華野穂乃里
裁縫
「「…お邪魔します!」」
「やっほー!待ってたよ!!2人とも入って、入って!!!」
日曜日。
約束していた裁縫をしに綴灯と穂乃里は亜莉寿の家へ来ていた。
今日はみんなで作った服で綴灯をコーディネートしたいというので、綴灯は自分ではメイクや服も何もせずラフな格好で来ている。
そして、部屋へ案内された。
「はいはい、ここだよ〜!!」
「「うわぁぁあ!!」」
部屋へ入った瞬間その光景に2人驚く。
「す、すごい本格的ですね…!!」
「ああ、道具が綺麗にびっしりと!」
部屋には、布や針、糸、ミシン、トルソーなどセットがたくさん置いてあった。
しかも、壁やカーテン、部屋の模様がかわいい仕様になっている。
「素敵なお部屋ですね…!」
穂乃里がつい口に出してしまう。
なんて、夢の世界だ……!
2人とも目がキラキラだ。
「ほらほらまずは座ってよ〜」
亜莉寿に促されて真ん中の絨毯に座る。
そこにはかわいらしい小さな机もあり、その上にたくさんのお菓子が置かれている。
「…改めて、初めまして風間さん。綴灯くんの友達の華野穂乃里と言います。よろしくお願いします…!」
「こちらこそ、よろしくね〜!てか、僕のほうが年下だからそんなに堅苦しくしなくていいよ!なんなら、穂乃里ちゃんって呼んでいい?!僕も亜莉寿でいいから!!」
「え…!あ、じゃあ、よろしくね…!亜莉寿さん…!」
そう言って2人笑う。
この雰囲気に綴灯も楽しくなってきた。
「よーし!じゃあ、そろそろ始めていこうか!!穂乃里ちゃん!今日は綴灯センパイをちょーかわいくしちゃうよ!!」
「うん!みんなで頑張ろうね!!」
それから夢のような作業が始まった。
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「綴灯センパイ、縫い目の間隔の均一さは縫い目じゃなくて布から見える針の長さを均等に保つ方が間隔は均一になるよ!」
「あ、なるほど…。ありがとう、風間!」
「ふっふっふ〜持つべきものはいい後輩だね〜」
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「ミシンの押さえによるシワを防ぐには、押さえの圧を弱めることができるよ。ここのダイアルで調整して……こう!」
「おお、初めて知った…」
「穂乃里ちゃんすごい!学びがたくさんだよ〜!!」
「そ、そんなことは…私もそこまでだし……!」
「だけれど、穂乃里がいてくれて本当に助かったよ!ありがとう…!!」
「うん!こちらこそ…!!」
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「「「で、できたー!!」」」
数時間後。
3人の目に映っているのはトルソーにかかっているかわいい服だった。
ダボっとしている袖にパッと明るい印象を持たせてくれる白い襟が特徴だ。
下にはシンプルなストレートスカート。
そのシルエットは綺麗めで大人っぽさを出している。
そして…
「か、かわいい…!!」
綴灯の言葉に亜莉寿も穂乃里も嬉しくなり笑顔になる。
「ほらほら、センパイ!着替えてきてくださいよ〜!!その後、僕、センパイにメイクしたいです!!」
「うんうん!かわいくして、写真撮ろうよ!」
「…う、うん!!ありがとう!!」
そして、綴灯は着替えるため一度部屋を出た。
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「ど、どう…?」
「か、かわいい〜!!!」
「似合ってるよ!綴灯くん!!」
みんなで作った服を着て綴灯が戻ってきた。
服として大成功で安心だ。
綴灯もかわいいと言ってもらえて嬉しいのかにやけがるのが止まらない。
「ねえねえ〜はやくメイクやらせてよ〜!もう楽しみすぎて待てないよ〜!!」
「じゃあ…うん!お願い…!!」
「ほらほら、ここ座って〜!」
出してきた椅子に座り亜莉寿はメイク道具を出す。
「ちょ…センパイ…。お肌めっちゃ綺麗……羨ましすぎる…!!」
亜莉寿は綴灯のほっぺをふにふにしてびっくりしている。
「ちょっと…!くすぐったいって…!…メイクしてくれるんでしょ…?」
その言葉に亜莉寿は笑顔で答えた。
「もちろん!!!」
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「じゃーん!ほらヘアセットも完成だよ!」
「わあ…!!ありがとう…穂乃里!」
亜莉寿にメイクをしてもらいウィッグを被り、穂乃里にヘアセットをしてもらった。
「本当に2人ともありがとう…。こんな、一から全部やってもらって…」
急にしんみりとした綴灯の言葉に2人は笑顔で答えた。
「急になに言ってんのさ!!こちらこそだよ〜!僕も楽しかったし!」
「私も!綴灯くんが喜んでくれたならこっちも嬉しいよ…!!」
温かい場所だ…。
綴灯はそう思い、可愛い笑顔が溢れ出てきた。
「…ねえ、綴灯くん。」
そう言って穂乃里は優しく笑う。
「…いつもみたいに、みんなで写真、撮ろうよ…!」
「…あ……」
嬉しい…。
また、写真が増える…
「…うん…!撮ろう…!ほら、並んで!!」
綴灯はカメラスタンドを立ててセットする。
セルフタイマーの設定をしたら準備完了だ。
「いくよー」
ボタンを押し、走って並ぶ。
すると数秒後、カメラからフラッシュが光、写真が撮影された。
「…かわいい。本当にありがとう…!」
写真を確認しながら綴灯は2人に言う。
「「こちらこそ!!」」
3人とも笑顔になりこの日は解散となった。
⬜︎
「…穂乃里、改めて今日はありがとう…。裁縫のこと色々と学べたし…。それに……」
帰り道。
綴灯は穂乃里と一緒に帰っていた。
2人とも今日はとても楽しく、嬉しい気持ちだった。
「綴灯くん。今日私、綴灯くんとまたこうやって遊ぶことができて嬉しかったよ。また…また呼んでほしいな…!」
「穂乃里……」
綴灯は中学の頃を思い出す。
…穂乃里には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
なにせ、自分を庇っていじめの巻き添いを食らってしまったのだから…。
「穂乃里…本当にありがとう。…というか、今までもだな…。はなも凪もそうだけれど、オレのこと普通じゃないのに当たり前のように受け入れてくれて……。穂乃里は…中学の時も…」
─中学。
その単語に穂乃里は下を向いてしまう。
せっかく綴灯と同じクラスになれたと喜んだ中学2年生。
その年は2人していじめにあってしまい、綴灯が不登校になってしまった年……。
「あの時は…確かに辛かった……。」
穂乃里のその言葉に自分のせいだと綴灯は俯いてしまう。
だけど……
「だけど!私なんかより綴灯くんがいじめられている方がよっぽど辛かったから…!…綴灯くんが今も、自分らしくいてくれているの、ものすごく嬉しいの…!」
綴灯はびっくりして穂乃里を見つめる。
かわいいものを好きでいてくれていることが嬉しい……予想外の言葉だった。
「……あ、ありがとう…!オレも、あの時、穂乃里がオレのこと庇ってくれて……味方になってくれてものすごく嬉しかった…!!あの後…すぐ学校行かなくなっちゃってごめん…!!穂乃里を1人にしてごめん…!!!」
そんな綴灯の目には涙が浮かび上がっていた。
「謝らないで…綴灯くん…。ちっちゃい時もこうやって、ファッションショーをしたよね?私、これからもこうやって一緒に遊びたい!いい?」
「穂乃里……」
かわいく笑って言ってくれる穂乃里。
綴灯はそれが嬉しくて涙を流してしまった…。
「うん、うん!!オレも!また遊びたい…!!」
2人しか分からない辛さを乗り越えたこの気持ち。
─同じ気持ちを持っているからこそ笑って涙を流した。
⬜︎
私は、小さい頃、よく綴灯くんとはなちゃんの家へ遊びに行った。
幼稚園からの付き合いで幼馴染。
だから、綴灯くんのことは当たり前すぎてあまり疑問を持っていなかった。
だけれど、どんどんと大きくなっていくにつれて綴灯くんは周りの目が怖くなり縮こまってしまっていった。
中学になって、休日だけでもまだ好きを守ってくれているというのを知った時、私はなんだかとても嬉しかった。
逆にかわいいものが好きじゃない綴灯くんは綴灯くんじゃないしね。
中学2年生になって綴灯くんと同じクラスになった。
私は綴灯くんとの会話が好きだった。
漫画やゲーム、そしてトレンドのかわいい服の話……。
だけれど、周りの目を気にしてしまっていた綴灯くんは、学校ではあまり服の話はしてくれなかった…。
そんな、ある日、私が学校に登校したら綴灯くんがいじめられてしまっていた…。
周りの人たちは綴灯くんのことを笑ったり馬鹿にしたり嫌がらせしたり。
私はそれが許せなかった。
人が自分の大好きを守っていて何が悪いの…?
素敵なことじゃない…。
なんで笑うの…。
なんでいじめるの…。
…そしたらいつのまにか私もいじめられていて綴灯くんは学校へ来なくなってしまった。
…私は絶望した。
これで、綴灯くんがかわいいものを手放してしまったら…。
だから、そこからは綴灯くん本人に願うしかなかった…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらESN大賞11応募作品です。
次回更新8月22日土曜日予定




