第十四節 水の中に二人
このセクション書いてたら、今回出した文量の倍ぐらいの量になってて
「あかんあかんww
1節が二万文字とか、なんかおかしいww」
という事で、この切りの良い1万文字ぐらいのところで分割で
クライドは一日中体力測定を続けたので
また汗だくになり、代謝洗浄装置…のハズの
『風呂』にまた入る事にした。
そして風呂場で水遊びの娯楽施設の様に湯を体に浴び
その気前の良い水の使い方に、朝と同じ様にまたおののく。
母星暮らしの上級市民や名誉貴族の者達なら
こんな事をするのは抵抗もないのだろうが
何分、クライドは軍務に入って
後方支援とは言え宇宙基地で生活していたのだ。
その生活を思い返せば、
日々、小さな洗浄カプセルの中に入って
洗浄液と一緒に体中を水洗いされていた。
水を大量に浴びるという点では、
洗浄カプセルでの水漬け代謝洗浄は、
シャワーを浴びるよりも
むしろ水まみれになっていたわけだが
宇宙生活における病気の蔓延は、重度の死活問題であり
それゆえ清潔さを母星生活以上に
ケアしなければ成らないのである。
故に、宇宙での重度の洗浄浄化は
生命を維持するための必須事項であった。
さりとて、小さな空間の循環系における水物質は
(宇宙基地での生活を維持するために
余剰分も含めて大量に用意をするとしても)
宇宙内ので大量損失が許されない物質の頂点である。
故に、洗浄カプセルは使用水の廃棄など出来ず
同じ水を汚液から清水に何度も浄水する事で
装置として成り立っていたのだった。
そういう機関的な制限水量が存在していた生活を送ると
水を浴びてそれを流して捨てる等、論外の行動なのである。
それを今、この『風呂』という装置で
しなければならないクライドは、
その余りの放蕩生活に身震いするしかなかった。
「まったく貴族意識ってのは、これだから…」
湯を浴びながらそう愚痴るクライド。
宇宙風刺語の1つである。
そしてシードに教わったままに、タオルに洗浄剤をまぶし
それで体を擦ってみるクライド。
なんという無駄だろう…。
人力で自己洗浄するなんて…。
空間シャワーが自動判断で洗浄をしてくれる装置を思えば
全てを自分で洗浄しなければならないというのは脅威である。
まぁシードの言葉を拝借すれば
元々無かったモノを、そういう風に作ったのだ、という事だ。
ならば、無かった時代にはこれが普通だったという事か…。
そんな古代洗浄法を実際に自分でやってみると
『そんなモノがあるのは当たり前』
と思う事は、その思想自体が贅沢な事であり
無かった時代の人間からしてみれば、
最初からある奴が贅沢言ってるんじゃないよ!
という所なのだろうか?。
そんな思案をしながら体を洗っている時…
『クライド、どこー?ここー?
あれ?こんな所、昨日あったっけ?』
と言いながらプリメーラが風呂場に入ってきた。
「うわっ!!」
プリメーラにおもむろに風呂場に侵入されて
奇声を上げるクライド。
プリメーラはそんなクライドの様を見て首を捻る。
『何してるの?クライド…』
全裸で体を泡塗れにして座っている様子を見て
それを素朴に尋ねるプリメーラ。
「な、何って…代謝洗浄ですが…」
背を向けていて背中しか見られていないとはいえ
今の全裸の状態をプリメーラに見られていた。
しかしそれにプリメーラが何の人間的な反応を起こさず、
ただ今の行動を尋ねるだけな事に
人間意識の齟齬を感じて脱力しながら、クライドはそう返事をする。
『代謝洗浄??』
と、その言葉を聞いて、
クライドの記憶の無意識参照によって
それに該当する光景を思い出すプリメーラ。
しかし、クライドの言うそれは、
小型カプセルの中に全裸で入って水に攪拌される事であった。
『随分、クライドが知ってるのと
この光景は違うんだけど…これが代謝洗浄なの?』
そんな記憶からの知識と、目の前のそれが明らかに異なる事に
それを更に尋ねるプリメーラ。
『これは地球人が古代に行っていた代謝洗浄法でして、
地球環境に合わせて、古式を思い出して
クライドさんにして貰ってるんです』
そんな疑問にシードの方が答えた。
「らしい…」
その言葉をただ肯定するクライド。
『へぇぇ、これが地球人が古代にしていた
代謝洗浄なんだ!!なんだか独特だね!』
そう言って幽霊の様にフワフワと浮きながら
近付いてくるプリメーラ。
「ちょっ!あのね!
俺、今、裸なんですけど!!」
そんな無造作に近付いてくるプリメーラに慌てるクライド。
『…? 裸だと、何か問題なの?』
そんなクライドの言葉に首を傾げるプリメーラ。
そこでクライドの記憶の無意識参照が起きたのだが…
(それはいけませんね…)
という謎の意識の発生で、
その領域の記憶参照がシャットダウンされ
無意識にはそれが分からないままのプリメーラ。
『これは古式では『風呂』と呼ばれる装置で
風呂場は裸で入るモノなのです』
と、そこで状況を煽るようにコメントを入れるシード。
『あ、私、服を着ている状態だから駄目なんだ…
じゃぁ服は脱いじゃいます~~』
そんなシードの戯れ言葉を、そのまま聞き入れて
自分のピンク色の服とスカートを光の粒子化させて
脱離させるプリメーラ。
「ぬわぁ!!
何してんですか!! プリメーラさん!!」
いきなり全裸状態になったプリメーラを見て
即座に顔を背けるクライド。
『え?風呂場では裸にならないと駄目なんじゃないの?』
服を脱いだ‥というか消した事で、激しく動揺するクライドを見て
それに更に首を傾げるプリメーラ。
(「シード…遊びが過ぎます」)
僅か0.1マイクロ秒、クライドが視認できない時間に
緑の髪のプリメーラと赤い髪のプリメーラが入れ替わり
その従者の遊び心を窘めて、元に戻る彼女。
その0.1マイクロ秒は、シード以外の二人には
何が起きたのかも『認識』できなかった。
『失礼、失礼…
えーと、しかし服のままというのもアレですし…
ま、水着ぐらいは姫様に着て貰うとして…』
と陛下に怒られて善処策をプリメーラに施すシード。
シードのその制御でプリメーラは
ビキニ姿の水着を纏う事になった。
『ん?どういう事?』
そんなシードの意味不明な施しに、それを尋ねるプリメーラ。
水着姿でも十分刺激的ではあるが、まぁ全裸よりはマシかと
ようやく顔を向けれるようになるクライド。
『うーん、えっとですねぇ…説明が難しいんですが…
基本的に男女というモノは、全裸で同じ場所に居ては
いけないという倫理があるのですよ…』
そう説明を入れるシード。
今のこの『女性』であるかどうかも定かではない
精神的には女性…というか女の子の主に
人間的倫理をそう語ってみた。
しかし、光子体になった今では、その倫理をどうこう言っても
どうしようもないのではないか?と思わなくもない。
『そうなんだ!でも…どうして?』
そんなシードの説明を、理解しながらも、
それが何故かを尋ねるプリメーラ。
クライドはそんなプリメーラの問いかけを聞いて
頭を抱えるしかなかった。
妹が生まれたばかりの頃…、彼女が幼女の頃に
クライドに色々な事を「どうして?どうして?」と
聞いて来たあの頃の事が思い出された。
その頃の雰囲気を思い出し、それとまったく同じ光景に
プリメーラが著しく精神年齢が低い事を改めて思い知る。
(人と全く生活しないと、
精神というのはこうなるんだなぁ…)
そう精神教育というモノの重要性を認識し
難しい顔になるクライド。
さて、どうそれを説明していいモノやら…。
そうクライドが逡巡していたその時、
ただ単に迂闊だったのか、確信犯だったのか
それともシードもやはり知識情報の下僕でしかなかったのか
それは曖昧な所ではあったが、
ついついシードがぽろっと知識を口走ってしまった。
『ええっと…
男女というモノは、好きあった者どうししか
全裸で一緒の空間に居てはいけないモノなのです!
それ以外は全部アウト!
それが人間という倫理です!』
そうシードは、よくある倫理感を、迂闊に口にした。
(あ、それはアカン奴や…)
(あ、それは駄目な説明…)
クライドともう一人のプリメーラは、
そんなシードの説明を聞いてその時全く同じ感想を
心の中に浮かべた。
『そうなんだ!なら、好き合ってたらいいんだ!
ねぇクライド、クライドは私の事好き?
私はクライドの事、大好きだよ!』
そのとても迂闊なシードの説明に
シード自身も、しまった!と思ったのと同時に、
プリメーラはそれを口にしたのだった。
この会話の流れに、とても覚えのあるクライドは
あまりに同じ流れ過ぎて彼女の台詞に絶句する。
(「お兄ちゃん、お兄ちゃんは私の事、好き?
私は大好きだよ!」)
ミリネーナが幼女だった頃、妹を甲斐甲斐しく世話をする
クライドに向かってミリネーナがよく口にした台詞だった。
そのフレーズを思い出して、僅かにホロっと来るクライド。
しかし、今は懐古感にむせぶ時ではなかった。
『ねぇクライド!
クライドは私の事好き?』
プリメーラはクライドに飛びかかってきて
背中に抱きつく…様な感じの状態になって、
それを再度尋ねた。
「ああ、えっと、あーーえーっと…
えーーっとねぇ、はははは……」
これをどう答えていいのか迷うクライド。
その「好き?」の問いかけは、
よくある子供の好き?の問いかけで
ただ、純粋に自己認知して貰えているかどうかを
問いかける系の言葉だ。
だから過去の妹への対応…
(「当たり前だろう?
ミリネは俺の妹なんだから大好きだよ!」)
の言葉を同じ様に返してしまえばいいのではないか
とも思えた。はぐらかしの好きという返答だ。
妹ではそれで問題無い。
何も困らない。
しかし、プリメーラは妹ではない。
血の繋がりのある家族ではない。
それが問題だった。
『どうして口籠もるの?
もしかしてクライドは私の事、嫌い?』
そんな即答しないクライドの態度に不安になって
眉をひそめてそう尋ねて来るプリメーラ。
(あかん、この子、天然で追い詰めてくる…
ここははぐらかすのはマズイ…
たぶん、マズイ…
でも迂闊に丁の良い返事をして良いのか?
それは…どうなんだ?)
プリメーラの子供の様な…、実際、子供の心と同じだが
強い押しに追い立てられ、更に返事に迷うクライド。
その時クライドは、
ようやく自分が後がない状態なのに気付いた。
(更にここで丁の良い返事をして
刷り込みになった場合…
それでええんか?
それは洗脳と同じなんじゃないか?
洗脳はいかんだろ?
でも嫌いって言うのは一番おかしいし…
好きでも嫌いでもないというのもおかしいし…)
そんな混沌とした思考が入り乱れながらも
言葉を返さないのは、彼女の様な精神不安定な存在には
危険ではないか?というのがクライドが記憶共有化した
感触であったので、ともかく言葉を取り繕うしかなかった。
「ああ、も、もちろん、
す、好きは、好きですよ…はい…
ええ、ええ…」
クライドはこれは地雷踏んだんじゃないか?と怯えながらも
含みのある言い方で、そう返事をする。
『あ、うん…
そう…
でも、何か…ハッキリしない言い方だね?』
その期待していた返事が返ってきた事に喜びながらも
子供の様な心であろうが、それとは別に存在している
心理構造にその返事の音調が引っかかり、
女の勘的なシステムがクライドの言葉が明瞭でない事を
プリメーラに悟らせた。
そして詰問調の問いかけをクライドに送る。
(何でそういう所は、幼女の頃の妹と同じじゃないんだ…
そこら辺が100年か40年かは
存在だけはしていた不整合なのか!?)
クライドはプリメーラが言葉ではぐらかされている事に
直ぐに気付けた事に驚いて困るしかなかった。
そして、どう言葉を続けるか思案する。
この、自分でも上手く言葉に出来ない違和感を
言語化するのは、とても大変な事の様に思えた。
しかしその時、自分でも明瞭でなかった思い…
無意識にクライドが感じていた事を、
何故か意識が、上手い事拾い上げてくれて
クライドはそれをそのまま口走った。
「いやね…
好きっていう感情はね…
こう…、一日、二日で
ハッキリしてしまう感情じゃないんだ…
好きという感情が、ハッキリ好きという感情になるには
もっと、時間が必要なんだよ…」
そんな無意識にクライドが感じていた思いを
上手い事、意識が拾い上げてくれたので、
クライドはそうプリメーラに今の不明瞭な気持ちを説明できた。
そして自分で言いながらにして
自分で自分が彼女の問いかけに
明瞭に答えられなかった理由に納得する。
(そうか…この感情が好きであると
俺自身が納得するためには、俺には時間が必要なんだ!)
そう思って冷静になり、
まだ出会って三日しか経ってない事が
好きは好きだが、好きと言いきるのはどうか?
と自分に疑問を投げつけ、
クライドの行動にブレーキをかけた理由であると理解する。
いや記憶の共有化が起きたので、互いによく知った間柄という
奇妙な連帯感も既にあったのだが
それでも、実質的な時間が三日しか経ってないのである。
それで思慕の関係になるのは、おかしいんじゃないか?
と単純に思えたのだった。
『えー?そうなの?
おかしいなぁ…私はもうクライドの事、大好きなのに…
えーと、そう!
結婚したいくらいに!』
そんなクライドの言葉に眉をひそめ、
プリメーラは好きの感情に時間が必要だという言葉に反論して、
クライドの記憶の中で見た、ミリネーナの言葉を思い出して
何の抵抗もなく、それを口にした。
(「うんん…そんな兄妹の好きじゃないの…
私、お兄ちゃんと結婚したい…って思ってる…
それぐらい…大好き…」)
「ぶはっ!
け、結婚っ!?」
そのプリメーラの台詞を聞いて強く噴き出すクライド。
好きだ好きだと軽々しく言っていれば、
このままでは恋人的になってしまうのではないか?と
危惧していたが、
彼女の意識は既にそこら辺をすっとばしていたとは。
これも妹の子供の頃の、「お兄ちゃんのお嫁さんになる!」
的な子供心の、何のしがらみもない好意への率直さなのだろうが
見た目が成人の、かなり可愛い女の子である以上
それを言われるのは心理的に大変だった。
「いやいやいやいやいやいや!!!
結婚なんてのは、好き合って何年も互いを理解した上で
する事であって、出会って三日の男女がする事じゃないよ!」
と、慌てて結婚の概念理解を説明するクライド。
互いを理解するという点は、記憶の共有化でもう何年的な状況は
クリアしている様なモノだが、実質経過時間は三日である。
出会ってただの三日で結婚する男女が、何処にいるのか?
その違和感がクライドを慌てさせたのだった。
『え?結婚ってそうなの?
好き合って何年も互いに理解しないと出来ないの?』
そんなクライドの言葉にキョトンとなるプリメーラ。
『まぁ一般論的にはそうですね…』
クライドの言葉をそのまま肯定するシード。
『でも、動物で結婚してる子達って…
直ぐにつがい…というかあれが結婚んだよね?
ともかく結婚してるじゃない…』
と、そうプリメーラが言った時、
もう一方の意識が緑髪のプリメーラの意識に絡み
その思い出しが『ある特定の事』だけは思い出せないように
記憶参照のロックをかけた。
そのせいでプリメーラは、そこら辺の思い出しが曖昧になる。
「あーーえーっと、
まぁ人間はね…いろいろと過程を積み重ねないと
動物と同じ様には行かないんだよ…
どんなに好き合っても、
互いを理解し合わないと、結婚まではね…」
と、プリメーラの物凄い例えに絶句しながら
人間の結婚というものを語るクライド。
しかし、どの道、それは恋人的な感じになろう的な
流れを止める説明ではなかった。
その懸念は案の定になる。
『だったら、
私、クライドともっと理解し合える様にする!
それって、どうすればいいの?』
子供の様な、いや子供の魂は、そう説明を受けると
単純にそれを納得し、その言葉通りになろうと考える。
その言葉に、どの道そっちの流れにしかならんな…
と頭を抱えクライドは溜息をついた。
子供の魂は世界が単純でいい。
好きだから一緒になる、結婚する。
そう単純に考える事が出来るのだから清々しい。
しかし反面、プリメーラにその単純さを
彼女の言葉で指摘されて
では大人になると、何がそれを躊躇わさせるのか?
という疑問が生じる。
そう、好き、だから結婚したい。
そう思う事の、何が問題なのだろうか?。
それを悩んで、クライドは、やはりさっきの思い
『互いに共に過ごした時間の少なさ』だろうと考え
記憶の共有化で互いの理解が濃密になったとしても
実質生活時間の圧倒的な不足が致命的なのだろうと推論する。
それと似た様な考察を巡らせていたシードが
段々と『複素結晶らしく』この回りくどさに苛立って来て
生活時間が足りてないんなら、
そこを埋めるべく、互いの親睦深めればいいじゃねーか?
と、ぶっきらぼうな思考に変わっていった。
どの道、この状況で現状維持を求められるのなら
どう計算しても、落とし所がそこにしかない。
この宇宙を今の六色帝国戦争等という穏やかな戦争ではなく
銀河大戦争の業火の中に叩き落とすという決断ができなければ
この緑髪の方のプリメーラは、
この惑星から一切外に出る事は出来ないのだ。
なら、元々、選択の余地が無いではないか?
そう思えたのでシードは煽る方向に動く事にした。
『そうですねぇ…
まぁ妥当な所で、姫様はクライドさんの背中でも
タオルで洗ってあげればいいんじゃないですか?』
そう白々しく助言するシード。
そしてプリメーラの手の中に石鹸で膨らんだ
タオルを出現させた。
「え!?」
そんなシードの言葉とサポートに驚くクライド。
『こういう事をすれば、互いに理解し合えるの?』
そう尋ねながらプリメーラはおずおずと
タオルでクライドの背中を洗おうとする。
『まぁ古式では、好き合っている男女は
こういう風呂場で体を洗い合って
互いに互いを思い合ったという事なので
古式に則れば、そうなのではないかと…』
と、シードは大嘘をついた。
いや、嘘ではない。
嘘ではないが本当でもないだけだ。
しかしそのシードの言葉に流石に激高し、
0.1秒のマイクロ時間の存在交替と同時に
光速空間での、時間伸張を使って
赤い髪のプリメーラが現れ、シードを睨む。
(「どういうつもり?」)
(「姫様にはクライド氏が必要です」)
(「それはそうだけど」)
(「銀河大戦争してでも、
姫様に外の世界を見せる気が有るのですか?陛下。
それが出来なければ、他の選択肢は生まれません。
それに、クライド氏で何の不満が?」)
(「彼に不満はないけれど、
それでもこれは流石に無いでしょう!?
どれだけ相互理解が出来ていたとしても、
まだ二人は出会って三日目よ!
これは結婚した後にするような事でしょう!」)
(「今の銀河でそんな事を覚えてるのは
六色帝国の貴族階級だけですよ!」)
(「無知を良い事に、無茶振りね!」)
(「結果と過程が前後するだけです。
姫様のしたい様にさせる…
それが陛下のお望みだったではないですか…」)
(「………
ハァ…そうね…
望むままを望むままに…だったモノね…
それにしても、この子は真っ直ぐ過ぎる…
こんなに自由奔放に居られるなんて…
私も、状況が許せばこう成れた…というのは驚きだわ…」)
(「そうですが…、でも、私は、今の姫様は大好きですよ…」)
(「そう…
………
悔しいけど、私もそうよ…」)
そのやり取りが交わされたのは、0.1マイクロ秒の事で
クライドとプリメーラの認識時間には、
それが在った事さえ分からない事だった。
そんな止まったかの様な時間でのやり取りの後、時は動き出す。
クライドはシードの言葉に驚いた。
「ホントに!?
古式や地球人の男女って、親睦を深めるのに
こんな事してたの!?」
プリメーラが嬉々としてクライドの背中を洗い出した事に
クライドは仰天してそれをシードに問いかける。
『ええ、そうです…
こうやって一緒の風呂に入って、
互いに親睦を深めるのが、古式のやり方です』
シードは平然とそう『夫婦』の親睦の深め方を教える。
どうせ遅かれ早かれ、そこに行くのだ。
多少の情報改竄は問題無い。
「何か釈然とせんなぁ…
『性的興奮強化錠剤』でも飲んでたら
大変な事になる状況に思えるんだが…
まぁ…古式にそういう伝統があるんなら
そうなのかな…
水浴びのプールデートと同じか…」
クライドはそう言って、この非常に驚く状況が
古式では普通だったと言われて首を捻るしかない。
いや、男女のプールでのデートは、これと同じなのだから…
地球人の男女のカップルは、自分の家でも小型プールで
親睦を深める、水贅沢の塊のような存在だったと言う事なのか?
それを思って、その状況に恐怖するクライド。
なら、地球とはどれ程の水があったというのか?
「なぁ…まぁ見せて貰えないのかもしれんが…
あんな死滅してしまう前の地球には
どれだけの水があったっていうんだ?
その頃の記録は、見せて貰えないのか?
こんな水の無駄使いを一般人のみんながやれてたって
ちょっと俺には信じられないんだが…」
プリメーラに背中を洗われて気分良くなりながらも
こんな「風呂」等と言う贅沢を、誰もがしていたという
その地球人達、そして地球の水量が気になって
それを尋ねるクライド。
『ええ!?
……まぁ、封印されているのは『滅亡の過程』なので
かつての人類が暮らしていた頃の地球の資料くらい
見せてもいいですかね?』
と、『フォレスト』に確認を取るシード。
フォレストはその打診に驚き、
『これは我々側の積極的な誘導にならないか?』という
審議を判定会議機関にかけて、超高速審議をしてみた。
その審議結果は
『質問者側からの情報開示要求であり
向こう側に恣意の主導権がある。
故に、我々の意識操作誘導とは言い難い。
秘匿情報との直接接触ではないので
汎銀河帝国皇帝随伴を考慮して
秘匿する理由にはならない。
ただし、質問者側がアレを見て
『地球人化』が加速する可能性はある。
それも質問者側の要望なので、やむを得ない』
であった。
その結果を受け思考空間で眉をひそめ、
もう一つの審議を機関にかけるフォレスト。
『地球人化の影響は誤差範囲か?』
その審議を機関にかけた時、審議機関は議論過熱し
予測演算機構の連動運転が始まる。
出てきた答えは
『未知数、如何様な未来も在り得る。特異点』
であった。
その結果に粟立つフォレスト。
思わず笑って、フォレストは
『許可許可』との答えをシードに返したのだった。
『ふむ…まぁいいでしょうかね…
死滅する前の地球とは…この様な惑星でした…』
フォレストの許可が出たので、そこに立体映像で
『水の星』と詠われた時代の、地球の姿を映し出すシード。
クライドとプリメーラはそれを見つめた。
そしてクライドは唖然とする。
「おい…これ…、一等母星級、水質保全惑星じゃねぇか!!
母星適性最高の惑星っ!!!
なんだ、この海の面積は!!!
水しかねぇ!!」
クライドはそのあまりに深い蒼、そして大気を巡る
雨源の白い雲を見て驚愕した。
『綺麗…もの凄く綺麗な惑星…
これが…元々の『地球』だったの!?』
プリメーラもその本能に直接響いてくる星の姿を見て
その水の深い蒼にウットリとする。
『まぁ発想が逆ですけどね…
この宇宙では存在する事が難しい『水』が
最も大量に溢れていた惑星にしか生命は生まれず
その適性こそが『母星』の母星たる所以です。
どれだけ、カリア・ザクタとアリア・ザクソンで
人間を『宇宙人化』させても、
元々の46本の遺伝子は
この地球の環境の中で生まれたのですよ…
一等母星級?
一等母星級の基準値は、焚書させられましたが
元々『地球』の数値の事ですよ?
この星以上に母星の適性がある惑星が
この銀河に存在するわけないでしょう?
貴方の体の中にある、地球人の46本の自然遺伝子が
常にこの惑星の環境を求めているのです…
水しかない惑星の環境を…』
そう言ってシードはその惑星を指し示す。
「こんな大事な、一等母星級の惑星を…
あんな状態にまで壊すなんて…
どんだけ人類ってのは馬鹿なんだよ…」
言ってクライドは横にある湯のたまった風呂を見て
深い溜息をつくしかなかった。
「そりゃ、こんなに水があったら、
こんな脅威的な水の使い方が一般人の誰でも出来るわ
水の惑星…
はぁ…水の惑星の古式なぁ…」
クライドはそれに眩暈がする様な思いになって
深い深い溜息をついた。
宇宙生活の基礎理念である『節水』
その理念を必要としなかった水の惑星。
その水が溢れているが故に、
当たり前の事だったというこの古式。
「プリメーラ…
一緒にこの湯の中に浸かろうか…
そりゃ、一等母星の水量だ…
男女が毎日、自宅のプールで湯にも浸かるわ…
はぁぁぁ…」
クライドはそうボヤいて
泡にまみれた体を湯で洗い流し風呂の中に入って行く。
そしてシードの言う
古式での男女の親睦とやらに従う事にした。
流石は『始祖の惑星』という事か。
この様な古式の風習で水と共に生活が組まれる事は、
その惑星では当たり前の事だったらしい。
ならば、同じ血を引く人類としては
古代地球人の生活に習うのも悪くはないだろう。
そう思った。
うむ、こうやって暖かいお湯に身を包まれ
広がる水の中に体を預ければ、なんと心地良い事であろうか?
そんな所に可愛い美少女と二人で浸かる。
それは、親睦も深まるという所だろう。
そうクライドには、湯の温かさを感じて単純に思った。
そうしてクライドは、
まんまとシードの本当のような嘘に騙された。
ただしクライドは、どーにも腑に落ちない事もあった。
これが夫婦で『性的興奮強化錠剤』でも飲んでいたなら
どう考えても抑制が効かなくなって
子作りでも始めてしまうよな…と。
まぁ男女の親睦を深める行為というのだから
こういう事を続けるウチに、結婚して夫婦になって
一緒の風呂に入って良い気分になって
そこで『性的興奮強化錠剤』を使って
二人で子作りをするという流れに、
いずれかはなるのではないか?と考えてみる。
そういえばプールでの水遊びも、
そういう流れを作る一環なのだから
水貴族だった地球人様なら、そういう文化であっても
何ら不思議とも思えない。
「なぁシード、聞きたいんだが…」
『何です?』
「これって、もしかして結婚予定の男女がする
親睦の深め方なんじゃないのか?」
そこでクライドは、この古式が『自分の家』で…
という条件があるのを考えて、
ただの男女の文化ではないのではないかと問いかけた。
『当然ですよ?
姫様はクライドさんと、
結婚するまで親睦を深めたいと望まれたのですから
そうなるような親睦の深め方を
お勧めするに決まってるでしょう?』
「あ!?」
そのシードの事も無げに言った台詞を聞いて
愕然とするクライド。
『そっか!これって結婚するつもりの男女がする
特別な親睦の深め方なんだ!それじゃ私も入るっ!』
と、シードの説明を聞いて表情を明るくさせ
同じ様に風呂に浸かるプリメーラ。
「ちょっと、シードさん…
プリメーラは、アンタ等の姫…
それも汎銀河帝国の現皇帝陛下なんじゃないのか?
その姫が、俺と結婚したいとか
凄い事言ってるのに、何で止めないの?」
そうやって一緒の風呂に入っている状態になった
二人の状態を前に、非常に気になる事を尋ねてみるクライド。
そう、昨日の同じベッドで寝るのもそうだが
今は、何処の馬の骨とも知らない人間と
汎銀河帝国の皇帝陛下が結婚したいとか
滅茶苦茶おかしな事を言い出しているのだ。
そして、それを何でも無く軽く流して
その方向性を促している従者。
彼女を汎銀河帝国の皇帝と
もう認めてしまっている自分も今は相当おかしいが、
そうであったら、この状況は果てしなくおかしい。
『まぁ汎銀河帝国をもう一度復活させるのなら
この状況は、確かに困りモノではありますが
姫様に復位条件を知られてしまった今、
姫様が復位されるとも思えませんのでねぇ…
なら姫様の望まれるままに
その望みを叶えるのが、私の様な従者の仕事…』
と、そんな微妙な事を言ってみるシード。
『そうね…
億人単位で人を殺さないと復位できない
汎銀河帝国の皇帝なんて、もう興味が無いわ…
それよりは、家族になってくれたクライドと
ずっと一緒に居たいもの…
うん! だから結婚して夫婦になりたい!
そうすれば、ずっと一緒に居られるじゃない!』
そう言って明るく笑うプリメーラ。
その二人の台詞にクライドは絶句する。
「随分と軽いんだな…
汎銀河帝国皇帝の継承問題って…
それでいいのか!?
……うーん?
………‥
まぁ滅亡した帝国の継承権なんて
そんなモノなのか?」
とクライドは、あまりの軽さに違和感を覚えながら呆れる。
『うん、無くなっちゃって
復活させるのが、とっても大変なモノなんて
どうだっていいよ!
今はここにこう在る事が、一番幸せだもの!』
とプリメーラは満面の笑みで答える。
「幸せ…か…
うーーーん……
まぁ、そうかもな…
汎銀河帝国の皇帝になっても幸せになれないんじゃ
そんなモノに、何の価値があるのか俺には分からんし…
たったこれだけの事で、幸せになれるのなら
そっちの方が、よっぽど重要だしな…」
そうポツリとその言葉の感想を呟くクライド。
『そうそう!』
クライドのそんな言葉に納得して陽気に首を振るプリメーラ。
そんなクライドの何気ない言葉は、しかし、
もう一人のプリメーラの心を、いとも容易く貫いた。
(汎銀河帝国の皇帝になっても、幸せになれないのでは
そんなモノに、何の価値があるのか、分からない…か…)
それを意識の中で呟いて、思わず彼女は涙ぐんだ。
この前半1万文字部分は、うん、見事にイチャコラになってますか?
いや、書く必要があるのはこれから後の後半なので
必要ではないシーンではないのですが…
むしろ、必須シーンで
描写プロットのチェックポイントの1つなのではありますが
しかし、ここら辺の話を、宇宙出た後に書くとなると
例えば、『そして二人は一ヶ月の共同生活をして、互いの理解を深め…』
とかいう、時間カットの文章を使った後に、宇宙に出て
このシーンすると
「一ヶ月の共同生活の中で、その違和感に気付かなかったのか?」
というセルフツッコミになるので
必要描写である以上、第1章であらかた書いておかないといかんのです…




