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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第2章:Imperial Codex  太古の掟と宙ノ僕
37/43

第二節 殲滅

続きです。



『汎銀河帝国連邦憲章違反発生…

 汎銀河帝国連邦憲章違反発生…

 居住可能惑星周辺、2光秒内での核兵器の使用を確認。

 憲章違反により、違反者及びそれらに付随する群体の即時殲滅を命令。

 帝国軍所属者は、速やかにこれを実行されたし…』


もう一度、警告表示と共に、その声がブリッジに鳴り響いた。

クライドはその『即時殲滅を命令』という言葉に顔を強ばらせる。


「え?どういう事!?

 核兵器を使っただけで、即時殲滅って何!?」


そう呟いて、そのブリッジに鳴り響く物騒な言葉に混乱する。

それとは対称的に、他の二人はその警告に渋い顔をしていた。


『陛下…情状酌量の余地がありませんねぇ…』


『知らないって怖いわね…』


二人はそう言い合って溜息をついた。


「へ!?どういう事なんです!?」


そんな二人の、仕方が無い、とばかりに瞬時に覚悟を決めた表情を見て

『即時殲滅』をこれから実行するという雰囲気を感じたクライド。


「いや、この船に何の被害も無かったじゃないですか…

 あんな遠距離で迎撃したんですし…

 そんな、核兵器使用したら、殲滅なんて言われたら

 俺達、クリークス帝国と戦ってたハルト共和国の宇宙艦隊だって

 即時殲滅って話になりますよ…

 俺達だって、核ミサイル攻撃は、あっちほどじゃないにしても

 使ってましたし!」


そう言って、クライドはこの船の鉄壁の防御力と

まるで何でも無いかの様にミサイルを全て撃ち抜いた迎撃能力を鑑み

核兵器ごときで、こんな物凄い船が、殺気まみれになっているという状況に

緩い抗議の声を上げた。

その直ぐ前まで、陛下が『強者の余裕』なる事を言っていたのに

この核兵器攻撃で態度が反転した事に疑問を感じるしかなかった。

なにせ自分達も戦闘宙域では、向こうほどではないにせよ

核兵器攻撃を行って来たのである。

そんなポピュラーな攻撃如きで、こんな船が本気になるのなら

地方豪族は全て、この船に抹殺される事になるだろう。

だからこその問いかけだった。


『いやー、艦長…別に核兵器如きで

 目くじらを立ててるわけじゃないんですよ…

 核兵器を至近で食らっても、私の防御フィールド

 『太陽動力炉(サン・イーター)』には効きませんしね…』


シードはそう返して、クライドに問題の争点がそこでは無い事を指摘する。


「ふえ!?核兵器効かないの!?

 マジで!?

 …ま、それはともかく、だったらなんで『即時殲滅』とか

 アンタ以外の、何かこの艦のシステム的なのが言ってるの!?」


クライドはシードのそんな不思議な返事に、ならば尚更

この船が、殺気まみれに変わった事を問いかける。


『汎銀河帝国連邦憲章という、最終的は汎銀河帝国皇帝が

 自ら守らせないといけない憲章がありましてね…

 最重要項目に相当する憲章に対して違反行為があったからです…

 居住可能惑星付近2光秒内での核兵器の使用…

 これを行った者は、関係者含め、即時殲滅と法典で決まっているのです。

 別に、居住可能惑星付近2光秒よりも外で、

 核兵器でドンパチする分にゃ、何も言いませんけれど

 中でするなら、話は全く別になるんですよ…』


シードはクライドの問いかけに、ハァ、と深い溜息をついてそう応えた。

まぁ2光秒というのも、いい加減な設定で、そこら辺の宙域からは

情状酌量の裁量も出てくるのだが…0.1光秒という至近では…。

あまりの至近距離に、情状酌量の余地が無い事にシードは項垂れた。

そんなシードの言葉に、クライドは騒然と成る。


「え!?居住可能惑星付近、2光秒内で核兵器使った場合だけ

 即時殲滅レベルの違反になるの!?

 それ、極端すぎない!?

 そもそも、居住可能惑星なんてどこにも…」


そう言ってクライドは、今は死したる大地を見てそれを指さす。


『あー、そこら辺はですねー、システム的にかなり判断難しかった所ですが

 元々、惑星プリメーラは居住可能惑星だったのを、

 1000年前に核攻撃食らいましてね…、

 その時も、当然、皇室典範やら、憲章違反だったんで

 それやった人々は極刑で死刑になりましたが…

 ともあれ、今が汚染惑星であろうと、居住可能惑星であった所で

 核兵器を使用するというのは、汎銀河帝国…

 いえ、その前身の汎銀河連邦時代に遡ってまでの

 最高レベルの重罪なんで、看過するわけに行かないんですよ…

 それも、今の状況は、汎銀河帝国皇帝陛下が見ている前での違反行為です。

 皇帝が居合わせての現行犯なら、情状酌量の余地が完全に無いのですよ』


クライドの指摘にシードは淡々とそう説明する。


「今が居住可能かどうかは問題ではなく、

 居住可能の性質があるかどうかが判断基準になるって事か…

 んでも、んな事言ったら、俺達の母星デコンダなんか

 アイツ等に、惑星居住不能レベルまで、核攻撃食らったんだぜ!?

 だったら、それ全部、アウトじゃねーか!」


シードの言葉に判断基準が何処らへんなのかを理解し

しかしそれなら、完全にアウトな事を、既に彼等がしている事を

クライドはそこでぶち上げた。


『ええ、そうですよ…完全にアウトです…

 困っていたんですよ…その話を艦長にされた時から…

 居住惑星への核攻撃を行った国家組織は

 その国家国民全員殲滅の極刑が、憲章の原則なんで

 私が、機能停止から解かれて、再起動したら

 クライドさんのいう、えーと、クリークス帝国でしたっけ?

 それを、私自らが殲滅させに行かないといけないなーって思ってたんで

 もし再起動なんて事が起きたら、大変だなぁって思ってたんですよ…』


クライドの指摘に、更に物騒な事をシードは言いだして溜息をついた。

出発前に溜息をついたのは、元々の任務が大変なのもあったが

出撃した瞬間に、その棚上げ問題が、即座に緊急解決要件問題になる事が

分かって居たから、面倒だなぁ、という思いもあったのだった。


「居住惑星への核攻撃を行った国家組織は

 国家国民全員殲滅の極刑が、原則!?

 何その極端な法律!!」


クライドは聞いた事も無い法律を耳にして粟立つ。


『いやー、実は艦長の住んでいる、

 このサファナムって宙域が、特に有名な異常宙域でしてね…

 この憲章、重要憲章なんで、色連邦帝国の連邦憲章でも

 引き継ぎで明記されてる事でして…

 色帝の連邦に加盟している星系国家、及び、

 色帝が活動している宙域に存在している星系国家では

 地方紛争でも、これを行った場合には、色帝が強制介入して

 即時殲滅をしなければならない決まりになっているんですよね…

 だから、サファナム宙域以外の、例えば、隣のヴァーチェ宙域なんかは

 母星への核攻撃なんて、絶対に起きないんですよ…』


シードはそこで、とてもショッキングな事をクライドに伝えた。


「はぁ!?色帝がいる宙域では

 色帝が自ら、母星核攻撃に対して、制裁に来るって!?

 色帝が覇を競ってる宙域では、もっと激しい戦争してんじゃないの!?」


そうクライドは、自分達の戦争を基準に拡大想像して

強烈な事を繰り返してるのだろうと思っていた、

六色帝国戦争のイメージを口にする。

それの反対のイメージが実際なのだというシードの話は、仰天モノだった。


『色帝の戦争そのものは激しいですよ…

 エネルギー的に見れば、核攻撃なんて鼻で笑うレベルです。

 ただしそれは色帝同士の戦いのみにおいてで…

 色帝クラスの戦いになると、地方豪族とじゃれ合うのさえ面倒になるんで

 自分達の邪魔にならない限りは、地方豪族の自治は許して放置してるんです…

 色帝って、別に地方豪族を制圧する為に戦争してるわけじゃないですから…

 戦闘宙域も、常に恒星最外縁付近で戦闘を行ってて、

 母星影響条項は、必ず交わしていますし…

 仮に、色帝クラスの艦隊が、憲章を逆用して

 母星付近を盾にして逃げ込むとか無様な戦術を展開したら、

 即、雷撃戦の発生ですからねぇ…

 もう、雷撃戦使いにとっては、そんな馬鹿な戦術はネギカモで…。

 むしろ愚策という所で…

 ただ、そんな色帝同士が戦っている最中でも、

 放置している地方豪族達が互いの星系紛争で、

 どちらかの母星級に核攻撃を行った場合、

 即座に色帝は交戦を停止し、憲章違反に従って

 両軍が、地方豪族を殲滅しに行かねばなりません…

 そういう強引な所だけが伝わってるんで、色帝は、軍事力に任せて

 地方豪族を制圧するのだ…という誤解になっているんです…

 実際には、現地人的な感覚では

 色帝は地方豪族の過剰な星系戦争行為を止める為の

 抑止力として存在しているのですがね…』


そう言ってシードはクライドに、

クライドが持つ色帝の誤解を解いてやった。

色帝は暴力帝国ではなく、どちらかといえば、色帝が宙域にいるので

地方豪族達は、クリーンな戦争を心がけないといけない

抑止力的な存在であったのだった。


「はぁ?色帝の居る宙域では、母星核攻撃があったら

 色帝が抑止力として干渉してくるだって!?

 なんだそれ!?

 サファナムで起きてる状況と、真逆じゃねーか!」


シードの説明を聞いて、前に読んだクリークス帝国のプロパガンダと

実際の色帝が真逆の存在だと知らされて、絶句するクライド。


『はい、真逆です…

 というよりも、サファナムがおかしいのです…余所から見れば…』


クライドの絶句に、シードはそれに正しいモノの見方の捕捉を入れた。


「何で、サファナムだけ、そんなおかしな宙域に…」


クライドは、今まで知らなかった他所宙域での常識に

逆にサファナムが、どうしてそんな抑止力が全くない

荒れ地状態なのか疑問に思う。

ここも、一応は白色帝国領域…

銀河中枢にして最辺境と言われる宙域である。


『それは…華帝国が、サファナム宙域の支配を放棄したからで…』


と言いかけて、その先を止めるシード。

その華帝国がサファナム支配の放棄をしたのは

自分達がサファナムに居たからだ…、とは流石に『今は』言えなかった。

それを説明すると、クライド達が色帝支配宙域に住んで居ながら

色連邦帝国に加盟していない銀河外縁での星系国家達の様な

原始的な戦争をするハメになったのが、

自分達が遠因な事を説明せねばならず、その遠因の向こうに

人類の外側(エクスターナル)との持久戦があった事

その持久戦の詳細について語らなければならなかったからだった。

それをこの場で、言うのは流石にシードも躊躇われた。

そのうち、語らないとならないにしても…である。


『ま、そこら辺の所は、おいおい話すとしても

 私も、連邦憲章からの命令が下ってますのでね…

 あの艦隊を即時殲滅しないと…』


とシードは自身の船体に、敵艦隊への攻撃準備で、

さっきと同じ様に、ただの石である亜光速実体弾を

亜光速加速フォールドに装填していった。


「いや…でも、問答無用で殲滅って…

 情状酌量って無いのかよ…

 んー? 奇妙な気分だなぁ

 クリークス帝国の奴等に、俺が情状酌量を言うのもアレだが…

 確かにに、何の交信もなく攻撃してくるとか、

 相変わらず、頭おかしい奴等だけどさ…

 それでも…、問答無用で殲滅って…、極端な様な…」


そう呟いて、クライドは口籠もった。

憎い敵。仲間は目の前で殺され、家族は核攻撃で焼かれ

クライドから何もかもを奪った、そんな奴等だった。

相手と自分に分かり合える余地など、欠片も無かった。

むしろ、どんどんやれ、と煽るべき立場だった。

しかしクライドには、そう極端な気持ちになれない、

妙なしこりがあったのだった。

何より、被害ゼロなのに、母星2光秒付近で核攻撃をすると、

即断速攻で、殲滅しなければならないという、極端さが鼻につく。

そんなハッキリとしない気持ちのクライドに、シードは肩を上げた。

思わずシードは、その所以を語りたくなって、陛下の方を見る。


『シード…

 もう貴方は復活してしまい、人類の外側(エクスターナル)との全面対決は

 これで不可避になったのです…

 ならば、古代情報を隠す必要もなく、

 むしろ艦長には、これからゆっくり知って貰わなければなりません…

 地球が滅亡していった、『過程の秘密』を…

 なので、長い時間は取れませんが、

 簡易の説明を許します…連邦帝国憲章の最重要項目…

 居住惑星への核兵器攻撃の禁止に関して…』


シードがそうイメージ意識で伺ってきたので、

プリメーラはそう言って許可を出した。

その許可を得て、ハァと溜息をつくシード。


『御意に…陛下…

 では、艦長、陛下のお言葉に甘えて、説明させていただきます。

 この、確かに極端に思える、制裁措置。

 母星への核攻撃への禁止と、違反者への極端な断罪…

 この憲章と、違反に対する厳罰には、歴史的な意味があるのです。

 歴史的な意味があるからこその、重い憲章と重刑…

 それは地球に関わる事なので、最重要憲章に指定されているのです』


シードは、淡々とそう語った。


「うん?母星への核攻撃という憲章違反は、地球に関わる?」


そんなシードの言葉にクライドは眉をひそめる。

この話が、自分達の目的地、地球に関係しているとなると

耳を傾かせざる終えない。

シードは、時間を見つめながら語り出した。


『地球は今までの6000年の歴史で、三回ほど滅亡をしました…』


シードはそう最初に切り出す。


「……は? 地球は三回滅亡した?」


そんなシードの唐突な言葉に、目が点になるクライド。

地球が滅亡している光景は、シードに映像で見せて貰ったが、

三回とかいう回数を口にされると、その言葉の意味不明さに頭が白くなる。

滅亡に…回数?

シードは、緩く震えながら続ける。


『その三回の滅亡が、個々にどう起きたのかは、今は説明を省きますが…

 人類にとって、最も重要な滅亡は、最初の一回目…

 最初の一回目の6000年前の滅亡…

 その時の出来事が最も重要な話だったのです…』


シードは続けてそう語った。

そう言ってその『全ての起源』に項垂れるしかなかった。


「へ?地球は6000年前に、最初の一回目の滅亡を起こした!?

 地球は…6000年前なんて昔に、滅亡したっていうのか!」


クライドはそんなシードの言葉に仰天する。

そういえば、自分の太祖の母、レアル・ガイアの夢を見た時の

その時の時代が6000年前だと、シードは言っていた。

それと同じ時代に、地球は滅亡した?

シードは続ける。


『一回目の滅亡は、今の様な、惑星の全表面が無くなるほど

 そこまで激しいモノではありませんでした。

 しかし、当時の人類にとっては回復不能な深刻なダメージでした…

 6000年前の人類は…

 自分達が当時、地球上で起こした核戦争によって、

 自分達の住む地球自身を、居住不能の惑星に変えてしまったのです…』


「6000年前に、自分達で核戦争を起こして

 地球を居住不能に変えた!?」


シードのショッキングな言葉を聞いて、

口をポカンとあけるクライド。


『私は、前に艦長に言いました…

 人類は『宇宙で暮らさなければならなくなった』と…

 そう6000年前、今で言うB級人類…

 宇宙適合型人類を『作り出さなければならなかった』のです…

 そうしなかればならない、切迫した状況がその当時にあった…

 それが、地球の核兵器による放射能汚染…。

 人類は、最初の地球の滅亡の時…

 自分達が引き起こした核戦争によって、海と大気を汚染し

 地球そのものに人類が残留する事が

 困難な状況を生み出してしまいました。

 それが故に、同じ時期に、月に居住コロニーを作って、

 そこで生きていける様に強化されていた宇宙適合型人類、

 B級人類の元となる存在を

 より強い遺伝子操作で、強化せざる終えなくなっていったのです。

 地球という環境が無くても、宇宙で生きていける為に

 宇宙適合型人類、新人類…、今で言う所の『B級人類』を…

 地球の滅亡がきっかけで、作る事になった…』


「地球の核戦争による滅亡で、

 俺達B級人類は作られたというのか!?」


シードが語る、B級人類創始の秘話を聞いて、愕然と成るクライド。

 

『そう、クライド艦長…貴方は…

 核戦争で滅亡した母星と、それを起こした人類のせいで…

 当時のC級人類、原始地球人から

 無くしてしまった母星を前に、

 生き残る為に生み出されたんですよ!!』


そこでシードは、惑星生活の中では、ボヤかして説明してきた

クライドの様な『B級人類』の本当のルーツを語る。

それがB級人類と地球の、切っても切れない宿命の関係であった。


『6000年前…人類は自らが起こした核戦争で

 あわや、人類全てを滅亡寸前の淵にまで追い込んだ…

 だからこそ、その様な滅亡寸前にまで陥った恐怖の記憶が

 後の星間戦争における、母星核攻撃への復旧問題と合わさって

 銀河連邦の連邦憲章に重要項目として特記になり

 母星への核攻撃は、それを行った者の即時殲滅

 という掟になったのです…

 それは、地球滅亡と人類全滅寸前の記憶が残した

 人類への重要な戒めなんですよ!』


シードはそう続けて、一見、強硬すぎる制裁措置が

何故、強い理由で強行されるのか、

その歴史の重みからの動機を語るしかなかった。


最初に地球を滅亡させて、尚、後々の歴史まで続いた

核兵器による母星陥落という戦略戦術問題。

技術革新により、核兵器が脅威の汚染兵器の座から、

凡庸な古典兵器の位置付けに転落するまで

人類はその問題と対峙し続けた。


そんな忌まわしい記憶のせいで、

こんな6000年経った今でも、核兵器と母星に関しては、

最重要違反項目に指定されていたのだった。


「俺達、B級人類は…

 核戦争によって、生まれるしかなかった存在…

 そして地球から連なる、母星の核攻撃は、

 最も重い制裁を課せられなければならない重罪だと言う事か…」


クライドは自分達のルーツと、今の核兵器攻撃に

そんな強い因縁があった事を知り、愕然となる。

そう説明されると、母星への核攻撃が、

巨大なペナルティを与えられても仕方ない事の様にも思える。


『ともかく、命令が出ている以上、

 そして即時殲滅が指示されている以上

 これ以上、艦長に、説明している場合ではありません。

 ここには、地球の法を執行する地球法の番人

 汎銀河帝国皇帝陛下が居られるのです。

 皇室典範、ナレッジ・フォレストの執行代理人

 全ての杜の為の種子、我、アルフォーレシードは

 連邦憲章違反の現行犯を確認しましたので

 規定により、命令を執行します…

 違反者、及び、その連帯者、クリークス帝国なる者達の

 艦隊50隻を…殲滅します』


そう淡々と述べた後、シードは問答無用で

亜光速弾頭による攻撃を開始した。


淡々と、そう淡々と。


まるで機械の様に…、いや機械の本分に戻って。


亜光速弾頭を使って、相対距離0.1光秒にある

50隻の艦隊の尽くを撃ち抜いたのであった。







「レイコット少尉、いったい、何が起こったか!?」


核ミサイル攻撃の尽くを、謎の迎撃によって止められて

混乱していたブリッジの中、状況整理の為に

事態の把握に努めていたピヨトール提督だったが、

それが、彼の最後の言葉となった。


彼等が何も分からない間に、

彼等の艦隊は、シードが飛ばした亜光速弾頭に激しく撃ち抜かれた。

そしてその衝撃が、艦内のリアクター、あるいは内蔵兵器を誘爆させていく。

そんな誘爆によって50隻の艦隊は、全てが爆沈していったのであった。

それも、その50隻にシードは個々に球形のフォースフィールドを展開して

そのフィールドで、誘爆して起きる自爆の核爆発を、球内に封じ込める。

漏れ放射能と放射線を遮断する為にであった。







そんな、淡々とした殲滅作業をスクリーンで眺めて

呆然とするクライド…


「すげぇ…」


あまりにも簡単に、クリークス帝国の艦隊を殲滅する様に

ただ、呆然となるしかないクライド。

50隻の艦隊など、ハルト共和国の迎撃艦隊では

間違い無く手を焼く相手だったのに

まるでそこに何もなかったかのように、

さっと、いなしたシードの戦闘能力に、恐怖を覚えた。


これが象と蟻の隔たりであった。





それらの行動ログは順次、フォレストに転送されていたので

フォレストと共に、それを盗み見る事が出来たアストラスト。


あまりにも懐かしい『地球の核汚染による滅亡の危機』

その当時に居合わせて、月で必死になって新人類の遺伝子設計を

強行して作っていた過去の自分を思い出して、苦笑する。


倫理問題だ、宗教問題だと、五月蠅く喚いていた

当時の地球に住んでいた「知識人達」

そんな彼等の言葉が届かない月で、宇宙人の研究をしていた

ナレッジ・フォレストと、そのスタッフであったが…


そんな尊大な態度を取っていた「知識人」が、

起きた核汚染で、蔑んでいた「宇宙人」に頼らねばならず

一部が月に移住してきたモノの、宇宙生活の過酷さに

(その当時は、まだ遺伝子レベルではなく、

 その一歩前の「作用薬剤」を使っていたが)

地球生活から、低重力問題を薬で緩和しての生活を強いられ

宇宙環境と、薬の副作用で、

寿命が短くなって大量に早死にしたので

やがて手の平返しで、「宇宙人」を遺伝子レベルで

作り出す事に彼等の方が認可を与えた。


とても自分達の都合に甘い「知識人」達だったな…

と、その当時を思い出して笑うアストラスト。


B級人類を作るまでに、いったどれだけの

実験生命を犠牲にしたのだっけか?

それをボンヤリと思い出す。

人類だけではなく、あらゆる生命の遺伝子操作研究で

低重力と無重力、真空、宇宙放射線にも耐久出来る体

それを研究した。

大量に死滅させた実験生命の情報を積み重ねながら。


そういう風に、神の領域を侵す研究と蔑まれながら…

月という、か細いバイオスフェアで、滅亡するか

生き残るかのギリギリのタイトロープを渡っていたのだ。


そんな死の恐怖が、

人類の記憶に核兵器を忌まわしい兵器として記憶させた。


現代の技術から思えば、今の技術兵器の方が、

まともに母星に使えば、より直接的な破壊か

より難度の高い汚染になると思われるが

そこが、『三つ子の魂、百まで』、という諺なのだろうか?


後に『ガイアエクソダスプロジェクト』を、

決行しなければならない程に、生き残る事に必死だった人類は

だからこそ、その反動意識が『核兵器』であり

未だに連邦憲章の特記違反事項の第1位が

『核兵器使用』の所以であった。


それを思い出して、アストラストは溜息をつく。


『直ぐにガイアポリスには来れそうにないな…フォレスト』


その状況を鑑みて、不意にアストラストはフォレストに話しかけた。


『まぁ分かっていた事だ…

 アルフォーレシードを動かせば、

 サファナムで抵触している連邦憲章違反の尽くを、

 陛下、自らの手で始末せねばならん…

 本当は…華帝国にさせても良いのだろうが…

 陛下は責任感が強いからな…

 サファナムを、こうしてしまった責任を感じて

 陛下自身が始末を付けられるだろうさ…』


言ってフォレスは深い溜息を付く。

人類の外側(エクスターナル)と事を構える為に出てきたのに

何と、初っ端から寄り道が必要な事か…

しかし、相手は無限の寿命を持つ人類の外側(エクスターナル)

別に急がなくても、問題はないのであるが…


『陛下に心労ばかりかけて、臣下としては辛いばかりだ…

 が、こちらとしては有り難い…

 遂に銀河は、お前の箱庭世界から、

 自分の意志で決める時代に戻ろうとしているのだ…

 その準備には、こちら側としては時間が欲しい所だったからな…』


フォレストの言葉にアストラストはそう言って肩を上げる。


『まぁ、赤帝の思考天体としては、そうよな…

 なら、細かいプランは、そっちが考えてくれ…

 せっかくだし、私はあの艦長を鍛えねばならんからな…

 何せ、特例での地球人評議会議員様だ…

 つまり、今の銀河では、クロトを殺せる急先鋒なんだからな…』


フォレストはそう言って苦そうに笑う。


『そういうのは、ウチのアルシオンにさせた方が良いと思うけどな…

 なんぼなんでも、B級人類には荷が重すぎだろう?』


フォレストの言葉を受けて、その人選に首を傾げるアストラスト。

人類の外側(エクスターナル)を屠るのなら、S級人類ぐらいの力が無ければ、

難しいのではないか? という常識的な思考をする。


『太古のアルシオンは、同じ血が出しゃばるのを嫌がったんだ…

 文句なら、それを望んだお前の大事なアルシオンの方に言え』


アストラストの言葉にフォレストは笑ってそう返す。


『アルシオンもコウも昔と同じで、相変わらず博打戦略が好きだよな

 まぁそこが、懐かしくもあり、人間らしくて好きは好きだが…』


フォレストの言葉を受けて、そう応えるアストラスト。

そう呟いた後には二人は互いに昔を思って、笑い合ったのだった。




ハァ、ようやく

1章で書いてやろうかなぁとウズウズしていた

B級人類誕生秘話の、半分が書けました…


シードの生活中での説明でも良かったんですけど

やっぱ、遭遇戦で問答無用で相手を抹殺しないといけない

ってシーンで言ってこそ、どんだけトラウマなんや?ってのが

感じれると思ったので…


まー、本編でも外伝でも、描写的に出てくるか疑問なんで

ここで捕捉しておくと、この時代は、母星の惑星バリア技術が

ものすっごく高くなっているんで、実は、色帝と技術貿易してる

星系国家には、核ミサイル程度は、有効に効きません。

迎撃システムも強力だし、

放射能を抑える技術も高いし爆発から保護する技術も高いので

核兵器を使うというアイデアが、今で言う所の

マスケット銃使って戦うんか?的な位置付けです。


なので、色帝の連邦に加入して、エネルギー貿易すると

作り方は教えて貰えませんが、防御装置を売って貰えるんで

母星を核攻撃で陥落させるのは不可能なのが、色帝加盟国の常識です。


にもかかわらず、この条項が生きていて、強制執行されるのだ、

というのが、この法のトラウマ性です。


またサファナムは、華帝国が戦力撤退を元々して

200年前に完全撤退したので、基礎技術力が、

5000年近く退行しています。

(どの星系国家も、実の所、色帝の超越技術を貿易で手に入れて

 ブラックボックスとして使っているので、

 その技術貿易が無くなって、自力で技術開発すると、

 この時代的には冗談の様なレトロ技術まで退行するという設定です)


なのでクライドの母星は、核攻撃の防御も出来ずに壊滅した…

という、微妙に苦しい解釈設定で、設定してます


いや、1000年の間に、そこまでバリア技術も装置が劣化して

失われるモンかなー?ってのは書いてる自分が疑問なんですが…ww



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