友達
当たり前の温かさ
メイクをし、この前凪と買ったばかりの新しいワンピースに足を通す。
自分の髪色と違う色のウィッグを被り、そしてその髪を丁寧に結んでいく。
「……よし。」
綴灯は鏡に映る自分をまっすぐ見て頷いた。
今日は退院してから初めてのお出かけ。
昨日から学校に行き始めていて、学校では何か聞かれるんじゃないか、悪い噂になっていないか怖かったが、クラスメイトたちは心配してくれていたらしく優しく話しかけてくれた。
もちろん、藤原や谷川、宮本もいつも通り接してくれたし、蓮音だって中庭に行ったらいつも通り1人でいて、いつも通り写真の話をしてくれた。
綴灯の大事にしていたカメラは壊れちゃったけれど、撮ってきた写真たちは無事で入院中にお母さんがまた新しいカメラを買ってくれていた。
─その新しいカメラを鞄の中に入れ、今日は1人、家を出た。
⬜︎
今日はショッピングモールに来ていた。
3週間の入院期間が終わり、気晴らしにへと足を運ぶ。
なんやかんやあったショッピングモールだけれど、綴灯はこの場所が好きだった。
「あ、はなが言ってた服はこれかな?本当だ、かわいい…」
綴灯はお目当ての商品を見つけ微笑む。
そして、すぐさまレジに持っていき、会計を済ませてご機嫌な気分で店を出た…その時だった…
「あれ?姫浦?」
「っ!」
少し後ろからそんな声が聞こえ綴灯はびっくりして、つい足を止めた。
少しずつ…鼓動が速くなっているのを感じる…。
多分この声は…
「え、どこどこ?」
「…ねえ誰のこと言ってる?」
「ほら、あそこ!」
その声は複数人でどんどんと近づいてきて、そのうちの1人が背後から綴灯の腕をとった。
「あのーもしかして、姫浦?」
─そう言ってきたのは、藤原だった。
…綴灯は中学の時と重なってしまい、この状況はまだ逃げ切れると思い後ろを振り返らず少し小声で答えた。
「あー…すみません…。人違いかと……」
そう言って走ろうと思った瞬間、藤原は綴灯の腕と肩を掴み、強制的に自分の方へ向かせた。
「あ……」
綴灯は一瞬のことすぎて何が起きたのか分からないまま、藤原と目を合わせた。
藤原の隣には谷川と宮本もいて2人とも驚いたように目を丸めていた。
綴灯は、もう逃げられない…そう思って藤原が何か言おうと、口を開けているのが怖くて目を閉じた…。
その時─
「めっちゃ…かわいいじゃん!!」
綴灯はその言葉に驚いて目を開ける。
「本当!お前何その服!ちょー似合ってるじゃん…!」
「てか、マジかわいい…」
「…え……」
3人から予想外の言葉が投げかけられ、綴灯はものすごく驚いた。
藤原から腕を離された綴灯は逃げることなくその場に立ち尽くした。
「その…変じゃないの!?…今まで仲良くしてきたクラスの男が…外でこんな姿して……」
綴灯はだんだんと早口になり下を向いていく。
…生きようと思って、もう一回自分らしくいたいと思って…前に進もうとしているけれど、やっぱり難しいのかな…。
そう思っていた、その時…
「何それ、お前誰かにやらされてるの…?」
藤原が優しく聞いてきたけれど綴灯はその言葉を全力で否定した。
「違う…!!!その…これは……オレが、好んで……」
綴灯が最後まで言う前に藤原が少し微笑んで言葉を被せた。
「だろ?じゃあ、何も変じゃねぇじゃん。」
「っ!!」
綴灯は前を向くと藤原がまっすぐ綴灯のことを見ていた。
谷川と宮本も頷いてくれた。
すると、藤原は何かを思い出したかのように言った。
「あ、そーだ!これからゲーセン行くんだけれど、姫浦も来いよ。」
─その、当たり前のような優しさ。
これがこんなにも自分にとっての救いで温かいものだったってことを綴灯は今知った…。
「…!うん!!」
藤原の誘いに綴灯は笑顔で答える。
すると、谷川と宮本が隣に並んできた。
「よっしゃー!!今日もガチるか!!」
「…うっわー俺ちょっと金欠だわー。言い出しっぺ藤原ー。ちょっと奢ってよー。」
「宮本…お前それ何回目だ!!それに、お前に貸したところで返ってこないし…。」
両隣から楽しい会話が繰り広げられている。
綴灯はとても楽しくクスッと笑ってしまった。
「ねえねえ!帰り、オレのカメラに映ってよ!!みんなで写真撮ろう!」
綴灯は久しぶりに大きく笑った……。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらESN大賞11応募作品です。
次回更新9月23日水曜日予定




