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 僕の心の声が通じたのか、その場に救世主が現れた。


「キャロリーナさん、子供が怖がっているんで、もう辞めませんか?」


 リサさんがキャロリーナさんに苦言を呈する。彼女の傍には年端も行かない女の子がいたのだが、怯えた表情で首筋に剣を当てているキャロリーナさんのことを見つめていた。


「す、すまない……周囲のことをまったく気にしていなかった……」 


 子供の視線に気が付いた彼女は、握り締めていた直剣をゆっくりと下に降ろす。張り詰めていた空気がようやく弛緩した。


「ロアお姉ちゃん……血が出てるから、騎士のお姉ちゃんのことも治してあげて」


 ロアさんの近くにいた先程の少年が、キャロリーナさんを指さす。彼女の首筋からは、血がしたたり落ちていた。剣を当てていた際に切れてしまったのだろう。


「もちろんです。すぐに治してきますね」


 キャロリーナさんに近づき、銀色のスタッフを掲げる。傷はあっという間にふさがり、見る影もなくなっていた。


「なんて礼を言えばいいのか……」


「でしたら、一つ頼みたいことがあるのですが」


 ロアさんはキャロリーナさんの耳元まで寄ると、周囲に聞こえない声で何か話していた。


「そんなことでいいのか?」


「これは貴方にしか頼めないことです。引き受けてくれますか?」


「わかった。それが私にできる罪滅ぼしというのなら、快く引き受けさせてもらう」


 二人の視線が僕に向けられる。真っすぐこちらを見ているのだが、ロアさんは一体何を彼女に吹き込んだのだろう。ロアさんは口角を上げて、悪い笑みを浮かべている。なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。


 彼女を問い詰めようと、声をかけようとするが――


「ロア、この子がお願いしたいことがあるそうなの」


 リサさんが村の少女を連れて、ロアさんのもとに連れていく。少女は恥ずかしそうに彼女の後ろに隠れていたが、リサさんに背中を押されると、ゆっくりと前に出てきた。


「お母さんが昨日からずっと咳をしていて苦しそうなの……お母さんにも魔法をかけてください」


 少女は礼儀正しく、しっかりと頭を下げる。ロアさんは少女の頭をやさしく撫でて、やわらかい声色で少女に語り掛けた。


「もちろん、いいですよ。お母さんのところに、案内してくれますか?」


 ロアさんが少女の目線に立って微笑みかけると、少女は晴れやかな笑顔を浮かべる。


「うん! こっちが私の家だよ!」


 少女は元気よく返事をして、ロアさんと共に、一軒の民家に走っていった。 


 ロアさんが捕まらなかったので、キャロリーナさんに尋ねようとしたのだが、彼女もまた別の人に捕まっていた。


「キャロリーナ! 本当に貴方という人は……」


「……すみません」


 彼女はその場で正座をさせられ、説教を受けていた。当分の間は彼女にも話を聞けそうにないな。


「難しい顔してるけど、どうしたの?」


 手持無沙汰になった僕のもとにリサさんが駆け寄ってくる。


「ロアさんが何を企んでいるのか気になって……」


「確かに、悪そうな顔を浮かべてたね。あれは、ハルトを揶揄うときの顔だった」


「……やっぱり、帰ってきたら問い詰めることにします」


 彼女のスカートの件といい、これ以上僕の恥ずかしいエピソードを暴露されるわけにはいかない。僕はどうやって彼女の企みを阻止しようかと頭を悩ませるのだった


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