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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第2章:Imperial Codex  太古の掟と宙ノ僕
41/43

第九節 会敵

敵に出会う前の手続きが、

こんなに説明が面倒だとはおもわなんだ…

『グレンドア級航宙母艦40隻

 サルメール級哨戒駆逐艦80隻

 ボドルノ級補給輸送艦4隻ねぇ…

 ふむ…向こう的常識としては妥当な艦隊数ですか』


そうアルフォーレシードは自分の探知機に

引っかかった敵影を分析しては、うなり声を上げる。


「つか…数まで分かるのな…

 位置も数もバレてるって俺達の常識的な艦隊戦じゃ

 在り得ん話なんだが…」


そんなシードの戦力解説に閉口するクライド。

電波探知で探したとして、相手までは1000光秒の距離だ。

往復2000光秒、分にして、33分20秒。

それも電波吸収材を使っているので反射波が拡散し

敵影がおぼつかなくなるというのが普通である。

光学探知でも、太陽からの弱反射光を観察しての

33分前の映像を捕らえれるかどうか?であり

捕らえたとしても、それは33分前の話であって

「今」何処に居るかは、また、33分後に分かり、

しかし、その33分後には、相手は更に別の場所に居るのだ。

そんな光の速度で探知すれば不確定になる位置の情報が、

リアルタイムで分かるなど、背筋が凍る様な話だった。

これが古代帝国の力という事なのか…とクライドは唸る。


クライド的な常識では、

20光秒付近でようやく準戦闘体制に入れて、

10~5光秒で戦闘体制、まともな射程距離を確保するには

5光秒を切らなければ相手を攻撃するのもままならない…である。

しかし、射程距離に入っても、相手の船を捕捉するのは至難。

敵の位置情報は光速の探知系でも往復で10秒前の事であり

目視できた情報の後に、相手が回避運動に入っていれば

光学兵器を使っても、宙を切るだけ。

光学兵器を使ってさえ5光秒も間があれば

「予測撃ち」をしなければならないのだ。


なので誘導ミサイル…誘導式移動型γ線光子弾発射装置

いわゆる『光子魚雷』を相手移動の予測宙域に発射させて

長い時間をかけて相手に近づき、1~0.1光秒までの

ほぼ回避不能な距離に接近した時にγ線光子弾を発射する…

という方法論での攻撃が堅実と言えば堅実なのだが…

それでも、そんな攻撃で相手に当たるか?と言われれば

100発撃って、1発当たれば大戦果という世界である。


γ線を使う攻撃手段以外にも、弾頭に核爆弾や反物質爆弾を使って

範囲爆発を狙う方法もあるが、秒速600km/s

マッハ換算でマッハ1764でミサイルを飛ばしても

1光秒も距離があれば500秒とか

十分迎撃できるだけの時間を相手に与え、

対宙光学兵器や荷電粒子兵器等でミサイル兵器は迎撃されてしまう。

足の遅い範囲爆発系のミサイルは、

どうにも宇宙では破壊能力に欠けていた。


そんな感じで、誘導ミサイル射撃戦を始めて互いを牽制し続けると、

やがては弾切れで、敵艦を撃沈する前に

先に光子魚雷や爆弾型ミサイルの方が無くなるというのが

よくあるパターンで…。

そうして、弾切れになった後は、1光秒付近の超近接まで接近して、

近接戦闘の光学兵器の撃ち合いか、それが出来ないのならば戦線離脱しかない。

破壊係数が非力な光学兵器や荷電粒子砲で相手を破壊するには

互いが避けられない距離で、戦艦などの装甲艦が殴り合うしかないのだ。

その空しい光学系荷電粒子系の撃ち合いの光景を、

ボクシングの姿に見立てて『打撃戦』と呼ぶそうだが…。


1光秒も離れていては、レーザーですら拡散面積が半径15m

直系30mの円に広がるというのだから、

どれだけ発射時には微小点でのスポットビームで

金属を焼き切れる破壊密度があろうとも、

1光秒先では拡散によるレーザーパワー密度の低下で、

金属装甲を壊す事は不可能になる。

そこら辺はレーザーや荷電粒子の絞り込みの技術

ニューメリカルアパーチャー(NA数)の改善で

拡散面積の絞り込みが出来るのだが、それでも限度があった。


結果として、どんどん0.5光秒とか、0.1光秒とか

目と鼻の先まで近付いて、相手の破壊を試みる流れになる。


そして相対速度が速すぎるので、そのまま互いに通り過ぎて

長距離をUターンしての仕切り直しだ。


宇宙艦隊戦とは、そういう泥臭い殴り合いであった。



その為『無人航宙艇』という光子魚雷を運んでいく移動船艇の運用

宙母戦略が、地味だが主力の艦隊攻撃であった。

これの特徴は「無人」であるから

人間が乗っている艦艇の様な、加速限界が存在しない事である。

人間は、B級人類の肉体頑強さの揺らぎに程度があるにしても

横Gが12Gもかかれば死んでしまう生き物である。

だが、マッハ1764の巡航速度の運動物体で、

敵弾回避のために横に瞬時にマッハ10~20を出そうとすれば

12Gなど軽く越える。

計算上、10秒でマッハ10の横回避速度を出そうとすれば

34.7Gほどが必要になる。

(C級人類、要するに地球人は10Gが限界と言われる)

つまり、有人航宙艇で戦おうものなら

パイロットが自分の機体の動きで勝手に御陀仏するのである。

宇宙航行用の推進器で回避運動をするというのはそういう事であり、

むしろ加速限界を作る人間が邪魔であった。


であるから、マッハ10~1764級の運動をする機動兵器は

人工知能を搭載した無人艦として運用されるのであった。

そうやって、全てを無人に出来るのなら、

艦隊の全てを無人にしたいのが、艦隊運用側の本音であった。

加速限界が存在する以上、艦隊運動は搭乗員の限界が

運動の限界になってしまう。

攻撃を回避する上で、高速回避は必須の運動であるのに

それを阻むのが人間であるなら、有人艦の意義とは何か?

それが悩ましい問題になる。

ならば前線での戦闘としては無人化は当然の要望にであった。

しかし無人攻撃艇の管制官や作戦の為の現地指揮官は

どうしても高度な現場判断が必要なわけで、

完全な無人艦隊で戦うわけにもいかない。

そこら辺の折り合いが有人艦と無人戦闘艇の

混成艦隊という形になるのだった。


ともあれ、対宙迎撃と索敵に特化した哨戒駆逐艦と

航宙母による無人航宙艇での遠距離攻撃は、

宇宙艦隊戦の編成における定石の編成であり、

その遠距離宙母攻撃が凌がれた後に、

戦艦と巡洋艦でのミサイル戦、ミサイルを撃ち尽くした後には、

ゼロ距離での光学兵器の撃ち合いという

宇宙艦隊戦の「常識的流れ」というモノがあった。


それは所詮、クライドが知っている程度の

常識的流れでしかなかったが、広大な宇宙で戦う以上

距離の概念が惑星の上で戦うのとはまるで違うのである。

だから、宇宙艦隊戦というモノは

何処まで行ってもそんなモノなのだろうと、

その時まではクライドは思い込んでいたのだった。




『無人航宙艇がグレンドノア級の1隻につき18艇ですか…

 総数720艇…はー、めんどくさいですなぁ…』


とシードが戦力分析を物凄く気怠げにしている時…


『ねぇ…無人って事は…

 これ、私が倒しちゃっても良いんじゃない?』


と、プリメーラが言い出した。


「は?」


そう言い出した事に、ポカンと口をあけるクライド。


『だって、よくわかんないけど、

 私達のせいで、遠い親戚の子にも迷惑かけてるし、

 クライドの出身国も、酷い目に合わせたんでしょう?

 だったら、私、何かしないといけないと思うの…』


と、シードの言葉を鑑み、プリメーラは申し訳ない思いで

そう言い出したのだった。


「いや、それは…なんというか…

 状況の流れ的にやむを得ず、そうなったというか…

 メーラに責任があるわけじゃないと思うけど…」


ある程度の真実を知るが故に、直接、真相を口には出来なかったが

プリメーラの言葉を尊重したとしても

原因を深く探り出せばキリが無いという奴であり、

そうクライドは言葉を返す。


自国が滅亡した直接の原因は

ハルト共和国がクリークス帝国の200年の軍事拡張に対して

どこか楽観的だったのと、平和ボケして、戦争に真摯でなかった事であった。

だから技術開発に関しても遅れを取っていたわけで、

それが致命的な敗因である。

これはプリメーラの言うような遠因を口にしても仕方ない話なのだ。


自分の母星も守れない様な政治体制が、国家を名乗るな!

という暗黙の宇宙の摂理を思えば、怠慢こそが母国を火の海に沈めると言え

どれだけ平和を謳歌していようが、有事に際しての用意と

あらゆる未来の可能性の模索は、国家としてするのが当然なのである。

それを思って苦い気持ちになるクライド。

自分達の考え方が甘かったから国が滅んだ。

簡単に言えば、そういう事だ。

対して、クリークス帝国の国是は、六色帝国の脅威からのものであるが

逆に言えば、それだけ国家維持を重視していたわけで

手段が強引すぎたとしても、自国家存続の為に、

ハルト共和国よりは努力を惜しまなかった…とも言える。

狂信国家になって、軍事主義に傾倒した面があったとしても…である。

その背反性は、どう考えれば良いのだろう?


『でも、何もしないってのは、私は我慢できないよ!

 クライドの記憶を見たモノ…

 みんな必死に生きてた…あの光景…

 あの光景は、私の今の気持ちに深く繋がってるんだよ‥

 それに、クライドは人殺しをして欲しくないって言ってたけど

 でも、無人機なら人じゃないんでしょ?

 だったら、それを私が倒して、圧倒的な力の差を見せれば

 相手を殺さずして、勝つって出来ないのかな?』


と、プリメーラはクライドの言葉に食い下がった。


「いや、でも、プリメーラが戦うってどうやって?」


そこでクライドは根本的な疑問を口にしてみる。


『うーん、儀礼を問わないのなら、

 まぁそれが一番、良いかもしれませんねぇ…

 姫様を戦わせるというのは、ちょっと臣下的にはどうなのか?

 というのもありますが、姫様の鬱憤の問題もありますし…

 姫様なら、720艇の無人艦なんか、簡単に壊せるでしょうし。

 クライド艦長にも、姫の体が、

 元々は、どういうイメージで作り出されたのかを見て貰う

 丁度の機会にも思えますし、どうでしょう?

 汎銀河帝国の皇帝、それが銀河上、最強である様にしようとした

 構想というのを…』


と、そこでシードが合いの手を入れてくる。


「おい、ちょっと、お前までそんな事言うの!?

 いやそれより、プリメーラが戦うって、だからどうやって!?」


シードの賛成の言葉も絶句したが、

それよりも、一番重要な答えを聞いていない。


『どうやってって…姫の体は、光ですよ…

 直接宇宙空間に出て、叩き斬るだけですが…』


そこでシードは、よく分からない答えを返してきたのだった。





そこから話が、どんどん大事になっていった。


『いやー、しかしですねぇ…アイツ等の艦隊の巡航速度って

 300km/sぐらいしか出ないんですよねぇ…

 計算したら、こっちに来るまでに約12日も待機ですよ…

 ちょっと、宣戦布告したのに、汎銀河帝国の船が

 12日も待ちぼうけとか、かなり間抜けですんで…

 こっちから出迎えに行きましょうか…

 光速の2%の速度出して、お出迎え艦隊を出しますんで

 14時間後ぐらいに、会敵といきましょう…』


とかシードが言い出して、自分の船体の上にあった

何らかの構造物を同時に切り離しだしたのだった。

それがスクリーン上に映る。


「ほえ?」


シードの上に乗っていた20kmほどの構造物が1隻切り離され、

それが動き始めている。


挿絵(By みてみん)


『ガルゴナーダ級旧白色皇帝旗艦ペイオース・フェルミオンを

 出しましょう…

 今、動いてるあれです…

 いやー、こんな凄い船でお出迎えなんて

 相手は、滅茶苦茶、光栄だなって、私も思うんですけどね…

 でも、ちょっとプリメーラ様の力を、私から中継するには

 ペイオース・フェルミオンぐらいの船じゃないと無理なんで

 ここは大盤振舞で…』


挿絵(By みてみん)


と、20km級の戦艦を事も無げに指し示すシード。


「あんな巨大な船で、迎撃しに行くの!?」


スクリーンに映る巨躯を見て、呆然とするクライド。


『いやー、本当はこんな程度の艦隊、

 ブーミル級汎用巡航艦が3隻もあれば、直ぐに殲滅できるんですけど…

 あ、これも予備の為に、出しますんで…』


と、シードは己の船体の出っ張っている部分から

ゲートを開けて、3隻の、戦艦?とも何ともいえない

不思議な形の船も出して来た。

それはおよそ500m級の戦闘艦であった。


挿絵(By みてみん)


「え?なにこれ?」


とクライドは目の前のスクリーンに映る船を見て声を上げる。


挿絵(By みてみん)


シードの上で集結し始める4隻の宇宙戦闘艦。

中央の巨大な船はともかく、その周辺を固める3隻は

なんというか…無機的なフォルムの上に生物性を思わせる

奇妙な曲線が乗っており、おおよそ、戦艦とは思えない姿であった。


なにより、印象が「悪い奴等が使いそうな形」であったので

中央の戦艦らしいスタイリッシュな船との落差が激しいとも思えた。


『ま、わたしゃ機動要塞戦艦ですから…

 私の中に搭載している艦載艦を使って戦うというのが

 私の基本的なスタイルなんでねぇ…

 ブーミル級なんて安い船なら

 無人戦艦として2000隻ほど常時抱えてますから…

 幾らでも出せますけど…

 ま、あんな雑魚帝国なら、こいつら3隻で十分でしょうかね…』


とか言って笑うシード。


「は!? 常時、こんなの2000隻も抱えてるの!?」


シードの言葉にまた口を開けるクライド。


『クライド艦長、まさか、この巨躯で

 私自身が動き回って戦うとでも思ってたんですかっ!?

 全長400kmって普通に小惑星級の天体ですよ!?

 それが亜光速で動き回って戦うとか在り得ないでしょ!?』


「いや、まぁ、それはそうだが…」


『つまり常識的には、私は基地的な要塞なんですよ。

 だったら戦闘スタイルは、

 敵地に橋頭堡要塞としてゲートアウトして布陣して、

 内蔵している艦載艦を出撃させて戦うってのが

 考えられる運用法でしょう?』


と胸をはるシード。


「いやいや、小惑星級の要塞が自分でスターゲート作って

 自分でゲートインして、ゲートアウトして

 自分で要塞としての橋頭堡を作るとか、聞いた事ねーから!!

 そんな運用を言われても、俺、聞いた事無いから!!」


そんなシードの言葉に、全力で頭を振るクライド。


『いやー、実はそうなんですよーー

 コンセプトデザインとしては、

 そういう用兵構想で、私、設計されたんですけど…

 生憎、1000年前の戦いはガイアポリスでの本土決戦だったんで、

 あの時の戦いは、帝都防衛用の親衛艦隊が主戦力で戦ったので、

 私は艦隊戦の戦闘には参加せずに

 見てただけなんですよねぇ…皇帝旗艦らしく…

 ま、エクスターナルの艦隊と戦った時だけは、

 主砲撃ちましたけど、主砲撃って追っ払っただけに近いんで

 戦争処女といえば、そうなんですよねぇ…

 だから、私のコンセプトデザインを用兵してみたいなーという

 積年の思いが…』


「ちょっと、待て!

 お前さん、実戦、初めてなの!?」


そこでトンデモ無い話を聞いて焦るクライド。


『初陣としては初めてじゃないですけど…

 私の用兵構想を、そのまま使った事は一度も無いんで

 私自身も、私が構想通りに運用されたらどうなるんだろう?

 って興味津々なんですよ…

 本邦初公開になりますかねぇ…

 汎銀河帝国の最高戦略兵器って、どんだけ強いのか?ってのは…』


と、あっけらかんというシード。


「力加減もわかってねぇ、自称銀河最強!!」


という事が分かってクライドは頭を抱えた。


『大丈夫です、大丈夫。

 机上の計算の上では、私よりも実戦力で有利に戦えるのは、

 封印を解除した色帝の機動天体要塞だけなんで、

 あれ以外で、負ける事なんか無いですよー

 まともに撃ち合えば、機動天体要塞だけには撃ち負けますけど

 あいつ、足が遅すぎるんで、無視してスターゲートジャンプして

 本土に直接乗り込めば、色帝の首都ぐらい火の海に沈めれますんで

 そういう用兵構想では、銀河最強!

 計算上はそうなってます!!』


とか、意味不明の事を言い出しては自称最強をアピールするポンコツ。


「机上の空論って言葉、知ってる!?」


『知りません』


そんな空しい言葉のデットボールが2人の間で続いた。





『あー、艦長、姫様の事が不安なんで、

 このペイオース・フェルミオンで一緒についていって貰えますか?』


と、言葉のデットボールを続けながらも、

そう切り出して20km級の巨大な船を指すシード。


「えー?

 そりゃ、俺の嫁を戦わせるとか、気分的に嫌なんで

 行けるのなら行くけどさ…

 なんか、こんな巨大な船で出撃するって、違和感あるなぁ…」


シードの提案に渋い顔になるクライド。

400kmの小惑星の様な戦艦の艦長に任命されたのもアレだが

これから、20km級の巨大戦艦の艦長をやるというのも

十分、自分にとっては能力超過の要求であった。

それにクライドは肩を上げる。


『まー、しゃーない…

 私以外で、姫様の力を中継できる能力がある船は

 私の手持ちじゃ、この旧白色皇帝旗艦級しかないですからねぇ…

 色帝機動6艦なら、この旧白色皇帝旗艦より能力は上ですけど…

 アレは色帝側の皇帝の奥の手的な存在ですからナァ…

 流石に、あんなのを護衛艦にする事は出来ないんで

 ここら辺が妥協点かと…』


と、また、よく分からない事を口にするシード。


「んー、よく分からないけど、この船って

 メーラの力を遠距離で使う為のブースターみたいなモノって感じか?

 へー、そういう風な使い方が出来るんだな…」


クライドはシードの言葉の全てをキャッチする事は出来なかったが

少なくとも、その20km級の船が、

プリメーラの力を遠くでも再現する為のモノ

というニュアンスはなんとなく理解した。


『あーー、ちょっと入船に対しての手続きなんですけど

 なんていうか…クライド艦長には、概念的に死んで貰いますね…』


とか意味不明な事を突然シードが言った後、

クライドの目の前に綺麗な人間大の結晶が現れ、

それにクライドの体は叩き込まれた。


『概念的に死んで貰う!?』


とか、訳の分からない事を言われたのと同時に

人間大の結晶に叩きつけれれたクライドは、

その瞬間「概念的に死んだ」


ふとクライドは今の自分のボヤンとした体を見て

と同時に自分の背後にある、

自分の体が結晶の中に閉じ込められている

自分の肉体が硬直している姿を見つける。


『え!?何これ!?』


自分が光の様なフワフワしたモノになっており

自分の体が、結晶のようなモノに固められて分離している様に

クライドはポカンと口を開けた。


『ようこそ!A級人類以上の概念世界へ!

 ま、B級人類でもやろうと思えばできますからね…

 複素結晶への存在転写は…

 今、クライド艦長は、プリメーラ様と似たような

 光の体に変換されました!』


とシードは言う。


『は?光の体に変換された?』


そんなシードの言葉に混乱するクライド。


『厳密には、プリメーラ姫様の、高階複素光子存在とは違って

 制限付きの二階偏微分複素光子の体が、

 今のクライド艦長なんですけれど…

 光体化したという点では、まぁ同じですね…

 これがA級人類以上の人類が見える世界、

 肉質の原子を一端、捨てる世界です』


と、相変わらずよく分からない解説をするシード。


『肉質の原子を捨てる世界?』


その奇妙な言葉にクライドは光体の首を傾げた。


『亜光速運動の世界に入る為の重要な手続きです。

 次元融解という言い回しをする人も居ますね…

 ま、要するに、体を構成している原子情報を、

 一端、複素結晶に全情報転写して、原子分子情報を焼き付けて

 複素結晶の脳を作って、そっちに意識の存在を移動させるんですよ…

 もっと大雑把に言えば、光の体になってしまう…ぐらいでいいですか…』


と、今のクライドの状態をシードは解説した。


『いや、良く分からんが…

 なんか、メーラの世界を体感する訓練のあれに近いな…

 視覚と聴覚しか無い様な世界…

 とはいっても、ボンヤリとは触覚もあるが…』


と自分の光の様なボンヤリとした体を確認してみるクライド。


『亜光速運動をする物体に搭乗する為の必要手続きです。

 エネルギーをぶち込めば、物体は亜光速運動できますが

 人間の方がその加速についていけません…

 10~20Gも加速で出すと肉体の方が応力で壊れます。

 だから、肉体を一端、捨てるのです。

 原子分子とか、加速のGで壊れてしまう肉質というのを亜光速運動中は捨てて、

 肉体の原子配置情報は、複素結晶の記録の中に情報として固めてしまって

 思考する能力というのを、加速Gに耐えれる複素結晶に移すのです。

 そういう状態の事を、光子の体、と概念的に理解して下さい』


『亜光速運動をする為に、自分の体を捨てて

 存在を光子に変換するだって?

 なんだその逆転的な発想は!?』


『プリメーラ姫様の、高階複素光子存在というのは

 A級人類以上の存在…

 肉体を、原子の世界と光子の世界で、複素結晶を媒介に、

 行ったり来たりする世界の住人には

 そこまで極端に珍しい発想でも現象でもないんですよ…

 ただ、常時光子体でいるっていうのと、

 その状態で世界干渉出来るだけの、

 高密度光子を作り出す事が出来るという事…

 それは、ちょっと、彼等には絶対に出来ないんですけれど…

 この光子化してる状態では、省エネルギーである事が

 とても重要な事なので…』


と、シードはクライドの理解が出来ない話も含めて

マシンガントークを続けた。


『別に光子変換はA級人類以上の専売特許ではなく

 複素結晶の装置を用意すれば、B級人類のクライド艦長でも

 成れるモノではあるんですが…

 彼等は、体の中に複素結晶を内蔵している肉体存在と複素結晶存在の

 2重存在ですから、自発的に自分の体を光子体に変換できるのです。

 それがA級人類以上って人々なんですよ。

 それも全ては、亜光速運動の世界で、存在で居る為の手段なのですね』


とシードは解説した。


『亜光速世界で存在で居る為の手段…』


シードの言葉にクライドは今の自分の体のフワフワを見つめる。


『つまり光に成ってしまえば、亜光速運動で起きる

 人間が耐える事の出来ないGの発生でも

 それを無視する事が出来るって事か…

 そりゃまぁ、質量がないんだから…そうなるか…』


と、今の逆転の発想の状態に舌を巻いた。

なるほど、この様に実践されてみれば、分からないでもない話である。


『まぁ、これで船への搭乗手続きは終わりです…

 あれは光速の10%までを出せる船ですからね…

 雷撃艦の様な、更に上の亜光速出すわけじゃないですけど

 20km級で亜光速10%は、相当のスペックなので

 そこはそれ、流石は旧白色皇帝旗艦って所で…。

 クリークス帝国の様な雑魚に、光速の10%も出して

 会敵してやるのも面倒なんで、2%ぐらいの巡航で

 14時間ぐらいでランデブーといきましょう…

 それでは、艦長の光子体はフィトンドライブで

 艦長の原子の肉体を閉じ込めてる封印複素結晶は

 トランスポートでと…あっちの艦長席に移りますねーー』


とシードが言った後に、クライドはシードの船体の上で

発進準備にかかっている、ペイオース・フェルミオンの

『概念空間艦長席』に移動した。

その艦長席に、光子の体のまま座るクライド。

光の概念部屋”艦長席”がある所で、そこに座るという状況は

何が何だかよく分からない気分だった。


そしてプリメーラとクライドを乗せたその4隻は、

敵に向けて発進の最終準備を行い始める。


そこで、ブーミル級汎用巡航艦とシードが呼んだ船は

その正面に、大量の氷を発進前に纏い始めたのであった。


挿絵(By みてみん)


『概念空間艦長席』から見えるスクリーンで

僚艦のそれが正面に氷を張っているのを見て首を傾げるクライド。


『あれは何なんだ?』


とシードに尋ねる。


『ああ、あれは亜光速に突入した時に

 真空の塵から船体を護る為の、氷バリアですね…

 亜光速を出し始めると、

 宇宙真空内にある微小粒子との衝突も馬鹿にならなくなるんで

 氷を纏って、氷バリアで亜光速微粒子から船体を守るんですよ…

 ま、それは、巡航中のシールドですけどね…

 あれが戦時空間になると、水流体バリアに変わって

 敵の質量攻撃を絡め取る為の質量系バリアになるんですよ…

 ウォーターシールドって所ですか…』


とシードは解説した。


『へー、水をバリアにねぇ…

 でも、この船にはそんなの無いじゃないか…』


と、自分が乗っている船には、そういう氷バリアが無い事を指摘する。


『いやー20km級になると、守る面積が馬鹿にならないんで

 もう装甲表面に水を流してウォーターヒートポンプにしてるんですよ。

 分かり難いですけど、装甲表面を間近で見たら、

 水が循環してるのが見えますよ。

 この船の第1装甲面は、有機細胞的な、無機有機混成型装甲って奴で

 そこを血管の様に、水が循環してますから…

 ブーミル級みたいに、使い捨てにするのを前提にしてる安い汎用艦とかは、

 あんな感じで雑に氷バリアとかにするんですけど

 大事な船は、自己再生機能を与えられているんで

 生命的な装甲機構で船体の全てが作られているんですよね…』


『へーーー、装甲が生命体的な構造してんだ、これ…』


『まぁ無機有機混合型なんで、生命体と言うには

 些か、齟齬が大きな気もしますが…

 高級艦には自己再生機能というシステムが積極的に組み込まれるんで

 生体戦艦といえば、そうなのかもしれませんね…』


『ほーーーーー』


そんなシードの色帝規模の戦艦構造の考え方の指向性を聞いて

素直に感心するクライド。

戦艦が生命的になるというのは些か新鮮であった。


と同時に、よくよく考えれば、宇宙で太陽風やら放射線やら

スペースデブリやらに衝突されて、船体を壊されていくのだから

船体装甲に何らかの自己再生機能を組み込むのは

船に具備すべき条件の様にも思えてきたのだが…。


『さて、出発しますか…

 とは言っても、現地まで14時間ですからね…

 艦長は12時間ほど眠って貰いますか…

 会敵1時間前くらいに、起こしてあげますよ…』


と言ってくるシード。


『艦隊戦は、俺も戦争の最後に参加させて貰ったけど

 現地に行くまでに、1ヶ月航行とか当たり前だったしな…

 それが会敵するまでに1眠りでつけるとか…

 色帝級の戦艦ってこういう世界でやってんのか…

 そりゃ…象と蟻だな…』


そんなシードのコメントに、

クライドは自分の知っていた現実と照らし合わせて苦笑し

促されるがままに、プリメーラと横になって

睡眠の様な何かを始めたのであった。


そして、迎撃艦隊は、アルフォーレシードを太陽に置いたまま出撃した。


挿絵(By みてみん)




それと同じ頃…クリークス艦隊は当初の予定で考えていた

光速の0.1%の巡航速度、300km/sで航行し

およそ12日の巡航の後に、敵戦艦と思われる何かと会敵する様

核融合発電電磁カタパルト艦と小型核融合炉搭載の磁力ゲタに

戦闘艦船をドッキングさせては、順次、磁力反発加速で射出していた。


挿絵(By みてみん)


超伝導電磁石磁力ゲタで初速を与えてから、

その後、メインリアクターに火を入れて最終加速を行う。

それで、ようやく巡航速度300km/sの速度を

帰りの燃料を確保しながら実現できるのだった。


挿絵(By みてみん)


そんな涙ぐましい努力で、亜光速の2%も出せる相手に

地方豪族は立ち向かっていたのであった。




互いの相対速度はこれで光速の2.1%

2天文単位、1000光秒の距離を互いに亜光速で巡航する事で

約14時間で会敵の所が、13時間ぐらいに縮む事になった。

とは言っても、所詮5万秒か4万7千620秒かの

高々2380秒程度の短縮でしかなかったのだが…。


ともあれ互いの予想会敵地点は1000/2.1×2≒952

952光秒、太陽中心から28560万kmの地点で

ランデブーする事が予想された。

故に、およそ12時間の後にシードはクライドを

眠りの様な何かから起こしたのであった。


『艦長は本当の亜光速戦は初めてでしょうから

 心の準備的に、会敵1時間前ぐらいで起床して貰いました』


『この体だと、眠っているという感覚さえ曖昧だな…

 ぷつっと意識が途切れて、意識が戻ったら12時間後みたいな

 プリメーラとの融合で見た時の、あの感覚か…

 怖いな…この光子の体って…』


『ま、その体で夢を見たって仕方ないですしね…

 これからの予定としては後1時間後の、総計経過13時間、

 13×3600×0.02=936光秒の地点で

 こちらは静止しようと考えています。

 計算上では、相手とのその時の相対距離は

 相手の到達距離13×3600×0.001=46.8光秒の

 1000-936-46.8=15.2光秒になりますか。

 そんな15光秒とか、雷撃戦ができる距離なんてねぇ…

 そうなる前のこの1時間内に

 減速と同時に、無人艦を射出してくるでしょうね…

 向こうは…

 初速300km/sの母艦から超加速させて300km/sの

 合成速度600km/s、光速の0.2%ぐらいで

 総数720艇の無人艦がやってきますかね…』


と、これからの相手の出方を予想するシード。


挿絵(By みてみん)


それは大当たりであった。

光学観測系や電波観測系の観測で、敵側から

計算上、何か光速の2%で突撃して来ている物体が在り、

それが確認できただけで宙母艦隊の司令部はパニックに陥って居た。

全ての無人攻撃艇を発進させた後には

減速運動に入るクリークス帝国の艦隊。


静止を目指す為に1時間以上の減速逆加速が必要な状況では

最早、止まる行動だけで艦隊全てが狂乱状態であった。

1時間7~8Gの逆加速を続けて、

ようやく50km/sまで減速できる計算になる。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


耐Gスーツで体にかかるGを低減するとはいえ

1時間も続く減速Gに耐えるのは、楽な話ではない。

その間に減速込みの慣性運動で移動する距離は2光秒。


結果として13時間後の会敵において

敵宙母艦隊は、相対距離18.8光秒で秒速50km/sで

まだ減速しながら巡航中。

宙母艦から射出された無人機達の相対距離は13.6光秒で

秒速600km/sで接近中、という運動状況になり

クライド達の迎撃艦隊は、太陽から936光秒の位置で

静止して迎え撃つ、という形になった。


『ふーむ、14光秒とか雷撃戦が出来る距離まで

 近付いても、特に何も怖くないというのが

 地方豪族相手に遊んでいる所以ですかねぇ…

 亜光速戦するんなら、最低でも100光秒は欲しいんですが…』


と、意味不明にケラケラと笑うシード。


『つか、どうすんだよ、これから…

 こんな宇宙の何も無い所で止まってさ…』


笑っているシードにクライドはそう言って、

どう迎撃するのかを尋ねた。


『いやぁ、姫様にこんな事して貰うのは

 臣下としては恥ずかしいんですけれど…

 でも姫様の方が乗り気ですしねぇ…

 というわけで、姫様、お願いします』


とシードはまた意味不明の事を言うのだった。


『うん、なんだかやる気沸いてきた!』


とプリメーラが握り拳を両手で作ると、

プリメーラの衣装が、突然、何か青いドレスのような

鎧のような、何とも言えない服装に替わる。


挿絵(By みてみん)


『え?なにその格好!?』


プリメーラの突然の衣装変えに驚くクライド。


『ああ、それは”戦闘儀礼服”って言いましてね…

 雷撃戦…というか、S級人類達が1対1で決闘するときの

 勝負服みたいなモノで、

 決闘時の気分を高揚させる為の服装です』


『は?1対1で決闘!?』


とかシードが訳の分からない事をクライドに説明している時

プリメーラはその姿で宇宙に飛び出す。


そして光速で移動し、13.6秒後に

デービッツ無人戦闘艇の一機の上に立ち


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


50m近くある無人戦闘艇に対して

自分の腕に纏わせた光子刃の手套で

無人機を真っ二つに斬り裂いたのだった。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


『てやぁぁぁ!』


と、気の抜けた、かけ声と共に…



いやー、色々と、コメントがあるハズなんですが

疲れたんで、文章、荒いまんまですけど、これで…


自分で作ってて、ツッコミ所の嵐ってのもアレですが

それよりも、デザインの全てに妥協している事に

段々、イラついてきた…


加速計算とか、ガチで計算しだしたし…


とは言っても、亜光速に入ってるんで

特殊相対性理論で書き直された運動方程式で

解く事考えないと、マズイんだよなぁ…

ニュートン力学での、古典解析で計算してたら…



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