Survey log 4 「見事な筋肉の方」
三十六と申します。よろしくお願いいたします。
26'11/1にはSurvey log 1 ~3までを公開。
11/2~11/7までは1話づつ公開いたします。
その後は毎週土曜日公開いたします。
《地球人の皆さんへ》
宇宙人達の使っている言語には日本語に訳せないものが多くあります。地球人の皆さんにわかりやすいように、固有名詞などは現代の日本語に直してあります
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昨日は、黒い飛行体の謎を突き止め、もしも警戒されているのなら誤解を解きたいと一日中走り回ったが、何の成果も上げることができなかった。
いかんいかん。
しょんぼりしている場合じゃない。
こういう時は筋肉を整えるのが一番だ!
と、僕はトレーニングルームのドアを開けた。
「おはようございます。って、あれ?誰もいない」
てっきりガツェ隊長もヴァインさんもいると思っていたから、固まってしまった。
朝早くからトレーニングしてパンプアップするのは、地位のある者の特権だ。
僕の筋肉量と持久力は、あの2人にはまだまだ遠く及ばない。
だから、僕はいつも一番最後に来ていたのだが、今日に限って一番乗りとはどういうことだろう?
すると、宇宙船の入口が開いた音がして、ヴァインさんの大きな声が響いた。
「ロシェ!調査用のメット持ってついてこい!」
ヴァインさんはヴィヴィックスに携帯用通信機だけという最低限の装備だった。
「どうしたんですか?」
「説明は後だ。行くぞ!遅れるなよ!」
ヴァインさんは、自分とガツェ隊長のヘルメットを持って走り始めた。
「はぁっはぁっ・・・やっと・・・追いついた」
ヴァインさんの俊足に付いていくのは大変だった。
いつもはさりげなく僕の速度に合わせてくれるのだが、今日は容赦のないスピードだった。
「いかがですか?ラヴェル殿」
辿り着いた先にはガツェ隊長もいて、どうやら、ラボ船と連絡を取っているようだ。
口を開こうとした僕に、ヴァインさんは目で崖の上を見るように促してきた。
そこには彫像のような見事な肉体が静止していた。
いや、正確には臀部から伸びた柔らかそうなバトンの先端部だけが、時折跳ねたり揺れたりしていた。
「動画、良好です」
ラボ船からの通信は、いつものブリーフィングとは違って、背後がザワザワしているようだった。
ガツェ隊長は、おそらく僕への説明も兼ねているのだろう、時系列順に話し始めた。
「私とヴァインがトレイルランをしている最中に、あちらの見事な筋肉の方を見かけた。接触を試みようかとも思ったが、こちらはこのような格好だしな。まずはラボ船からの指示を優先したのだ」
携帯用の通信機器だと、音声でのやりとりは出来るが画像や動画は送れない。
ヴァインさんがフル機能の作業用ヘルメットを取りに戻ったのは、ラボ船に映像を送るためだったんだな。
「通信代わります。分類分析官のタックヮです。前置きなしで結論から申し上げます。この方について我々は完全にノーマークでした。な、何故なら・・・」
「タックヮ君、そう緊張しなくていい。君の見解を聞かせてくれたまえ」
タックヮ分析官は僕たちの星の出身ではないのだろう。
少し訛りがあった。
若そうだし、初遠征かな?
僕もだよ。お互い頑張ろうな。
「ありがとうございます、ガツェ隊長。順を追って説明いたします。この太陽系第三惑星には、今、隊長の目前におられる方とよく似た種族が多数おられるようなのです。隊長からの通信での説明だけでは断定出来なかったのですが、画像を見せていただいてはっきりしました。頭の大きさや、服の色などから判断して、初めて見る種族の方です。」
「ちょっと待ってください。頭の大きさはわかりますが、服の色で判断っておかしくないですか?」
僕は思わず口を挟んでしまった。
「あっ!おい!見ろ!」
その時、ヴァインさんが平原の先を指さした。
平原の向こうから、たくさんの同じ格好をした一団がこちらへ向かって来ていた。
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「大勢いますね。みんな同じ装束を着ている」
「崖の上の方と色味を合わせてあるな。従者か何かなのだろうか?」
僕とヴァインさんは同時につぶやいた。
その一団は何だかふさふさした揃いの装束を着て、しずしずとこちらに向かって進んできた。
すると、崖の上の、見事な筋肉の方が静かに姿勢を変えた。
「迎えに来たんでしょうか?厳かで何だか神官みたいだ」
「たしかに儀式の可能性もあるな」
「かなり高位の方であった、ということのようだな」
その時、崖の上から音もなく見事な筋肉の方が走り出し、神官と思しき集団の中に踊りこんだと思ったら、その中の一人をそのたくましい前足でかき抱くようにして口元を押し付けるような仕草をした。
それと同時に声のような、楽器の音のような、とにかく大きな音が響いて、神官(仮)の集団は一斉に動き始めた。
僕たちは儀式が始まったんだと思った。
神官(仮)の集団が飛び跳ねたり、ぐるぐるとその場で踊るような動きをした後、一斉に元来た方向に向かって走りだした。
そして、神官(仮)の集団が去った後には、あの見事な筋肉の方が立って、こちらを見ていた。
「あ・・・僕たち、儀式の邪魔をしてしまったのでしょうか?」
「今まで一瞥もされなかったが、我々に気が付いておられたのだな」
「あの一団は・・・戻ってくる気配はないな」
僕たちは呆然と三人三様の感想をつぶやいていた。
あの見事な筋肉の方は、しばらく僕たちを眺めた後、踵を返して立ち去り始めた。
「あ!行ってしまう」
「ラボ船!追いかけるか?謝罪に行くべきかどうか、指示をくれ」
ヴァインさんが慌ててラボ船に連絡をとった。
「タックヮです。少し気が付いたことがあります。一旦、ブリーフィングにさせていただいてよろしいですか?」
タックヮ君の落ち着いた声が聞こえた。
何を悠長な、と思ったが、分析官が気が付いたことがあるというのは無視できなかった。
僕たちは一旦、通信に集中することにした。
《地球人の皆さんへ》
今回の『見事な筋肉の方』の正体はこちら
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