真野凪
言わない、言えないこの気持ち
「凪ー!どう?かわいいー?」
小さい頃、ファッションショーをするたびに綴灯が凪に聞いた。
「はい…!かわいらしいです…!!」
そう答えると綴灯は大きなかわいい笑顔を作る。
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「凪!これ新しく買った服なんだ!どう?かわいい…?」
小学生の頃、綴灯が学校にかわいい服で登校をするたびに一個下の学年の教室に来て凪に聞いた。
「わあ…!似合ってます!かわいいですね…!!」
その言葉にまたまた綴灯は嬉しそうに笑う。
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「……凪。その…オレは、どうすれば…よかったんだ……」
中学生の頃、不登校になった綴灯に会いに行ったら、らしくない姿で綴灯はそう言った。
部屋も…なんだか死骸の写真が貼られていて暗くて、気持ち悪かった。
凪はそんな光景にびっくりした。
「……そんな…っ今までの綴灯さんで……何がダメなんですか。お願い…また、自分の好きなことで笑って…。」
凪は涙を流しその場にしゃがみ込んでしまった…。
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「久しぶりだね!凪と2人でお出かけなんて。」
休日。
今日は綴灯と凪の2人でいつものショッピングモールにきていた。
「これから夏になって暑くなってくるから、早めに夏服、買っておきたいんだ!!」
「はい。俺も協力しますね…!」
「うん!ありがとう!!」
綴灯はニコッと笑うと、凪は綴灯から視線を外し、頬を赤らめる。
しかし、少し先ではしゃぐ綴灯の声が聞こえ視線を戻した。
「あ、その服…言ってたやつですか…?あの、風間と穂乃里さんで作った服…」
「ん?……あ、ああ…」
綴灯はこの前、亜莉寿と穂乃里とで作った服を着ていた。
綴灯はその服を見て凪に笑顔で言った。
「どう…?かわいい……?」
…小さい頃から変わらないかわいいもの好きの愛。
凪はそんな綴灯のことが─
「はい…!とっても似合ってて、かわいいです…!!」
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「着いた!ここのお店。もう夏服いっぱい揃えてあってかわいいんだ!」
綴灯に思いっきり手招きをされ店に入る。
そして、綴灯はもうお気に入りを見つけたのか一着服を持っていた。
「これかわいい!フリルのついた白のワンピース!!夏にぴったり!!」
「本当ですね!!ちょうど良さそうです。綴灯さんにも似合うと思いますよ…!!」
凪がそう言うと綴灯は嬉しそうに笑う。
「本当…?!でも、まだ服見たいからこれは候補としといて……」
綴灯は服を持ち他のところを見に行こうとしたその時…
「ねえーあの人やばくなーい?」
「ワンピース持ってる人だよねー?」
「服だけじゃなくてあれメイクもじゃない…?」
「嫌だね〜」
「あれ、男じゃないのー?」
「ほんとー変なの〜」
「………っ」
今回少し声を大きく出しすぎたか……。
この店にいるほとんどの人が綴灯の方を見ていた。
そして誰もが今綴灯を変な人だとして見ている。
「……っ…綴灯…さん」
凪も気付いている…。
綴灯はそんな空気が嫌だった。
「……ごめん…。凪。これやっぱ……」
「買いましょう…!」
「…え……」
凪のそんな言葉に涙目になっていた綴灯は顔を上げた。
「なんで……そんな…」
「綴灯さんが買わないなら、俺が買います!…だって……この服絶対に綴灯さんに似合いますもん!…その服、嫌いになりましたか…?気に入らなくなりましたか…?」
綴灯は手に持っていた服を見た。
フリルのついた白のワンピース。
綴灯は涙が出てきてしまった。
「か…かわいい……」
そんな綴灯の言葉に凪はニコッと小さく笑い綴灯の手を引いた。
「ほら、レジはこっちですよ。」
綴灯もニコッと笑った……。
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「本当に…ありがとう…凪…。」
「こちらこそありがとうございます……。」
帰ってきて今は綴灯の家にいる。
綴灯は何か凪にお礼をしたいと家に呼んだ。
母もおばあちゃんもはなもいないから今は家に2人だけだ。
綴灯はウィッグを外しラフな格好になっている。
「なんで、そっちが感謝するの?オレは何もやってないし…。逆に、周りに押しつぶされて騒いだだけ……」
「それでも、俺はまだ、自分の好きを大切にしてもらうことが一番で……」
「凪…」
小さい頃も小学生の頃も中学生の頃も…。
凪はいつも、綴灯のかわいいを肯定し助けてくれた。
どれだけ、綴灯のことを思っているのかそれだけで分かる。
「っぷはは!…なんだか、凪の方が年上って感じだ…!」
そう言って手で口を押さえてくすくすと笑う。
最近、綴灯はどっちの姿でも仕草が女の人よりになってきたと凪は思う。
小さい頃はそうでもなかったその変化に凪は小さくため息をついた。
「ほら、おばあちゃんがこの前作ってくれたはちみつレモンをオレも真似して作ってみたんだ。」
綴灯は凪の前にはちみつレモンを置き、反対側に座りカメラを見た。
「見て見て!今日の写真もいい感じに撮れてるよ!!」
綴灯は凪にカメラを見せてニコッと笑う。
「…そう、ですね…。」
凪は下を向いたまま答えてしまう。
─なぜだろう…。
はちみつレモンを一口飲んだがあまり喉を通らない…。
顔を上げたら綴灯か…それか、壁全体にある死骸の写真か…どれかに目が合いそうだった。
「あ、そうだ、この前新作のパンケーキ食べに行ったんだけれど、本当に美味しくて…。もう一回食べに行きたいって思ってるんだよね。凪、その時は一緒に食べようよ!」
「…………」
「凪……?」
凪からの返事がなく綴灯はおかしく思い、凪を見た。
凪は下を向き何か言いたげな…そんな顔をしていた。
「凪…?どうした…?どこか体調悪い?」
「…いえ、違……」
「あ、もしかして……はちみつレモンが美味しくなかった…?!」
「いえ!……そんな…」
「じゃあ、この家居づらいとか…!…ごめん、どっか出かけ……」
「好き…」
「…え………」
…凪の言葉に綴灯は固まってしまった。
聞き間違いかもしれないとそう自分に言い聞かせた…が、しかし…
「好きなんです…!綴灯さんのことが……」
「ごめん!!!」
綴灯は続きを聞きたくないかのように大きな声を出し、凪を抱きしめた。
「ごめん…。オレが、あんな格好してるから…誤解させちゃったんだ…っごめん…」
綴灯はそう言って凪から離れその頬に涙が伝っていた…。
「……っそんな…こと…」
凪は震える声で綴灯に言う。
…別に勘違いとか、綴灯がそんな格好しているからじゃない…。
だけれど…
「……っ…つっ」
泣いている綴灯を見て、凪も涙が流れた。
「……そんな、顔、っさせるはずじゃ…なかった……」
凪はそのまま、荷物を持って家を出た…。
「………っ凪!」
家に残された綴灯は1人、涙を流しその場に座っていた…。
⬜︎
「……っはぁ…はぁ…」
凪が帰ったあの後…。
綴灯は凪を追いかける感じで探していた。
しかし、少し遅かったか凪の姿は見当たらない…。
凪の家まで行くか……そう思ったが、会っても何を話せばいいか分からず綴灯は足を止め、そのまま、ゆっくりと自分の家の方へ歩いて行った…。
─好き。
綴灯は、かわいいものが好きでかっこいいものも好き。
でも、多分凪が言った好きとはまた違う…。
綴灯にとってのそういう好きはなんだろう…。
そういうのは、学校でも常に話題になっているし将来にも関係あること。
「好き……」
綴灯には、少し分からなかった…。
「あ……」
気付いたら薬局で薬を一箱買ってしまっていた。
手に握られたその薬は綴灯にとって、なんなのか。
負の積み重ねか、生きるために必要なものなのか、それとも…SOSなのか……。
「……はぁ……」
どうしてこんなことになってしまったのか……。
大きくため息をつき、自分の家へと足を運んだ…。
⬜︎
俺は綴灯さんのことが好きでした。
それは、もちろんかっこいい綴灯さんも、かわいい綴灯さんも…。
小さい頃から自分の大好きなものを本当に嬉しそうに楽しみ、かわいく笑う綴灯さん。
そんな綴灯さんから目が離せなくて眩しくて…ずっと、笑っていてほしいと思いました…。
─しかし、中学の時その笑顔がなくなってしまったのです…。
家へ行くと本当に綴灯さんかと疑うくらい…暗い部屋、壁に貼られた写真。
それらは、全てかわいくもかっこよくもなく…ただただ怖いものたちでした。
そんな時どうすればいいのか分からなかった俺は感情に任せたゴリ押しのお願いをしてしまった…。
その夜……
「ん…?はなさんから…メッセージ…?」
『お兄ちゃん、死にたいって言った……』
俺はそのメッセージに息が詰まってしまったのを今でも覚えています…。
学校で嫌な思いをして、行かなくなってしまって、自分でものすごく悩んで。
そう考えると、とても辛くて悲しくて…。
『もう、隣にいるべきなのは、はなさんしかいないんです…お願いします…』
俺はそう返信した時はものすごく悔しかった…。
そして、その約1年後。
「アタシ、お兄ちゃんと違う高校に行くんだ…。それで、凪くん、お兄ちゃんと同じ高校受けない……?」
「はなさん……」
はなさんは小さい頃から綴灯さんのことを心配していた。
それもけっこう過度な心配だ。
俺も詳しいことは知らなかったが、俺は今、綴灯さんと同じ高校に通っています。
遠くから見守るそう決めたのに…。
好きというこの気持ちは言わないと、そう決めていたのに…。
俺はだいぶ弱く、未熟で相手の気持ちの理解度が低い…。
どうしてこんなことになってしまったのか…。
俺は、頭を抱えてしまった……。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらESN大賞11応募作品です。
次回更新8月26日水曜日予定




