Survey log 5 「ミャンダウ」
〈登場宇宙人紹介〉
~実働部隊(地上に降りて実質の調査や交渉する)~
ロシェ・・・主人公。青年武官
ガツェ隊長・・・実働部隊のリーダー。外交特務官。
ヴァイン・・・先輩武官
~ラボ船(高度36000kmの静止軌道上で調査し、地上部隊のサポートをする。40人ほど)~
ラヴェル・・・ラボ長。ラボ船及び調査団全体の統括官。
タックヮ・・・博物学者。分類分析官。ロシェたちの星の隣の隣の星の出身
ファモリアス・・・医療衛生班。
〈用語紹介〉
ヴィヴィックス・・・軍部支給の水冷スーツ。Vein-Variable Cooling Suit(可変血管型冷却スーツ)の略。
《地球人の皆さんへ》
宇宙人達の使っている言語には日本語に訳せないものが多くあります。地球人の皆さんにわかりやすいように、固有名詞などは現代の日本語に直してあります
* * * * * * * * * *
「タックヮです。少し気が付いたことがあります。一旦、ブリーフィングにさせていただいてよろしいですか?」
姿を消そうとしている、あの見事な筋肉の方を見失うまいと、今にも走り出そうとしていた僕たちは、分類分析官のタックヮ君の落ち着いた声で、冷静さを取り戻した。
「そりゃ追いかけるより大事なことなのかい?」
ヴァインさんの質問に答えたのはラボ長のラヴェルさんだった。
「騒動の間、モニターしながらタックヮの考えを聞きました。我々古参の学者では思いつかなかった推論であり、今後の調査・外交任務遂行において優先度が高い、と私も判断します。」
「なるほど。さすがアカデミー首席卒業の頭脳というわけだな。タックヮ君、続けてくれたまえ」
ガツェ隊長がタックヮ君の発言を許した。
っていうか、タックヮ君、アカデミー首席だったんだね。
大天才じゃん。
なんか・・・僕と一緒とか思ってしまって、すみませんでした。
その時、会話への割り込み通信を告げる、軽い電子音がした。
「医療衛生班のファモリアスです。ガツェ隊長とヴァインさんは、朝のトレーニング後、水分とエネルギーの補給をしていらっしゃらないのでは?緊急の案件が一区切りしたのなら、一度宇宙船に戻ってください」
その言葉で、僕たちは宇宙船に戻ることにした。
* * * * * * * * * *
宇宙船に戻り、改めてブリーフィングとなった。
早朝の緊急案件だったので、ラボ船でも朝食前だったそうで、それならばと食べながら話すことになった。
そのおかげか、今回のブリーフィングはいつもより和やかな雰囲気になっていた。
「それで、タックヮ君。話の続きをお願い出来るかな?」
「はい。僕が疑問を持ったのは、太陽系第三惑星の生物の服装についてです。観察すると、この星では種族ごとに同じ服装をしていることがわかってきました」
「変・・・ですよね?」
天才に僕なんかの意見を言ってもいいんだろうか?
僕はおずおずと聞いてみた。
「そうとは言い切れないのです。例えば、ラボ船の中だけなら全員が水冷スーツを着ていたとしても、好みやいつ買ったのかで色やデザインが違いますよね」
そうだよ。だから変だよねって聞いたんだよ。
僕はうなずいた。
「ですが、ガツェ隊長、ヴァインさん、ロシェさんはどうでしょう?皆さん同じヴィヴィックスです。宇宙人の視点で考えてみてください。御三方だけ見かけたとしたら、「この種族は全く同じ外見をしている」と思ってしまうかもしれないということになるんです」
あ!そっか。たしかに!
僕たちのヴィヴィックスは軍部からの支給品だから、型番も一緒だもんね。
「じゃぁ君は、先程の集団も軍部所属とかの制服組だと予想するのかい?」
ヴァインさんが聞いた。
「いえ、僕はあれは表皮の可能性もあると予想しました」
「表皮?え?全員?全員まっ裸ってこと?それはさすがに無理があるんじゃない?」
僕は思わずタメ口で言ってしまった。
そんな僕を置き去りに、タックヮ君は笑顔で関係ない話をしだした。
「僕の故郷の星にミャンダウという生き物がいます。皆さんはご存知ですか?」
聞けば、タックヮ君の故郷は僕たちの母星の隣の隣の星だった。
その星は、僕たちの母星とは違って、地表に水があって、しかもその水は穏やかなのだそうだ。
「ああ、お前さん、あの星の出身なのか。俺の前の前の彼女があの星の出だったぜ?」
ヴァインさん、前の前の彼女って、そんなに次々と彼女って出来るものなんですね。
僕は今まで1人も出来たことはないです。
「ミャンダウか。あれは光を生体エネルギーに変換する生命維持機構そのものの生物だったと記憶しているが・・・」
「ガツェ隊長、その通りです。ミャンダウは光、水、大気のエネルギーを取り込むための糸状の機構の集合体です。ミャンダウの見た目は、ふさふさとしています。先程、あの見事な筋肉の方や神官のような方々を観察していた時に、ほんの少しですが、体表面がなびいたように見えました。ミャンダウのふさふさとよく似ていると思いました」
タックヮ君は、モニターにミャンダウの画像を映してくれた。
ミャンダウって初めて見たけど、丸い生き物なんだな。
確かにさっきの神官みたいな集団の装束が風になびく様子はミャンダウのふさふさがなびいているのと似てるかも。
僕がそう言ったら
「そうなんだよ!僕もなびいてるなって思ったんだよ!」
タックヮ君が嬉しそうに言った。
なんだ。大天才も案外普通なんだな。
友達になれるかな?なれるといいな。
「では、彼らの皮膚は・・・ええと、どういうことだ?」
ガツェ隊長が言った。
「あ、すみませんでした。つまり、もし、太陽系第三惑星の生命の皮膚がミャンダウのような機構を備えているとしたら、光や大気から栄養を得るために、服を着ない可能性もあるということです」
なるほどねぇ。
意味のあるまっ裸か。
「誤解しないでいただきたいのは、これは1つの仮説に過ぎないということです。ミャンダウは自力で動く生き物ではありません。先程のあの見事な肉体の方や神官のような方々のようなサイズの体を維持できるほどのエネルギーの全てを光や大気からのエネルギーの変換だけで賄えるのかどうかは・・・不明です。」
「不明?」
「つまり、なんにもわからないから調べてください、ということです!」
タックヮ君はニヤリと笑った。
なるほど、なるほど。
とにかく調べて調べて調べまくれ、ということだね。
隣を見ると、ガツェ隊長もヴァインさんも苦笑いしていた。
まぁ、やってやるよ。
せっかく太陽系第三惑星まで来たんだもんな。
僕たちも、ラボ船の人達も、悔いなんて残すべきじゃないよな。
「タックヮ君、手厚いサポートを頼むぜ?」
ヴァインさんが挑むように言った。
「もちろんです」
タックヮ君から、いい返事が返ってきた。
僕たちは、太陽系第三惑星での任務について、再度プランの練り直し作業に取りかかった。
《地球人の皆さんへ》
今回の『ミャンダウ』の地球での近似種はこちら
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26'11/1にはSurvey log 1 ~3までを公開。
11/2~11/7までは1話づつ公開いたします。
その後は毎週土曜日公開いたします。




