表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第1章:Communication 忘れかけていた杜ト詩
23/43

第二十一節 呼び声

うーん、こういきますか


アルシオンは皇帝達のお茶会テーブルの上に

行儀悪く足を上げては上空の天球

映し出されている星の大河を眺めていた。

アストラストの内部深くにある皇帝達の特別離宮であったので、

上空に映っているのは映像だったが

巨大な部屋に相応する大きさの巨大天球に映し出されていたそれは

惑星上から見上げる天球の様と遜色なく

星々の煌めきが広く広がり、かつ美しかった。


そんな皇帝の椅子に一人座っては足を上げて

天球を眺めているアルシオンを後ろから誰かが抱きしめてきた。

誰だとは一瞬思えども、そんな事をする人間は一人しか居ない。

彼の妻であるメリシア・オルフェニウスしか

そんな事をする人物は居なかったのだ。


「星を見上げて、何を考えておられるんです?陛下…」


背中から椅子越しにアルシオンを抱きしめてメリシアはそう尋ねた。

その問いに緩く笑ってボンヤリと上を見上げるアルシオン。


「少しね…懸念があってね…」


「懸念?」


アルシオンが呟いた言葉にそれをそのまま問うメリシア。


「もしかしたら、第三勢力が居るのかも知れない…」


その星の大河を見つめてはそう零すアルシオン。


「第三勢力…ですか…」


アルシオンの突飛な言葉に、しかし驚きもせずに

その言葉を素直に受け止めるメリシア。


「私自身の単独演算でも、このパズルの中に

 『第三勢力』の存在を仮定すれば、矛盾の幾らかは解けてしまう。

 流血の女皇帝には六色同盟軍以外に、別の第三勢力の敵が居た…

 そう考えると、パズルがスッキリとするんだな…困った事に…」


言って髪をかくアルシオン。


「まぁ今まで集めてきた貴方のフィールドワークの資料と

 何より、私達しか知り得ないアレを思えば

 第三者勢力の存在があったとしても、

 何の不思議もありませんものね…」


そうメリシアは言ってアルシオンの予想を支持する。


「問題はそれだよメリシア…

 第三勢力が本当に存在したとして…

 ではそれは、どの様な存在であるか?」


メリシアの支持に満足しながらも

アルシオンはその仮定の具体的な内容を考える。

その言葉を聞いて苦笑するメリシア。


「あらあら陛下…

 そう言いながら、かなり予想出来ておられるのでは?」


メリシアはそう言って

アルシオンが自分の言葉を濁しているのを笑った。

その鋭い妻の言葉に頬を引きつらせるアルシオン。


「まぁ予想は出来ているが…

 もし…私のこの予想がドンピシャリなら…

 私はそんな存在を許せそうにないんだがね…」


そう呟いてアルシオンは星の大河を強く睨んだ。


「奇遇ですね…

 やはり夫婦ですから心が通じ合いますか?

 私も…貴方の予想している者が存在していたなら…

 その存在を許せそうには無いのですが…」


メリシアはそう熱を込めて言ってはアルシオンの言葉に同意し

彼を強く抱きしめた。


「だが、そんなモノと戦う事になったら…

 赤帝全土、いや、銀河全土が火の海になりかねん気もする。

 何よりそんな者が居たとして、

 今が六色帝国戦争程度の穏やかさで済んでいる理由が、

 上手く説明つかない…

 何かが足りないのだ…

 もう少し、パズルを解く為のピースが…」


そう言ってアルシオンはその場で震えていた。

それを楽しむように抱きしめ続けるメリシア。


アストラストはそんな二人を見て呆れるしかなかった。


(『まったく…

  まぁ圧倒的なフィールドワークでの情報量と

  アレとアレを見た今となっては、

  そう考えてしまうのは自然だろうが

  それでも限りなく正解に近い所を突いてくるのは…な…

  頼もしすぎるというべきか…

  ………

  全く、この空気…

  彼が再び現世に現れたかと思うばかりの鋭さが

  やはり私を狂気に誘うのだよ…

  だからこそ…今度こそ、クロトを討つ…

  積年の我が悲願…

  それを今度は何の気兼ねも無く、

  堂々とした思いで…やれるのだ…

  そんな積年の思いを

  この再び現れた英雄血に託したい…と思うのは

  フォレストからしてみれば滑稽だろうか…』)


それを思ってアストラストですら星の大河を見つめた。

歴史の流れの中でまた巡り会った奇跡。

それを奇跡だというのは思考天体を否定する事にも思えた。

だがそれでさえ構わないとアストラストには思えていた。


アルシオンは呆けながらも星を見て言葉を紡ぐ。


「銀河中央には、恐らく始祖の思考天体がある…

 というのは色帝の上位国家達の共通見解だ…

 それはそうなのだろうと思う…

 全てのガメットを支配する始祖のガメット…

 それが存在すれば汎銀河帝国は成立するのだから…

 だがどうしても、私はその見解に同意できないんだ…」


そう独り言を言うように声を発するアルシオン。


「では、どう考えるのですか?貴方…」


夫の穏やかだが鬼気迫る台詞に、その次の言葉を促すメリシア。


「銀河中央には、もっと何か別のモノがある…

 始祖のガメット以外に、何か…

 我々、今の人類に見せてはいけないモノが封印されている…

 そんな気がする…」


そうアルシオンは呟く。

その言葉を受けて柔らかく微笑むメリシア。


「ではそれも尋ねましょう…

 貴方はそれが何だと予想していますか?」


メリシアはそう尋ねた。

その言葉に深い溜息をつくアルシオン。


「コード666よりも、もっと恐ろしいモノ…」


アルシオンはポツリとそう呟いた。

その言葉に目を見開くメリシア。


「まぁ…そんなモノがもし銀河中央にあったとしたら

 迂闊に銀河中央突破なんか出来ませんわね…

 そんなモノがあれば、私が汎銀河帝国の皇帝…

 1000年前の謎の流血の女皇帝だったら

 同じ様に一億の兵士を抹殺してでも

 『皇帝道(エンペラン)』を破壊して銀河中枢の封印をしますよ?」


言ってアルシオンの髪を撫でるメリシア。


「だろうな…私でも同じ事をするだろう…

 もし、そんなモノが在れば…の話だがね…」


メリシアの言葉を受けてアルシオンは深い溜息を付く。

その言葉を受けてメリシアはそっとアルシオンに囁いた。


「なら…リスクが高くても、

 華帝国と先に会談をするしかありませんね…

 プレティナ・ミルシューネ華帝国皇帝陛下…

 彼女が敵か味方か…

 それを測るしか…」


そう耳打ちをしてアルシオンを促すメリシア。


「銀河中央突破のリスクの高さを鑑みれば

 華帝国のリスクの方が、まだマシと見るべきか…

 しかし、サファナム進駐なぁ…

 今は余裕が無い…

 ヴァーチェ宙域のみんなは、

 もう私の言葉を聞く気なんか、今は1つも無いしな…

 いい気なモンだよ…お祭り騒ぎをしている連中は…

 むしろ、私もあの祭りに混ざりたいね…」


メリシアの言葉を受けて、1つの決断をするモノの

それを実行するには今は時期が悪いと腐るアルシオン。

現場の人間はとても楽しそうで、羨ましいモノだと思う。


「なら、キリが良い所まで事が動いたら

 エスカにサファナムに行って貰うのはどうですか?」


そう言ってメリシアは親戚でもあり親友でもある

彼女の元護衛官、エスカ・ロックフォードの名前を挙げた。


「エスカにサファナムか~?

 ちょっとそれはエスカに苦労かけ過ぎじゃないか?

 ヴァーチェ宙域に派遣してから、

 ずっと本土に帰って来た事ないんだぞ?

 そろそろ第十七艦隊全体を本国に引き揚げるなりしてやらんと

 十二支柱国も議会も、良い顔をしないと思うんだが…」


メリシアの言葉にアルシオンはそう返して

現実的な問題を交えてみる。


「まぁ銀河中央突破が本当にかかってきている大事な局面です…

 そこはエスカ達も頑張ってくれるんじゃないかしら?」


そうメリシアは言って、絶大なる信頼を置いている

姉妹の様な彼女をアルシオンに推挙した。

そんな彼女の押しに苦い顔になるアルシオン。


「本当に、エスカには苦労をかけっぱなしだな…」


メリシアのその言葉にアルシオンは苦笑するしかなかった。


その言葉を聞いて思考空間で渋面になるアストラスト。


(『やれやれ、あっちの姫様の輿入れが決まったというのに

  ウチの皇帝は見事なまでに

  陛下の懸念する方向ばっかりを選んでくるモノだな…

  奴等と戦う為の主人公にさせるには

  こうでなくては困るという所だが…

  さて、あのB級人類の青年…

  これからどうなってしまうのやら…』)


そう思ってアストラストは間の悪い流れに

苦笑するしかないのだった。






クライドとプリメーラは対話を終えて、そこで二人は別れた。

クライドはあまりの事に混乱し、今はベッドで眠りにつく事にし

いつもの様に睡眠薬を貰って無理矢理に寝った。

しかしプリメーラはその後も起き続け、ある事を思いついた。

そしてそれを久しぶりに確認しようとする。

複素空間の中に居場所を変え、そこで念話を飛ばす。


『フォレスト…』


『はい、陛下…』


『ルグスサイナー博士達に繋いで下さい…』


『御意』


そんな念話空間でのやり取りのあと

念話意識の中に複数人の白衣を着た者達が現れる。

しかし現れると言っても、それは念話空間のイメージであり

そこに本当の肉体があるわけではなかった。


『お久しぶりです、ルグスサイナー博士…』


『おお陛下…いかがなされましたか?』


『いえ、定期的な進捗状況の聞き込みですよ…

 あの研究の進捗はどうなっていますか?』


プリメーラはそう言って事務的ながらも

柔らかい笑顔でそれを問いかけた。


『聞いて下さい、陛下!

 この1000年の集中研究で、あの時は1/3も必要だったのが

 1/10しか必要でなくなる繰り込み方程式を組み上げたのですよ!

 いかがでしょうか?我々の研究成果は!

 いやー苦労しました…原理的に不可能なハズのモノを

 1/10まで繰り込んだなんて…』


プリメーラの問いかけにルグスサイナー博士と呼ばれた人間と

その後ろに居た数百存在は越えた意識存在達は

高揚しながらそう応えた。

その答えにプリメーラの心の中の目は平たくなる。

しかし念話空間での表情は柔らかいままで事務的に対応を続けた。


『1000年かけて、1/10ですか…』


『はい!1000年前は3回しかチャンスが無かったのに

 今では10回もチャンスがある!!

 これは画期的な事ですよ!!』


プリメーラの正直な感想は他所に、その博士と呼ばれた者と

それにクラスター化している彼等の一団は興奮気味にそれを語る。


『ああ、そうですね…

 画期的な事だと私も思いますね…

 分かりました…とても立派な成果だ思います。

 博士等の御尽力、心から感謝致します。

 では継続して、あと500年程研究を進めて下さいね…』


そう事務的に話をするプリメーラ。


『了解しました!陛下!』


そんなプリメーラの本心を何も分からずに

これからも研究継続の許可が出た事に彼等は単純に喜び

その念話空間を去って行った。

そして彼等との念話チャンネルはそこで閉じる。


『…………』


プリメーラはそのやり取りの後に深い溜息をついた。


『ねぇ…1/3と1/10って

 どれくらい違いがあると思う?フォレスト…』


『そうですね…

 実験が3回やれるか、10回やれるか…それくらいですかね…』


プリメーラの言葉に感情的にならずに

事務的に客観的な事実だけを述べるフォレスト。

そんなフォレストのはぐらかしに苦笑しながら

プリメーラは物憂げな瞳になった。


『それでも、これが人類の外側(エクスターナル)に知れたら

 彼等は狂喜乱舞するでしょうね…』


『でしょうね…』


そんな確認するまでもない事を、それでもあえて確認する事で

そのおかしさを共感しあう二人。


『………』


プリメーラは少し考え込み、そして別の事を思いついた。

そしてそれをフォレストに指示する。


『フォレスト、メイヤーノース博士達に繋いで下さい』


『御意』


そんな念話空間でのやり取りのあと

念話意識の中に、さっきとは別の複数人の白衣を着た者達が現れた。


『お久しぶりです、メイヤーノース博士…』


『おお陛下…いかがなされましたか?』


『いえ、定期的な進捗状況の聞き込みですよ…

 研究の進捗はどうなっていますか?』


先ほどの博士達と同じ様な切り口で会話を始めるプリメーラ。

その問いに朗らかな笑顔で応える博士達。


『実用段階の設計はなんとか…

 1000年前は1500年くらいは必要かと思っていましたが

 予想よりは早く組み上がりましたね…

 今ならば、行けそうな段階です…』


『まぁ…500年も前倒しで設計が出来ましたか…』


そんな博士達の進捗報告を聞いて、

少しだけ表情が明るくなるプリメーラ。

博士達は高揚感を伴って続けた。


『ええ…ルグスサイナー達の馬鹿な研究を阻止するには

 我々が頑張らねばなりませんでしたからね…

 一生懸命、頑張りました…』


『それは吉報です…』


『つきましては陛下、

 実証試験の為に実験機を作成させて欲しいのですが…』


『なるほど、それは必要ですね…

 フォレスト、どうですか?』


博士達の設計終了とその実験機制作の嘆願を聞き

それに瞬時に反応してフォレストに是非を問うプリメーラ。


『アレを実験機とはいえ作るのなら、

 コアを開けさせて貰いたいですね…』


『コア開けが必要ですか…』


『作るモノが作るモノだけに…』


プリメーラの問いに淡々とそう応えるフォレスト。

コアを開ける必要が有るという言葉を聞いて

プリメーラは表情を曇らせた。

それは当然、そうだろう…とは思えるが

どうにもやはり、コアを開けるのは何時も躊躇われる。

それにプリメーラは肩を上げるしかない。

プリメーラは気を取り直して問いかける。


『コア開けに対しての影響率は?』


『影響率は0.000001%程度になる様、調律します

 それでいかがでしょうか?』


フォレストはプリメーラの気持ちをおもんぱかり

事象など存在しなかった程度に絞る事を提案する。

そのフォレストの気持ちに僅かに微笑むプリメーラ。

そう『ガイアの魂』がある以上、今はそれも出来る。

それだけが唯一の救いであった。


人類の外側(エクスターナル)に対抗する為の

 唯一の武器になるのなら、致し方ありませんね…

 やむを得ません、コアを開けて実験機を作成しなさい…』


『御意』


フォレストの提案にその認可を与えるプリメーラ。

立ち止まっていても仕方が無い。

歩くしかないのなら、歩くしかないのだ。

それをプリメーラは自分に言い聞かせた。


『陛下…あのぉ…』


そんなプリメーラの苦しそうな表情に

難しい顔になって銀河の王の気持ちを伺う博士達。

そんな博士達に、なんとか笑顔を浮かべて声をかけるプリメーラ。


『メイヤーノース博士…

 その実験機は、人類の希望です。

 500年の前倒しが出来、計画外での隠し球が出来るのなら

 ここは何とか無理もしましょう…

 故にお願いがあります…』


『なんでございましょうか?』


『実験機が成功し次第、実用機の設計に入って下さい。

 第一級研究指定項目から、

 汎銀河帝国最優先研究項目に格上げします。

 私達の杜を繋げる…種、それを貴方達で作りだして下さい…』


『御意で御座います!陛下!!』


プリメーラの強い言葉を耳にして身を震わせる博士達。

最優先研究項目に指定された事、

それだけの価値が十分あると彼等自身は思っていたが

それが確定した事に歓喜を感じ、喝采を上げる。


『………』


そしてそこで彼等との念話は終了し回線は閉じた。


『これはこれで困ったわね…

 ちょうどな時期に、ちょうどなモノが出来てしまうと

 私も益々、迷ってしまうじゃないですか…』


そう言って笑うプリメーラ。

一打逆転の奥の手が出来るかもしれない。

それならばアストラストの提案も、あながち悪い話では無くなった。

だからこそプリメーラは迷う。

どうするべきなのか。


『それでも確実を期すためには500年程度は

 全ての地固めをするのがベターなのですがね…』


そんなプリメーラに、最も安全なルートを提案するフォレスト。

そんな彼の正論にプリメーラは笑った。


『でもね…フォレスト…

 人間というのはね…、博打が打てるのなら

 博打を打ちたくなるから…人間というものなのよ…』


そう言って可愛く舌を出すプリメーラ。

そんな台詞は矛盾まみれだな、と言った本人がそれを笑う。


『なるほど…

 ……ん?コールです、陛下…』


そんなプリメーラの言葉に苦笑しながらそれを納得したフォレスト。

しかしその時、彼等を呼びかけるコールがフォレストに入って来た。


『コール?誰からです?』


そんな呼びかけに、通信相手を訪ねるプリメーラ。


『偉大なる大帝から…』


フォレストは相手の名前を見て些か苦笑し

そう尊称を口にした。


『まぁ!直ぐにお繋ぎして!』


その尊称を聞いて慌てたプリメーラは緊急回線の開設を

フォレストに指示する。


『御意』


フォレストは快諾してそれに応え、

アストラストもその通信を見てその思考空間を振るわせた。


『お久しぶりです、プリメーラ姫…』


通信がその念話空間に開かれたが、

相手は音声のみであり、その姿は見えなかった。

優しい声でそう語りかけてくる、その男性の様な声。


『私を未だに姫と呼んで下さる優しい方は、

 陛下以外にありませんわね…

 嬉しい事です…

 ところで、眠りから醒められてどういった御用向きですか?』


そう返事をして偉大なる大帝の用向きを尋ねるプリメーラ。

その声の主は僅かに笑って、話を切り出した。


『いえいえ、ちょっと起きたついでに色々と調べていると

 アレが出来そうだと博士達から聞けたものでしてね…

 その件について…』


そう声の主はプリメーラに用向きの主要を話した。


『耳が早いですよ、陛下…』


そんなプリメーラが今耳にした事を先に知っては

それを尋ねて来た事に呆れるプリメーラ。

そんな緩い皮肉に笑いを返しながら、先方の声は応える。


『まぁ私が思うに、一番ベターな方法ですから…

 ならば最も気になる所ですし…』


そう彼は呟いた。


『そうですね…』


その言葉にただ頷くしかないプリメーラ。

そう、おそらくはこれが最もベターな方法なのだ。

例え、根本的な問題の解決になっているわけでは無くとも。

だから声の主は続けた。


『アストラストから上がっている提案も

 議題にしなければならない所ですしね…

 次の審議会では、アストラストの提案と、アレの進捗

 及び、実験機が成功すれば、実用機を何処に置くかの議題で

 議案提出になるかと思いまして…』


そう声の主は切り出して、

一番の用事である議案問題をプリメーラに話しかける。


『設置場所ですか…

 でも設置場所なら妥当に

 ガイアポリスで良いのではありませんか?』


そんな問いに妥当といえば妥当過ぎる場所を口にするプリメーラ。


『まぁそんな所でしょうけれどねぇ…

 面白みに欠けるのもね…』


その妥当過ぎる言葉に苦笑し、『人間の機微』とやらも

盛り込んでみてはと言う、声の主。


『なら、いっその事、アリウスにでも置きますか?大帝…』


そんな『人間の機微』に反応して、悪戯心が沸いて

その場所を候補地に推してみるプリメーラ。


『止して下さいよプリメーラ姫…

 冗談にしてもそれは厳しい…』


そんなプリメーラの悪戯心に、

声の主は冷やっとし、それを頭ごなしに笑った。


挿絵(By みてみん)


『まぁ冗談ですけれど…

 歴史を思えば、アリウスは悪くはないので…』


と、自分の発言が戯れ言だと認識するモノの

『人間の機微』を思えば、歴史在るあの惑星は

ガイアポリス以外の面白みでは十分ではないか?とも思ってみる。


『そう買いかぶって貰えるのは、故人としては嬉しい話ですがね…

 ともかく、丁度良い時期になってきました。

 これだけの議案があるのなら

 議会を開くのに議題としても申し分無いですし…』


『議会…もうそんな時節ですか…』


声の主がそう切り出して来たので

プリメーラは、頃合いを感じて溜息を付く。

確かに1000年の時間が過ぎた。

計画の進捗報告や再検討をかけるには十分な時期である。

それを思ってプリメーラはただ待ち続けた時間を振り返ってみる。

ただ起きているような、寝ているような、

銀河の趨勢を眺めるだけの今までの1000年。

そんな思いにふけっているプリメーラに

先の声の主は言葉をかけた。


『近日中には、議会の開催をお願いします…

 何か他に特別に面白い議案があれば、それも是非…

 最近は優勢すぎて、議会に出なくなった方も多いのでね。

 そろそろ寝覚めの良いガツンとした内容の議案が欲しい所で…』


『寝覚めの良い…ですか…』


『そうですね…』


そう言って二人は苦笑して暫く笑い合っていた。


『分かりました、近日中に議会を開催致しましょう…

 アストラストなんか、沢山計画案を上げていますんで

 まずはそれの吟味ですね…』


『ははは…アストラストも相変わらずだ…

 よっぽどクロトを討ち滅ぼしたいらしい…』


『まぁアストラストですからね…貴方の…』


『私のじゃないですよ…

 …が…まぁそんな昔話はいいでしょう…

 それではよろしくお願いします。プリメーラ姫…』


そう言って声の主は通信を終わらせた。

それを呆然と受け止めるプリメーラ達。

特にアストラストは、とても懐かしい声に震えていた。


『………』


プリメーラはまた溜息をつく。


『1000年というのは何かシンクロする節目なのかしら?』


言って、不思議なタイミングで

色々な事が出そろうこの現実をそう評してみた。


『恣意が節目を感じたい時には、

 節目の時間というのはありますよ』


そんなプリメーラの言葉に、そう言葉を添えるフォレスト。


『そういうモノかしら?』


そんなフォレストの言葉に

プリメーラは僅かに眉をひそめるのだった。








クライドは眠った後に夢を見ていた。

それは何時ものミリネーナの夢では無かった。


不思議な鼓動に誘われ…

あの白い宝玉『ガイアの魂』を見た時の衝撃が

彼の体の古き何かを呼び醒まし、それが呼びかけてきたのだった。


クライドは宇宙の中に漂っていた。


何故そうだったのか分からない。

だが宇宙の中に漂ってそこを泳いでいた。


そして声にならない声の呼び声を聞く。


その声を聞いて、思わずその方向を向くクライド。

そこには『誰か』が居るような気がした。


輪郭だけしか見えない『誰か』


その『誰か』は酷く懐かしい気がする。

初めて出会った存在だというのに。

それはきっと『女性』だった。

そう思う。

輪郭しか無い存在だったが『彼女』である事だけは

ハッキリとクライドには分かった。


その余りに懐かしい人を思い、

思わずそれに手をかけようとするクライド。


しかし、その伸ばした手が輪郭に触れようとした時

その輪郭はかき消えてしまった。


かき消えた輪郭を見て呆然と成るクライド。


そう呆然としていたクライドだったが

その輪郭がかき消えた後に

クライドの目の前に別の何かが現れてきた。


それを見て驚くクライド。


それはとても巨大なモノだった。


そうとても巨大なモノ。


それは惑星。


とても青い、深く蒼い、水の色を輝かせ

白い大気に纏われている惑星。


それがクライドの目の前にあった。


クライドはその光景に息を飲む。


クライドはその惑星に激しい勢いで手を伸ばした。


しかしその惑星は余りにも遠かった。


クライドの手は全くそれに届かなかった。


何度も何度も腕を振り回しては

泳いでそれに近付こうとするクライド。


だがその惑星には近付く事すら出来ない。


クライドは声にならない声で叫び

その惑星を強く見つめた。


そして惑星もクライドを見つめて

まるで笑っているかの様に揺らめいていた。


それは何かを語っているかのように思えた。


だが声が聞こえない。


聞きたくても…

心の底から声を聞きたくても声が聞こえなかった。


だからクライドは思わず叫んだ。


『母さんっ!!』


と、そう。



前回までの話だけで考え続けると

このままではクライドとプリメーラがこの惑星でヒキニートして

アルシオン達が乗り込んで来るまで待っていても

そっちの方が、それならしゃーねーなーって、合理的な行動になるんで

それでは、全く自発的に宇宙に出れそうにないんで

無理に宇宙に出る為の、『本来は裏エンディング』を持ち出して

プロットで考えていたエンディングでは、元々の予定では欠片もその情報が出ないハズの

『裏のエンディング』も表に昇格させて出す事で、合理性の整合を付ける事にしました。


裏エンディングまで話に盛り込むと

考えていたエンディングの描写の綺麗さが、ちょっと歪むんじゃねーか?

ってのがあったんで、裏設定は隠したまんまでやりたかったんですが


裏設定を表レベルにしないと、赤メーラが出て行く事を決断するのは

ただのDQN行動になるんで、しゃーねーなーと。


元々はプリメーラさえぼんやりとしか予想して無かった

フォレストが裏で計画していた話って事にするつもりだったんですけど…


もう、表レベルの話でいいですわー DQNな人になるの回避する為には…


ここは全体で見てのタメ話になります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ