表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第1章:Communication 忘れかけていた杜ト詩
20/43

第十八節 彼女の名前もプリメーラ

校正も推敲も甘いんですけど、

赤い人の会話、長くなりそうなんで、急げや急げで

無理にでも出します…

ああ、英語の歌詞なんですが、韻を優先したんで

文法も文章も無茶苦茶なんで

生暖かい目で見守って貰えると助かります…

クライドが1人で星を見上げていた時、

(うた)が聞こえてきた。



 I love my dearing darling ,

 Where are you ?

 Where are you going ?


 Our war was falling fire wall , lost my home.


 Dummy tear is increasing in my hard day by day alone.


 I'll be see you on this closing , falling the space.



 Darlign , my pole love,

 When are you needing , wasted my dreaming.


 Darling , my ture love,

 End leaves in lee.



 Have you stay at fore all war ?


 have you stay at almost war forget.



 nobody no matter

 somebody sun madder

 everybody , everybody always


 closing , closing helical.



 So far way ,


 I catch in madly many mission.

 It is doubling day by day , died away

 have you gone on ?



 So far way ,


 I reach ,

 loving you will be lettn me phantasm.



 Dearing love

 Darling love


 Have all ?


 Darling love

 Dearing love


 in a void.



それはプリメーラの(うた)声だった。

しかし何だろう…

その声には凜とした音が乗っており、

今日まで聞いていた詩とは何かが異なっていた。


先に星を見に行っていて…と彼女に促されて

シードに先に地上に上げられたのだが

そこには彼女の姿はなく、ただ突然詩が始まり、

その詩は彼女が詠い終えるまで続いた。


そしてその奇妙な詩が終わったので拍手をして

姿の見えない彼女を周囲を見回して探していると

クライドの目の前に、すっと光の体が現れ

それはゆっくりと彼に近付いて来たのだった。


挿絵(By みてみん)


クライドはその現れた光体を見つめる。

見ると近付いて来たのは、緑の髪のプリメーラではなく…

赤い長髪の髪で紫色の外套を纏っている女性だった。


そんな彼女が僅かに微笑みながらクライドに歩み寄った。


「プリ…メー…ラ?」


髪のヘアスタイルも色も違い、雰囲気さえ違う

しかし顔立ちは全く同じである彼女を見て、

そう恐る恐る尋ねるクライド。

その時、クライドの中で、

彼女との記憶の融合で最後に見た光景、

赤い髪のプリメーラの事が思い出され

それが目の前の彼女なのだと気付いた。


「君は、あの時の…」


クライドは思わずそう零す。

その言葉を聞いて、また微笑むと彼女はその口を開いた。


『初めまして…というほど、私は初めてでもないのですが…

 それでも、顔をこうやって合わせるのは初ですので…

 改めて…初めまして…

 クライド・ボル・メトレノイア・ガイアさん』


そう言ってクライドの前に立ち止まって

一礼をして微笑む彼女。


「え、えっと?」


そんな不思議な物言いをするプリメーラに混乱しながら

クライドは彼女を見つめ続ける。

彼女は光の粒が溢れるその赤い髪を棚引かせながら

澄んだ声をその場に響かせた。


『私は…

 プリメーラ…

 プリメーラ・ミルシューネ・ゴラムリエス・フェスティバーグ・

 シルフォード・オーラクルム・エストリア・ワインマルク・ガイア…

 ええっと…』


『どこから数えるかですが…

 まぁ、あそこから数えれば37世ぐらいでしょうかね?』


プリメーラが最後に少し逡巡した時、シードがそう言葉を添えた。


『そう…あそこから数えれば、37世ですか…

 まぁ全ての血系継承名を列挙すると長いので…省略して…

 私は、プリメーラ・ガイア37世…

 汎銀河帝国の現皇帝で…かつ末代皇帝です…』


「え?え!?」


静かな、しかしとても強い威圧の瞳を向けながらそう名前を語る彼女。

クライドはあまりに突然の事に何が起きたのかと混乱する。

そんなクライドの様子に、顔を僅かに横に傾けて微笑みながら、


『私は…そうですね…

 貴方達の知る所では…

 1000年前に銀河大戦争を起こした汎銀河帝国末代皇帝

 いわゆる、『銀河最大の悪』ですかね…』


彼女はそう言って笑った。


挿絵(By みてみん)




「ちょ、ちょっと待って下さい…

 プリ…メーラ、さん?」


クライドは目の前にいる少女の様な光体が、

よく知った緑髪のプリメーラでは無い事を

彼女の雰囲気から悟り、そう言葉をかける。

彼女は間違い無くあの記憶の中で見た人だった。

その背から漲らせている威圧感は、あの時の記憶と全く同じであり

緑髪のプリメーラの様な、あどけなさも無かった。


顔立ちは少女の様であったが、

その纏っている雰囲気は彼女の言葉通り、

汎銀河帝国の皇帝に相応しい荘厳なものであり

その威圧力に金縛りの様な感覚を覚えるクライド。


『いざ、こうして対面していると…

 何からお話ししていいのか、分かりませんね…

 私はこの四日、貴方を見続けてきたのに

 貴方は私に初めて出会うのですから…

 どうお話しを初めていいのか、ちょっと迷ってしまいます』


言って緩やかに笑う彼女。

その言葉でクライドは少しだけ事情が飲み込めた。

クライドは、この四日、非常識的現象が起きすぎて

驚くという機能が麻痺してしまい、どんな脅威もあり得る事だと

状況を冷静に見れるようになっていたのだった。


「えっと…貴方はもしかして…

 プリメーラやシードが言っていた…

 彼女のお母さん…の方ですか?」


そこでクライドはようやく初日に説明されて

違和感を感じていた事を思い出し、それを口にした。


彼女とシードは、こう言っていた。

プリメーラの母はプリメーラを産んで他界したのだと…。

だが、その説明には違和感があった。


光子の体を生むという事は、どういう事なのか?


それは疑問に感じるべき所だったのだが

それ以降の緑髪のプリメーラとの生活で、

いっぱいいっぱいであったクライドには

そこに頭を回すまでの余裕が無かったのである。

そして、ここに来てようやくその疑問が再び膨らみ

予想を含みながらそれを質問したのだった。


『ふむ…

 私があの子の母親なのか…に関してを問われると

 人間が子供を産むとは何なのか?

 という事を、最初から考え直さなければならない

 とても大変な話になりますね…

 迂闊な事をしたモノです、私も…

 ただ、生み出すと言う事が全て出産なのだと

 無理に解釈をするのなら…そうかもしれません…

 あの子を作ったのは私…

 だから、私があの子の、母親の様なモノです…』


そう言ってクライドの言葉を部分的に肯定するプリメーラ。


「母親のようなモノ?

 随分、曖昧な言い方をされますね…」


クライドはプリメーラの歯切れの悪い言葉に混乱してそう返す。

と、同時に纏っている空気に飲み込まれ言葉使いが敬語になっていた。


『だって、あの子には父親は居ませんもの…

 父親なく、母親だけで生まれた存在を

 本当に娘と呼んで、良いのでしょうか?』


そんなクライドの問いかけにプリメーラはそう答える。


「プリメーラに父親は居ない?

 母親だけで生んだ? ど、どういう事なんですか?」


余りに不思議な事をいう彼女に、その言葉の意味を問うクライド。

その問いに、プリメーラは少しだけ肩を上げ苦笑を浮かべた。


『クライドさんは、今までの人生の中で

 こう思った事はありませんか?

 ”あ~あ…自分がもし、こう生まれて来なかったら…

  もし、別の生まれ方をしたら…

  そんな自分は、どうなっていたんだろう?”って』


「っ!?」


プリメーラのその時ばかりは妙にフランクな声色になってそう語った。

そしてその内容を聞いて身を震わせるクライド。


『この惑星で1000年の間、ただ時を過ごし続けた時

 不意に、そんな事を思ってしまいましてね…

 今の自分とは、違った生まれ方をした自分なら

 その自分は、どんな風になっていたのか…

 それを思い続けているウチに…

 私は、あの子を、その願望で生み出してしまった…

 私が、元々はS級人類の人間だった頃の情報を元に

 人としての最低レベルの知識だけを与えて

 私が生きてきた記憶だけを消して…

 私は彼女を生み出してしまった…』


「何ですって!?」


そんなプリメーラの独白に、流石に驚くクライド。

言葉の中に沢山驚かなければならない所はあったが、

ともかく『生み出した』という事に最も意識がいった。


『あの子は…

 緑色の髪をしたあのプリメーラは…

 私の生きてきた記憶だけを抜き取った

 私のコピーです…

 だから、あの子が、私なのか、私の娘なのか…

 生み出した事は確かでも…

 それが何なのかは、私にも分かりません…』


「彼女が…貴方のコピー…」


その事実をプリメーラの口から聞いて青ざめるクライド。

いや、そう説明されると、それならようやく理解できる。

彼女の存在の違和感が。

緑髪のプリメーラの記憶を共有した時、

思い出せる範囲では、彼女に『幼少期の記憶』は全く無かった。

思い出せる最古の記憶は、

ある時に、不意に意識が芽生えた、という記憶だけだった。

それを思い出して目を見開くクライド。

突然、自分が何となく自分だと分かって

この世界に出現したというあの記憶。

そんなクライドの様子を見てプリメーラは肩をすくめた。


『まぁコピーとは言っても、

 あの子も、虚ろな魂で40年を生きてきましたからね…

 もう立派に1つの意識存在になっていました…

 そして、そんな所に偶然にも貴方に出会ってしまい…

 あの子は遂に人間になってしまった…』


そう言って、苦そうに笑うプリメーラ。

本当にこれはどんな偶然なんだとおかしく思える。


「そ、そんな…そんな事って…」


クライドは声を震わせながら、彼女の説明で、ようやく

緑髪のプリメーラが存在として欠けた者である所以が理解できた。

存在をコピーされた事によって、この世界に生まれてきた半存在。

それが最初に出会った緑髪の彼女だったのだ。

そして、その半存在状態だった彼女のもう半分を埋めたのは…。

彼女をニンゲンにしたのはクライドだった。


『人の意識を勝手に作りだすなんて

 生命への冒涜だと思いますか?

 まぁ…きっと、それはそうなんでしょうね…

 作りだしておいて、今更言うのも何ですけど

 私も随分、あくどい事をしたモノです…』


「………」


そう言って寂しそうにクスクスと笑う赤い髪のプリメーラ。

その言葉の節々には強い憂いが漂っていた。

クライドはそれを見つめて難しい気持ちになる。


「どうして…そんな事を…」


クライドは単刀直入にそう問いかけた。

その問いかけで、笑いを止めて少し目を大きく見開くプリメーラ。


『どうして…ですか…

 うーん、どうしてと言われましてもねぇ…

 クライドさんは、今の自分が、別の自分になる可能性があったら

 それを見て見たいとは思いませんか?』


プリメーラはクライドの問いにそう返す。


「それは…その…

 確かに、自分がこうは生まれなかったら…

 もっと違う生まれ方をしたら、どうだったんだろうって

 思う事はありますが…

 でも…」


プリメーラの返事であり、かつ問いかけでもある言葉を受けて

クライドはどもりながら、釈然としない気持ちで言葉を返す。

そう、その言葉は『でも…』であった。


『そう…普通は『でも…』です…

 思うだけで出来ないから、そんな事は考えても無駄…

 普通はそう思って、そんな夢想を辞めますよね?

 でも、余りにもただ暇な時間を(もてあそ)ぶだけしか

 出来なくなったなら…

 その精神は…

 それが出来てしまうのなら、ついついやってしまう…

 やってしまうのではないか…

 そして、私はやってしまった…

 それが、私とあの子の関係…

 という事で、理解して貰えないでしょうか?

 この状況を…

 それを嫌悪するのは、構いませんから…』


「……嫌悪と言われても…」


プリメーラの言葉…それも常に自虐に向く言葉に

返事をどうすればいいのか困りながらクライドは思案した。

超常的な事を言われすぎて、どう対処して良いのか分からない。

それが本音だった。


『しかし、精神を自分の勝手な思いで生み出したのです。

 それを生命の冒涜として嫌悪しなければ

 いったい何が、この世の悪徳だというのでしょうか?』


プリメーラは、混乱して上手く言葉を紡げないクライドに

自分を卑下する言葉を重ね続けて問いかける。

そう、彼女にとっては、自分の行為は悪徳だと思えていた。


「それはそうかもしれません。

 精神を作れる力がある人が、出来るからといって

 勝手に、新しい精神を作り出すなんて事は…

 とても生命への悪徳に思えます…」


『ですよね…』


「でも…貴方の気持ちは分かります…

 自分が自分で無い別の自分を見て見たい…

 それは、俺だってそう思う…

 そしてそれが出来てしまえば、俺もやってしまうかもしれない…

 別の自分を…もっとマシな自分を作る事が出来るなら

 そんな自分なら是非見て見たいと、そう思うから…

 だからそんなに簡単に、それを嫌悪をするなんて、出来ません…」


クライドはそう言ってプリメーラの思いを否定しなかった。

自分が同じ立場だったらと思うと、その気持ちはよく分かる。

だからそれを簡単には嫌悪できなかったのだった。


『あら嬉しい言葉…

 こんな我が儘な事を理解してくれるなんてね…

 でも、我が儘な事ばかりする、やっぱり銀河最大の悪めって

 罵ってはくれないんですね…それは少し、残念…』


クライドが彼女の言葉を受けて、

その気持ちを共感してくれた事に少しだけプリメーラは喜んだ。

しかし、自分の中にある『人だった頃の(こだわ)り』が

その悪徳を厳しく諫めるのもまた同じだった。

なので、いつもの様に自虐の言葉が最後に出る。


「ちょっと待って下さい

 教えて下さい…

 貴方は何者なんですか?

 貴方が汎銀河帝国の本当の皇帝だ…というのは

 何となく分かってしまいます…

 でも、どうして…」


『クライドさんは、『流血の女皇帝』という言葉を御存知ですか?』


その問いをクライドがした時、プリメーラは逆にそう問いかけた。

彼女の問いにクライドはこの銀河の一般常識を思い出す。


「え…それは…確か…

 汎銀河帝国、末代皇帝の別称だった様な…」


『それが私です』


「は?」


クライドは、プリメーラがとても不思議な事を言うのに

間抜けな顔になって応対するしかなかった。

そういえば、前の台詞でも1000年間生きてきた

等と、言っていたような気がする。

その混乱しているクライドにプリメーラは追い打ちをかける。


『流血の女皇帝プリメーラ…

 それが私…

 汎銀河帝国末代皇帝にして

 この六色帝国戦争を引き起こした張本人…

 銀河最大の悪…です』


「ちょっと待って下さい!!

 汎銀河帝国の末代皇帝…

 流血の女皇帝は1000年前の人物だ!

 どうしてそんな人が、今、目の前にいるんですか?」


これと全く同じ会話の流れを緑髪のプリメーラとした様な気がする。

しかし今度は、曖昧な彼女の応対ではなく、

ハッキリとした言葉で彼女がその問いに答え返した。


『汎銀河帝国の皇帝ですもの…

 不老不死に決まっているじゃないですか…』


そう言ってニコリと笑って、クライドの問いに答えるプリメーラ。


「不老不死!?」


クライドはプリメーラの返事に絶句した。

この宇宙には『そんなモノは存在しない』と

一般常識になっていたので、それを平然と言ってのける彼女に

クライドは驚くしかなかった。


不老不死を実現しようとするモノは『処刑人(エグザキューター)』に抹殺される。


何か、都市伝説の様な常識ではあったが、

一般常識での不老不死を目指す者へのペナルティはそれであった。

そして、事実、そんな都市伝説を証明するかの様に

不老不死で居られる人類はこの銀河に全く存在していなかった。

『処刑人』がどのような存在であるかは誰も知らなかったが

不老不死はそのせいで実現は出来ない、という事実だけがこの銀河にあった。

その常識を笑顔で一蹴するプリメーラ。


『汎銀河帝国皇帝というのは

 この銀河を全て統治できる者ですよ?

 なら不老不死なのは、当たり前の事だと思いませんか?』


「え…そ、それは…その…

 いや、言われると…確かに…

 汎銀河帝国の皇帝なんて、一番偉いんなら…

 処刑人の手が届かないって事も…」


そう説得されて、その言葉だけで思わず納得しかけるクライド。

そういえば汎銀河帝国皇帝という存在感だ。

この銀河を統べた頂点という存在が、一般市民の常識に当てはまるか?

という風に考えれば、それは疑問である。

つまり汎銀河帝国皇帝ならば『処刑人』という謎の存在からの

寿命を与えられるプロセスも、跳ね返せるという事なのだろうか?

それを思って腕を組んで悩むクライド…


『まぁ貴方の理解を促す為に

 少しだけ納得できそうな言い訳を付け足すなら…

 複素光子体存在という特殊な肉体状態は

 汎銀河帝国皇帝を不老不死にするために作られた技術なのだ…

 と、説明すれば、少しは納得して貰えないかしら?

 この銀河の常識、不老不死を狩る者『処刑人』の手さえも

 届かない存在になる為の超越技術…

 それが複素光子体存在…』


「複素光子体存在は、不老不死を作り出す為の技術!?」


プリメーラのそんな説明に驚愕するクライド。

このあまりに不思議な『絶対不可侵』なる肉体は

処刑人の手さえ届かない者に成るための方法である…

そう説明されると、それだけで今までの不可思議さが納得に変わった。

『死』を跳ね返す『絶対不可侵』

それが複素光子体存在。


『それだけの為に生み出されたわけではありませんが

 まぁ権力者です。

 最後に求めるモノは、だいたいそんな所ですし…

 そいういう事を遂に技術化したモノ…と

 納得して貰えませんか?』


「不老不死…そんな事が…」


プリメーラの説明にクライドは体を震わせるしかなかった。

永遠に存在できる存在。不老不死者(イモータル)

人類の夢の存在。

それが技術で遂に達成されていた等とは…。

プリメーラは言葉を続けた。


『ともかく、私はその様な理由で不老不死を得たので

 1000年前から、まだ死んでいないのです… 

 故に、未だに汎銀河帝国現皇帝…

 在位中の皇帝です…

 そして、私はこの惑星で眠るように過ごして来た…』


「どうして…」


『どうして?』


「どうして貴方は、ここに居るのですか?

 汎銀河帝国の…あの流血の女皇帝が…

 どうしてこんな惑星に…」


クライドは彼女の言葉、その尽くに違和感を持ってそう問いかけた。

不老不死になって1000年間在位中の皇帝というのもおかしいが

そんな存在が汎銀河帝国を捨てて、こんな惑星に居るのもおかしい。

そもそも『流血の女皇帝』は1000年前の革命戦争の時

六色同盟によって殺されたのではないか?

そう、一般常識ではなっている。

前の会話でシードはそれを否定して、汎銀河帝国が滅んだ実情を語ったが

しかし、あの時はまるで末代皇帝はその時死んだ、

という風に話したではないか。


『私がどうしてここに居るのか…ですか…

 中々難しい質問ですね…

 どうしてと聞かれても困りますが…

 あのまま、銀河中央に引き籠もっていても心が休まらないのと…

 私という鍵が、銀河中央に居るのは色々と不都合な事もあったので…

 私が生まれた惑星に帰ってきた…

 そんな帰巣本能ですかね…』


「貴方が生まれた惑星?」


その時、彼女は思いもかけない答えを返した。

そんな余りにも予想できなかった答えにただ驚くクライド。

プリメーラは続けた。


『1000年前に、私はこの惑星で生まれました…

 今は…

 外の人からは…この惑星は…

 パシュメセウス…と…呼ばれているのでしたっけ?』


『ですね、陛下…そんな名称になってる様です…』


プリメーラがシードに問い、シードがそう答える。

その答えに、ふっと笑みを浮かべてプリメーラは続けた。


『でも1000年前はこの惑星の名前は違いました…

 この惑星の1000年前の名前は

 『惑星プリメーラ』

 私の名前の名付けになった…

 その名称で呼ばれていた惑星でした…

 そしてこの惑星は皇家から私に与えられた、

 私の惑星だったのです…』


そうプリメーラは寂しそう笑って言った。

その台詞にただ驚き続けるクライド。


「えっ!?ここが貴方の惑星!?

 でも、この惑星って、確か謎の核攻撃で放射能…」


そう言いかけて、この、最早、人が住むには余りに難儀な

居住不能惑星になった星が、自分の星と言った彼女に

この惑星の今の現状を口にするクライド。

そんな当然の問いかけに、プリメーラはそっと微笑んで答えた。


『ええ、何せ『流血の女皇帝』が生まれた惑星ですからね…

 それは1000年前の、

 その当時の人からは恨まれましたからねぇ…

 皇室典範違反も、なんのその…

 違反行為である惑星への核兵器攻撃という

 とても禁忌な事をされるほどには、

 その当時の人に私は恨まれていたのです…

 そして、この惑星は1000年前に廃惑星になりました…』


「あ…原因不明の核攻撃放射能汚染…」


プリメーラのそんな返事に不意にクライドは

端末情報で見たこの惑星の説明を思い出した。

この惑星は原因不明の核攻撃で廃惑星になったと記録には書いてあった。


『そう…

 私の出身母星ですからね…

 当時の人々に恨まれて、それはもうしっちゃかめっちゃかに…

 そしてそうなった後に、そこら辺の情報は情報改竄して

 原因不明に全て書き直しました…

 廃惑星になった事で、私がここに潜伏するのに

 ちょうど都合良い環境になりましたからね…

 そうやって、私は自分の生まれた惑星に帰ってきて

 今は余生をこの惑星で送っているのです…』


「そ、そんな…そんな事って…」


『まぁそんな事もあります…

 それが汎銀河帝国の皇帝というインチキな存在です…』


そう言ってプリメーラはその時は少女の様な表情になって

小さく舌を出して、自分の存在を笑った。






「でもシードが言っていました…

 本当は貴方が1000年前の戦争を起こしたのではなく

 貴方のお父さん…先代皇帝がやった事の

 尻ぬぐいを貴方がしたのだと…

 1500億人の人類を抹殺しなければ、

 汎銀河帝国が維持できないから、負けた、という事にして

 帝国に幕を引いた、と…」


クライドはその事を思い出して、

1000年前の事実は異なる事をプリメーラに尋ねてみた。

銀河帝国を滅茶苦茶にしたのは自分の父のせいなのに

それで逆恨みされて、自分の出身惑星すら滅ぼされては

やるせないではないか…

そうクライドには率直に思えたのであった。


『うん、まぁ、おしゃべりなシードが

 色々と貴方に喋ってしまったのですけれど…

 確かにそれは、そうなのです…

 あの戦争には本当の真実があり、

 真実を覆い隠すために、私が全てをしたという事に

 記録を書き直しました…』


「なら、貴方が別に悪かったという事では無いのでは?

 俺には貴方がそんなに悪い人には見えないんですが…」


そう言ってクライドは彼女と対話して彼女の印象が

一般常識の『流血の女皇帝』というイメージからほど遠い

とても調和性のある人物に見えて、それを口にする。


『悪い人には見えない…ですか…

 少し嬉しい言葉ですね…

 でも私は、最も重要な情報を改竄する為に

 本当に六色同盟軍を相手に、1億人近くの軍兵を殺しました…

 『流血の女皇帝』という別称は、嘘では無いのです…

 貴方が見ているのは、まだうわべだけの私の姿。

 私のこの手は、伝承通り1億人近くの血に染まっています…

 1億人の血を吸った、流血の女皇帝なのです。

 そして、これだけ血まみれになったのなら、

 父の汚名を私が背負っても、そんなに大差はないな

 と思ったから、全てを私がやった事にしました』


「1億人の軍兵を、貴方が殺した…

 貴方が!?」


そんなプリメーラの衝撃的な言葉を受けてクライドは唖然となる。

見れば印象として、虫も殺せないかの様な

繊細で穏やかな容姿の彼女に思える。

そんな彼女が、過去には伝承通りに宇宙を血まみれにした等と…

とても今の光景からは信じられない話だった。


『一応、汎銀河帝国の皇帝ですからね…

 しなければならない事は、しなければなりません…

 何かを為すために必要な犠牲だったから…

 あの時代の人々に、大量の血を流して貰いました…

 それだけは事実…

 なので流血の女皇帝と恐れられようが

 銀河最大の悪だと罵られようが、それは仕方のない事なのです』


そう言って彼女は哀しそうに笑う。

その笑顔がとても哀しくて、クライドはプリメーラに詰め寄った。


「いったい過去に何があったんですか!

 貴方の言葉や…それに……」


『私の記憶を見た、アレですね…』


「えっと、その…そうですけれど…」


クライドは眉をひそめ、プリメーラとの融合で記憶の中で見た

あの不思議な最後の光景を思い出した。

何があれば、こんな繊細そうな女性が、

やむを得ないから1億人もの人々を殺さなければならないのか?

それが疑問をで仕方なかった。

そして、それはきっとあの光景が関係しているのだ。

そう直感的に分かった。

だからこそ、そう問いかけたのだった。


『あれは私もしくじりました…

 貴方の妹さんの記憶を閲覧させて貰って

 思わす心が緩んでしまったせいで、あの子の記憶だけでなく

 私の記憶まで貴方に漏れてしまった…

 一番、見られてはならない光景だったのに…』


そう笑って彼女は難しそうな顔になる。

ほんの心のタガが緩んだ事が、最も秘匿しなければ成らない光景を

この青年に見せてしまった等と…。

それは口封じとして抹殺しなければならない程の重大ミスであった。

そんな迂闊さにプリメーラは閉口する。


「貴方はあの記憶の中で、何かと戦っていた…

 とても大きなモノというイメージでしたが

 そのイメージをまとった老人と貴方は戦っていた…

 あの光景こそが、汎銀河帝国の崩壊で

 本当に隠さなければならなかった事だったのでは無いのですか!?」


クライドはそう叫んで彼女に問いかけた。

その言葉にプリメーラの眉がハの字になって困った様な表情になる。


『聡いですね、クライドさんは…

 まぁアレは私の大失態…

 見られてしまったのですから、仕方ありません…

 なら、少しだけ、語ってあげましょう…

 語れる範囲までの真実を。

 そう、私は戦っていました…

 いえ正確には、私の父が、汎銀河帝国を崩壊させてでも

 あの老人と戦っていました…

 私はそのバトンを途中で受け取っただけ…

 それでも最後にはバトンを渡された私が戦っていました。

 そして、あの老人と戦う為には、

 六色皇帝達に『革命戦争をさせなければ』ならなかった…のです。

 あの戦争は故意に引き起こした戦争でした…

 一億人の軍兵の犠牲も、必要な犠牲…

 そうしなければ、彼等をおびき寄せれなかった…』


「一億人の軍兵の犠牲で、彼等を誘き寄せた!?

 一体、何者だったんですか!?彼等は!」


その彼女の衝撃的な言葉を聞いて蒼白になるクライド。

全ての台詞がセンセーショナルだったが、

ともかく、そこまでの事をしなければ成らない

『彼等』という存在が最も衝撃的だった。

だから、激しい勢いでそれを問うクライド。

しかしその台詞にプリメーラは手を前に出して

その勢いを止めるようにジェスチャーする。


『クライドさん、貴方には私と一緒に

 1500億人の銀河市民を殺してでも

 銀河大戦争を起こす勇気がありますか?』


彼女は突然、そう問いかけてきた。


「は?」


あまりに唐突に、とんでもない事を聞いてくる彼女に

また呆然となるクライド。


『彼等が何者かを知るには

 それだけの覚悟が必要です…

 シードの言葉は脅しではなく、本当に必要な覚悟。

 その覚悟が無いのに彼等を知ろうとしてはいけません…』


そう言ってプリメーラはクライドの知識欲を(たしな)めた。


「どうしてですか!?

 それはもしかして、地球滅亡の秘密に関係する事なんですか?

 彼等という存在が!?

 でも、どうしてです? 

 知識を得るだけで1500億の人々を殺すような話と

 天秤が釣り合うなんて、俺には分からない!

 そんな知識なんて、在り得るんですか!?」


クライドは激しい勢いを止める事なくそれを問う。

どう考えてもクライドの頭の中では、

全く釣り合わない天秤だったから、それを問うしかなかった。


『地球滅亡の秘密と彼等が直ぐに結びつくというのは

 貴方が聡くて、説明するのに少しだけ助かりますが、

 まぁそういう事です…

 1500億人の人々を殺す様な話と

 地球滅亡に関わる彼等を知る事は、天秤が釣り合う話です』


「そんな馬鹿な!!

 どんな理由があったら、それが天秤で釣り合うんですか!」


プリメーラの意味不明な主張に絶叫するクライド。

その時、プリメーラの瞳の中に得体の知れない殺気の様なモノが映った。


『彼等が、1500億の人間が死のうが

 何も思わない様な輩なら、どうですか?』


「は?」


プリメーラの奇妙な殺気と猛烈な言葉に頭が白くなるクライド。


『貴方が知りたいと思っている相手は

 そういう輩だという事です…

 そして、そう思える者達と対峙するには、

 それと同じだけの事をする覚悟が必要になるのです…』


「1500億人が死んでも、何とも思わない輩!?

 そ、そんなの人間なんですか!?」


プリメーラの真剣な言葉に心底焦るクライド。

それは、人を虫けらか何かとしか思っていない人間だと言う事だ。

いや1500億匹の虫けらを殺したなら、

その光景だけでも相当凄惨な光景になるだろう。

そんな光景を見て、

何も感じなくなる人間など存在するのだろうか?

そう思ったからクライドは心底から焦ったのであった。


『私は、彼等の事を人間だとは思っていません。

 彼等はエクスターナル…

 人類の外側(エクスターナル)に行ってしまった者達です…

 なので彼等は、状況が許せば1500億人を殺してでも

 彼等の望みを叶えるべく、動き続けます。

 そしてそれと対峙するには、

 哀しいかな、それと同じだけの覚悟が必要なのです…』


「エクスターナル…

 人類の外側の存在…

 1500億人を殺してでも叶えたい望みを持つ者…

 でも、そんなおかしな望みなんて存在するんですか?

 俺には、貴方が何を言っているのか分からない…」


クライドはプリメーラの説明の尽くが理解できなかった。

その(もっと)もな言葉に苦笑して溜息をつくプリメーラ。


『まぁ分からないのが普通ですよ…

 私も、彼等、人類の外側(エクスターナル)の事は分かりたくはありません。

 でも彼等は、彼等の望みを叶えるべく

 1000年前に、ある事をしようとしました…

 それこそ1500億人以上の…

 人類が死滅してしまうかもしれない様な、恐るべき事を…

 それを阻止する為に、私の父は六色同盟戦争を起こし

 血の海を作り上げて、

 彼等が、自ら足を運ばなければならない状況を作り出した。

 そして、辛うじてあの時は、

 彼等の1500億人以上の人を殺す…

 いや…それよりも

 もっと恐ろしい計画を阻止する事に成功しました…』


「それは…」


そうクライドが彼女の話をもっと聞こうとした時

プリメーラは押し黙って、強い眼差しでクライドを見つめた。

それは、視線だけで『それ以上踏み込んではならない』と

警告していたのだった。

その猛烈な眼力、そして本当に感じる大気の鳴動に

ゴクリと息を飲むクライド。


「その本当の真実…なんてモノは、

 貴方のその表情では教えて貰えないんでしょうね…」


そう言ってクライドは、その表情が警告している事を

口に出して確かめてみる。


『対峙する覚悟無き人を

 私は無理矢理、巻き込みたくは無いですから…

 だから、これ以上は貴方には教えられません…』


そう返してプリメーラは冷たくクライドを突き放した。

しかし、その突き放しはプリメーラの優しさでもあった。


「なるほど、俺みたいに覚悟もなく興味本位でしか

 それを知りたいと思わない奴には、聞かせれない…

 という事ですか…

 そして……地球滅亡の秘密と、

 そのよく分からないエクスターナルには密接な関係があって

 それが明らかになるから、地球滅亡の記録を

 封印しなければならないという事ですか?」


『本当に聡いですね…

 まぁ私は助かりますが…そういう事です…』


クライドは断片情報から予想を組み上げでそれを口にした。

それを素直に肯定するプリメーラ。

その難儀な話にクライドはとても苛立つしかなかった。


「やれやれ、考古学研究も命懸けなんだな…

 漠然としか分かりませんが、そういう事なんですか…

 しかし、ならもう1000年前に戦いは終わったのでは?

 よく分かりませんが、彼等の何かの目的を

 大量の犠牲を払ってでも阻止したのでしょう?」


プリメーラの無言の圧力に汗をかきながらも、クライドはそう言って

あの最後の断片記憶を思い出せば、彼等の目的は大量の犠牲を払って

阻止できたのではないか?終わったのではないか?と考えた。


『いいえ、まだ終わっていません…』


そんなクライドの考えをプリメーラは一蹴する。


「は?」


プリメーラの返事を聞いて目を見開くクライド。


『この戦いは、まだ終わっていないのです…

 彼等と私の戦争は継続中です』


「どうして!?」


プリメーラの告げた、またしても驚くべき言葉に粟立つクライド。

1000年前にあった、謎の闘争である。

それが現在も継続中だという事は、どういう事なのか?

その問いにプリメーラは、深い溜息を付いて答えた。


『彼等の寿命が異常に長いからですよ…

 彼等もまだ、残党が生き残っています…』


「残党が!?」


そのプリメーラの言葉に頓狂な声を上げるクライド。

1500億人を殺しても、何とも思わない人類の外側(エクスターナル)

まだ、残党が生き残っている等と…

それは銀河レベルの大事であった。


『まぁそれでも、

 それに関してはクライドさんが心配する必要はありません。

 あと500年…

 あと500年、私がここに潜伏していれば…

 フォレストの計算上、彼等の寿命が尽きて

 最終勝利が決まりますので…』


「500年…」


プリメーラは事も無げにクライドにそう言った。

しかしクライドの様なB級人類にとってみれば500年とは

寿命いっぱい一生を過ごしても五世代は必要になる時間である。

それを何でも無いと言う所が

彼女が不老不死という存在の所以なのだろうか…。

そう思ってクライドは愕然となった。

そんな時間感覚の隔たりに肩を落としているクライドを見て

思う所があったのか、僅かにウィンクして

プリメーラはクライドに語りかける。


『では特別サービスです。

 これから娘の世話をして貰うのですしね…

 だから、そんな貴方にちょっとのサービスを…

 彼等が必要としているのは、この宝玉…

 この宝玉の名前は『ガイアの魂』

 彼等は、これを求めています』


そう言って彼女は懐から、白い宝玉を取りだした。

それは片手の平で持てる白い水晶の様な宝玉だった。

そしてそれは記憶の中でも見た、

あの老人に示した宝玉でもあった。


「ガイアの魂…エクスターナルがこんな宝玉を?」


クライドは、そのなんでも無さそうな白水晶の石を

人類の外側が必要としている事をプリメーラに問う。

その目の前の興味のせいで、クライドはプリメーラが

物騒な言葉を混ぜ込んでいた事をついつい聞き逃した。

プリメーラは続けた。


『ええ、この宝玉が無ければ、

 彼等は、彼等が望む事が、達成出来ないのです…

 私はこれを、複素光子の体になって絶対不可侵領域に

 あの時から1500年間、持ち逃げする必要がありました…

 そして、それだけが今の所、

 確定している彼等に対する勝利条件。

 複素光子体は、それをするためだけに

 彼等から我々が奪い取ったのです。

 あの時は、それが一番重要だったので

 大量の犠牲も、それ以上の影響も、

 何も考えずに、私もみんなもこうなりました…

 しかし、そのおかげで

 私は実効的には1000年前に彼等に勝利しており

 後は待っていればいい…という状態になりました。

 この惑星の上で、あと500年

 ただ眠り続けていれば、時間切れ勝ちが

 私に転がってくるのです。

 そうすれば、彼等の寿命は尽き

 銀河大戦争を引き起こさなくても、私の戦いは終わります…』


「あと500年…ここで…」


クライドはプリメーラのそう淡々と呟く言葉をまず受け止めた。

そしてそれを理解した後に、次には激しい憤りを感じ始める。

彼女は、人々を虫けらの様に殺せる人類の外側(エクスターナル)相手に

それから謎の宝玉を遠ざけるために、ここに1500年

封印石の様に眠っていなければならないというのだ。

それもこの銀河からは『銀河最大の悪』と罵られながらである。

それは、クライドがプリメーラの立場なら、

とてもではないが耐えられるモノではないと思えた。

だからこそ、強い憤りが生まれるのだった。

そんな険しい顔になったクライドを見て微笑みながら

プリメーラは声をかける。


『まぁ、もう1000年が経過しましたからね…

 あと500年、ようやく2/3に来たところ…

 ここで眠っていれば直ぐの事ですよ…』


「………」


そう淡々と語るプリメーラ。

その時、クライドはそれは彼女の強がりなのだと気付けた。

毅然とした態度でクライドに対峙しているプリメーラだったが

クライドが同じ立場だったら『こんな事やってられねぇ…』と

思うだろう事を、彼女も本当は思っているに違いない。

しかし、事が事過ぎて、逃げ出すわけにも行かない。

その気持ちの狭間。

それなのだと思った。

そしてクライドは、その心境を感じてようやく悟った。

だから、

『別の人生がもしあったなら、そんな私はどんなだったのだろう?』

と、この惑星の上で思ったのだと言う事を。

平行世界の自分が居たなら、それを是非見てみたかったのだと言う事を。

クライドはそこで、緑髪のプリメーラが生まれた理由が理解できた。

彼女はこの赤い髪のプリメーラの…

汎銀河帝国末代皇帝陛下の、声に出来ない絶叫なのだ。

クライドの考えがそれに辿り着いた時に

プリメーラは困った顔になって、

ようやく本来の要件を切り出し始めた。


『しかし、イレギュラーが起きました』


「イレギュラー?」


突然、そう言い出した彼女の言葉に

ポカンとして彼女を見返すクライド。

いったい、何があったというのか。


『とぼけた顔をされては困ります』


「え?」


そんな呆けた顔になっているクライドを見て

些か苦そうな表情になるプリメーラ。

この説明をして、この状況を考えれば

直ぐに分かりそうなモノであるが…

それが、灯台もと暗しという言葉なのだろうか?

そう思ってプリメーラはクライドを少し睨む。


『貴方の事ですよ…』


「俺!?」


プリメーラはそう腐して、今の『イレギュラー』を説明した。

その指摘に体を仰け反らせて驚くクライド。

その反応に、そこは鈍いのか、とプリメーラはやや呆れる。


『当たり前じゃないですか…

 そんな時間だけが解決する戦争をしている私の所に、

 ほんとうに偶然に、貴方が墜ちてきたんですよ?

 そして私の分身と出会い…

 貴方があの子を人間にしてしまった…』


「あっ!!」


プリメーラにそう今の現状を説明されて、

ようやく自分というイレギュラーを理解するクライド。

封印石の様な仕事を続けて、やってられねぇとばかりに

自分の分身を作って遊んでいた所に、突然人間が墜ちてきて、

その分身と急速に良い仲に成っているのである。

それは、元々の状況を引っ掻き回す非常に危険な状態であると、

クライドにも容易に理解できた。


『私が出てきたのは、この困った事態に

 一定の収拾を付けるためです…

 もう、あの子と貴方の暮らしを見ていると

 貴方から私が隠れ続けるには、厳しいと判断しましたのでね。

 なので、貴方とお話し合いを…と思って出てきたのです』


「話しあい…ですか…」


穏やかな口調でそう語られたので、少し安堵するクライド。

クライドは、一瞬、相手の立場なら口封じの為に

抹殺する事もやむを得ないと行動する、等と想像してしまった。

銀河の大事を抱えているなら、多少の小事は仕方ない。

それが支配者の思考と云うモノであろう。

そう思ったのに、彼女からは『話しあい…』と言われたのである。

それならば、いきなり口封じに殺される、という事は無さそうに思えた。


「ならば、どのような話あいを?」 


と言ってクライドが首を傾げたその時

プリメーラは少し悪魔的な微笑みを浮かべて口を開いた。


『はい、単刀直入に申します。

 あの子を…

 プリメーラ・アルフォーレシードを

 貴方の嫁に貰ってはもらえませんか?』


「は?」


その時、クライドは彼の肉体を刺し殺す鋭いナイフよりも

より物騒な言葉で、彼の心を激しく突き刺さされたのだった。



ハァ…まさか、第1章でエクスターナルの単語まで出てくるなんてナァ…

でもこれ説明しないと、上手い事クライドを説得できないしナァと…


どのみち序盤の宇宙戦艦動きだしたら

プリメーラの敵の説明は直ぐにしないといけないんで

なら、ここら辺に出てきてもええんかな、と。


ただ、こうクライドを説得する為に説明すると

どう考えても、こんな勝ちが勝手に転がってくる状況で

わざわざ、博打を打ちに行く理由が見つからないんですよな…


きっかけは考えているんですけれど

そのきっかけを元に、赤メーラが博打を打つ決断をする

合理的な理由が全く作者でさえ思いつかないという…


本当に何も分からない未来に、掛札を張るという

御乱心しない限り、この惑星から出て行く理由が

全く無いんで、困っています。


まぁ御乱心なら、御乱心でもいいんですけれど…


何かもう少し合理的な理由が欲しいナァと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ