かわいい
生
「お兄ちゃん…!今度、かわいい双子コーデ用の、夏服が出るんだって…!!お兄ちゃんに似合いそうなデザインだし、どうかな?」
病院にて、今日もはなは綴灯の様子を見にきていた。
自分らしく生きて欲しいから…はなはそう思い絶えずこんな話をしている。
…少し、様子をうかがいながら…。
はなは覗き込むように綴灯の顔を見た。
何か返事はないかなーと待っていると、綴灯が口を開いた。
「…はあ…。はなは、飽きないな……。」
「え……」
「…こんな、男なのにかわいいものが好きですーって言ってるめんどくさいやつに、よく飽きないよな…。ごめん…こんな兄で…。」
はなはびっくりした。
まず、こんなにも長く綴灯が喋るのは久しぶりだったから…。
そして、そんな言葉は少し冷たかった…。
「な、なんで…なんでそんな、自分を追い詰めた言い方をするの…?っアタシは、お兄ちゃんの妹だから…!!ただ、…ただ、それだけ…」
はなは知っている。
綴灯が強く自分を責めてしまうところがあることくらい。
だけど、それはいつも死にたいと思った時にもっと強くなる。
そんなはなの言葉に綴灯は嬉しいのか悲しいのかよく分からない笑顔をした。
「…オレ、死にたいんだ。昔も、今も…。もう…みんなに、これ以上迷惑…かけられない……」
ベッドの上で膝を抱え込み目から涙が流れる。
こんな綴灯の姿を見てはなは黙っておくことなんてできなかった……。
「お兄ちゃん…これ、見てよ…」
はなは自分の鞄から、ノートパソコンを出す。
綴灯の目の前のオーバーテーブルにそのノートパソコンを置いて起動した。
綴灯は何のことか分からず、目を開けた。
「…っ!!」
─ノートパソコンの画面に映っている写真が一気に綴灯の目に飛び込んできた。
それと同時に綴灯はものすごく驚いた。
「この…写真!!」
綴灯の目に映っているたくさんの写真たち…それは、綴灯が大切にしていたカメラの中に保存されていた─自分らしくいる証たちだった。
「…どうして、この写真…オレ、カメラ…壊したはず……」
綴灯の声が震えて聞こえ、はなは優しい声で返した。
「お母さんがね、壊れたお兄ちゃんのカメラを修理屋さんに持っていったんだ。レンズ部分が壊れちゃってたから写真はもう撮れないし、直せないって言われちゃったらしいんだけど、カメラの中に入っている写真だったら、データにしてパソコンに転送できるよって言って、転送してくれたんだ。お兄ちゃんの大事な写真、アタシも無くしたくなかったから…。ほら、この写真とか、めっちゃ懐かしくない?穂乃里ちゃんも凪くんも写ってて、アタシたちまだ幼稚園とかだよね?」
はなが表示した一枚の写真には、まだ小さかったみんながファッションショーをしている姿が写っていた。
みんな笑顔で、そして…
「…っかわいい……」
綴灯は写真を見て涙を流した。
写真の中の自分は笑顔で、かわいくて……
「…っ……あっ…うっああああああ」
綴灯は全てを出し切るかのように泣いた。
病室に、綴灯の声が響いていた。
「…オレ、まだ生きてて…みんなと一緒に、いて……自分らしくいたい。まだ、そんな、わがまま…っ言っていいのかな…?こんなにも…っ迷惑かけたのに、いて…いいのかな…?」
そんな綴灯にはなも涙が溢れてきたが、抑えるかのように笑顔で答えた。
「いいに決まってるでしょ!アタシ、まだお兄ちゃんとやりたいことたくさんあるもん!!…アタシ、自分らしくいるお兄ちゃんの姿、大好きだな。」
─綴灯の涙は、長く止まらなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらESN大賞11応募作品です。
次回更新9月19日土曜日予定




