第四節 勅命
うーん、という話を裏でしてました的な
隠し設定でも良かったんですが、
まぁ書いて見るのも、一興かと
本編だし
「ニア・ラルフ連邦帝国少将、只今、参内いたしました…」
華帝国思考天体フェルクメニストの特別皇帝執務室に入室した
黒髪の青年は、その中央に座っていた幼き皇帝陛下
プレティナ・ミルシューネに敬礼を以て挨拶した。
とにかく今回の帰還命令は異常だった。
緊急にフェルクメニストに帰還せよという命令が来て
彼の座乗艦のフリッヒル・ハルベルナは
自動でフェルクメニストに回送する事にされ
妻と二人、特別亜光速移動船の乗り継ぎをしまくりの
インペリアルゲートもバイパスゲートも
使用エネルギーの採算度外視に近いレベルで
ジャンプの速度を上げまくりの
皇帝特別予算から緊急帰還の経費が出されたので
滅茶苦茶な金というかエネルギーの使用で、
短時間でフェルクメニストに戻されたのである。
それだけでも異常だったのだが、フェルクメニストに入るや
内部での入星手続きも飛ばされ、特別通路を開放されての
特別皇帝執務室なる未知の部屋に、叩き込まれたのであった。
「うむ、待っておったぞ、ニアよ…
妾が思っている以上の緊急事態の様でな…
もしやすると、華帝国の根幹に関わる事やもしれぬので
お主の帰還を急がせた…許せ…」
そんなニアの参内に、一々、帝室の作法をするでもなく
プレティナは、砕けた調子で話しかけた。
前の召喚の時も特別な部屋での砕けた会話であったが
今回のこの特別皇帝執務室は、更に気を緩ませて良いのか
公務では幼いなりに皇帝の作法をしているプレティナも
そこでは、ただの少女の様に振る舞っているだけだった。
逆に言えば、それほど内々の話、という事である。
何より、緊急事態と皇帝自らが言っている。
それはつまり尋常ではない話という事。
それを思ってニアは冷や汗をかいた。
そんなこれからの話をプレティナがしようとした刹那であった。
『陛下、お話しの所、申し訳ありませんが、緊急事態です』
フェルクメニストが突然、話に割り込んできたのだった。
「なんじゃ?フェルクメニスト…
これからニアと大事な話があるのに、
それを止めるほどの緊急事態とは…」
そうプレティナは、
いきなり話の腰を折った自分の思考天体に抗議する。
『会談の内容が、多少変わりそうです…
何より、先日からのアストラストの異常動作の最低限の理由が判明しました。
守護帝様の居場所を監視していた、監視システムからの
情報映像が入りました、御覧下さい…』
そう言ってフェルクメニストは、惑星プリメーラから出撃した
アルフォーレシードの様子映像を、二人の前にスクリーンで表示する。
「なんじゃこの巨大な船は…
ま、まさか守護帝様が、自ら、動かれたと言うのか!?」
その巨大な白い船を見て、プレティナの顔は蒼くなり
体を震わせながら、そう絶叫する。
『その様で御座います…
いわゆる『運命の時』が来た、という所ですか…
私が予想していたのは、後500年後ぐらいでしたが…
アストラストのせっかちが、状況好機とみて
プリメーラ皇帝陛下を上手く説得されたのかもしれません…
赤帝のアルシオン・オーラクルムを使ってのシナリオ…
アストラストなら考えそうな事…
しかし…プリメーラ皇帝陛下、自らが出て来られたのは、些か…
私としては嬉しい話ですが、戦略的には不可解です…』
そう思考天体は、私見を交えながら状況報告を華帝にする。
「これは、驚いた展開じゃの…
ニアを急いで呼んだは、妾の読み違いではなかったかえ…
しかし、読みを遙かに逸脱しておる…
これは、参った事じゃ…」
プレティナは、その驚愕する映像と思考天体の予想を交えた報告に
流石に頭を抱えるしかなかった。
「あ、あの…皇帝陛下…いったい、どういう事なので?」
そんな二人で話を進めるのに、ニアは置いてけぼりにされ
流石に一言、声をかけるしかなかった。
その声に、ハッと我を思い出すプレティナ。
「おう、そうじゃったな…
しかし、何から言って良いのやらの…
ともあれ、これからの話をするには、お主にはそろそろ見せねばならぬの…」
そう言うや、プレティナは自分の額に浮かんでいた、
正方向の三菱赤紫印を輝かせ、そこに新たな逆三菱を浮かべたのだった。
「六菱皇帝紋!!」
ニアはその額紋展開の様を見て、絶句した。
「左様…実は、妾も、かの大帝…
赤帝アルシオン・オーラクルムと同じ、六菱覚醒の皇帝なのじゃ…
いや、もっと正確な事を言えば、
妾のみが唯一の、現代の真性の六菱色帝である…
赤帝のアルシオン陛下も、六菱覚醒といっても『代理』なのじゃよ…」
そう言って彼女は自分の額の六菱のその真ん中を指で示した。
そこには、中央に六角の赤紫の印があった。
今までの六菱覚醒した皇帝の額紋の紋様に、
中央に六角があった者など居ない。
それを思い出すニア。
「これが本当の、真性の六菱皇帝印じゃ…
じゃから、妾には直ぐに、アルシオン陛下も代理なのだと分かるのじゃ。
中央に六角が無いのは、本当は真性の色帝の後を継げれる
皇太子資格保持者の印じゃからの…
ただしそれは、真性皇帝が自ら次の者を決めた時に
印章式という典礼儀式によって付与される事での…
妾もそうじゃった…元の三菱に、印章式を経て、六菱を開放させてもろうた。
副皇帝になった時にの…
じゃから六菱覚醒というのは本来は
アルシオン帝の様な…
あのような、自分の実の兄との殺し合いの中で覚醒するモノではない。
フェルクメニスト曰く、たまに生まれるらしいのじゃ…
正式な継承式によって、六菱覚醒するのではなく
覚醒遺伝によって、自然発生する特別個体の六菱覚醒者が…」
そう言って僅かに微笑むプレティナ。
「しかし、陛下が六菱覚醒の皇帝である事を
華帝国に隠し続けてきたのは、何故ですか?
確かに華帝は銀河覇権よりも、華帝国の連邦国家群
それらの生活がより充実するよう、連邦整備の方に力を入れて来ました。
白色帝国領域に、再進駐する事もなく…
だが、銀河覇権そのものを放棄するのは
他の色帝の軍門に下るという可能性もあるわけで
他の色帝の様に、六菱覚醒した皇帝が出現すれば
銀河中央突破を試みるのが、色帝的、常識かと…」
そう、あまり常識に拘らない主義のニアが
そこばかりは常識論を盾に、戴く皇帝の行動の奇妙さを指摘する。
「ふむ…疑問は最もじゃが…
我が華帝国には、銀河覇権等と言う夢想は必要ないからの…
もっと言えば、先代も、先々代も、その前も
華帝国の皇帝は常に、真性の六菱覚醒の皇帝だったのじゃ…
1000年前から、ずっとな…
つまり、1000年前から…我が華帝国には
銀河覇権など、必要無かったのじゃ…」
そのニアの問いにプレティナは微笑みを以て応えた。
「なんですって?
我等、華帝国は常に皇帝が六菱覚醒者で
にもかかわらず、銀河覇権が必要無かった!?」
そんな皇帝の言葉に、流石のニアも驚いて声を荒げる。
「当然じゃろう?
既に銀河制覇をしておる、我が華帝国が、
何故、している事をせねばならんのじゃ?」
そこでプレティナは、
とても意地悪そうな顔になってニアにそう言ってみた。
「は?我等、華帝国が、銀河制覇を既にしている?」
皇帝の言葉に頭が白くなるニア。
「1000年前の六色帝革命戦争…
あれは、流血の女皇帝と六色皇帝が戦った…
と、一般には思われるようになっておる…
じゃが、我等、筆頭皇家と、お主の様なラルフ家…
特別に皇家と同等の歴史情報を知る事が許されておる
歴史学を守護する学者系の名家では、
それは正しくない伝承だと知っておろう?
あの当時、汎銀河帝国皇帝…
いわゆる、白帝は、六色皇帝の中から
選出されて戴冠する制度だったのだという事を…
では、伝承の末代皇帝…
『流血の女皇帝』とは、どこの色帝の出身だと思っておったか?」
そうプレティナは挑発して、ニアに答えを求めた。
「つまり、我が華帝国のこの銀河に対する態度と
昔から疑問だった、何処の色帝が白帝に戴冠したのかの
疑問の答えは、私の予想通りだったのですね!
『流血の女皇帝』は、華帝国が出身の色帝だったと!」
そこでニアは、前々から予想し疑っていた、
自分達だけが知る事を許されていた少しばかり正確な
その当時の色帝の制度と、そこから考えられた予想を
自分の陛下に口上する。
「然り…
『流血の女皇帝』と自らがこの銀河に呼ばせるように差し向けた
汎銀河帝国、末代皇帝となったのは…
我等が1000年前の華帝国色帝
プリメーラ・ミルシェーナ陛下なのじゃ…
妾は、プリメーラ・ミルシェーナ陛下の母方の妹
システィン・ミルシェーナ太祖様からの血族継承…
つまり、血の流れで遡って、遠き親戚なれど
同じ、ミルシェーナ家、ミルシェーナ皇国の者が
汎銀河帝国の皇帝陛下であり、その臣下という関係なる。
故に、我等、華帝国は直系血族として
汎銀河帝国皇帝陛下を守護する、守護帝国の立場にある。
我等は1000年前より、銀河を制覇している帝国じゃたのじゃ」
そう言ってプレティナは微笑んだ。
「いや、ちょっと待って下さい…
六色革命戦争には、我等、華帝も参加していたではありませんか…
筆頭皇家二家の片肺、ガルドムンゾ王国が当時の色帝
リーシャス・ガルドムルンゾ大帝が、
六色帝として参加し『流血の女皇帝』を討ったと…
伝承ではそうなっているのです…
なら華帝国は、守護せねばならない白帝を裏切ったという話になる。
それが未だに、白帝の守護帝国とは、どういう事なのです?」
言ってニアは、伝承とまったく噛み合わない
プレティナの言葉を問いかける。
「その伝承は、当時の六色皇帝が示し合わせて作った嘘の伝承じゃ
完全な間違いでもないが、真実ではない…
いや、ガイアポリスに攻め入ったその時に
ようやく六色皇帝も真実を知った、という所なのかの…」
そう呟いて、プレティナはチラリと自分の思考天体を見る。
その正確なところだけは、どうしてもまだプレティナも把握していない。
それにプレティナは焦れた。
「嘘の伝承? 六色皇帝が示し合わせた?
では、真実は何だったのです?
何故、六色革命戦争で、我等の華帝から出た白帝を
我等が討伐したという、嘘をみんなで作る必要が?」
ニアはそう言って自らの主に迫る。
「腹立たしいが、妾も、完全なる真実を掴んではおらん…
真性の色帝である妾にすら、このフェルクメニストは
本当は何が問題で、戦端を開いたのか?
それを語らぬ…
じゃが、我等、華帝の色帝には知り得る事がある…
いや、実の所、真性であろうが、代理であろうが
色帝の座に付いた者は、等しく知れる事なのじゃが…
重大なる銀河の機密として…
この世界には、人類の外側と呼ばれる
不老不死の集団が居るのじゃ…
そこまでが、他の色帝となった者だけが知る事が出来る話。
そしてここから先は、我等、華帝の皇帝しか知る事の出来ぬ話。
1000年前、我等の華帝国から白帝になられた
プリメーラ・ミルシェーナ陛下は、その人類の外側と戦った。
その戦争を後世に偽装する為の、かりそめの伝承が、
六色革命戦争だった…
と、フェルクメニストは妾に教えてくれたのじゃよ…」
「人類の外側?不老不死の集団!?馬鹿な!
そんな者、この銀河に存在できるハズが…
それと我等の当時の華帝国皇帝陛下が白帝として戦われた!?」
そこでニアはプレティナに驚愕する真実を伝えられて
その言葉の中にある、おかしさを口にする。
「ふふん…不老不死者は、処刑人によって抹殺されるから
存在できないハズじゃ…かえ?
さて、汎銀河帝国を本当に支配していたのが
汎銀河帝国皇帝ではなく、それよりも上の存在だったとしたら
どうだったのであろうな?
汎銀河帝国は、実は、人類の外側が支配しており
白帝とは、その子飼いでしかなかったとしたら…
処刑人も、人類の外側には手が出せない…としたら?」
そう言ってプレティナは更に意地悪そうな顔をする。
「…まさか
この銀河は、不老不死者によって1000年前に支配されていたと!?
それと我等、華帝国から出た白帝が戦ったのが
1000年前の、六色革命戦争の真実だったと!?」
ニアはその可愛い皇帝陛下の言葉で、
考えられる可能性をそう言葉にした。
「概ね、その認識で正しいと妾は思うておる…
何せ、華帝国の国是である『華の理』の教えに従えば
華帝国の色帝こそ、人類の外側等と言う
不老不死に浅ましくしがみつく者とは、戦わねばならんだろうからの…
じゃが、何かがまだズレておる…
妾の中でも、何かが噛み合わないのじゃ…
これだけ、他の現役の色帝よりは、情報を持ちながら…
人類の外側とプリメーラ陛下が
何を争点に争ったのか…それが見えぬ…
不老不死者の銀河支配からの銀河解放?
生きて死ぬ者に、支配の権利を?
そんな事を考えてみれば、最もらしくも聞こえるが…
じゃが、人類の外側という存在は…
どうやら、銀河を支配はしていないらしい…のじゃ…」
「どういう事ですか?」
プレティナの言葉に、眉をひそめてそれを問うニア。
「これは、我等の実感そのものじゃが
我等は銀河支配を、我等の手で行って運営しておる…
そして連邦加盟国家は、基本的にその国家の自治で回しており
行きすぎた国家運営、あるいは隣接星系との係争が
確認された時だけ、連邦帝国仲裁派遣軍を出す形じゃ。
それも、『連邦加盟国同士での国家間戦争』ですら
それで互いの納得に到達するのなら、
度が過ぎぬまでは許しておる…
仲裁とは、完全なる暴力制圧ではなく、
互いの国家の係争が行きすぎた段階での
連邦帝国議会からの仲裁と執行…
そこまで、自治と国家の尊厳を尊重するのが連邦帝国憲章じゃ
連邦帝国とは、いわば、最悪に至る前のブレーキ。
これが実現できていて我等は
不老不死者に支配されていると、いえるのかえ?」
プレティナは思考天体が語った話…
現在の守護帝国の皇帝のみに開示が許された
人類の外側と白帝との係争の事を前に
しかし、安直に考えられる人類の外側の隠然支配
それからの脱却を狙っての係争という発想が
現実の支配体制の姿と、まるで重ならない事を口にした。
そうプレティナに指摘されて、ニアは顎に手をやる。
「確かに、我々が違和感を何も感じないのは
我々は、見えない誰かに支配されているという感覚は無く
我々自身が、議会などの運営によって
我々の組織の在り方を決めているからです。
そんな人類の外側とやらの不老不死者に
誘導されている、と思えた事はなく
議会での議決や、思考天体の議決に対する審議は
たいていの人間が、納得出来る落とし所で
我々が、我々を決めている、と思えます…
まぁあえて言うなら、六色帝国戦争は
流血の女皇帝によって誘導されたな…と思えますが…
真面目に参加していない我々には
それさえ、誘導されているという気持ちが沸かない…」
そう言ってニアはプレティナの言葉を確認した。
「左様…六色帝国戦争ぐらいしか
自治以上の都合で、帝国が動かねばならぬ理由は無い。
しかし、ならば六色帝国戦争ほど、
人類の外側が銀河を支配していると
思えない行動は何じゃ?
人類の外側というのは、S級人類が織りなす
派手な宇宙戦争が見たいから、それを誘っているというのか?
それは随分、高尚な趣味の不老不死様じゃの…」
言って、この銀河の構造の歪さ、
それに不老不死者という要素を混ぜると、
更に訳の分からなくなる話を笑うプレティナ。
笑ってはいたが、笑い話ではなかった。
「それと、もう一つ…
実は…、我が華帝にもあるからこそ、よく分かっておるのじゃが…
人類の外側というのは、
華帝のフェルクメニストの中にもおっての…
華帝国皇帝を勤めた者が
死後に、それに「なる」かどうか?の権利が与えられるのじゃ
これは、皇族秘話でも超機密事項じゃから、
他言すれば、お主でも流石に抹殺する話じゃからの?」
そうプレティナは、ニアに爆弾発言を送る。
「は!?人類の外側とは、皇帝陛下が死後になる者?」
ニアはその言葉に震撼した。
そんな巨大な秘密を、ここで突然聞かされてしまうなどと…。
皇帝が、突発的に思いついた戯れ言の様に思えていた、
人類の外側などという不老不死者が、
この天体の中にいるというのである。
そんな話は、B級人類なら、全く信じれない所であったろう。
A級人類以上の存在ならば、何かの抜け道が存在すれば
有り得る話だとは、思える事であったが。
「そう…
要するに人類の外側という存在は
皇族が特権を使っての不老不死を得る事なのじゃが…
その人類の外側とは、どちらかといえば、
太祖達が御意見番となり思考天体に残るというのが正しくての…、
基本的には死者なので、神域で寝ており
妾の様な現職の皇帝が困った時にだけ、
妾達の要請で起きて貰って
その御意見を伺う…というのが、人類の外側の
妾が知っておる在り方なのじゃ…
不老不死者というよりも、正に人類の外側に行った者…
困った時に聞きたくなる先祖の声、
それが人類の外側という存在の妾の印象じゃ…」
「困った時に聞きたくなる、先祖の声…
それが人類の外側…」
そこでプレティナ自身が接触した人類の外側の存在感を
ニアに語り、言ってしまえば、死んだ事になっている祖父母達に
盆的な時期にだけ会えるという、その様な関係なのだと説明した。
フェルクメニストは、そんな自分の主の説明を聞きながら
そう感じるのは、華帝国の人類の外側が
特にネーハン率が高いせいであって、
他の色帝はもう少し起床率がいいのだが…と、思考空間の中で思う。
とは言っても、他の色帝も現政権の国政に口出しをする程の
人類の外側は居らず
あえて言うなら、1000年前から未だに現役でいる
あの五人が特別なのだ…という所なのだが…
「それに彼等には制約もあり、死後には
フェルクメニスト内にある『神域』と呼ばれる
特別区画から出る事は許されて居らぬ…
彼等は起きた時には、墓地、墓地、とも言っておるが
その区画から出て行くと、処刑人に抹殺されるそうなのじゃ…
そんな制約まみれの存在が、不老不死の支配者と呼べるのか…
銀河を影から、支配していると言えるのか…
妾が先祖の助言をたまに聞くのは、
不老不死者の銀河支配と言えるのか…
それが、どうにもわからんでの…」
そう言って流石にそこでは頭を抱えるプレティナ。
「そういう説明を聞くと
お墓の中に先祖の魂が封じられている…
というイメージが人類の外側という
存在感に聞こえますね…
ある一種の支配であり、全くの無干渉でもあり…」
とプレティナの言葉を評するニア。
「そこなのじゃな…
妾が見てきた、先祖の人類の外側なれば
銀河戦争を起こしてまで、戦いたいとは思わぬ…
ただ、ガイアポリスにある、始祖の思考天体フォレストの
中に残っている人類の外側だけは、
妾の知っている人類の外側と全く違う存在なのやもしれぬが…」
そこで、そう呟いて完全な真実に至っていない事を嘆くプレティナ。
「ガイアポリスにある始祖の思考天体フォレスト?
いえ…軍上層部の予想では、
銀河中枢には汎銀河帝国を運営していた
最大の思考天体があるだろう事は、確実視されていますが…
その思考天体の名前は、フォレストというのですか?」
ニアは皇帝陛下が重要な秘匿情報を
何でもないかの様に口にするので、驚きながらもそれを確認する。
「そうじゃ。
フェルクメニストから教えて貰った
銀河中枢にあると言われる思考天体の名じゃ。
そして、我等の守護帝様が主巫女を務められておられる
汎銀河帝国皇帝が所持する思考天体でもある…」
とプレティナは、そこで何気なくそれを語る。
「え?
…何か陛下の言葉を聞いていると、とても違和感があるのですが…
流血の女皇帝…ええっと、1000年前の華帝国皇帝
プリメーラ・ミルシェーネ様でしたっけ?
その方は、六色革命戦争の時に討伐されて
既に死亡されているのでは?」
そこでニアとプレティナの、何か噛み合わないこの会話で
ニアが聞かされていた伝承における大事な部分を質問してみた。
「おお、それを言うのを忘れておったの…
汎銀河帝国末代皇帝、白帝プリメーラ・ミルシェーネ様は
人類の外側の一人に成られて存命しておられる…
故に、未だに現役の、汎銀河帝国皇帝陛下じゃ…
そして我等が守護する理由も、それが最大の理由である…」
と、プレティナはとても大事な事をその時、語った。
「は?」
ニア・ラルフという智将と讃えられた彼も
その時ばかりは、その情報に呆然となった。
「白帝と1000年前に何らかの理由で戦った
人類の外側は未だに対立しており
その戦いは、1000年前から休戦化しており
しかし、その休戦が解かれ
いつか頂上決戦が起きるであろうと予想されていたのじゃ。
思考天体と、その中で生き残っておる
1000年前の人類の外側の者は
それを『運命の時』と呼んで居るそうじゃが…
問題なのは、どうも、その時が来たらしいのじゃな…」
そう言ってプレティナは思考天体が示した画像を指さした。
その白い巨大な船が映っている画像を。
「あれが、おそらく白帝様が中に居られる白帝様の移動用の船じゃ…
人類の外側と決戦するために作られた船と聞いた。
フェルクメニスト曰く、白帝様は、
ガイアポリスに居ると、都合が悪かったらしくての…
サファナムにあった、白帝様が生まれた惑星に
1000年間、潜伏していたらしいのじゃ…
…という事が
200年前の、華森帝国戦争の時に、偶然、分かったそうじゃ…
なので、それが発覚して以来、白帝様の気分を害さぬ様、
我等、華帝国はサファナム宙域から完全撤退をした…
そして、200年間、
ずっとあの惑星を遠くから観察しておったのじゃが…
この数日間、赤帝のアストラストに異変が起きていたらしく…
また数日前に、六色帝国の思考天体が、
全て、銀河中央にある思考天体フォレストに、
演算能力のハックを食らうという大事件が起きての…
それに白帝様の関与が疑われたので、
お主に、あの惑星への調査に行って貰おうと思っていたのじゃが…」
「えええええ……」
そこでマシンガンのように、銀河を揺るがす情報が
幼い皇帝陛下の口から出てきた事に、絶句し続けるニア。
200年前からの、不審な華帝国の軍事行動も
恐ろしいまでの引き籠もり体質も、その説明で全てが理解できたが
そんな銀河全てが震撼する様な重要情報を、
この華帝国は200年間、隠匿してきた等、
連邦全体にしてみれば、ある一種の背信行為であった。
いや、事が事だけに、背信と言えるかどうかは微妙だが。
そんな顔を強ばらせるニアに、更に言葉を続けるプレティナ。
「所が、
そう思っているウチに、更に事態が進行してしまった様での
白帝様が、この様に復活なされて、
人類の外側と決戦をする様な感じで、
動きだしたみたいなんじゃ…
この宇宙戦艦が出てきたという事から、推察するにな…」
そう、子供の様にわくわくした表情を浮かべながら
スクリーンに映る映像を指さすプレティナ。
「いや、それが本当だったら、銀河を震撼させる大事件じゃないですか!
つまり、あの『流血の女皇帝』が復活したって事でしょう!?」
そんなプレティナの子供的な反応に、流石のニアも
大人的な常識者の立場になって、事の重大性を大声で語る。
「まぁそうじゃな…
間違い無く、銀河規模の大事件の発生じゃ…
妾もとても困っておる…
そこで、ニア、お主に勅命を下す…
お主、あの船に、その知謀で潜入し
一体、白帝様に何が起きたのか、調べてまいれ…」
そこで幼き皇帝陛下は、簡単に、物凄い難題をニアに投げつけた。
「は?」
自分の戴く皇帝に、一瞬、何を命じられたのか分からなくなるニア。
「こんな任務、華帝の全てを見回しても
お主にしか出来そうにないと思うのじゃ。
じゃから、ニアよ、白帝様が居られると思われるあの船への潜入
更には、この話の真相の解明、それら全ての任務…
お主に勅命で、これを命ずる」
そう太陽の様な微笑みを浮かべてニアに任務を命じるプレティナ。
「いや、えっと、あれって、あれに潜入!?
あれにですか!?」
目を見開いて、スクリーンに映っている巨大船を指さすニア。
あまりの大事に、S級人類的な能力開放で、理解力と精神恐慌補正を
体内反物質を使っての複素結晶情報処理『光速理解』で
なんとか処理してみて、瞬時に状況理解をしたニア。
しかし、という事は、明かされた情報からの推察で、
不老不死化している『流血の女皇帝』が乗っているらしい
画像に映っている白い船は、伝承のアレという可能性があるのだ。
「あれって、陛下の話が真実なら
伝承で伝わる『皇帝道』を7つもぶち壊した
女皇帝の謎の武器って事になるんじゃないですか!?」
ニアは、推量も含めて、今までの伝承と明かされた情報との統合で
色帝の全機動艦隊が戦っても陥落できない、特別なスターゲート
『インペリアルゲート』
その中でも、更に特殊であっただろう、
銀河中枢に繋がっていたハズのインペリアルゲート
『皇帝道』
それを謎の方法と武器によって、徹底的に破壊して
現在の六色帝国戦争を起こす原因となった、
『流血の女皇帝の最後の一手』と呼ばれる中央銀河への道の大封鎖。
そんな歴史的な事件を実行せしめた、
伝承の謎の武器なのではないか?と自分の主に指摘する。
「うーむ、そうじゃのう…その可能性が高いのう…
お主の言うとおりあったなら、
あれは銀河でも最も危険なモノという事になるのう…。
なら、尚更、調べぬ分けにはいかぬのう…
というわけで、行って参れ、ニアよ…
命じたはずじゃ、勅命じゃと…
これは、これからの華帝国の根幹を揺るがしかねない…
あるいは銀河を揺るがしかねない、大事変じゃ…
じゃから、妾は、お主を呼び寄せて、この勅命を下したのじゃ
この意味、よく理解するのじゃぞ?」
そう言って、またしても好意溢れる、太陽の様な微笑みを浮かべる少女。
華帝国にての内部評価は、不当というか妥当というかの境界線で
銀河全土での外部評価は、著しく高い智将、ニア・ラルフ少将の
人生最大の難任務は、そこから始まったのだった。
丁度その頃のクライド達だったのだが…
惑星プリメーラのある恒星イートリオに、一日近くかけて接近し
恒星にあまりに近い所で、アルフォーレシードは待機し始めた。
「なぁ、シード…何してるの?」
信じられない程の太陽の近距離に接近してるアルフォーレシードに
今の状態を問うクライド。
シードは応える。
「エ、エネルギー補給です…」
そう言って『太陽動力炉』を全開にして
シードは太陽の恵みを有り難く頂戴し始めたのであった。
この第二章は、この章そのものは
まぁ雑魚を凹るだけのシードの
ウォーミングアップの章なんですけど
それをこのままガンガン書くと、シードの動き方が
この世界の「普通」と勘違いされてしまうんで
それだと、困るんですよね…
この世界設定で、一番おかしい船が、主人公艦なんで
なので、後、二節ほど進めたら
ちょっと、外伝の方に主力をシフトさせて
外伝での、「この世界の普通の宇宙艦隊戦」を書いて
シードが、どんだけチート艦なのか、相対的に分かる様にしたいと…
なので、後2節ぐらいしたら、外伝にまた戻って
外伝4,本編1 みたいな割合で、進めていこうかなぁと




