大切な人
失いたくない
『お兄ちゃんが心配で…。お見舞いがてらちょっと様子見てあげて欲しいです。』
蓮音はスマホにきているメッセージを見た。
朝、はなからそんな連絡がきた。
「今日は…学校は午前だけだし12:30くらいには行けそうかな……」
蓮音はそんなことを思い、はなに返事を送った。
『了解です。昼頃には行けると思います。俺も心配ですし。』
返信を送るとため息みたいなものが出てしまう。
…蓮音は綴灯のことが本当に心配だった。
この前のショッピングモールでいけない態度をとってしまったか…。
綴灯が辛い思いをしたのに何もしなさすぎたか…。
あの後帰ってからそんなことばかり考えている。
今日、行って謝ろう。
蓮音はそう思った。
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「あーあ、送っちゃった…。」
蓮音とのメッセージのやりとりを見てはなは小さくつぶやいた。
「お兄ちゃん。怒るだろうな……」
はなの過度な心配からの行動。
そして、家に貼られているたくさんの死骸の写真をまた第三者が見ることになる。
綴灯にとってはあまりよろしくないことであるのは、はなもよくわかっていた。
だけれど…
「お兄ちゃん…アタシは、ずっと、心配だよ…」
はなは少し目に涙を浮かべた…。
⬜︎
「これだけでよかったか……」
蓮音は自分の手に握られた買い物袋を見てそんなことを思う。
中には食べやすいゼリーやプリン、水が入っている。
まあ、体調が悪くて何日も休んでいるから、もうそこまでは悪くないか…と考えているうちに家の扉が見えてきた。
「507…ここか……?」
ピンポーンとインターホンを押す…が、中からの返事がなかった。
「綴灯?いるかー?」
ノックをし、家の中に声をかけ、ドアノブに手をかけた瞬間…
「あ、開いてる……」
家の扉がガチャリと開く。
……勝手に入っていいかは分からないが、綴灯が心配だったため、家の中に入った。
「…お、お邪魔します…。」
靴を脱ぎ部屋を見渡すために顔を上げる。
…すると、蓮音にとってはものすごい光景が目に映った。
「…なんだっ……これ」
…部屋は暗く、ゴミ袋が散乱していた。
壁には気持ち悪い死骸の写真が一面に貼られており、まるでお化け屋敷のようだ。
「つ、綴灯ー?」
部屋に入り、少し奥に進みながら彼の名前を呼ぶ。
すると、足元にまた新たなゴミが落ちていることに気付き、拾い上げた。
「これは…錠剤の…薬のゴミ……?」
すでに蓮音の心臓はバクバクだった…。
怖いとか、少々不気味だとかそんな思いでいっぱいだった……。
薬のゴミは1つではなく、部屋の奥まで続いており、目線だけ、このゴミがどこに繋がっているのか追った。
その時……
「っ綴灯!!!!」
蓮音は持っていた荷物を全て捨て、部屋の奥へ思いっきり走った。
…蓮音の目に映ったのは─床に倒れている綴灯だったからだ。
「綴灯?!綴灯!!!」
体を揺すっても綴灯は起きない。
何があったのか周りを見渡すと、机の上に置いてある封筒を見つけた。
「…は…?…遺書……?」
封筒に書いてある文字を見て蓮音の顔は青ざめ、事の重大さに気付いてしまった。
「……っもしもし!救急です!!!」
焦った声で電話をかけ助けを求める。
名前、住所を教え、そして蓮音は綴灯の手首を握った。
「まだ…!…まだ生きてます!!!!」
─蓮音はすでに涙を流していた。
⬜︎
『─もう会えないが、別のどこかでみんな頑張っている…。そう思ってこれからは絶対に高校に通うこと。前を向いて生きること。そして友達、周りの人を大切にすること。約束だ!!』
周りの音がうるさかった。
それが幻聴の一つなのかなんなのか…もう分からなくなってしまっていたが、勝手に目が開いたのだ…。
そこに映る景色は…全身水色の服を着た、知らない大人が複数人いて……。
しかも全員慌てているように見えた…。
そして…その中に…唯一、水色じゃない…知っている人を見つける…。
あれ…蓮音…?
…なんで、泣いているの…?
言葉が出ず再びそのまま意識を手放した…。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
こちらESN大賞11応募作品です。
次回更新9月9日水曜日予定




