珀さん、困ります。
「おい…嘘…だろ…。」
これは嘘だ。
「嘘じゃねえよ。」
「いや、絶対嘘。これは嘘だ!」
「現実みろよ。」
これが現実というものならば、自分の運命を激しく怨もう。
「いやっ、これは…。」
ばしんっ!!
「せっかくの昼休みが五月蠅いわっ!!」
「あ、彩絵さん!お疲れさまでーす!」
「い、痛いなあっ!!」
絶対、彩絵さんの前世はレスラーか力士だ。
あの力で脳天を叩かれたんだ。出てはいけないものが出なかっただけ有難いと言うべきか、ここは。
でも、これはたんこぶ決定だろ。明日の撮影に影響がないことを祈ろう。
「んで、珀はどーしたの?」
「彩絵さん、こいつの弁当見てみてくださいよ!」
「これは…。」
「すごいっすよね、これ!ナマコブラックですよ!ナマコブラック!!珀の愛妻弁当ですよ!」
「激しく否定。愛妻弁当じゃないし。その前に妻じゃないし。妹だし。」
今年から始まった戦隊モノ、『珍獣戦隊メズラシインジャー』。
パンダレッド、カバブルーとオカピイエロー。この三人は分かる。
だって三大珍獣だし。
でも、初夏に新たに加わったメンバー、それがナマコブラックだ。
普段は柔らかい体だけど、攻撃を受けるとダイヤモンドよりも固くなるという、
何とも気持ち悪い設定で、子供を恐怖に陥れ(いちよう正義の味方)、
大人の心を鷲掴みにしているらしい。
そんなナマコブラックが海苔で忠実に描かれている。
妹よ、お前はそんなに暇なのか!?
「珀、いい妹を持ったねぇ…。一生宝物にするんだよ。」
「ほんと、彩絵さんの言うとおりっすよ。こんないい子、なかなか出会えねえよ!!」
「彩絵さんは置いといて、遥也、五月蠅いわ。ちょっと黙っててくれないかな?」
「え、なんで俺だけ?」
待て、俺の妹、何故か「可愛くて、家庭的で、いい子」ってなってるけど、
どこがだぁっ…。確かに、料理は上手いし、手先は器用だ。
でも、あいつの前世はレスラーとか力士とかそんなレベルじゃない。
破壊神だ。




