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星の大河 -漆黒が誘う白銀への道標-  作者: アレの様な何か
第1章:Communication 忘れかけていた杜ト詩
11/43

第九節 融合

今まで書き溜めてたのを切り貼りして、サラっと流したな…

まぁ17年前の1章平均の文量から見れば、これだけでも三章になってたんだよな

--------------------------------------------


どうしたんだろう……

暗闇の中だ……

朧気な記憶の中…

朧気な俺の魂…


ここは何処だ?

俺は……誰だったのだろう……


深い闇の中で俺は自問した

自分が何であったのか、

この世界が何であったのか、

今という時間が何であったのかを…


その時、俺の瞳の中に光が舞い込んだ


[La-...La-..LaLaLaLa--]

[Living where you're ?]

[La.LaLa..La--.La.La.La.La--]


声がした…

歌声が…

俺はその歌声を探し出すために…

その光の光景をじっと凝視した…


そこにはあの惑星の上で、星の大河に(うた)声を放っている

プリメーラの姿があった……


------------------------------------------------


声が聞こえた…


「ミリネーナ…」


ああ、クライドの声だ…

そして名前……

クライドが寝言で口にした…

多分、クライドの妹さんの名前…


ミリネーナ?

ミリネじゃなかった…


ああ、省略した愛称で

ミリネーナがフルネームなのかな…


私は気になる…

気になってしまう…


ミリネーナ…


クライドの大事な妹…

C級人類でクリーンルームでしか生きられない

地球人と同じ人…


知りたい…

知りたい…

私は知りたい…


どうして知りたいのか分からない…

それでも、私は知りたい…


私は光子という虚ろな存在で…

存在している人には、きっと敵わない…


私は私という虚ろな自分が恨めしい…

そして存在している全てのものが羨ましい…


だから私は……知りたかった…


クライドが『命がけで守る』と言った

その人がどんな人なのか…


私は近づく……、クライドの心の奥深くに…


----------------------------------------------------


[擦り切れてしまった……

    その瞳の輝きが……]


彼女は(うた)を歌っていた

誰も来るはずの無い、星の上で……

誰に聞かせるはずもない歌を、たった一人で……



「ねぇ、シード……、あの星の大河の向こうには

   ……何があるの?」


プリメーラが独り、シードを相手に語りかけていた


「何も有りません……姫……

   宇宙は空虚が支配しているだけです……」


「ふーん……」


プリメーラは、そう言って宇宙を見つめていた…

そして囁く


「空虚って、可笑しいね……

 あんなに星々の光が、輝いているのに……

 本当に何も無いの? シード……」


「…………」


-------------------------------------------------------



[貴方の両腕は……

   その凍えている……肩を独りぼっちで……]



私はクライドの視界に飛び込んで……

その声をかける相手を見つめようとした…

それは誰?

ミリネーナ……


意識が収束していく……


開けていく光景…

そこには、白いベッドと、寂れた個室……

そして青緑の長い髪をして弱々しく微笑んでいる

少女が居た……


「お兄ちゃん……、また来てくれたの?」


彼女はそう言った…


…お兄ちゃん


兄…


クライドの事をそう言った、目の前の少女


ああ、この人がミリネーナさん…


クライドの妹さん…


笑ってる…

クライドが来た事が、とても嬉しそうに笑ってる…

でもなんだろう…


とても寂しそうな…笑顔…


-------------------------------------------------------


[抱きしめて、小さく……

  怯えて……泣いて…lululu、居たの……]



時間が、胸が詰まって窒息してしまうかのように

過ぎていった……

いや、そういう錯覚だったのだろうか……

ともかく、何もないという空虚な時間が

星の瞬きと同じぐらいに憂鬱に、過ぎていくしかなかった…

その中で、彼女はずっと星の上にいた


「シード……私は……どうしてここに居るのかな?

  どうして…私は独りで歌っているのかな?」


彼女は、ただ一つの話し相手に、

またいつもの様に語りかけるだけ…


「姫様は、宇宙の真ん中に存在する絶対無二の存在だからです

  世界は姫様の為に有り、世界は姫様の力の前に平伏している

   だから姫様は、この哀れな世界に歌を歌っておられるのです…」


彼がまた今日もわけのわからない返事をする

プリメーラは意味不明の返答に、いつものように眉をひそめた


声が聞こえていた…

歌という形で、親愛なる声という贈り物が……


-------------------------------------------------------------



[刻の中に、揺らめいている……

  陽炎のような、命のダンスの中で……]




「『また』、は無いだろう? または……

  妹の見舞いに、来ない薄情な兄貴なんているのか?」


そう言って私のクライドは彼女のベッドの隣に

贈り物の花を置いた

真っ赤な……目も覚めるほどに鮮やかな真っ赤な花を…


「お兄ちゃん……、私の為に軍人になったんでしょう?

  お母さんから聞いているのよ……」


「……母さん……黙っていろって言ったのに……」


…………


「少しやつれたよね? 無理してない? お兄ちゃん……」


…………


「馬鹿言うなよ……、こんな事程度……

  お前の苦しみに比べれば、何て事は無いさ……」


そう言って私のクライドは、弱々しい彼女の髪をそっと撫でた

その手に触れられて、彼女は思わず涙を溢れさせる


「ごめんね、お兄ちゃん……

 ごめんね、お父さん、お母さん……

 私がこんな……

 C級人類の身体に生まれて来なければ…ね……」


そう言って彼女は瞳から、涙を零し始めた


「な、何言ってるんだ!! ミリネ!! 

 生まれて来た事を呪うなんて、とても酷い事だぞ!!

 誰も……、お前の事を悪く思ってなんか無いんだ…

 誰が、お前を責められるって言うんだ!?」


言って私のクライドは彼女の身体を抱きしめた


「だって……、

 お兄ちゃんは……私の為に軍人になって……

 歴史学者の道も諦めて……

 私の……治療費の為に……戦争やってて……」


あふれ出す涙も止めれず、

彼女は私のクライドの胸の中で泣き続ける


「軍人は、お前の治療費の為だけじゃないさ……

 こんな時代が時代だ……

 クリークス帝国の要求は日に日に増して酷くなる

 徴兵制度も、こんなんじゃいつか復活するだけだ……

 今時、歴史屋なんか、やったって仕方ない……

 それだけだ……」


「でも……でも……、お兄ちゃん……」


「……家族だろう!? 

 そんなの理屈じゃないんだっ!!」


クライドは強い思いを込めて、それを言葉にした…

家族……

私の心の中に、その言葉が強く響く…


---------------------------------------------------------



[星達の煌めきが……貴方を……

       見つめて…囁いてる……]




「ねぇシード……私は、何なの? 

 私はどうしてここに居る?」


「姫様…、貴方はこの銀河の絶対者……

 ですから、貴方はそこに居続ける事が王者の証なのです…」


王者の……証? …そこに居続ける事が?


「ねぇ、シード……、独りはつまらないね……

 苦しい事だね……」


「姫様……」


独り……独り……、独り?


「世界の絶対を支配している私なのに……

 どうして独りで歌うことがこんなに苦しいのかな?」


「ねぇシード…私…

 『自然』っていう前に見せてくれたモノが欲しい…

 こんな荒野の大地ではなく…

 生命が溢れている所が…」


「それなら、姫様、

 姫様の為に『自然』を作りましょう…

 そこなら姫様の心も紛れるでしょう…」


「作れるの?シード!?」


「出来ますとも! 私は銀河最強の姫様の従者ですよ!」


自然…自然か…

確かにこんな荒野で1人、宇宙に毎日歌っていたら…

そんなモノが誰だって欲しくなるよな…


---------------------------------------------------------



[遠い記憶が、二人の…]




「私の髪の色って、ちょっと緑まで色が入ってて…

  緑青色って言うのかな? ……地味だよね……」


ベッドの上でブラシで髪を整えながら

彼女が突然それを口にした。

私はその言葉に、ドキッとする。

私の髪の色ほど緑が強くないけれど、

彼女の…ミリネーナさんの髪も、緑色が強い髪の色だ。


「C級人類なんだから、仕方ないか……

 色素も不安定で、本当にどうしょうもないね…私…」


「また、ミリネはそうやって後ろ向きに考える……」


「だってね……、赤い花を見てると、なんだか悔しいもの…」


「どうして?」


「赤い花は鮮やか……、でも葉っぱの緑は添えるだけの色…

 緑って赤を助けるだけの色……だから…つまんない…

 青もそう…空の色……赤を彩るだけ……」


あっ……

ミリネーナさんは私と同じ事を…。


「それは違うぞ、ミリネッ!! 

 この世界に不必要な色なんて1つも無いっ!!」


「お兄ちゃん!?」


「確かに、緑は赤を彩るだけの色かも知れない……

 でもじゃぁ赤は緑が無ければ目立たないのだろう!?」


えっ……


「うん……」


「だったら、緑が在るから赤が美しいんだ……

 緑が居るから赤は美しく居られるんだっ!!

 それは緑も美しい事と同じじゃないのか!?」


えっ…


「お兄ちゃん……」


「人間だって同じだっ!! 人間が色と同じなら…

 要らない色なんか無いように、

 要らない人間なんて絶対に居ないっ!!

 お前が緑青色の髪の存在なら、

 お前が要る何かが絶対にあるんだっ!」


要らない…ニンゲンなんて…絶対に…居ない?


「要らないなんて哀しい事、言うなっ!!

 少なくともお兄ちゃんには、お前が居ないと哀しいぞっ

 だから……だからなぁ………」


「お兄ちゃん……」


クライドがミリネーナを抱きしめて泣いていた

ミリネーナも同じ様に泣いていた


私はその場に立ち尽くす


要らない色も、要らないニンゲンも、絶対に無い…

その言葉が私の胸に強く響く


---------------------------------------------------------



[この闇の中に、消えて行っても…]




「これが自然?」


「そうです…これが自然…」


「わーー、緑!! 回りが全て私の髪の色と同じ緑!!

 自然って、緑なんだ!!」


「はい、自然とは、緑なんですよ…姫様…」


「あれは何?こっちに向かってきているけど…」


「鳥ですね…」


「鳥?鳥さんが…えっ!?

 私に向かって…」


「………」


「私の頭を…通り抜けていった…

 鳥さん…なんだか驚いている……」


「姫を木の枝と勘違いでもしたんでしょうかね?

 不遜な鳥です…

 まぁ緑の塊は、葉っぱの多くついた木の枝と思えるので

 姫の頭を木と勘違いしたのでしょう…」


「でも…通り過ぎちゃった…鳥さん…」


「姫様は、銀河最強で絶対不可侵ですので…

 姫様の光体には、誰も触れる事が出来ないのです…」


「誰も…私には触れられないの…」


「はい…」


誰も…彼女には触れられない?

誰も!?

何だその寂しい存在は…


----------------------------------------------------------------



[古い記号(しるし)、あるから…

      遙かな…星に……]



クライドが、自分の家、両親の前に居た…。

今、記憶が重なり合っているから分かる…。

クライドの目の前に居るのが、クライドの両親…。

クライド…最初から怒ってる…


「やっぱりクライド…、

 ミリネを安楽死させてやるべきじゃないのか!?」


安楽死!?


「父さんっ! 何を言っているんだ!?

 ミリネは俺たちの家族だぞっ!!」


クライド怒ってる…

家族っていう言葉が何よりも大事だから

だから怒ってる…


「でも、C級人類は老化も早く、

 結婚の権利さえ認められてないのよ?

 未来なんて無いのに、これからも生きていかせる苦労を負わせるの?

 その上、このまま、クリーンルーム生活に、

 あと何年、お金を払えばいいの?

 このままでは、私達にとって何の良い事も無いわ…」


「母さんまで、そんな事を言うのか!?

 自分の子供だぞっ!!

 自分が産んだ子供に、そんな事いう母親が居るのか!?」


お母さん!?

お母さんが自分の子供を殺そうって言ってるの!?


「だが、クライド、現実を見ろっ!

 戦争の方は、末期的になる一方だ…

 戦争のせいで市民へ保証金も減っている

 このままでは、我々は戦争とミリネで全滅してしまう…

 せめてお前だけでも、ちゃんと血筋を残さないと…」


「馬鹿な事ばかり言いやがってっ!!

 それでもお前達、親なのかよっ!!!

 だったら、もういいっ!! ミリネは俺が世話をする!!!

 お前等なんか、もう親でも何でもないっ!!

 この家なんか出て行ってやるっ!!

 俺だけがミリネの家族だっ!!」


「クライド!! 馬鹿な事を言うなっ!!

 お前1人の力で、ミリネの生活保護が

 出来るとでも思っているのか!?」


「俺は軍隊に入って、ミリネへの医療費を作るっ!!

 それならなんとかなるはずだっ!!」


「軍隊だなんて、とんでもないっ!!

 私達、一般市民が軍隊に参加する事なんてないのよっ!

 それも、クライド、貴方が戦争で死んでしまったら

 私達の一家は本当に全滅してしまうわっ!!」


「馬鹿野郎っ!!

 家族が家族で無くなったら、

 家族を頑張る意味さえ無いじゃないかっ!!

 家族辞めて、子供を安楽死させるだ!?

 そんな事考えるようなお前等とは、もう暮らせるかっ!!」


(そんな夢を見た後に、クライドは起きた。

 そこは、コンピューターコンソールの前。

 目の前、立体情報として展開される情報キューブがあり

 それをクライドは、思い出したように操作し始めた。)


「寝てたのか? クライド…

 後方勤務とはいえ、仕事は仕事だ…

 ノルマ分はきっちり働くんだぞ…」


(そう言って、少し歳を取った初老の男がクライドに声をかける。

 でも彼も、気だるそうに情報キューブを操作していた。)


「威勢の良い事をあの時は言ったけど…

 現実はこんなだもんな…

 まぁそれでも、自分の言葉だけは守らないとな…

 せめて俺だけでも…家族しなければ…

 仕事すっか…こんな書類整理でもな…」


クライド…貴方は親と離別して…

妹さんを一人で支えようとしたのね…


----------------------------------------------------------



[直ぐに行けるわ……貴方の側に……]

[泣かないで………little lover]



「ねぇシード、この猫さん…

 なんでこんなに怒ってるの?」


「母猫と子猫の連れですね…

 自分の子猫が外敵に狙われないように

 守っているんですよ…」


「どうして?」


「母親は子供を本能的に守る習性があります…

 それは自然の摂理です…

 命にとって、子供は大事な宝…

 親とはそれを守るモノなのです…」


「そうなんだ…

 ねぇ、私の親って、どんな人だったの?」


「プリメーラ様のお母様ですか?」


「私にはお母さんが居たんだ…」


「ええ、汎銀河帝国の前皇帝陛下でした…」


「汎銀河帝国の…前皇帝陛下…だったんだ…」


「姫を生まれてから、直ぐに他界されてしまいました…」


「そう…」


彼女の母親は彼女を生んで直ぐに他界したのか…


「それでも姫を守られる為に、私達をおつけになりました…

 姫様がこの銀河で最強…

 しかし、最強過ぎるが故に、

 馬鹿ばかりしかいないこの世界では

 その者達を殺すしか、姫様の最強を示す事は出来ません

 それは哀しい事です…」


「それは哀しい事なの?」


「はい、哀しい事ですよ…

 姫様、目の前のこの猫達を殺せますか?」


「え…嫌だよ…だって生きているじゃない…」


「同じです。

 人を支配するには、従わない者を殺すしかありません。

 猫を殺されるのも嫌なのなら、姫様は人を殺すのも

 お嫌になるでしょう…

 それが最強故の孤独…

 殺さないために、姫はこの惑星に1人でいるしかありません」


そういえば、そういう事にはなるよな…

確かに馬鹿しかいないこの宇宙だ…

それを力を以て統べるには、

沢山の人を殺戮しなければならんものな…

そして彼女には、それが出来る…

でも、そんなのが嫌なら…こんな星の中で1人で居るしかない…


「姫のお母様は、そんな姫が不憫なので

 私達をおつけになったのです…

 姫様は、お母様に愛されていました…」


「そうなんだ…

 死んじゃったけど…お母さんは私を愛してくれてたんだ…」


「それが家族というモノです…」


「家族…」


最強、孤独、家族、愛か…

歪なりに、それでも家族愛は、彼女にもあったんだな…

それで孤独になってりゃ、本末転倒な気もするが…


----------------------------------------------------------------



[それは、命と記憶と絆の loving voice mail]



クライドは…辺境での後方支援の軍人をしながら

定期的にミリネに会いに来ていたんだ…

それがクライドの生きてる意味だったんだ…


「ねぇお兄ちゃん…

 ちょっと馬鹿な事、言って良い?」


「何だミリネ…」


クライド、今日も赤い花を飾ってる…

ミリネちゃんの髪と栄えて…綺麗だ…


「私、お兄ちゃんの事が好き…」


「な、何を今更…俺だってミリネが大好きだぞ…」


「うんん…そんな兄妹の好きじゃないの…

 私、お兄ちゃんと結婚したい…って思ってる…

 それぐらい…大好き…」


結婚?

結婚って何?

あ、動物たちが『つがい』になるアレかな?


「ば、馬鹿な事、言うなよ…

 俺達は兄妹だぞ! 結婚なんか出来るわけないだろ!」


え?そうなんだ…

結婚って兄妹じゃ出来ないの?


「わかってるよ…分かってるのお兄ちゃん…

 でも、大好きだもん…

 この世界の中で、一番好きな人なんだもん…

 一番好きな人と、結婚したいって思うのって本能だよ…

 どうして駄目なんだろう?

 そう思うと…悔しいよ…

 どうして私達、血が繋がっているんだろうって…」


この世で一番大好きな人とは結婚したいんだ…

それが大好きっていう意味?

血が繋がっていたら、でも出来ないの?


「馬鹿野郎…俺達は家族だ…

 結婚するよりも、もっと強い絆じゃないか!!

 泣くな、ミリネ…」


「泣くよ…お兄ちゃん…

 だって私、お兄ちゃんとやっぱり結婚したい!!

 結婚して…お兄ちゃんの子供が欲しい…」


「ミリネ!!」


「分かってる!! これも病気なんだっての!!

 こんな子供なのに、赤ん坊が欲しくなるのが

 C級人類病なんだっての!! まだ20歳なのに!!

 でも、体が欲しがるの…

 大好きな人の子供を…病気だから…

 C級人類の女から生まれてくる子供は

 高い確率でC級人類になるから…

 絶対に法律で認められてないのに…なのに!!!」


「畜生…

 神が居たなら、殺してやりたい!!

 どうしてミリネに、こんな不幸を与えたんだ!!

 どうしてっ!!」


また二人は抱きしめ合って泣いていた


クライド…貴方は…


そして私も、その光景を見て、何時の間にか泣いていた


----------------------------------------------------------------



[100億の時間を超えてく僅かな思い出]




「私…また眠っていたんだ…」


「はい…」


「どれぐらい?」


「2年ほど…」


「そう…」


彼女は定期的に長期睡眠してしまうのか…


「この森も、私が眠っていた間に…

 ちょっと変わったね…」


「はい…」


「あ、この猫、チャッピーだね…

 大きくなったねーー、チャッピー…

 母親のミシューは?」


「ミシューは…死にました…」


「え…」


「寿命です…眠るように逝きました…」


「そ、そう…」


「………」


「いつもそうだね…

 私が少し眠ると、1年、2年も時が過ぎ去って…

 家族だって思ってた子達が大きくなったり

 死んでしまってたり…

 ここの森のみんなは、私を置き去りにして

 居なくなっていくんだ…変わっていくんだ…」


「姫様…」


「しょうがないよね…

 私、銀河最強なんだもん…

 私から触れる事は出来るけど…

 向こうから触れる事は出来ないから…

 みんなと触れ合ってると

 いつもみんな寂しそう…

 みんな、私を好いてくれる感じなのに…

 私に触る事が出来ないモノね…

 そして…

 私がちょっと眠る間に、みんな…

 私の前から、居なくなっていく…」


「………」


(プリメーラは、チャッピーの頭をそっと撫でてやった)


「おーい、チャッピー

 私の事、覚えていてくれてる?

 プリメーラ! プリメーラですよ~~

 子供の時に遊んであげたでしょう~~

 お前も、今度、私が眠ったら

 私の前から、居なく成っちゃうのかなー?」


(そう言って彼女はチャッピーを抱き抱える)


「何も感じない…

 ここにチャッピーが居るはずなのに…

 チャッピーは私から抱き抱えられているのを感じてるのに

 私は…抱き抱えていると、思うだけしか出来ない…

 私は、本当に、ここに居るのかな?」


「姫様…」


「私、何で髪の色が緑なのか

 今は分かった気がする」


「……」


「赤い花は鮮やか……、でも葉っぱの緑は添えるだけの色…

 緑って赤を助けるだけの色……だから…それが私…

 緑は、この森が当たり前の世界として

 そこにあるのが当たり前の色で…

 存在しているかどうか、あやふやな色だから緑なんだ…

 本当は、無くても良いのが、緑の色…

 だから私の髪の色は緑なんだね…」


それはミリネーナの言葉!?

いや、プリメーラ、それは違うぞ!!

そう思っちゃいけない!!

そう思っちゃいけないんだ!!


俺は思わず、夢の中のプリメーラに自分の手を差し伸べようとする


----------------------------------------------------------------


[傷つく心を溶かして、私の]

[胸に還って泣いて、言葉を聞かせていてね]



戦争……戦争……


俺はB級人類で、挙げ句に肉体特性が優秀でも無かった

だから前線で役に立つ人間じゃなかった

後方支援と補給物資の輸送担当…

会計書類処理もやった

それは戦争の花形とは言い難かった

それでも、妹に言った手前、言葉を曲げるわけにはいかなかった

そうだ、戦争だって同じだ

前で弾を撃つ奴が居るなら、後ろで弾を運ぶ奴が要る

戦争には誰独りとして、要らない人間なんか居ない…

それは間違いない…

でも……でも……

俺と一緒に軍事キャンプで訓練を受けた同期は…

いつも1つの戦いが終わると、戦死者の名簿に名前が載り

俺はいつも後退しながら……生き延びているだけだった

要らない人なんて居ない……

それでも……要る量が違う人は……人それぞれだ……

そんな事……、ベッドの上で戦っている妹に……

言えるわけがなかった……

そう言えるわけがなかった……

お兄ちゃんは、お前と同じで…

戦場では役立たずなんだ…なんて…



「おうクライド、今日も仕事だけはしてんな…」


「それしか、出来る事ないですからね…ジュコフ少尉」


「おめぇ何で、軍人の才能無いのに

 軍隊志願なんかしたんだ?

 結局、こんな後方の書類整理しかする事ねーのに…」


「ははは…

 いや、妹がいましてね…治療費に金が要るんですよ…

 だから、軍隊に入れば…」


「はぁ?お前も俺と同じ理由で軍隊入りかよ…

 まさか、その妹さんC級人類病じゃねーだろうな?」


「え!? どうして分かったんですか!?」


「ちょっと待てよ…

 うちの息子と同じ理由なのかよ…

 はーー、切ないわーー」


「ジュコフ少尉の息子さんも!?」


「おう…なーんかな…

 幸運の女神様ってのは、どーにも不公平がお好きらしい」


「それは…その…」


「まぁ、医者には安楽死の方法も勧められたけれどな…

 俺より先に逝っちまったアイツが

 一生懸命残してくれた、一人息子だ…

 せめて、クリークスの糞共に皆殺しにされる前までは

 お互いに生き残ってても、いいんじゃねーかなって

 思ってさ…」


「……ですよね

 せめて…そう、せめて…

 病気で死んでしまうか、

 狂信の帝国主義者に蹂躙されて殺されてしまうか…

 どっちにせよ…

 最期の時までは、一緒に生きていられれば…」


「お互い、損な性格してるみたいだな…」


「はは…そうですね…少尉…

 それでも、運命には最期まで、抗わないと…

 安楽死で死んだ方が楽だとか

 悲観主義者と同じにしかならないんで…

 死にたくないから、生きている…

 それだけです…」


「そうだな…

 死にたくないから、生きている…

 結構じゃねぇか…」



運命には最期まで抗わないと…

だから、死にたくないから…生きている…


それが貴方の強い思い…


----------------------------------------------------------------


[生きずく命と、声をハモらせて歌えば]

[太古の碑石が2人を迎えて輝く]



「ねぇシード……私の夢って知っている?」


「何ですか、姫様……」


「私の夢は……誰かに出会うこと……」


時が俺の精神を壊してしまいそうなほど過ぎ去って

彼女が作った自然が、彼女をいつも置き去りにして

命のサイクルを回している様を見続けて…

俺は彼女の心の言葉をそこで聞いた


「きっとね…、こんな大きな宇宙の中で……

 誰よりも超絶な存在の私なんかより……

 誰かに出会った私の方が……

 きっと私は幸せになれると思うから…」


「…………」


「だから……」


「………」


「私は、誰かに出会いたい…」



時が…

『何もない』という果てしない空虚の苦痛が俺を襲っていた

こんな、こんな苦痛を、彼女はずっと耐えてきたのか…


孤独…


そうか…彼女は…

プリメーラは同じなんだ…

ずっとベッドの上で、1人だったミリネと…


孤独の形は違っても、孤独だった事は変わらない…


くそっ! 

これじゃ…ミリネと同じじゃないかっ!! 

ここにも苦痛に喘いでいる君が居るっ

プリメーラッ!!

俺は…君をっ!!!


俺の虚ろな心が、それでも強くざわめいた


----------------------------------------------------------------


[混じらぬ想いで、気持ちを語れば]

[私はあなたの胸の中にいるから…]



後方勤務だった俺達が、人が居なくなった事で

前線の宇宙戦艦に詰め込まれる事になった。

造船が間に合って、人が居ないとは笑えてしまう。

才能があろうが無かろうが、

もうそんな事はどうでも良かったらしい。

負け戦なんて、そんなモノ


死にたくないから、生きている。

それだけだった。


戦艦のミサイルのボタンを押した。

最初は吐いたのに、もう慣れたら押すしかなかった。

妹を生かす為に、目の前の誰かを殺している。


何の感慨も無かった…。

飛んでいくミサイルが…当たったから…

きっとそこで、沢山の人が死んだんだろう。

でも殺された数は、こっちの方が遙かに上だ。

だからこの殺戮は正当化される…のだろうか?

そんな数の上での対等性など、よく分からない


死にたくないから、生きている。

だから泣きながらでも、ボタンを押していた。


最終防衛線だったから、必死だった。

何で俺の乗っている戦艦が、

撃沈されないのかも不思議だった。

運命の神様は、不公平を振りまくワリに

こういう時だけ、気前が良かった…。

僚艦は爆発したのに、俺達の艦は生き残った。


そして最終防衛線のみんなも、

しぶとく生き残って、徹底抗戦になった。

これが最期だと思えば、

思わぬ力は出るモノなのだろうか?

そういうモノなのかもしれない。

だから意外に、そこでの戦いは膠着状態に陥った。

それが、結局、いけなかったのだろう…


俺達の頑張り過ぎだ…。


そのせいでクリークス帝国の奴等は焦れて、

強硬手段に出た。

反対回りの航路を大量の犠牲を払って

無理矢理、進軍して…


そして……母星デゴンダへの核攻撃…

前線に居た俺達は、何故か運良く生き残って…

親父と母と妹は…、母星に居たから同じように…

灼熱の炎の中に消えていった…


ベッドの上だけでしか世界を知らない俺の妹は…

炎の中に…消えていった…


それで終戦…俺達は戦争に負けた…


そして俺は故郷を失い…

生きる理由も…失った…


死にたくないから、生きている…

本当にたったそれだけになってしまった…




それが…貴方の…

空洞の様な心の在処なのね…クライド…

貴方が今、生きる気力に欠けているのは…

そのせいなのね…

私の中のもう一人の私が、そう呟いた…



----------------------------------------------------------------


[命と記憶と絆の loving voice mail]

[100億の時間を超えてく僅かな思い出]

[混じらぬ想いで、気持ちを語れば]

[私はあなたの胸の中にきっといるから…]



プリメーラの孤独が全て見えた気がした

それだけはどうにかしないといけないと思った

俺は孤独を憎む…

もうこんな命だけしかない俺になってるって言うのに

それでも、せめてなら、それだけは…

そう思った時に、何かの記憶が割り込んできた


赤い髪だ…

ロングストレートの赤い髪の少女…

あれ?おかしい…

顔は、プリメーラそっくりだ…

でも髪の色が違う…

真っ赤だ…

いや、僅かにピンクに寄っているか?

でも赤い髪だ…

それにお下げじゃない…ロングのストレート…


そんな彼女が、誰かと向かい合っていた



『忌々しい小娘めっ! 貴様の父親とフォレストが共謀し

 この六色帝戦争を勃発させなければ、皇帝特務権限など

 お前の手にあるハズが無かったものをっ!!』


老人が赤い髪のプリメーラと対峙して彼女を睨み付けていた。


「どんなに負け惜しみを言おうと、

『ガイアの魂』は私の手の中です…」


そう言って、白い玉の様な物を手の平に現すプリメーラ

ガイアの魂?


「父様が汎銀河帝国を瓦解させて起こした、この六色帝戦争。

 でも、今、私の手の中には

 『ガイアの魂』とフォレストの完全支配がある。

 シザリオン帝が銀河全民から恨まれてでも

 私達と共に戦い、そして私の為に死んでくれたのです!

 そのおかげで、私は貴方が手の出せない、

 複素(コンプリメンタル)光子体(フォトニクスボディ)を手に入れた!

 私達の勝ちです!!

 貴方の夢は、これで潰えた!!」


何を言っているんだ?彼女は…


「はっ!その体を手に入れて絶対不可侵になったから

 勝ったと思い込むのか、この小娘が!!

 賢しいわっ!!

 よかろう…

 ならば見せて貰おうか?お主の覚悟という奴を…

 この果てしなく重い時の連鎖を

 お前の様な小娘1人で耐えきれるというのなら

 やってみるがいい!!

 果たしてお主は、私達と同じにならずに済むかな?

 クラーリンを否定するのならば

 この御伽話の答え…我々と同じになったその身で

 探し続けるが良いわ!!」


なんだ!?この爺さん…何を言っている!?

そして彼女から去って行く…

いや、彼女は誰だ?プリメーラと同じ顔の…

赤い髪の彼女は、誰なんだ…


「ひとまずは、勝ちましたね…フォレスト…」


「なんとかは陛下…」


「しかし、本当の戦いはこれからです…

 私達は、本当にクラーリンに勝てるのか……

 この御伽話の…答えは…」


「信じましょう陛下…未来を…

 それしか、我々には出来ません…」


「そうですね…

 信じる事しか…私達には出来ないのだから…」




そう言って彼女は哀しそうに微笑んでいた

この記憶は何なんだ?



---------------------------------------------------------------


[LaLa、LaLa、LaLa、LaLa]

[LaLa、LaLa、loving vioce mail]


[La、LaLa、LaLa、La、LaLa、LaLa]

[La、LaLa、LaLa、loving vioce mail]



(うた)だ…

詩が聞こえる……

なんだか、随分と昔に聞いた事がある様な…

そんなハズは全くないのに、それでも…

忘れかけていた…(うた)が聞こえていた…



そして俺は、目を開いた。


『良かった!!クライド!!目を醒ました!!』


そう叫んで、彼女は俺に抱きついて……


来たのだけれど、すり抜けて…


勢い余って向こうに行き


すり抜けた事に気付いて

眉を可愛らしく歪めて振り返り


そして、一端、バックして…元の位置に戻り…


もう一回、気を取り直して、飛び込んで抱きついてきて

俺に『誰か女の子の様な感触に抱きつかれている感覚』

が生み出された状態で、俺にさばりついていた


光の女の子の様なモノが俺の前にあった。


「プリ、メーラ?」


ようやくそこで、俺はそれが何かを理解する。

そんな寝起きでボンヤリしている意識の下で


『ただ貴方が生きているだけでも

 それでいいじゃないですか!!

 それでも私は嬉しいんです!!』


挿絵(By みてみん)


そう叫んで、

瞳に涙を溜めて彼女は俺に抱きついていた。


何が何だかよく分からなかった。

夢を見ていたらしい…


何故か彼女が生きてきた記憶の夢を俺は見ていた。


それは夢であったハズなのに…

どうしてか、俺の瞳からも涙を溢れさせていた。

夢を見ただけなのに?


「死にたくないから、生きている…

 そう思う程度でも、

 もしかしたら価値があるのかもしれないな…」


何故か俺はそう思い、そう呟いたのだった。



もう一日、二人に過ごさせて会話させた方が

この展開に入る為のワンクッションで良かったのですが

そんな事してたら、益々、宇宙戦艦出てくる日が遠のくので

まぁ強引に…


本当はこのシーン、

最初のプロットでは3章として、宇宙航行中に起こすイベントの予定だったんですけど

虜囚用のDNAのウィルス爆弾が超遅効性なのはおかしいし

何日もプリメーラと過ごすと、自然にシードが健康チェックをクライドの体にして

この爆弾が発見されるハズで、そこに矛盾があったんで

「出会い頭に起きないと、おかしいイベントなんかよ…これ…

 二人の繋がりが決定的になる、SFならではの技術的精神融合という大技なのに…

 位置的には、それなりに時間が経っている時に起こしたいイベントなのに…」

と、プロットの見直しで気付いて、仕方ないんで1章にぶち込む事にしました



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