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何度目も変身は

開いてくれてありがとうございます

楽しんでください

放課後。

静まり返った教室に、マフはひとり立っていた。

ゴンザレスがマフを見上げ、声をかける

「もうここで着替えていっちゃいなよ。」


窓の外では、オレンジ色に染まった空がゆっくりと沈みかけている。

時計の針が進む音だけが、やけに大きく響いた。

マフは眉間にシワを寄せ、ぽつりと呟く。

「いやだなぁ」

逃げる時間は、もうない。

制服の袖をぎゅっと握りしめる。

やりたくない。反応が叫んでいる。

あの感覚を、思い出すだけで体がこわばる。

「……でも」

震える手で、ポケットから取り出す。

折りたたまれた、古い形の携帯。

“きゅあふぉん”。

 

ぱち、と開く。

画面が淡く光り、見慣れないはずの文字が浮かび上がる。

親指が、ボタンの上で止まる。

押せば――始まる。

あの、息ができなくなる時間が。

「……っ」

ほんの一瞬だけ、目をぎゅっと閉じて。

カチ、と小さな音。

次の瞬間。

足元に、光が広がった。「……え」

思わず目を開く。

床に浮かび上がる、複雑な紋様。

淡く輝く魔法陣が、円を描いてマフを囲んでいる。

「わっ……なに、これ……」

前に変身したときは、こんなもの――気づかなかった。

見えていなかったのか。

それとも、余裕がなかっただけか。

考える間もなく、空気が変わる。

「っ……」

呼吸が、浅くなる。

息を吸おうとしても、うまく入ってこない。

まるで、空気がどこかに吸い取られていくみたいに。

「は……っ……」

きゅあふぉんを握る手に、力が入る。

光が強くなり、足元の魔法陣が回転をはじめる。

制服の輪郭がほどけるように揺らぎ、光の粒へと崩れていく。

「やだ……」

膝がわずかに震える。

「っ、……は……」

視界が白くにじむ。

胸の奥が引き伸ばされるような違和感。

心臓の音が、やけに大きい。

呼吸が、うまくできない。

「……っ、……ぁ……」

それでも、光は容赦なく続く。

髪がふわりと浮き、色を変え、

新しい衣装が、ひとつずつ組み上がっていく。

指先まで、別の自分に塗り替えられていく感覚。

逃げられない。

もう、戻れない。

あと少し。

あと少しで終わると分かっていても、

その時間がやけに長い。


そして――


ぱん、と音もなく光が弾けた。


魔法陣が、すっと消える。

教室に静寂が戻る。

そこに立っていたのは、もう制服姿のマフではない。

変身した姿のまま、

手の中のきゅあふぉんだけが、かすかに光を残している。

「……はぁ……っ、……は……」

ようやく、空気が肺に入る。

膝に手をつき、荒い呼吸を整える。

足元を見下ろす。

さっきまで確かにあった魔法陣は、もうどこにもない。

ゴンザレスは「終わった?」と退屈そうにこっちを見上げている。

「うぅ……ほんと、最悪……」

それでも――

きゅあふぉんを、ぎゅっと握り直す。

「い、いかなきゃだよね。」

マフがそう呟くと、なんの前触れもなく教室のドアがガラガラと開いた。

「っ、え?」 

マフは素っ頓狂な声を上げ、振り返る。

ドアを開けた人はマフに冷たい視線をむけていた。

ありがとうございました

また読んでください

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