ。ついていくんじゃない、一緒に走ろう」
大佐の声に、みんなが力強く頷いて答えてくれた。
「私たちも一緒にさせてちょうだい。もとはと言えば、私たちが不甲斐ないばかりに起こったことだもの」
そう言った母の言葉には、強い意志が感じられた。そんなことはない──そう思ったけれど、いくら声をかけたところできっと届かない。私がやらなければ、と思うのときっと同じだ。
「皆で取り戻そう」
前回、取り戻したときの全員が揃った。それに今回は、お母さんまで付いている。
もう、怖いものなんてあるはずがない。
ルシアには、確かに明るい未来が見えていた。
あとはもう、その未来へ飛び込むだけでいい──。
ルシアの表情は、自然と和らぎ、少しだけ吹っ切れたように見えた。それを、みんなが嬉しそうに見つめていることに、ルシアだけが気づいていなかった。
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長時間話し込んでいるうちに、高く昇っていた太陽も沈みかけ、空が赤く染まり始めていた。
そろそろ宿へ戻ろうと、腰を上げようとしたときだった。珍しく、リア先輩が口を開いた。
「あのさ、人が周りにいないし、ちょうどいい機会だから聞きたいんだけど……」
「どうしたの?」
普段のリア先輩らしくないモジモジとした様子に、ルシアは首を傾げた。よく見ると、リア先輩の隣に立っている他のみんなも少しソワソワしている。
「え、みんなどうしたの?」
「いや、あのさ、前大佐に相談したときには、ルシア次第だって言われてたんだけど……」
その言葉で、大佐は内容を察したらしい。「あぁ」という納得の声を漏らした。
「私たちも一緒に動くわけじゃん?もし良かったらでいいんだけど、ミアちゃん?とシルフィくん?私たちも会いたいなぁって、前からみんなで話してたんだけど……ダメかな?」
「そういえば、そうだね」
大佐が見えているので大して気にしていなかったが、リア先輩たちからしてみれば、ルシアたちが会話をしているのにそれが聞こえない状況はかなりの違和感だっただろう。
「んー、私はいいよ。良いよね?ミア」
「私たちはルシアたちが良ければどちらでも」
本当に気にしていない様子の妖精が宙を舞う。見ると、ノエルとシルフィも頷いていて反対ではなさそうだ。
「大丈夫みたいだから、今かけちゃおう!ミア、お願い!」
「了解!任せてっ」
リア先輩たちの上にキラキラとした光が舞い、すうっと吸収されるように光が消えていく。光が消えると、リア先輩たちの視線がミアたちに集中し、その瞳は子供のように輝いていた。
「かっわいい!はじめまして!リアです」
「知ってるわよ、こんにちは」
「わー!本当に話せる!すごい!絵本の妖精みたい!」
きゃっきゃ喜ぶリア先輩の横で、ウィル先輩も頬が上気していて嬉しそうだ。思えば、今までで一番新鮮なリアクションかもしれない。といってもサンプルは大佐しかいないので比較しても仕方がないのだが。
「ごめんね、遅くなって」
「全然!事情が事情だし、私たちも言わなかったからね」
「会えてよかったよ!」と言ったリア先輩の笑顔は弾けんばかりで、本当に嬉しそうだ。思えば、前の時もリア先輩は、ミアと仲良しだった。妖精が元々好きなのかもしれない。
みんなが妖精たちと挨拶する光景を見ると、ルシアたちと同じくらいみんなが妖精たちを大切にしてくれていることがよくわかる。その光景は、とても心温まるものだった。
しばらくの交流のあと、暗くなり始めた部屋に大佐が口を開く。
「よし、そろそろ宿へと戻ろう。暗くなる」
「わ、すみません、遅くなってしまって」
「良い機会だったんだ。気にしなくて良い」
大佐の言葉に、みんなが腰を上げる。ルシアがソファーから立ちあがろうとしたそのとき、白い狼の姿が目に入った。
「ねぇ、フェル、このままじゃ目立つよね?」
ルシアの言葉に、みんなの視線がフェルへと集まった。
「なんでじゃ?」
「なんでもなにも、フェルって結構有名だよ?」
フェンネルはルミナリア王族の守り神として、それなりに有名なのだ。ルシアの言葉にフェルは興味がなさそうな顔をしながらも、尻尾がぶんぶんと揺れている。嬉しいらしい。
「フェル、小さくなれる?」
「当たり前だ」
くるん、と宙返りをした狼は、見慣れた小型犬ほどの大きさの狼へと姿を変えた。
「か、かわいい……」
思わず、といった様子で漏れたリア先輩の声に、フェルがふんっと鼻を鳴らす。その姿でしても可愛いだけだけどね、と思うが口には出さない。この狼は怒ると面倒くさいのだ。
「当たり前じゃ、我はフェルだぞ」
そう言ったフェルは、当然のようにルシアの頭の上へと乗った。そこは、前のフェルが一番気に入っていた定位置で、懐かしい重みに思わず頬が緩んだ。
「そこは変わらないんだね……」
「なんじゃ?前もここだったのか?さすが我じゃ」
「その反応もフェルっぽい」
「フェルっぽい、のではなく、我はフェルじゃ」
「はいはい」
一番変わっていないのは、この狼かもしれない──ルシアは懐かしさを噛み締めながら、今度こそ宿への道を歩き出した。
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