生意気厨二病赤猫
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「…マフさん、なにしてんですか」
「………びっくりしたぁ…!」
そこに立っていたのは、腕を組んで、顔を顰めたアイカだった。
「だ、だれが、生徒が入ってきたかと…」
「バカなんですか???早すぎるでしょ。変身。ついてからでいいでしょ」
「うぅ…」
アイカはハァ…とマフに聞こえるようにため息をつく。
「ち、ちなみに…なんでここにあいにゃんが…?」
「もう、ちゃんも使わないんですね?舐められてます?」
「うぅ…」
マフは内心、
(えぇ?舐めてるのはそっちでしょ?私、一応学校では先輩なんだけど…?)
と思いつつ、言うとまた怒られそうなので、ぐっと言葉を押さえ込んだ。
沈黙の中、アイカが口を開く。
「…レイン…さんに…頼まれて、アナタを仕事場に送る事になったんですよ…」
「え?あ、そうなんだ……送る??」
「はい。なんか文句あります??電車使うよりいいでしょ?」
アイカは余計不機嫌そうな顔をしてマフを睨む。
「え、いや、どうやって…送るの??」
「…あぁ…」
アイカは「そういうことね」という顔をして、持っていた肩掛け式のスクールバックを開くと、ゴソゴソと漁り出した。
すると、カバンの中から「ニャ!痛い!」という高い声が聞こえてくる。
アイカは「うっさい。」と冷たい声を吐き捨て、何かを取り出してマフに見せる。
「…これは」
アイカの手の中で、もぞり、とそれは動いた。
出してきたのは、ゴンザレスにどこか似た――けれど、もっと異質な気配をまとった魔法動物だった。
ゴンザレスのようにデフォルメされた猫のような体。
クリーム色の毛並みに、くっきりと浮かぶ赤い模様。
そして、目。
炎みたいに揺れる赤の中に、十字架が刻まれている。
「……ニャ…っ、雑に出すなって…」
不機嫌そうに耳をぴくりと動かしながら、その小さな体はアイカの手の上でふるふると震えた。
「うるさい」
即答だった。
「ちょ、もうちょい優しく――」
「黙れ、リグ」
ぴしゃり、と名前を呼ばれた瞬間、リグはぐっと口をつぐむ。
けれど納得はいっていないらしく、しっぽだけがバシバシと揺れていた。
目つきが悪く無愛想な感じがアイカに似ている。
マフはそれをまじまじと見つめてから、ぱっと顔を明るくする。
「えー!かわいいね!」
「は?」
アイカの眉がぴくっと動く。
「なんかゴンちゃんみたいだし!あ、でもちょっとこっちの方がカッコいいかも?」
「誰が“ちょっと”だ」
リグがむっとした声を上げる。
「オレはあんな丸いやつと一緒にすんな」
「丸いってなんだよ。こっちは先輩だぞ」
いつの間にか、マフの足元からゴンザレスも口を挟んできた。
なにやら、魔法動物界隈ではゴンザレスの方が先輩らしい。
こういう先輩に生意気な感じもそっくりだ…とここ、中でマフは思った。
「お前こそ目、怖ぇんだよ。なにその中二みたいなデザイン」
「は???」
リグの目がギラリと光る。
「ケンカ売ってんのかコラ」
「売ってるけど?」
バチバチ、と火花が散るような空気。
「……はぁ……」
アイカは心底どうでもよさそうにため息をついた。
「で」
話を強引に戻す。
「こいつ――リグは、行ったことある場所に一瞬で移動できる能力があります」
「え、すごーい」
マフが素直に目を丸くする。
「じゃあ、仕事場にも一瞬で…?」
「そういうことです」
リグはふん、と鼻を鳴らした。
「ありがたく思えよ。オレがいなきゃ、お前ら歩きだぞ」
「え、じゃあ…お願いします!」
マフはぱっと手を合わせる。
その反応に、リグは一瞬だけきょとんとして――
「……っ、ま、まぁいいけど」
少しだけ、声のトーンが下がった。
アイカはそんな様子を横目で見て、軽く舌打ちする。
「甘やかすから調子乗るんですよ。手を合わせてお願いとか。プライドないんですか?」
「え、いやいや…」
(ちょっと、あいにゃんは…プライド高すぎると思うなぁ)
「こんなやつ、かわいくない」
「かわいいよ」
「かわいくないです」
「かわいいよね?」
マフがリグの顔を覗き込む。
「……当然だろ」
小さく、そう呟いた。
「はいはい、もういいです」
アイカは強引に話を切り上げると、リグを軽く持ち上げた。
「さっさと行きますよ。時間ないんで」
「え、あ、うん!」
マフは慌てて姿勢を正す。
リグは面倒くさそうに片目を細めると、
「行き先、イメージしろ。オレはそこにしか飛べない」
「えっと……仕事場……」
頭の中に、ぼんやりとした景色を思い浮かべる。
(隣の…街の…昔行ったことある)
「……できた」
「よし」
リグの目の十字が、じわりと光る。
次の瞬間。
足元に、再び――光。
今度は、マフのものとは違う。
赤く、鋭い、裂けるような光の紋様。
「うわぁ」
「黙って立っててください。舌噛みますよ。」
「えぇ?」
空気が、歪む。
教室の景色が、ぐにゃりと引き伸ばされていく。
リグが低く呟いた。
「――跳ぶぞ」
その瞬間。
視界が、赤に塗りつぶされた。
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