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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第1章:Communication 忘れかけていた杜ト詩
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第二十七節 海からの誘い

強引は強引ですが、下準備は出来たと思うので

さぁ地球に向かうムードを

出していきましょう

遊び疲れたクライドは、流石に夕食を作る元気も残らず

シードが作ってくれたそれなりに食事の雰囲気が出ている料理を食べ

さっさと風呂に入って眠る。


眠かった。


海から呼びかけられた無意識の声に

体全てが呼応したせいで、それがクライドを眠りに誘う。


だから早々に眠ったのだが、眠りに陥れば今日も夢に遭遇した。


意識が落ち、眠りに入ればそこは海の中。

クライドは眠り落ちた先で、海の中に居た。


見回せば回りには魚達が巡っている。


今日、海の中で見た生物達が、

夢の記憶の整理の中で、もう一度そこに現れたのだろうか?


そうも思って、今日見たはずも無い魚達や海の生物が

自分の周囲を囲んで泳いでいるのを眺める。


夢の中なのにボンヤリとした感覚。


クライドは海の底にどんどんと沈んでいった。

見た事も無い海の生物が、クライドの回りを通りすぎていく。

そして海の深淵に近付けば、声が聞こえた。


「何を思い出したい?」


それはそう語ってきた。


「何を思い出したい…だって?

 何って…特に…何も…

 俺には、もう何も…無いから…」


その問いかけてきた声に、クライドは緩く笑ってそう応える。

いや、その言葉は嘘だ。

もう何も無い、というのは間違いだろう。

クライドにはそう思えた。

ほんの数日前までは、言葉通り、何も無かった。

でも、今は違う。

クライドには、ただ1つだけ生きる理由があった。

ただし、とても大切な理由としての生きる理由が。

だから何も無いとは思えなかったが、

それは今はいつも共にある人で…

思い出すなんて事は、必要無い…。


だから思い出したい記憶なんて無かった。


それに、過去の記憶を思い出したくも無かった。


あの錠剤…

あの錠剤を泣きながら砕く…

自分の母親の、あの姿は…


「そうか…母の姿を思い出したく無い…のか…

 そういう事もあるだろう…

 海から生まれたモノは、全てが母に愛されるという

 都合のいい存在ではないからな…

 だが、それでも…

 お前は愛されていた…

 いや…お前の繋がりは愛されていた…

 繋がりが愛されていたからこそ…

 今のお前はそこにある…

 それをもう一度…私はお前に伝えたい…

 それが、海というモノだから…」


そう、その言葉の主は笑った。


クライドには、不思議とその声が、誰であるか?

という事が気にならなかった。


それはそこにあるのが当たり前で…

そうである事が、そうであるモノだと思えたから…

昨日まで見てきた夢の様に

見えた人が気になる、という事が無かった。


クライドには漠然と分かっていた。

その声の主は『海』なのだと言う事が。


その海に誘われて、クライドは夢から夢に繋がれた。








「ねぇ、マリーちゃん…

 一人は寂しい?」


彼女は、小さな女の子の手を取ってそう語りかけた。


「うんん!マリーよく分からないけれど…

 何時でも誰かが居てくれる様な気がしてるから…

 寂しくないよ!

 それに、綺麗なお姉ちゃん!

 こうやって、お姉ちゃんが、よく会いに来てくれるから

 それに、他の家族もみんな居るから…

 マリー寂しくない!」


そう、その少女は微笑む。

そして暫くの時間、その二人は一緒に遊んだ。

そして二人が遊び疲れた後には

マリーは血の繋がらない…、ともいいきれないが…

直接は繋がっていない彼女の家族達の元に帰っていった。


それを手を振って見送る彼女。

マリーが見えなくなった後に、彼女はそこで泣き出した。

そんな彼女に、青年が近付いてくる。


「元気に育っているね…」


彼はそう言った。


「ええ…それだけは嬉しい事よ…

 私達の…可愛い娘…」


止める事の出来ない涙を溢れさせながら

その彼女は泣き続けた。


「姉さん…そんなに泣くなら…

 もう少しマリーが大きくなるまでは…

 家族として一緒に暮らしてもいいんじゃないか?」


泣いている彼女に向かって、そう語る青年。


「もう、クロト…姉さんは辞めなさいって言ってるでしょう?

 姉と言われると、どうしても背徳感まで重なるのだから…

 こんな成功するかどうかわからない、ギリギリの旅路…

 保険に保険をかけて、近親婚まで奇形が生まれないように

 せっかくフォレストが、調律してくれたのだから…

 私は貴方の姉でもあるけれど、貴方の妻…

 レアルの名前で、そろそろ呼んでよ…」


泣きながらも、そう言って大事な事を指摘する彼女。


「いやいや、レアル姉さん…

 流石にそこまで吹っ切れれないよ…

 マリーの事に関しても…これでいいのか…よく分からない…」


そのクロトと呼ばれた青年は、そう言って肩を上げる。


「私も、この判断が正しかったのか…分からないわ…

 でも親子として一緒に暮らし続ければ、

 マリーはやがて気付いてしまう…

 私達が、人ではない事に…」


そう返して、レアルと呼ばれた彼女は自分の体を抱きしめた。


「人ではない…か…

 辛い言葉だね…それは…

 殺されれば死んでしまう程度の…

 神様にしては、随分脆弱な僕らなのに…」


そう言ってレアルの言葉に苦笑するクロト。

そしてそのまま言葉を続ける。


「本当に、アルファ・ケンタウリは…余りにも遠すぎるよ…

 でも誰かが、最初に辿り着いて…

 あの恒星までの道を作らないと…

 それを支えないと…」


レアルの言葉にクロトも自分の胸元を握りしめてそう呟く。


「そうね…

 まだ道半ば…こんな所で挫けていては駄目ね…

 あの子を産んだ私達だからこそ…

 今ではこの使命を、誰より自分達の事だと思えるから…

 そう…、あの子を産んで良かった…

 たとえ、何時か、辛い哀しみの別れが訪れるとしても…」


レアルはそう言って僅かな微笑みを浮かべる。


「兄さん達の子供も、もう随分大きくなった…

 この船の重職に就ける程に…

 マリーもやがて、そのクルーの1人になるのかな…」


クロトはそう言って微睡んで微笑む。


「そう仕向けるのが私達よ…

 二代目フォレストも、そうなる様に調整しているし…

 まぁどんな、あくどいやり方なのかと…

 やっぱり笑ってしまうしかないのだけど…」


レアルはそう言ってこの船の裏のシステムに苦笑する。

それでも頭を振って、それに言葉を続けた。


「…でも、私達の生んだ子が…

 女の子で良かったわ…

 ちょっとは怯えていたのよ?

 母さんが、勢いに任せてティタンの名前を文字るから

 私達が息子を産んだら、

 それはゼウスにでも成るのかしら?って」


そう言ってレアルは、難しそうな表情ではにかんだ。


「ははは…いくらガイアにあやかったと言っても

 ガイアエクソダスプロジェクトは、

 ギリシャ神話とは別モノだよ…

 だいたい、もし男の子が生まれていたとしても

 どうして僕が、時の神クロノスの様な

 頭のおかしい神様なんかに成らなきゃいけないんだ…

 この船に住む人は、みんな僕達の家族…

 あんな自分の子供を食らうような馬鹿神なんかじゃなく…

 家族のみんなをずっと見守り…

 みんなが道を引き返さず、

 アルファ・ケンタウリに辿り着かせる為の

 監視者として、親として、

 時を見守る番人じゃなきゃ、僕達はいけない…

 そうだろう?レアル姉さん…

 これが、僕達の時代の新しい神話なら…

 新時代の時の神クロノスは、

 時の番人として人類を見守り続けました…

 めでたし、めでたし…って

 それが、この新しい神話のエンディングさ…」


レアルの言葉にそう返してクロトは笑う。


「そうね…

 古代のギリシャ人が考えた御伽話に

 私達が合わせる必要は無いものね…

 クラーリンの御伽話の様な…

 全く救いの無い厭世的な御伽話でもなく…

 人はそれでも生き延びた…

 絶望の淵から、それでも立ち上がった…

 そんなエンディングにしたいわよね…」


レアルはそう言ってクロトの腕に腕を絡ませて

空を見上げる。


「だから、せめて私達の娘…

 マリーに恵みの伊吹がありますように…」


そう、その母は心の底から祈ったのだった。







その夢を見た後に、また冷や汗を垂らしながら

クライドは起き上がった。


何だ今の夢は!

そう思って激しく焦る。


身に覚えが無いを通り越して、

最早、誰かの人生をそのまま見た状態だった。


外を見れば朝。

新しい一日が始まっている。


だが気分爽快に起床できたとはとても言い難かった。


自分の見た夢に怯え、自分が自分である事さえ疑う。

そして周囲を見回せば

目の前にはプリメーラが起きてクライドを見つめていた。

緑髪の方ではなく…赤髪の…『陛下』の方のプリメーラが。


そして彼女は呆然とクライドを見つめながら泣いていた。


『貴方は一体…何者なんですか…クライドさん…』


開口一番に彼女はそう言って、静かに泣いていた。


「は?え?」


最初に出会った時は、王者の風格を持っていた彼女が

その時ばかりは、ただの少女の様に泣いていた。

だからその姿に狼狽えるクライド。


『貴方が…レアル様の末裔だと分かって居ても…

 これは酷すぎです…

 こんなモノを見せられたら、

 私だって泣くしかないじゃないですか…』


そう言ってプリメーラは静かに泣く。


「どういう事!?

 どういう事なんです!?

 俺が見た、あの夢の人…

 陛下は御存知なんですか!?」


そんな陛下の涙と言葉に、ますます狼狽えるクライド。


『知っていますよ…

 私は汎銀河帝国の皇帝なのですから

 知らないわけがないじゃないですか…

 とても大事な…とても大事な…私達の母親の事は…』


プリメーラはそう言って涙を流しながら微笑んだ。


「私達の…母親?」


プリメーラの頓狂な言葉に呆然とするクライド。


『貴方が夢で見た人の名前は…

 レアル・ガイア…

 そして彼女が手をとった少女の真の名は

 マリー・ガイア…

 遙かな太古、遙かな太古に私達まで命を繋げてくれた

 始祖の母親達の2人…

 私と貴方に共通の、ご先祖様です…』


プリメーラはそう言って泣きながら柔らかく微笑む。


「俺と陛下とに共通の…ご先祖様!?

 俺が夢に見た、あの2人の女性が!?」


クライドはプリメーラの衝撃的な言葉に目を見開いた。


『ええ…失礼ながら、貴方の遺伝子を解析させて貰いました。

 すると貴方は、遺伝子情報の解析から

 貴方が夢で見た女性、レアル様の流れが

 少しだけ濃く出ている子孫なのだという事が分かったのです。

 まぁ人類は、全てレアル様の血が入っていますから

 貴方が特に特別な…というわけでもないのですけれど…

 それでも貴方は、夢で見たあの女性…

 レアル・ガイアの系譜に連なる遺伝子を継ぐ人…』


プリメーラはそう言って難しそうな顔になる。


「俺の遺伝子情報が解析されて…

 俺は、あの夢で見た女性の子孫に近い…と?

 いや…ちょっと待って下さい…

 全ての人類は、レアル様の血が入っている??

 それは、どういう事なんですか?」


クライドは次から次へと、プリメーラが不可解な事を言うので

それをなんとか理解しながら、それでもそこで疑問を拾い上げる。


『貴方が昨日見た夢の女性…

 彼女の名前は、ガイア…

 自らをガイアと宣言した、今の人類にとっては

 正にあの神話の大地母神の様な存在…

 昨日貴方が夢で見た彼女は…『人類最初の完成したB級人類』です…』


その時プリメーラはそう言った。


「昨日俺が夢で見た人…

 あの人が、『人類最初のB級人類』!?」


プリメーラの言葉にクライドの表情が強ばる。


『そう…貴方が昨日見た夢の女性は、初めてのB級人類…

 当時は宇宙生活に対応できる新人類として…

 遺伝異常の問題を全てクリアして完成された新人類の最初の人…

 そして、今日、貴方が夢に見た1人の男性と2人の女性

 クロト・ガイア、レアル・ガイア、マリー・ガイア

 それは、ガイアの子供達…

 ガイアが生み出した直系の子供達とその孫…

 第2世代、第3世代のB級人類…

 私達の、遙かな昔の、父と母にあたる方なのです…』


そう言ってふっとプリメーラは手の中に

『ガイアの魂』を召喚した。


「あの夢で見た親子が、俺達の遙かな昔の父と母!?」


プリメーラの言葉に衝撃を受けるクライド。


『この『ガイアの魂』

 この宝玉が、人類の歴史そのものなのです…

 これは当時の人類が地球を脱出して、

 アルファ・ケンタウリに移住する為の移民船

 『エクソダス号』を建造した際…同時に作られました。

 エクソダス号に積み込まれた、二代目フォレスト…

 初代ナレッジ・フォレストの完全なるコピーとして

 恒星移動用巨大宇宙船の管理コンピューターに改造された

 二代目のナレッジ・フォレスト…

 それを動かす為の管理者用の起動鍵…

 二代目フォレストのスーパーユーザーの証です。

 石英の中にフォレストの認証コードを焼き付けられた、

 今となっては、とるに足りない石英の球。

 しかし、今の人類の全ての母、

 ガイアがこれを当時の乗組員となる自分の子供達に

 自らが作って渡しました…

 『私の心は常に貴方達と共にある』

 と、その思いを込めて…

 だから、この石英は『ガイアの魂』

 その当時のガイアの思いが込められて、それを伝える宝玉…

 今にまで続いて、思考天体となったフォレストの

 未だに最重要鍵として機能する、

 人類の歴史を見守り続けて来た宝玉…

 B級人類以上…、今の人類の全て…

 我々の唯一の母、ガイアの魂が、

 物質として形作られたモノなのです』


「その宝玉が…あの…夢で見た人…

 ガイアが渡した…フォレストの起動鍵…」


プリメーラから、遂にその『ガイアの魂』の

最初に見た時から、何故か引き込まれた所以を聞き

ようやく、ただの白い石英水晶なのに

気になって仕方が無く思えた理由を見いだしたクライド。

それは、現代人類の始祖の母の思いを封じ込めた宝玉であった。

だから、汎銀河帝国の中枢である

思考天体フォレストの起動鍵たり得る…秘宝。

つまり、思考天体ナレッジ・フォレストは

人類の歴史によって起動されるという事だった。


『そう、だからこそ人類にとっては大切な記憶

 『ガイアの魂』

 貴方には聞こえるハズです…

 この宝玉を見続ければ、ガイアの声が…

 だからきっと貴方は、こんな夢を見た…

 クライド・ボル・メトレノイア・ガイア…

 私がプリメーラ・ガイアであるのと同じ様に

 貴方もガイアの子供だから…』


「俺が…あの夢で見た人達の…子供…」


『そう…貴方はガイアの子供…

 いいえ、この銀河の誰もがガイアの子孫…

 そして皇帝の直系列の血筋とは

 クロト・ガイアとレアル・ガイアの血筋…

 マリー・ガイアの血の流れに連なる者…

 なので、貴方と私は…

 とても大事な3人の母の…

 その夢を見続けたのです…』


プリメーラはそう言って

泣きながら苦そうに笑ったのだった。








「奥の院様には門前払いだったよ…」


アルシオンは二度の異常事態に話を神域に尋ねにいったが

言葉通りの門前払いを食らった事を、

皇帝のお茶会にて残りの三人に報告する。


「俺達がウィルソード共和国の事で、

 ちょっと出ていたと思ったら、お前達だけで面白い事やりやがって」


ダンフォースはそう腐って、アストラストの大事に

居合わせれなかった事に歯噛みするしかなかった。

無言だったがネセイラも首を縦に振る。


「言うなよ、フォース…

 こっちだって、突然起きた事に対処しただけで

 私達が何かをしたってわけじゃない…

 緊急祭儀でアストラストを沈めただけだ…

 2度目はそれ以前の問題だったが…」


ダンフォースの荒ぶりに、そう声をかけてなだめるアルシオン。


「でも、どうするんだよ?

 こんなに原因不明の現象で、

 帝国予算のエネルギーを消費させられたんだぞ…

 議会の追及に答弁のしようがないじゃないか…

 どうせ、コード666関連じゃないか?って

 そこの切り口で詰問されるんだし…」


そう言ってダンフォースは宙空スクリーンに映し出された

昨日、アストラストが消費したエネルギーの量を見て絶句する。


「まぁ仕方ない…

 ワカランものはワカラン…

 それも、奥の院様ですら、このアストラストの

 完全直轄は実は出来ないという、恐ろしい話まで分かったんだ…

 つまりアストラストは、汎銀河帝国側に近いって事になる…

 それが故に、何を知っていても、教えられないって事なわけだ…」


アルシオンはそう言って頭をかくしかなかった。


「そんな事を議会に漏らしたら、赤色連邦帝国は内部崩壊だな…

 そこまで行かなくても

 ますます、アストラストの依存性を減らして

 独自の思考天体での国家運営にエネルギーを回せって言い出すだろ?

 まったく、こっちの事情も知らんのに

 好き勝手言ってくれるよな…議会の爺さん共は…」


アルシオンは昨日知り得た情報を、ダンフォース達にも語ったので

彼等4人はそれである程度は納得出来たが、

それは皇帝の椅子に座れた人間だけが知る事が許される話であり、

帝国議会の椅子に座っている者は本当の事情は何も知らないのである。

こんな話を、真実を語らぬまま状況だけ報告して

納得させる方が無理というものであった。


しかし1000年前の太祖、アルフレッド・オーラクルムが

実はまだ存命であり、真性の赤帝が未だに在位なので、

真性の色帝の六菱継承が出来ないのだ…など…言えるはずも無い。


そして、それ故に、真性の色帝が在位であるにも関わらず

その時代に同時に六菱の覚醒をしてしまう人間は

遺伝的に完全なイレギュラーなのだ、という事も…。


アストラストの神域という墓場に居る事限定で

不老不死が許される、等…

銀河市民の誰にも知られては成らない話である。


それは究極の皇族特権であった。


しかし同時にその事実は、

アストラストが敵ではない事の証明でもあった。

少なくとも六色革命戦争を起こした、

革命軍の総大将であったアルフレッド帝がこちら側に居るのである。

アストラストが汎銀河帝国の完全な下僕であったら

そんな事が起きる事さえ有り得ない。


だから、議会のアストラスト不審は、本当の所は的外れなのだ。


過去の歴史を焚書して過去の事実を隠蔽しているから

アストラスト及び各色帝のガメット級思考天体は、

汎銀河帝国の中央に通じている裏切り者ではないか?

という連邦帝国議会の思考天体不審は…。


だが、その、一番、語れば誰もが説得できる事実を

言う事が出来ないのが赤色皇帝という立場であった。


そんな言えない真実を抱えて頭を抱える4人。


「まぁ、議会の事はおいおい考えるとするとして…

 メリシアが見た、この人…だよなぁ…」


ともかく、議会という頭痛の種を一先ず棚上げにして、

赤色皇帝という立場で考えなければならない事に

話を切り替えるダンフォース。

宙空スクリーンに、メリシアが見た人物の映像を映して溜息をついた。


「うん…アストラストが、何らかの交信を行っていた…

 多分…流血の女皇帝…と思われる人だが…

 太祖が漏らした言葉が、大問題だ…

 太祖の妹が…流血の女皇帝…」


アルシオンはそれを口にして、より深い溜息を付く。


「どーいう話なのかな?それは…

 焚書しきれなかった地方の過去資料調査から

 お前が予想していたのは、華帝国出身の色帝…

 って話だったのに…

 アルフレッド帝の妹って事になると、

 赤帝出身って事になるぞ…

 つまり、俺達の帝国が、

 1000年前の戦争の火付け元って事になる…

 そんな話になったら、1000年前の革命戦争で

 どうして兄妹で白帝争って戦争したんだ?って

 意味不明の内紛話になっちまうぜ…

 今まで俺達が必死に解いていたパズルが、

 全部、ちゃぶ台返しされた様な気分だぜ…」


ダンフォースはそう言って机に突っ伏した。


「まぁそれ以外にも…

 過去のオーラクルム家の汎銀河帝国での立ち位置は

 赤帝が必ず白帝にならなければならん程の

 古代から続く、大名家って事も分かったんだ…

 という事は、恐らく、汎銀河帝国においては

 オーラクルム家、及び、赤帝は筆頭皇族だったのだろう。

 予想でしかないが、太祖が言ったのだからそう考えるしかない…

 そんな筆頭皇族が、妹を白帝にして

 本人はそれを討伐しに行った…だって?

 何言ってるのか、さっぱりワカラン話だな…」


アルシオンも昨日得た情報を前に

パズルのピースをなんとか埋めてみるが、

逆にパズルが、より意味不明になった事に荒れるしかない。


「貴方、その話に対してですが…

 今がこんなに色帝同士で争い合っているから

 そんなモノだと思い込んでいるだけで

 1000年前の当時は、色帝の皇帝族が

 互いの色帝間で、政略結婚を行っていた…

 という可能性を考えてみるのはどうでしょうか?」


そこでメリシアが、自身が一応、政略結婚で

アルシオンと婚姻を結んだ事を思い出して、それを口にしてみる。

メリシアの場合は、政略結婚の形ではあったが

自分から最初に求婚したので、円満縁談ではあったのだが…。

それはともかく、汎銀河帝国が銀河中央で繁栄していたというなら

色帝達も当時は中央に住んでおり、交流も頻繁だったのでは?

という可能性も在り得る。


「ほう…それは盲点だったな…

 では、赤帝から華帝に姫を嫁がせて

 嫁いだ姫が華帝の色帝になって、兄妹闘争になった…

 という線も考えられるか…」


メリシアの思い付きを得て、

このパズルをそう整頓してみるアルシオン。

少なくとも、焚書しきれなかった過去資料調査と

華帝国の不審な動き方を見れば、

流血の女皇帝が華帝国出身である、と考えるのが自然なのだ。

そこに、太祖の妹という情報を組み込むなら

その様な皇族間の姻戚関係の介在を検討するしかなかった。


そんな皇帝会議で頭を抱える4人を眺めながら

アストラストは溜息を付く。


(『まぁプリメーラ姫の優しさが…

  父親の情報の焚書という形になったわけだが…

  そのファクターが見つからない限り

  華帝国の純粋出身であっても、

  兄妹関係になるという関係は分からんよなぁ…

  姻戚関係というのは、なかなか良い線行ってるんだが…

  こればっかりは、プリメーラ姫がやった情報改竄による

  見事な情報の難問化だな…

  ただ父親の事を思っての、それだけの改竄なのだが…』)


そう思ってアストラストはプリメーラが行った

天然の優しさが誘う恐ろしさに呆れた。

家族を思う優しさが、意外な所で謎を深めるというのは

端から見ていると、滑稽としか言いようがない。


ともかくその皇帝達は、足りない情報に苦しみながらも

一生懸命、そのパズルを解き続けたのであった。








「それじゃぁ…ここでお別れだね…

 ストロノフ技術中尉…」


その黒髪の青年は、まだ少年兵かとも思える眼鏡の男子兵に

彼のベレー帽を被せてそう言った。


「て、提督っ!

 僕は…いえっ!自分はっ!華帝国随一の智将と

 こんなスターゲートの高性能化整備任務を一緒に出来て

 幸せでありましたっ!」


そのストロノフ技術中尉と呼ばれた男子兵は

そう言ってようやく様になった敬礼をする。


「いやいや、僕もストロノフ家の

 スターゲート整備工作装置を見れて幸せだったよ…

 秘伝の複素結晶とは聞いていたけど…

 凄まじい工作艦隊だった…」


そう応じて提督と呼ばれた彼は同じ様に敬礼を返す。


「提督、また会えるでしょうか?自分は…」


感極まって、そう言葉を紡ぐ、ボルツ・ストロノフ技術中尉。


「僕ぁ…やっぱ、こういう後方任務の方が好きだからナァ…

 こんな連邦帝国の加盟国家が繁栄する仕事が続くなら

 きっとまた、何処かで会えるさ…」


そう言って微笑みを浮かべる青年。


「は、はい…はいっ!

 その時には、また一緒にお仕事をさせて下さい!!

 ニア・ラルフ大将閣下!!」


ボルツは目の前の、やはり他の華帝国軍人とは何かが違う

偉大なる智将にそう言葉を返す。


「あーいやいや、大将は、母国のリガレトナ公国での階級だから…

 華帝国連邦帝国軍内では、僕は、少将、少将…

 これ、連邦帝国内地派遣任務なんで

 今は、僕は少将階級ね…」


結局、最後まで連邦帝国軍の階級で呼んで貰えなかった事に

最後まで注意を入れるニア少将。


「いえ、自分にとってはニア提督は

 連邦帝国軍大将で適切階級と思わされました!

 華海戦争に戻られた曉には、提督閣下の実力に相応しい

 軍功と御栄達をお祈り申し上げます!」


言って涙ぐむボルツ。


「上には嫌われてるからナァ、僕は…

 華海戦争に戻されるとも思えないけれど…

 ま、この任務は終わったんだから

 暫くは母国にでも帰ってゆっくりするよ…

 ご期待に添えなくて、申し訳ないけれど…」


そんな熱いボルツの言葉に、

しかし現実の問題を口にして苦そうに笑うニア。


「いいえ、提督はやはり銀河の耳目が集まる所に

 きっと行かれます…

 間違いありません!

 その伝説が帝国中に鳴り響く日を心の底からお待ち申し上げます!

 そして、それではこれで失礼致します!!閣下!!」


そう瞳を輝かせながら、ボルツは断言して

遂にはその二人は別れたのであった。


「やれやれ…過大な期待をされるのはアレだけど…

 現実、八支柱国からの出向提督が

 筆頭二皇家国家の偉い軍人お歴々を差し置くなんて

 不可能なんだけどナァ…」


そう頭をかきながら軍事用のハブスペースポートを歩くニア。

自分の座乗艦、フリッヒル・ハルベルナを脳内通信で呼んで

ともかく連邦中央軍令部にでも戻って

任務完了の報告をしに向かおうかと考える。

その時、後ろからニアに向かって駆けてくる存在があった。


「貴方!ニア提督!!

 大変です!連邦帝国より、緊急帰還の勅命が来ております!!」


そうニアに走って叫んだのは、彼の妻でもあり

結婚する前もした後も副官である、ティエリナ・ラルフ少佐だった。


「は?ティエリナ…今、緊急帰還の勅命…とか言ったかい?」


いつもは冷静な彼女が大慌てでやってきて

それよりも物騒な言葉を口にした事に眉をひそめるニア。


「プレティナ様の勅命です!!

 フェルクメニストに緊急に出向せよ、との事で!!」


そう言ってガタガタと震えるティエリナ。


「はぁ?我等が皇帝陛下に僕が直々に呼びつけられた、だって?」


その言葉を聞いて真っ青になるニア。

まだ皇帝位に付く前に、しかし既に皇位に付くのは確実状態だった

プレティナに呼びつけられて、海帝の古代要塞ゼロンの陥落を

彼女に勅命で命じられた時の事を思い出して

『勅命』という言葉の重さに震えるニア。


たった一回の、ある一種の間違い…

いや、あんなのを間違いというべきなのか…

連邦帝国主宰の中核国家の要人達を招いたパーティーで

迷子になっていた十才の幼女と一緒になり、

ちょっと遊んでやっただけで、彼の人生は大きく狂った。


その十才の迷子になっていた幼女が

変装して歩き回っていたプレティナ姫だった

等、どうして分かろうか!?

それも、フェルクメニストが偽装を手伝っていたというのだ。


ニアの持つ複数のラルフ家秘伝の複素結晶が、

どれほど、質が悪い幻惑魔術系のアイテムであろうと

それよりも遙かに上の思考天体が相手では、

その時に正体を看破するなど不可能だった。


そんな一度だけの、パーティーを抜け出しての

幼女との市井見学の遊びに、その時、いたく感激されて、

それ以降の彼女のお気に入りになったニア。

2年後には、副皇帝に戴冠した彼女に突然呼びつけられて

その時に初めて彼女の正体を知った挙げ句に、

海帝の古代要塞ゼロンの陥落を命じられたのだ。


それを思い出すニア。


もうあれから8年も経つのか…

と、銀河を震撼させた陥落劇を思い出して肩を上げる。


「提督…ともかく皇帝陛下の召喚命令です…

 急ぎフェルクメニストに向かわないと…」


昔の事を思い出していた所にティエリナが現実的な事を口にする。


「あーー、やな予感がするなぁ

 なんかこの勅命…

 前より大変な事を命令されそうな気が…」


ニアはそう言って、あの可愛い皇帝陛下の…

しかし、聞く前から予想出来る無理難題に青ざめるしかなかった。








少し1人にさせて下さいと…

泣いて姿を消した陛下のプリメーラに取り残され

クライドは野を歩いて呆然としていた。


遙かな太古の母達の夢を見た。


それがこの数日の事だったらしい。


なるほど。

何も覚えていないのに知っている。

そんな奇妙な感覚。

それを彼女達に感じたのは、そういう事か。


クライドはプリメーラの言葉で、そう納得できた。


クライドは妹の事もあって遺伝子の事を医者から

よく教わっていたし、自分でも勉強もしたものだった。

だから、遺伝子による繋がりという話は

よく分かるのだった。


この数日感じていた、体の中から沸き上がる

異常なまでの郷愁感も、それで納得は出来る。



遺伝子とは親から子に受け継がれていく情報体。

24対、48本…

いや、この数日で知ったのは、実は元々は23対46本で

残りの2本は対宇宙用に人類が作りだして

新規に追加した人工遺伝子だった…という事らしいが


とにかく24対、展開48本。


その染色体と呼ばれる肉体構成情報が六十兆個の細胞全てに存在し、

同じ情報体を各細胞が持ちながらも、遺伝子情報の選択発現を

各々の細胞が幹細胞から成長していって『細胞分化』していく。


(現実には細胞が細胞分裂で自己複製し続けると

 各細胞で各々が個々の遺伝子のメチル化とその情報保存が起きるので

 全ての細胞において、遺伝子が全て同じである状態を保持できない

 細胞が癌化する事の一因とされている)


また面白いのは、

遺伝子の情報コードはその70%はダミー情報であり

有効遺伝子は30%であり、人に必要な人用の細胞情報

あるいは、肉体を構成する為の遺伝情報はその30%の部分だという。

そして、その30%に更にダミー情報が組み込まれており、

『イントロン』という有効遺伝子を連続体情報にさせない

情報としては無意味な保護コードが挟まれており、

このイントロンを分離して、

最終的に意味のあるタンパク質合成情報のmRNAを形成する。

その保護コードである『イントロン』をスプライシングして

mRNAを構築する有効合成遺伝子情報の事を『エクソン』と呼び

それは24対48本の全情報に対して2%程度しか存在していないらしい。


つまり遺伝子の中で、人が人である情報は全体の2%であり

それ以外の98%は、全てダミー情報であるというのだ。


2%のエクソンは、24対48本の遺伝子の中にバラバラに配置されており

それらをかき集めて、細胞に必要なタンパク質の合成情報を作る。


それは、生命が外乱であるウィルス等の遺伝情報書き換えに対抗する為に

自己情報を保護する為の暗号化措置なのだろう、と言われている。


そして残りの98%の遺伝子にある情報は…

人ではなく、魚類や爬虫類から哺乳類に進化していく間に

積み重ねられた、他の生物の遺伝情報の残りなのではないか?

と教えられた。


それは、遺伝子の内容比較からの類推であり

他の生物も有効情報はエクソンなので、

同様にダミー情報でしかないのだが、情報の連鎖を考えれば

残りの98%というのは、生物進化を継承してきた証だと思われる。


それを知っていたクライドだからこそ

遺伝子が過去の情報をダミーも含めて運んでいくモノであるなら

自分の体の中から、自分の遙かな昔の母親が

語りかけてくる…なんてファンタジーも

あってもいいのではないか?と思えた。


特に自分の本当の母親に思う所のあったクライドだからこそ

遙かなる太古の母が語りかけてくる、という事は

あってもいいかもしれない、と思えた。


奇妙な感覚だが…

もう死んでしまった両親なのだから…

それを許せ、と、太古の母が言っている様に思えたのだった。


それはクライドの勝手な解釈だったが

そうであるのなら、そんな奇妙な夢を見るという事も

なんだか分かる様な気がする。


特に記憶の起源が『海』だというなら

海が母親を誘うのは、自然に感じられた。


それでも、ふと疑問も沸く。


「なぁシード…

 陛下は、俺が見た夢は、最初のB級人類の母親達の

 夢だって言ってたけれど…

 それって、どれだけ昔の事なんだ?

 レアル・ガイア…

 俺の遺伝子が、一番近い人だって言ってた…

 遙かな遙かな太古の、俺の母親…

 それも陛下にとっても、同じ母親って…」


言ってクライドは、

その母親達がどれほど昔の人なのかを尋ねてみる。

互いに共通の母という事は、相当の昔の人でなければ

確率論的に、同じ遺伝子が被る事は有り得ないからだ。


『………うーん

 それを言っていいのか、迷うんですがねぇ…』


そんなクライドの問いかけにシードは逡巡する。

特に、大問題の人間が同時にそこに居たのだから

語って良いモノなのかどうか、非常に迷う。

思わずシードは、フォレストにそれを打診した。


『レアル・ガイアの夢など、私が狂ってしまう様な夢を見せられて

 私が今、正常な判断が出来ると思っているのか?

 あの時、それを見ていたのは私だぞ!』


そうフォレストは言って、シードの言葉に荒れた。

この地球人は、本当に、どんな怪物なのだ?と

フォレスト自身が恐れおののくしかない。

最も、フォレストが動揺する様な所に平然と踏み込んでくる地球人。

それも、尽くが理論解析では追いつかないファンタジーなのである。


更に情報を与えて、今の地球人状態よりも、

より得体の知れないモノになったら、どうしよう…

そんな恐れがフォレストの中にあった。


しかし同時に、今、自分が過去に計算していた予定調和を崩された

『何も未来が分からない不確定』に陥って居る事も自覚するフォレスト。

それこそが、陛下と共に待ち望んでいた事では無かったのか?

そう自問する。


(『私が運命のサイコロを振るのか…

  この私が…』)


そう動揺し、自分の中にある絶対的な制約を、

自分が破るという行為に震えるフォレスト。


そんな自制があったとしても、しかし自分の体内にある、

かつての自分であった、二代目フォレストであった器の残骸が

陛下が伝えた夢の内容に共鳴していた。


まるで、レアル・ガイアとマリー・ガイアに呼び声で導かれた様に。


だからフォレストは、シードに許可を出した。

そんなフォレストの認可に、深い溜息をつくシード。


『まぁいいでしょうか…

 それを知ってクライドさんが何を感じてしまうのか…

 私は怯えますが…』


「怯える?」


『ええ、何か…語ってしまったら…

 もう引き返せない事になってしまう様な気がしてね…』


そう言ってシードは苦笑する。

知ったからと言って、彼に何が出来るわけでもない。

彼はただ、地球人になったB級人類…それだけだ。

これからまた、変な過去の夢を見るとか言う

ファンタジーが起き続けたとしても…、

あったとしてもそれだけだ。


そう思うのに、それが何か別の事を誘うのではないか?

という不安を隠せなかった。

少なくとも陛下まで、泣き出すような事になったのだ。

それだけでも、普通は尋常な事ではない。


だがしかし、彼自身はS級人類というわけでもなく

本人が何かを個人で為し得る事は有り得ないのだ。


そんな現実的な判断が、シードにまたしても油断をさせた。

だからシードは語った。


『貴方の見た夢…

 レアル・ガイアという、貴方の遙かなる母君が生きていたのは

 今からおよそ、6000年前の事です…』


シードはそう告げる。


「……は?」


クライドはシードにそう告げられて、一瞬頭が白くなった。


「今、なんて言った?

 ろ、6000年前??」


クライドは、そう言葉を口にしてシードの言葉を確かめた。


『はい、6000年前です…

 レアル・ガイア…そして始祖の母、ガイア…

 それは6000年前に生きていた人達で…

 今のB級人類以上の全ての母…

 遺伝子の拡散によって交配の確率論により…

 この今の銀河の、全ての人類主が必ず何らかの遺伝継承を貰っている

 正に、人類の母なのです…

 貴方も陛下も、いえ全ての人々にとって

 ガイア様もレアル様もマリー様も、共通の母親なのです…』


シードは淡々とそう説明する。


「ちょっと待て!

 1000年も前の事すら情報が定かではないのに

 ろ、6000年前の話だって!?

 6000年前の…俺達の共通の母親!?」


クライドはシードの言葉に、狼狽えるしかなかった。

何せ1000年前の事すら、焚書されて歴史が定かではないのである。

それが6倍の6000年前の事…等と…。


『我々、汎銀河帝国は…

 1000年前の情報というレベルではなく

 6000年前からの過去情報を、ガイアポリスに封印しているのです

 だから信じられなくても、仕方はありません…』


シードはそう言って脱力した。

そう、彼等にとっては1000年程度の情報改竄など、

大した話ではないのだ。

その6倍の年月の歴史を、封印し続けてきたのだから…。


「うわーー

 そりゃ、汎銀河帝国の皇帝陛下でも泣くわ…

 6000年前の記憶を、夢で見る…なんてな…」


クライドはそう言って、とても気になっていた光景…

あの毅然としていた陛下の方のプリメーラが

ただの少女の様に泣いていた事を思い出して

胸が締め付けられそうになった。


どんなに強大な力を得ようと

遙か太古の母を見せられたら、その心は穿たれるしかないのだ。

プリメーラのあの狼狽した姿を見たら

人とは何処まで行ってもそういうモノなのだろうと

クライドには強く思えた。

そしてクライドは、頭を抱える。


「本当に、一体何なんだ…

 どうして俺は、そんな6000年前の記憶を

 夢で見るなんて事をやってるんだ…

 俺自身が、俺に訳が分からなくなる…

 それとも、それが繋がりなのか?

 俺の体の中にある遺伝子が…

 6000年前の記憶でも、手繰り寄せようとしてるのか?」


そうクライドは非科学的な事を言ってみる。

それは非常に非科学的な言葉だったが、

あまりにもファンタジーな出来事に遭遇してしまうと

そんな解釈でも良いような気がしてきた。


『私のような科学の力で徹底的に作られた者が

 こんな事を言ってしまうのは、きっとおかしいのでしょうが…

 もしかしたら、クライドさん…

 貴方は、レアル様の遺伝子が8.5%相似しているので…

 レアル様に呼ばれているのかもしれませんね…

 貴方の体の中にある、その遺伝子から…』


そう言ってシードは非常に非科学的な事に

科学との繋がりを求めてみた。


「俺が、あの夢の中の太祖の母…

 レアル・ガイアに?

 俺の体の中にある…太祖の母の遺伝子から?」


シードにそう言われてその言葉に難しい顔になるクライド。


『エクソンで比較すれば、レアル様と貴方はただの他人ですが

 イントロンも含めた比較では、貴方の遺伝パターンは

 8.5%がレアル様の遺伝子に相似していると解析結果が出ています。

 それが科学的な解釈なのかは分かりませんが…

 貴方のイントロンが…レアル様の声になって、

 貴方を呼んでいるのかもしれません…』


そうシードは言って、最後の言葉を止める。

夫のクロト・ガイアを止める為に…という言葉を。


「そうか…母親が…

 太古の母親が…俺を呼んでいる…か…

 悪くはないよな…

 そういうの…

 そんな繋がりは…きっとニンゲンだと思えるからな…」


クライドはシードの言葉を受けてそう呟く。

こんな科学の塊に、非科学的な言葉を言われるのは奇妙だったが

それならばそれで、良いのではないかとも思えた。


そんな思いを胸に抱きながら、野原を歩いていた時だった。


ふとそこでクライドは、花園の中に緑髪のプリメーラが

体操座りで空を見上げているのを見つけた。


挿絵(By みてみん)


陛下の方のプリメーラが、暫く1人にさせて下さいと

姿を消していたので、今日は彼女にも会えないのかな?

と思っていたので、そこにプリメーラが居た事に驚くクライド。


プリメーラはじっと黄昏れながら、空を見上げていた。


華が舞い散り、彼女の緑の髪が棚引く。


そんな彼女の側に、クライドは近付いていった。


側まで近付いたクライドだったが、体操座りで黄昏れて

天空を見上げている彼女が、あまりにも絵になっていたので

声をかけるのも躊躇われた。


暫く、そのままでクライドはプリメーラの近くの斜め後ろで

じっと無言のまま立ち尽くして彼女を見つめていた。


そして、風が吹いて、花園の花びらが強く舞った時に

彼女はそっとその唇を開く。


『ねぇ…クライド…

 私達は…どうして地球を…

 大切なお母さんのあの星を……

 あんなままにして…平気でいられるのかな?』


彼女は、風と花に包まれながら、そう呟いた。



うーん、いろいろ、セクション毎にフォローしないと

良くわからん節なんですが、重要な所だけ


よく調べると、イントロンは、有効遺伝子30%の方のダミー情報でしたな

98%がイントロンだと、この節の前の26節まで勘違いしてました。

そのうち、前の方も調整します。

まぁここら辺は、ヒトゲノム解析研究で、現在進行形で研究されてる事で

エクソンーイントロンの相互の作用も、まだ謎だらけなんで

断定形で書くのは危ないんですけれども…

98%のダミー情報も、他生物の残留遺伝子かどうかは明確ではないですし…


それでも、こんな時代だと、全部解析終わって無いとおかしいんで、

医者が曖昧にしか知らないってのは、本当は変なんですよね

何より、情報改竄されても、再研究すれば人工遺伝子なんか

直ぐに分かってしまうと思われるので、

「何で医者が分かってないんだよ…」って自分でツッコミ入れる所なんですが…


ともあれ、まぁ、まだ暫定的ですが、この話は西暦換算で

8000年頃の話だ、という事に、一旦しときます…

ここ、西暦7000年にするか8000年にするか、

未だに迷っている所なんですが…


最初がシュヴァ同人で始めたので西暦4000年

それから再設定で4000年じゃおかしいなって事で

5000年くらいにしてみて、A級人類、S級人類って

人類の能力進化を考えていくと、

どんどん6000年だ7000年だになって

話中での銀河市民が知っている歴史の1000年を引き算に組む込むと

西暦8000年ぐらいだと、逆算計算的には、存在しているアイテムの

物騒さに経過時間が対応するなぁと…


ただ、西暦8000年にすると、もうそれまでの歴史に何があったのか?

を設定するのが、更に面倒になるんで、もう1000年、減らしたいナァとか

まだまだ迷っているんで、今の所、暫定、西暦8000年ぐらいの話

って事で、お願いします。


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