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生まれ変わったら死んでました〜怠惰なゾンビは隠者になりたい〜  作者: かんた
第1章 ゾンビになった日

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あんよがじょうず

これまでのあらすじ


初っぱな女泣かせの罪な男ケロック。享年11歳にしてスケコマシかよ死んでしまえ。もう死んでるけど。




「とりあえず、今日のところはゆっくり休め。ルナリア……母親には上手いこと伝えておくから」



 そう言ってルシルは、正しく処置を施した右手を振り部屋を出ていった。ケロックはその様子を黙って見送る。


 ルシルが提案した今後の流れは、こうだ。



①ゾンビであることは家族に隠しておく。


②『神眼の水晶』というアイテムを使って、ケロックの加護 (おそらくスキルのこと)を確認する。


③ケロック自身の能力を把握する。



 ①に関して言えば、表向きの『生き返った』という特殊な状況と、意思疎通の手段が限られる状態は都合が良い。

 家族が距離を置いてくれる今のうちに②の時間を稼ぎ、③に向けて出来る限りの事をする必要があった。



(【天の声】さん記憶した?)


『スキル使いが荒いですね、そういうシステムですから別にいいんですけど』



 上記の説明を受けたケロックの脳は、死人であるがゆえに血の巡りが悪い。

 なので、とっても便利なスキル【天の声】に覚えてもらうようだ。後でゆっくり確認するらしい。



(多分今はルシルさんが僕の家族とやらに上手く説明してくれてるだろうから、僕らはその間どうすればいいと思う?)


『とりあえず歩行練習でもやってみたらどうです? どのくらい動けるか把握しとくのもお約束のうちに入っていたでしょう』


(そうだね、それぐらいできないと色々と迷惑かけそうだし)



 そうと決まれば有言実行。ケロックはえっちらおっちらと椅子から降りて、両足で床の感触を確認した後、恐る恐る椅子から手を離す。

 少しふらつきはあるが、彼は2本の足で間違いなく直立できたようだ。



(どう?)


『この調子でしたら歩行自体に問題はなさそうですね』


(よっしゃ歩こう)



 そう意気込んで右足を上げ……ようとして体が傾いたので、あわててその足を前に出した。

 ずだん! と音を立てて床を踏む。



(お、おおおおおおお!?)


『この一歩は小さな一歩だが、ゾンビにとっては大きな進歩である』



 1人と1スキルの静かな盛り上がりののち、彼はもう一歩踏み出そうと体勢を立て直すが、一向に前に進まない。



『前に体重をかけるんですよ』


(あっ、なるほどね)



 言われた通りに体を前に傾けて・・・・・







 びったーーーーーーん!!!!






 ケロックは顔面ごと床に叩きつけられた。



(痛っ! ……くはない)


『まだ痛覚はないようですね。というより、左足を上げましたか?』


(あ、忘れてた)



 踏み出す足がなければ転ぶのは必然である。どうやらまだまだ練習が必要なようだ。

 ケロックが顔を上げると、鼻から何かか流れていくのを感じる。



(もしかして鼻血? 僕死んでるけど、これって止まるの?)


『称号【フレッシュイモータル】の効果により自己再生が行われるはずです。たぶん』


(たぶんて。そもそも痛覚とか他の感覚スキルってどうやったら目覚めるの?)


『自力で発生したスキルとは、持ち主の“能力” “技術” “想い” “願い”の念が形になり、黙示的に分類されたものです。今お持ちの感覚スキルが目覚めたのも、何かしらのきっかけがあったのでは?』


(きっかけ、ね)



 脳内でそう呟きながら、視覚・聴覚・触覚・平衡感覚・深部感覚、5つの感覚スキルを手に入れたときのことを、ケロックは思い返していた。


 最初の感覚がわからないので、知りたいと思ったら【触覚】【平衡感覚】【深部感覚】を得た。

 周りの情報が欲しいと思ったら【視覚】【聴覚】を得た。


 ならば・・・・・



(味覚が戻ったらうどんが食べたい)


『ただの願望じゃないですか』


(今まではその願望で感覚が戻ったんだけど、うーん、戻んないなぁ)


『急ぐ必要はないので気長に頑張りましょう』


(そうだね、正直味覚とか後回しでいいし)


 


 積極性に欠けるケロックと【天の声】の会話。それでいいのか主人公と思わなくもないが、確かに急ぐ理由はない。

 そもそも彼を取り巻く環境の情報すら、全く足りていないのだから。


 誰にとっても特殊な状況。どんな反応が来て、何が迫っているのかもわかりはしない。




「ちょっとケロちゃん何してるの!?」





 なので例に漏れず、新たな騒動の火種は金切り声をあげるのだった。



『心眼の水晶』

 神官の儀式によって、対象の加護などを覗き見ることができる道具。

 条件によって情報量が変わる。


『加護』

 スキルともいう。特定のアイテムで見ることができる名前のついた能力。

 神様からの贈り物とされているが、詳細は不明。


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