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 食事を終えた僕とリサさんは、家の一室に案内される。部屋の中にはダブルベッドが一台と簡素な造りのテーブルとイスが置かれているだけの小さな部屋だった。


「すみません……ハルト様が男性とは聞いていなかったので、ご用意できたのはこの部屋だけになります……」


 どうやらキャロリーナさんは僕のことをまだ女の子だと認識していて、この夫婦にも来るのは女性二人だと伝えていたらしい。


 旦那さんがしきりに頭を下げて謝ってくるのだが、彼は何も悪くないだろう。伝達された情報に誤りがあっただけだ。それが自分の容姿も関わってきているので、なおさら申し訳ない。


「気にしないでください。僕は椅子に座って寝るので、リサさんがベッドを使ってください」


「一緒にベッドで寝ればいいんじゃない? 私は気にしないよ」


 彼女の発言に度肝を抜かれる。いくら僕のことを弟と見ているとはいえ、その発言は駄目だろう。


「駄目ですよ。ベッドで男女が一緒に寝たら赤ちゃんが出来ちゃうんですよ」


「ふぇ! なんで急にそんな話になるの!」


 リサさんが声を裏返させて驚く。彼女が急に大声を出すから、後ろの夫婦も驚いているじゃないか。


「急もなにもリサさんが言い出したんじゃないですか。一緒にベッドで寝ようって」


「そ、そういうつもりで言ったわけじゃ……」


 困惑した顔を浮かべるリサさんだが、その認識が間違っていると言わざる負えない。


「リサさんにそのつもりがなくても、男女が共に一夜を過ごしたら、赤ちゃんができてしまうんです。発言には十分に注意してくださいね」


「……はい、わかりました」


 リサさんは顔を真っ赤にして俯いて返事をしていた。相手が僕だったからよかったものの、他の男性だったらどうなっていたことか。


「それにしても、人間って不思議ですよね。男性と女性が同じベッドの上で、添い寝するだけで赤ちゃんができるなんて」


「「「えっ?」」」


 その場にいた僕以外の人間の声が重なる。全員が驚愕した顔で僕のことを見つめていた。


「あの……ハルト? 添い寝するくらいで赤ちゃんはできないよ?」


「えっ? 他にも何かする必要があるんですか?」


「それは――」


「リサさん! その話はそこまでです!」


 夫婦の合間を縫って、いつの間にかロアさんが部屋の入り口の前に姿を現していた。急に登場した彼女は、僕とリサさんの間に割って入ってくる。


「マスター貞操管理委員会としては、それ以上の発言は認められません。即刻この場からの退去を命じます!」


「ちょ、ちょっと! どこに連れていくつもりなの!?」


 リサさんの両肩を掴んで、くるりと半周させると、そのまま背中を押して二人は部屋の中から消えていった。


 夫婦の二人も何か言いたそうな目をしていたが、結局向こうから話し掛けてくることはなかった。何故か気まずい空気が流れていたので、僕は話題を変えるために、温泉の場所を聞くことにした。


「それでしたら、この家を出ていただいて――」


 旦那さんから温泉の場所を聞き出す。一人になってしまったので、今のうちにお風呂を楽しむことにした。部屋の問題はあとから考えることにする。


 家から出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。スタツの街のように街頭も設置されていないので、家の明かりがないところは暗闇になっている。転ばないように、足元に気を付けておかないと。


 リサさんたちも家の外に出て行ったみたいだが、どこに行ったのだろうか。ロアさんの変な企みに巻き込まれてなければいいけど、少し不安である。


「どこにいくつもりだ?」


 考え事をしながら足元を見て歩いていると、誰かが僕の前に立ち塞がった。


 顔を上げて確認すると目の前には、鎧姿ではなく動きやすそうな服装をしたキャロリーナさんがいた。鎧の下に着ていた服装と同じものだと思うが、胸元のプレートや手甲がないだけで、がらりと印象が変わって見えた。


 特に、大きく胸元を開いた服から、嫌でも目に入ってしまう圧倒的なソレに視線が吸い寄せられてしまう。キャロリーナさんが一歩踏み出すと、ソレが大きく揺れる。


「なぜ目を背けるんだ?」


 揺れを目視できるほどの存在を認識してしまった僕は、彼女のことが直視できずに顔を背けてしまったのだ。


「僕の目的地はこっちなので、そちらに顔を向けただけです」


「そうか。その方角は温泉に向かうところか? 丁度いいタイミングだったようだな」


 目線の件はなんとか誤魔化せたようだが、丁度いいとはどういう意味だろうか。


「回復術士の彼女に、君が温泉に入っている間の護衛をしてくれと頼まれたのだ」


 僕の疑問はすぐさま解消された。彼女がロアさんに耳打ちされていた件もこのことだろう。


「ソフィア様の護衛は大丈夫なんですか?」


「詳しい話はあとで話す。まずは、温泉に向かわないか?」


 キャロリーナさんの提案に頷く。ロアさんがどうして彼女に僕の護衛を頼んだとか、疑問に思うことは多々あるが、温泉に入りたいという気持ちが勝ったのだった。

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