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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第1章:Communication 忘れかけていた杜ト詩
35/43

第三十三節 機動要塞戦艦アルフォーレシード

はい、ようやく、1章の最終節です…

ハー、長かった… Orz

『すみません、クライドさん…

 少し…3日か4日ほど、皇帝の仕事をする為に

 あの子を帰宅させられないのですが…』


そう陛下がクライドに申し出てきた。


「え、えっと…

 それはもしかして…プリメーラが望んだ地球に行く為の

 宇宙船を作る為にですか?」


陛下の方のプリメーラがそう言って来たので

ストレートにそう尋ねてみるクライド。


『ええ、まぁ…

 その様なモノですね…

 ちょっとクライドさんは驚かれるかもしれませんが…

 汎銀河帝国の皇帝って、何でもかんでも自分で決めれるのではなく

 色々な諮問機関との会議で、意見調整が必要だったりするんです…

 そういう宇宙船を作るにしても、認可の為に色々な申請が必要でして…』


そう言って苦そうな顔をするプリメーラ。


「ええええ、皇帝陛下でも、申請とか会議とか必要なんですか…

 それじゃ大統領制度や議会政治と何にも変わって無い様な…」


プリメーラの言葉を聞いて

クライドは『皇帝』という言葉に抱いていたイメージと

そのプリメーラの行動の不自由さのギャップに、

もっとその状態が近い政治体制での役職を口にしてみる。


『ふふふ…あまりにも巨大組織になった帝国制度なんて

 結局、議会制や大統領制度の様式にある程度沿うしかないんですよ…

 本当は戦乱に陥る前の皇帝職なら、在位の任期もありましたので…

 汎銀河帝国の皇帝なんて、実質的には小数選挙で成り立っている

 大統領制度だったのですよね…』


言ってプリメーラはクライドの指摘を部分的に肯定した。

そして、その会話の後に、彼女はクライドの意識では

宇宙船を作る仕事に向かったのだった。


「陛下は嫁じゃねーけど…

 今の俺は、働く嫁を家で見送る専業主夫の様な気分だな…」


手を振ってそんな彼女を見送ったクライドは、

そう呟いて、今の自分の無力感に腐るのだった。






プリメーラはクライドに嘘をついていた。

宇宙船を作りに仕事に出たのではなかった。


そうではなく、事故的に出来てしまった『銀河の扉』の実験機

それを完成させ、実証試験を進める為に、フォレストに疑似体で現れて、

その建造工事の詰めを指揮していたのであった。


だた、作るというのは本当の話であり

ガイアポリスの工事能力でさえ、3日はかかるだろう

という見積もりはその通りだった。


また、自分の分身が起こした『ガイアの魂』との異常共鳴の事もあって

自身でフォレストの直接起動管理をしなければ危険なのではないか?

という寒心もあり、この様な陣頭指揮に立ったのであった。


プリメーラはガイアポリスにて、誰も見ていない…

少なくとも『生者』は誰も見ていない状況で

フォレストの祭壇で、白の祭儀の舞、起動の舞を行い、

ガイアの魂も使って、フォレストをフルドライブさせていく…。


それを見物に寄ってくる、人類の外側(エクスターナル)の議員達。

1000年前に、最も美しき巫女と賞賛された彼女の祭儀だけあって

それだけで見応えのあるモノであった。


また、フォレストから見える、巨大な実験装置の建造様子も

同時にそこから見る事が出来た。


「いや、アサコ…死人とは言え、生き延びてみるもんだねぇ…

 こうも壮観な光景を見られると、人類の外側(エクスターナル)になるのも

 思ったほどには悪く無い…とね…」


そう言ってコウは自分の嫁であり、

古代にも嫁であったアサコ大公妃に声をかける。


「死人が生き延びるとは、相変わらず面妖な物言いじゃの…

 我が旦那様殿…

 じゃが、言葉の整合性はともかく

 この光景が見えたのは、確かに至極上々…

 少なくとも1000年前の、クラーリンを作る光景を

 見守っていた時よりは、気分が良くありますぞ?」


そう言って扇子で口元を隠して、ホホホと彼女は笑う。


「ガイアポリスは、今や、我々、地球人評議会の死人以外は

 生きている者等、一人も居なくなった寂しい帝都だけど…

 人間が居ないのは兎も角、帝都機能を守る無人システムは

 未だに健在の大帝都だからねぇ…

 あんな巨大な建造物でさえ、

 圧倒的な量の無人のクラーリンもどきで、

 どんどん形が出来ていく…

 いやはや、こんな恐ろしい建造システムが

 銀河中枢に未だに存在していると知れば、

 六色帝国とか粋がっている、我等の子孫も絶句するだろうね…」


そんな古代の嫁を相手に、コウはフォレストから見える

ガイアポリスの、巨大すぎる工作工房の天体群と、

そこにひしめく億単位を越えて、兆単位に届こうかという

無人工作機械を眺めて、溜息を付く。

作業はフォレストの全力演算の助けもあり、急ピッチで進んでいた。


「じゃが、この銀河の工場は、

 今は絶望ではなく希望を作っておる…

 我等が死者となっても、存在を残した矜持は

 我等の子らに希望を残す為なのじゃから…

 我は今は満足じゃ…」


そう言ってアサコはコウの腕に自分の腕を絡ませる。


「そうだね…

 残して繋いでいく事こそ、私達が私達である信念なら

 今、姫によって作っていただいているこれこそ…

 本当の意味での、全ての杜の為の種子、なのだろうね…」


アサコが寄り添って、その頭をコウの胸に預けるのを感じ

コウはそう言って、目の前で、

プリメーラ姫の白の祭儀の舞によって

フォレスト達に組み上げられている人類の希望を熱く見つめた。


この扉を作れば、白い華を届ける事はできるだろうか?

それを問いかけて、コウは微睡む。







森で過ごして、習慣になったトレーニングをして

適当な食事を作って食べて、風呂に入って寝る。

それを3日間、繰り返す。


そんな淡々とした生活が続いた。


陛下の言葉では、明日ぐらいには帰るだろうと言っていた。

その3日目の就寝時間に、ベッドの上でクライドはぼやいた。


「独り寝がこんなに寂しく感じるなんてな…

 自分でも、そう思う事に驚くんだが…」


そう腐って、クライドはただ待つだけの生活で、

プリメーラに会えない日々に苦痛を感じた事を恐怖する。


確かに結婚らしいものをしたはしたが

それは形式的な問題解決が最優先であって

気持ちの在処はゆっくりでいいじゃないか、というスタンスだった。

しかし、こうも嫁に会えないと、

嫁と普通に一緒に寝れない事に猛烈な寂しさを感じる。


「まぁ好きなのだし、惚れているのは自覚しているし

 だから寂しい…そう思うのは仕方がない…って思うが…

 いや~、しかし、一緒に居られないってのは、

 本当に寂しいモンだなぁ…

 これは驚いた…

 軍務生活の訓練で一人で孤立した場合の

 精神耐久訓練ってのもやったのになー

 あの時は、もっと長い時間、一人で耐えれたのに…」


そう呟いてベッドの上で呆然となるクライド。

出会ってから、たいした時間ではないのに

やはり記憶の共有化で、知った時間の多さからか

よく知っていると思える彼女が、いざ側に居ないとなると

耐え難い苦痛を感じる。


「ああ、これが恋い焦がれるって奴なのかなぁ?

 合いたいなぁ寂しいなぁって思うこれ…

 これが…恋しいって言葉か?」


呟いてクライドはボンヤリとする。

そして、その言葉で、自分の気持ちの矛盾に気付いた。


「あれ?俺達、夫婦で、もう結婚してんだよな?

 なのに、一緒に居られなくなって、恋しいって思うとか…

 恋してるかも?とか…順序があべこべじゃね?」


クライドはその時、その逆転状態に気付いて眉をひそめた。


『まぁ恋しいってのは、一緒に居られなくなって

 ようやく感じれる感情ですし…

 順序があべこべでも、状態が崩れて

 ようやく思いの深さに気付けるというか…』


シードはそんな間抜けな事を言うクライドに、

そんな言葉でフォローを入れてみた。


「なるほどなぁ…

 こういう事を積み重ねてないから、

 結婚しましたーって言っても、なんか釈然としないのか…

 でもまぁ、こう思えるって事は…

 随分、プリメーラは、俺にとって

 居てくれないと困る人になってんだなぁ…

 出会った時間だけなら、そんなに時間は経ってないのに…」


シードの言葉を受けて、そう漏らすクライド。

もう少し、大人な感情で好意を持っていた…

つまり、ある一種、自分の娘や妹的なイメージで

好きなのだと思っていたが、

普通に女性として共に在りたい人だとも思っていたのか、と、

今の感情を眺めて、驚くクライド。

そこら辺は微妙な所で、同じ顔の陛下の方のプリメーラが

イメージとして重なっているので、少女のプリメーラに

成人の女性のイメージを重ねて感じているのかもな、とも考える。


髪の色以外は容姿が同じ彼女達である。


どう見ても、対称的な二人だったが、

同じ容姿という所がそんな二人を残像化させるのだ。


『むー、姫が居ないのでお困りの様ですねぇ

 そんなクライドさんには、

 私からスペシャルアイテムをあげましょう』


その時、シードは最大の悪戯心を伴って

クライドに素敵なプレゼントを投げつけた。


「おわ!?」


その投げつけられた柔らかいモノを受け止めて、

その物体に驚くクライド。


「おまっ!何をいきなり投げつけてくるんだ!」


と体でキャッチした人間大の柔らかいモノを抱え

宙に抗議するクライド。

そして、何を投げつけられたのか、抱えたモノを見て確認するが…


「おい、ちょっと待て! これは何だ!!」


その投げつけられた抱き枕を見て、シードに奇声を上げる。


『独り寝が寂しいクライドさんの為に作った

 メーラちゃん抱き枕ですが…何か?』


クライドの問いにそう返して、シードはニヤニヤした。


「ちょ、お前! (しもべ)って言葉の意味わかってる!?

 自分の主人のこんな抱き枕なんか作って良いと思ってのかよ!!」


クライドはそう叫んで、そのシードが作った抱き枕…

緑メーラの服がはだけて半裸気味でポーズを取っている

彼女の艶やかな姿が描かれている抱き枕を前に

とんでもない主への背信行為に、絶叫するしかなかった。


『いや、個人的にはかなりの力作が出来たと思っていますが…

 一人の時でも、こんなプリメーラ様の抱き枕を抱えて寝れば

 快眠間違い無しの一品かと!』


そこで、そのポンコツは、そう答えて胸を張る。


「アホか!!

 こんな艶やかなモン抱いて寝たら、

 逆に悶々として寝られなくなるわ!!

 それも、すげぇ出来が良いのが、なお質が悪いな!!

 アンタ、俺を悶絶させて楽しんでる!?」


そのポンコツに、そう力強く抗議するクライド。

しかし、その抱き枕は勢いで脇に強く抱えてしまった。


『まぁ、私が愛する姫を、突然奪った、唐突な姫の旦那ですからねー

 だったら、こんな悪戯ぐらい、したくなるじゃないですかー』


そう言って思考空間の中で舌を出すシード。


「あー、そういうアンタの嫉妬心なの…

 そう言われると、間男的なのが俺ってのが分かるが…

 しかし、それにしてはこれ…

 アンタの嫉妬の心か、もてなしの心か、よーわからんモノだが…」


シードの言葉に奇妙な納得をして、機械なりの嫉妬は理解できた。

しかし、非常に艶やかに描かれた

プリメーラの抱き枕の絵をまじまじと見て

シードのクライドへの要らん思いやりが

そこに深く込められているのかとも思えて

どう評価していいのか分からなくなるクライド。


試しにちょっと抱き枕を抱きしめてみる。


「あ…、あかん…これは、駄目なヤツだ…

 錠剤無くても、頭の中がおかしくなる、ヤヴァイ奴だ…

 駄目、駄目…

 美人遺伝子って、絶対に駄目…

 駄目ゼッタイ…

 写真絵でこれって、本当にヤバイ…」


そう言ってクライドは、

抱きしめてみた抱き枕と、そこで対面した互いの顔に

その抱き枕の持つ恐ろしい魔力を感じ

その潜在的恐怖に、それをベッドの下に押し込んだ。


とても危険なモノだと分かって居ても、

破る事も出来きず、勿体ないので、しまう辺り

出来の良い一品への賞賛心と嫁への愛情であった。


『何するんですか!クライドさん!!

 自分の嫁をベッドの下に押し込めるとは

 どういう了見なんですか!!』


そんな自分が心を込めて作った一品をお蔵入りさせるクライドに

強い抗議の言葉を放つシード。


「人聞きの悪い事を言うな、ポンコツ人工知能!!

 こんなモンを作って渡してくる様な、頭おかしい人工知能に、

 言葉だけなら、まっとうに聞こえる

 批判なんか言われたくないよ!!」


そう言ってシードのポンコツっぷりに唖然とするクライド。

最初に出会った時にポンコツだと思ったが、

今回の事で本当にコイツはポンコツなのだと得心する。


どういうロジックで計算したら

自分の主人の服脱ぎかけの半裸寸前絵が描かれた抱き枕を

作ればいいじゃないか!とか考えれるのだろう…


『しゃーないな…

 じゃあ、この程度にデフォルメしたのなら

 どーですかね?』


シードはそんなクライドの反発に腐って、

もう一つ作った、ぬいぐるみ的な、枕代わりにもなる一品を投げつける。


「なんだこれは…」


その投げつけられた一品をキャッチして、

それを見て愕然とするクライド。


『それは、メーラちゃん人形です!

 そのダイナミックなデフォルメを見て下さい!』


そう言って胸を張るシード。

クライドはシード曰くの『メーラちゃん人形』を見て目が棒に成った。

それは、彼女を二頭身にデフォルメして、

顔のディティールなんかを、棒的な抽象化をして

『ぬいぐるみ人形』的にしたモノであった。


「いやまぁ、彼女の特徴は上手くデフォルメされてるし

 あの抱き枕の様な扇情性は、欠片もない、可愛い人形だが…

 これはこれで、どうよ?」


クライドはそう言って、メーラちゃん人形に呆れる。


『まぁ、でも、その程度なら、背徳感とかは生まれないでしょう?』


そう言ってシードは笑った。


「いや、背徳感は生まれないけど…

 これを枕に寝たら、んでもってその光景を嫁に見られたら

 家に帰らさせて貰いますって、嫁に泣かれないか?」


クライドはシードの言葉にそう返して呆然となる。


『んーーー、どうですかねぇ…

 一回、実験でやってみたらどうですかねぇ?』


クライドのその感想に、実際にそうなったら

プリメーラ姫はどんな反応をするのだろうなぁと思い

それはそれで見て見たいと思うシード。


流石に、離婚だ!何だという話には成らないと思うが

自分のデフォルメ枕で眠られて、それにキレるかどうか…

そこら辺は、博打の領域だなぁと思う。


だからやってみたいという冒険心が生まれるのだった。

どうせ、被害を受けるのはクライド氏だし…


「まぁ今日の所は、ある一種の愛情って事で

 この枕に頭預けて寝てみるけど…

 本人の前で、これを使う度胸は無いな…

 ついでに睡眠薬くれ、シード…

 なんか、お前とのやりとりで、ドッと疲れたわ…」


クライドはそう言って、シードが悪戯心で遊びまくった

この時間に疲れ果てて、素敵な眠りを求めたのだった。


そんなクライドの言葉に肩を上げて、要求通りに睡眠薬を出すシード。

それでクライドは眠りの世界に、

メーラちゃん人形と一緒に旅立ったのだった。



そんな二人の漫才のやり取りを、

仕事の休憩がてらに、眺めていた赤い髪のプリメーラ。


あの二人は、この大事を前に、何を楽しく遊んでいるのか?

と、怒りを通り越して、呆れるしかないのだった。








そして4日目が来たのだが、その日は何かが異常だった。

あれから、地球の時代の記憶という夢をクライドは見てない。

ぷつっと止まったかのように、ガイアの夢を見る事は無くなった。

だが不思議と空気を感じる事は在り、

特に、自分をクライドと同じ大地だと言った始祖の母

レアルが、いつも側に居るような錯覚を感じていたのだった。

いや、それはクライドが大地を歩いている時…

自分もクライドも大地だと言われた時から、大地を意識する様になって

大地を歩いている時に感じてしまうのだ。

それが錯覚なのか、言葉からの意識なのか、よく分からないが

それならそれでいいじゃないかと思うクライド。


自分は大地だ。


そう思え始めた時、クライドにはそれがしっくりと来た。

誰かが支えなければ、大地の上に何かを積み重ねる事も出来ないのなら

その支える誰かになる事、それぐらいは自分にも出来るのではないか?

そう思えた。


そう思いたかっただけなのかもしれないが…

それでも、そう思えた。


そんな事を日中、ボンヤリと考えて過ごしていたら

シードが、陛下が地上の方に帰ってきたと伝えてきた。

そして、会いに地上に上がって来て欲しいとも言っているそうだ。


それを聞いて、ただ「そうか」と、だけ応じるクライド。


クライドにとっては、何の心の準備もなかったので

また何かの特別な話があるのだろうかな、

程度にしか思っていなかったのだった。


それに対して、シードは深い溜息を付く。

陛下が重要な仕事に出ている間に、

自分自身も、決まったそれに従って、全てをメンテナンスしていた。

とても3日で1000年の錆が全て落ちるハズも無かったが

それでも、命令があれば何時でも動けるだけの準備はしていた。

なので、これからの事に対して、不足は無かった。


シードは時間を見つめて、これまでの1000年を振り返る。

長かった様な、ただの一瞬の出来事であった様な…。

それを思って、僅かに微笑んだ。



クライドは、惑星パシュメセウス…

いや、1000年前は惑星プリメーラと呼ばれていた

惑星の上にシードにトランスポートされて立っていた。


相変わらず周囲を見れば、放射能の汚染で死んだ大地が広がるばかり。

そこは不毛の大地だった。


そんな汚染地帯の中でバリアフィールドを張って貰って

その場に、生身で居る事が出来ているクライド。

周囲は大気異常で、放射線濃度も危険レベルだというのに

生身で居られるというのは、やはり不思議な感覚だった。


そうやって惑星の上に立ち尽くすクライドに対して

不意に、赤い髪の方のプリメーラが、遠くに現れた。


彼女自身が光子なので、光輝いて現れた姿は、

夜の時間に入っている、今、クライドが立っている場所では

とても容易に視認できるのだった。


プリメーラは、ゆっくりとクライドに向かって歩いて来た。

ゆっくりと、ゆっくりと…その思いを確かめる様に

その一歩に思いを込め続けて、歩いて来た。


そして遂に、クライドの側までやってくる。


その時クライドはプリメーラが両手で

腰元に何かを抱えているのを見つけた。

それは白い華だった。

先日にクライドが言葉の中でイメージした白い華。

それを彼女は手にしていたのだった。


無言のまま、彼女はクライドの至近まで歩み寄り

微笑みながら、そっと白い華をクライドに差し出す。

クライドは、そんな幻想的な光景に飲まれて、その白い華を受け取った。

そして渡された白い華をじっと見つめる。


それはとても美しい、白い華だった。

名前は何というのだろう…


それは分からなかったが、クライドは不意にその華を

この不毛の大地に植えてみようと思った。


どうしてそう思ったのか分からなかった。

だが、そうしてみたいと思ったから、そうしただけだった。


土を掘り、そこに白い華を植えるクライド。


不毛な大地、死んでいる大地に、クライドは植林をしていった。


そしてその大地に、白い華が一輪咲く。


その光景を見つめる二人。


そして思わず、同時に笑い出す。


「ははは…

 俺の周囲に張られているバリアフィールドが無くなれば

 直ぐに生きる事もできなくなる…

 そんな、無意味な植林なんですけれどね…これ…」


そう言って、クライドは自分の行った行為が

如何に馬鹿馬鹿しい事だったのかを、自虐するしかない。


『そうですね…

 きっと、何の意味も無い行動なのでしょうね…』


プリメーラもそう受けて、その白い華の哀れな未来の運命を口にする。

その言葉にクライドは胸が焦がれる様な思いになった。

無意味…そう無意味な事だ。


「これと、同じ事を地球にしに行きたいなんて…

 どれだけ俺は、馬鹿馬鹿しい事を望んでいるんですかね?」


言って、その一輪の華を添えに行きたいという

自分の衝動を笑うしかなかった。


あまりにも、意味の無い行動。

あまりにも、無価値な行動。

あまりにも、自分勝手な行動。


そんな事は分かっていた。

こうやって、それをやってみれば、

それがどれほど感傷の為だけにしている事なのか、よく分かる。


それでも…

それでもだった…


『そう、馬鹿馬鹿しい行動です…

 頭が良いとはとても言える行動ではないです…』


プリメーラはクライドの言葉を受けて、

その言葉をそのまま受け止める。

クライドは、その指摘に俯いた。


何をしたいと思ってしまったのか…

こんな、やっても仕方のない事を…


しかしその時、プリメーラは微笑んだ。


『でも、きっと意味は無いんでしょうけれど…

 綺麗ですよ?

 この白い一輪の華…

 そうではないですかね?』


そう言って彼女は不毛の大地に咲いた、

一輪の白い華を指で指し示した。

その言葉と、指の仕草に、その華に目をやるクライド。


バリアフィールドの中で緩く吹いている風に揺れながら

不毛の大地に咲いた一輪の白い華は、

それでも一生懸命、その体を揺らし咲き誇っていた。


その白い軌跡を見つめるクライド。


「そうですね…ええ…

 とても綺麗だ…」


プリメーラの指摘を、そのまま肯定するクライド。

綺麗だった。

不毛の大地に咲いている、一輪の白い華だからこそ

余計にそれは、栄えて、綺麗だった。


「こんな綺麗を見たい為だけに…

 何処までも勝手になりたい…とか…

 俺は、物凄いアホなんだろうな…」


そう呟いて笑う。

それでもクライドは自分の中にある、

地球に焦がれる思いにその身心を焼かれるから、

そんなアホである事がむしろ嬉しかった。


どれだけ馬鹿馬鹿しいと分かって居ても…

その白さに敵うモノなど、無いと思えたから…

だから、その綺麗に、駆け抜けてみたいと思ったのだ。


クライドの呟きを聞いて微笑むプリメーラ。


『でも、そんな物凄いアホだから…

 だから、それが人間なのだ…

 とか言ったら、みんなからは笑われますかね?』


プリメーラはクライドの自虐に、そう言葉を添えて

その逆説を尋ねてみた。

その問いを聞いて、目蓋をしばたたかせるクライド。


「まぁ、きっと笑われるのでしょうけれど…

 でも、俺は、そんな人間が好きですよ…

 だから、そんな人間で居たいんです…」


クライドはそう言って笑って答える。

その答えを聞いて頬を緩ませるプリメーラ。


『奇遇ですね…

 実は私も…そんな人間が大好きなのです。

 無意気な事をするからこそ、人間なのだと

 私は思いたい…』


プリメーラはそう言ってクライドに返した。

その言葉を聞いて、互いに視線を合わせる二人。

次の瞬間には、また互いに笑っていた。


自分達の、どうしようもない…人間という馬鹿さ加減に。


そしていつしかお互いに笑うのを終え

微笑んだままで、プリメーラは意を決して問いかけた。


『最後にもう一度聞きます…クライドさん…

 貴方は、地球に、出会いたいですか?』


そっと、しかし凛とした声で、プリメーラはそれを尋ねた。

その問いかけをもう一度受けて、目を大きく開くクライド。


静かな微笑みを浮かべていた彼女だったが

その潤んでいる瞳には、全てを決める覚悟が映っていた。


だからその問いに応えれば、決まるのだと分かった。


とても大事で、とても大変な事が。


それが分かったクライドだったのに、

それでも…

多くの命が失われるかも知れないと

強い警告を受けていたのは分かっていたのに

それでも…


それでも…クライドはその時、

その白い華を咲かせに行くという、

全く無駄な事の魅力に、抗う事が出来なかった。


それが彼の、大地という信念だった。

だから応える。


「はい…俺は…いや…

 私は、地球(あなた)に出会いたい…」


クライドは自分の周囲に感じた、ガイアの気配に魅せられて

プリメーラではなく、ガイアに向かってそう言った。


何故なのかは分からなかった。


だが、それでいいのだと思えた。


私は、ガイアに出会いたい。


それだけでいいのだと、思えたのだった。


『………』


ガイアに出会いたいという思いが、

彼がそれを知っているわけもないのに

そう思っているという事が確信できて、戸惑うプリメーラ。

いったい何故この地球人は、知らないのに分かってしまうのか。

それにどうしても呆れる。

だが、今はそれがとてもいい。

そう思えた。


『そう…ですか…

 そう……

 ふふ…なら…仕方在りませんね…』


クライドのその返事に困ったような顔になって

それでも微笑みながら、プリメーラはその言葉を受け止めるしかなかった。

その言葉でプリメーラの最後の迷いも振り切れた。


プリメーラは半回転して、クライドに背を向けて、

その方向に歩くような仕草をしながら、独り言の様な言葉を呟き始める。


『ただ待っていれば勝ちが転がり込んでくる、

 つまらない戦争でした…』


そう呟いて、自分のしてきた空しい戦争を評する。


『でも勝つだけでは、この御伽話の本当の答えを

 見つけ出す事は出来ないのです…』


プリメーラは言葉を発して、瞳を潤ませ、勝利よりも大事な…

御伽話の果てにある、人々の答えの事を思う。


そして彼女は振り返ってクライドを見つめた。


『だから、貴方に少しだけ賭けてみます…

 貴方は、大地(アース)だから…

 貴方なら、宇宙怪獣の御伽話…

 その答えに、たどり着けるかもしれないから…』


プリメーラはそう囁いて、柔らかい微笑みを浮かべた。


「?」


そんなプリメーラの、よく分からない独白に眉をひそめるクライド。

何を自分に賭けると言っているのか?

それがイマイチ、よく分からなかった。


だが、プリメーラには、もうそれ以上は

クライドに語りかける必要も無かった。


空を見上げる。

そこには何時も星の大河。

それを見てプリメーラは微笑んだ。


そして、1つだけ深呼吸して、心を落ち着かせると

プリメーラは声を発する。


『さぁ起きなさい…アルフォーレシード…

 私達の…航海を始めますよ…』


プリメーラは透き通った声で、その宇宙にそう言葉を放った。


その言葉を聞いて、項垂れるシード。


『御意…』


項垂れた後には、自分が何物なのかを思いだして

その自分の存在理由に、ただ身を任せる事を決めるシード。

シードはようやく目を醒ました。


『システム…

 『全ての杜の為の種子 (All Forest By Seed)』再起動します。

 私は、Al-Fore-Seed (アルフォーレシード)

 全システム緊急復旧開始。

 全サブリアクター起動開始…臨界まで回します…』


彼がそう言ったとき、大地が鳴動し始めた。


「え?何?」


そんな地震が起きるかのような大地の鳴動を聞いて

周囲を見回すクライド。


『クライドさん…

 アルフォーレシードを飛ばしますので…

 私達も少し、高い所に移動しますよ…』


プリメーラはそう言うや、クライドに力場をかけて

二人で、どんどんと上空に昇っていった。

そう、どんどんと、恐ろしいまでに、上空に。

二人は空を飛んで、浮上していったのだった。


「え!?どういう事です!?

 飛んでる!?

 いや、ちょっと…高い!高いです!

 高いですよ!!陛下!!!」


物凄い上空に、プリメーラと一緒に飛んでいったクライドなので

その様に、パニックに陥るしかなかった。


『いえいえ、まだまだ…

 上空10kmまでは、最低でも離れないと…』


そう笑って、プリメーラはクライドと一緒に飛んでいく。


『電磁界制御フィールド展開…

 誘電加熱、誘導加熱、赤外線加熱、アークプラズマ加熱、

 全力全面展開…

 船体外壁にプラズマバリア展開…

 船体周囲を融解させます…』


シードがそう言って、何らかの力を空間演算した時

クライドは信じられないモノを見た。


上空のクライドから見える大地の全てが、赤色加熱しており

その赤色はどんどんと強くなって…

見渡す限りの大地が、マグマに変わっていったのだった。


「ええええっっ!!!!」


死んだ石の大地が、見渡す限り、マグマになっていく様に

目を見張るクライド。


『熱流化大地に強制電子照射(チャージ)を与えます。

 超高電圧展開で、プラズマ流体化に移行…

 熱流体大地を流体制御開始…

 プラズママグマ流体を吹き飛ばします』


シードがそう言った後に、そのマグマは爆発した。


「はぁ!?」


急激に大地がマグマ化したかと思えば、それが爆発する。

その光景に驚声を上げるしかなかった。


『うーん、まだ高度が足りませんでしたねぇ…』


プリメーラはそう言って、アルフォーレシードが吹き飛ばした

マグマ流が、自分達の所に吹き飛んできたのに対して、

より強いバリアを張って、それを受け流した。

そして、ハッハッハと笑う。


「陛下!!マグマが!!

 大地がマグマになって爆発!!!」


クライドは目の前で起きている、あまりにも壮絶な光景に

ただ震えて腰を抜かすしかないのだった。


『上部岩盤を熱融解爆破で排除に成功…

 アルフォーレシード…浮上します…』


クライドが恐慌状態になっているのも無視して

シードは淡々とそう言うと、そのマグマの中から『白い大地』が現れた。


「はぁ!?」


自分の眼下、マグマの中から白い大地が浮かび上がってくる。

その光景に目を疑うクライド。


『フィールドモーター、全て、正常に起動中…

 浮上続けます…』


シードは淡々と言葉を重ね、どんどんとマグマの下から

自分自身の白い大地を浮かび上がらせてきたのだった。


『何分、アルフォーレシードは大きな船ですからねぇ…

 再起動しても、普通の船のように軽快には動けませんので…』


言ってプリメーラは悪戯っぽく笑いながら、

自分の船が、ゆっくりと現れてくるのに肩を上げるしかなかった。


「え!?アルフォーレシードが、船!?」


プリメーラが、ようやくそれを教えたので、それに驚くクライド。

だがそれよりも、船とかそういう問題以前に

見渡せる大地、その視界円の半分程度が、

マグマ化して吹き飛んでおり、そしてその中から白い大地が

どんどん浮上してきている状況の方が問題だった。

船などではない、大地が浮上してきているのだった。


そしてその白い大地は、マグマを押しのけて浮上する度に

船体に光子を纏わせ、同時にプラズマアークを

その大地のあちこちで、放っていたのだった。


『はい、アルフォーレシードは私の船…

 汎銀河帝国皇帝だけに作られた、皇帝の船…

 ゼオ級機動要塞戦艦・皇帝旗艦アルフォーレシード

 それが、彼の名前です』


プリメーラは高らかに、彼の名前をそう語った。


「ゼオ級機動要塞戦艦・皇帝旗艦アルフォーレシード!?」


プリメーラの言葉に、それが宇宙戦艦らしきモノだ

という事が分かって、絶句するクライド。


「シード、お前、宇宙戦艦だったのかよ!?」


そこでようやくクライドは、

何を相手に語り合っていたのか理解した。


『はい…私は、実は…宇宙戦艦でした…

 いやー、分類的には…宇宙戦艦というよりは

 機動要塞の方が適切分類かもしれませんがねーー』


そう言ってハッハッハと笑うシード。


そんな間抜けな会話をしている間にも

白い大地は、どんどんマグマを掻き分けて浮上してきたのだった。


「っていうか、どこが宇宙戦艦なんだ!?

 白い大地が浮上してるだけだぞ!!

 船って言うか…大地じゃん!!白い大地じゃん! 何これ!!」


そんな眼下の様子に、クライドは見たままの

『白い大地』の浮上に、騒ぎ立てる。


『まー、アルフォーレシードは、

 一番長い所の全長が、400kmありますからねぇ…

 船体の全てが出きらないと、白い大地が浮いてきてるだけにしか

 見えませんよねぇ…』


そう言ってケタケタと笑うプリメーラ。

クライドが予想通りの反応をしたのに満足して、

その時ばかりは心の底から笑った。


「は!?全長400km!?

 それって、小天体の大きさじゃないですか!!」


クライドはプリメーラに説明された

その船の大きさを聞いて、絶句するしかなかった。

そんな大きさは、もう宇宙戦艦とか、そういう分類の存在ではない。

小であっても天体だった…。


『はい!

 アルフォーレシードは私の為の銀河最強の宇宙戦艦なので!

 大きさも規格外なんですよ!!』


言って、クライドと一緒に空を飛んで、

ようやくその姿を見せ始めた、

その船体の様を色々な角度から見るプリメーラ。


その船はどんどん浮上を続けたので、

プラズマアークを自身のあちこちに放ちながらも、

その全体のシルエットが見えて来た。


半円の巨大アーチに羽のような逆翼を展開し

その中央には、涙滴型の直系15km程度の巨大ドームがあり

その上部はガラスのようなモノで囲われていたのか

ドームの中が見えた。

そこには、周囲が海の様なモノで囲まれていた島があった。

その船は、一見、艦橋の様にも見える所に

生活居住区的な、島コロニーを納めていたのだった。


そして、半円アーチの下には『繋がっていない』本体があり

それが白い大地であり、直線状に地平線が見えるほどに

長く尖って続いていた。


その2つのパーツが組み合っている全体は

宇宙戦艦と言うよりも、逆翼の戦闘機の様な形に見えなくもなかった。

ただし、それらの本体の大きさを完全に無視すればである。


それはあまりにも大きく、あまりにも天体に近いモノだったので

動く度に、プラズマ・アークを放って、

船体の至る所に落雷の発光を見せるのだった。


『さぁ、もう後戻りはできませんよ?

 彼は遂に蘇ってしまったのです!!

 もう、行くしかありません、クライドさん…

 いえ、クライド艦長!!』


そう言ってプリメーラはクライドの前にやってきて、

彼の頭に帽子を乗せる。


「へ?」


頭に乗せられた帽子に驚き、

どういう事なのか分からず狼狽えるクライド。

しかし、プリメーラはそんなクライドを無視して

どんどん話を進めた。


『貴方に、私はこの船を預けます…

 今日から、この船の艦長は貴方…

 クライド・ボル・メトレノイア!

 貴方がこの船の艦長なのです!!

 さぁアルフォーレシード!!

 貴方が待ち望んでいた、貴方の為の艦長の誕生です!!

 お迎えなさい!!』


「は!?」


プリメーラの突然の言葉に頭が白くなるクライド。

しかし、彼の理解が及ぶ前に、シードが動いた。


『御意で御座います!陛下!!

 さぁクライド艦長、メインブリッジへお越し下さい!!

 トランスポート! 我等が艦長をメインブリッジへ!!』


そうシードが叫んだ時に、

二人はアルフォーレシードの中にトランスポートした。


挿絵(By みてみん)


なんだか、

「これ最終回でも書いてるのか?」

という気分で書いていた

これから始まる、第一話的な話…


もう笑うしかないwww


十数年前に書いた、シュヴァ同人だった時の第1章が、

三万七千文字で、アルフォーレシード出撃だったのに

色々と設定変えて、プロットもオリジナルに書き換えて

それじゃぁ、書き直すかい…と書いたら

四十万文字越えって、なんやねん…Orz


確か、二十万文字程度で、

平均的な文庫本1卷相当じゃなかったか!?

\(^o^)/


まー、これは色々紆余曲折あって

元々は3章あたりで考えてた展開を

「でも、それって時間的な構造でおかしいよね…」

って考え直して、1章と3章で考えてた事を

融合させて書いた内容の、合体した新生1章なんで…


となると目安的に、本来の1章平均の文量は

二十万文字くらいになるのか? って所ですが…


まーともあれ、文章ガタガタなの承知の上で

強行軍しての、ようやくの出撃でした…


あーしんどかった… Orz


この節は、出来れば上から下まで、シリアスに行きたかったんですが

メーラちゃん抱き枕は、渋の方で、みんながコミケ遊びの準備してるの見て

抱き枕売りますゼーっての眺めてての、

「そんな、正直にみんな生きれて、ええなぁ」って

フラストレーションからのギャグだったんですが

メーラちゃん人形は、地味に、後々になって使うアイテムなんで

どっかでねじ込んでないとマズく

かといって、2章で、今回の様な、漫才してる余裕は無くなるんで

しゃーないんで、ここにぶち込みました…


気分的に、最終回書いてるような気分だったんで

そこに、シュールギャグ入れるのどうよ?ってのはあったんですが

まー、しゃーないって事で…


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