Survey log 3 「黒い飛行体」
三十六と申します。よろしくお願いいたします。
26'11/1にはSurvey log 1 ~3までを公開。
11/2~11/7までは1話づつ公開いたします。
その後は毎週土曜日公開いたします。
《地球人の皆さんへ》
宇宙人達の使っている言語には日本語に訳せないものが多くあります。地球人の皆さんにわかりやすいように、固有名詞などは現代の日本語に直してあります。
* * * * * * * * * *
「ロシェ、昨日、飛行体を見たと言っていなかったか?」
ガツェ隊長が僕に尋ねた。
「俺も見ましたよ。内燃機関の音も駆動系の音も聞こえなかったが、何らかの技術を使った飛行機器だと思うんですがね?」
ガツェ隊長の問いにヴァインさんも答えた。
「飛行体は僕たちの頭上を何度も旋回していました。中央部の流線形の物体に飛行板が取り付けてあるようでした。基本カラーはブラック。ステルスというわけではなさそうでしたが、宇宙空間に出れば視認しづらくなるでしょう。何度も旋回をしていたことを考えると我々を警戒しての監視ではないかと僕は思いました」
僕は一気に答えた。
膝が震える気がした。
僕は昨日の時点で、監視されているのではと思ってたんだ。
だけど、それが重要なことだとは思っていなかった。
僕は昨日、大きな失敗をしなかっただろうか?失礼なことをしなかっただろうか?
「つまり、この星の方々から不信の目で見られているかもしれないと予測するわけだな?」
「その可能性は高いのではないかと」
「そうかな?これ、俺がガキの頃に遊んでたグライダーに似てるぜ?子供の遊具ってこともあるんじゃないか?」
ヴァインさんが明るい声で言った。
「まぁ、肩の力を抜けよ。それは若い奴らがよくやる間違いなんだぜ?いいか?あの場には俺もガツェ隊長もいた。特務官としてマズイことなんかさせるわけがないだろ?お前の仕事の姿勢は何も恥じるところなんて無かったさ」
まいったな、ヴァインさんにもガツェ隊長にもお見通しだったんだな。
ヴァインさんって、いいかげんに見えるけど、こういうさりげないフォローが上手いんだよな。
嫌な気分にさせないで指導ができる人ってことで、若手からは信頼されてる先輩なんだ。
「よろしいでしょうか?」
ラボ長のラヴェルさんが話しだした。
「この飛行体についてはラボ船からも観測していました。今回の着陸ポイントのある大地の広い範囲で観測されていますが、常に大量に飛んでいるわけではなく、駐機場やカタパルトもラボ船のある高度3万6千キロからは確認できませんでした」
ラヴェルさんは、分割した画面の一角に地図を映し出した。
僕たちが最初の着陸ポイントに選ばれたこの場所は、急峻な山岳地帯が連なっていて、僕たちの故郷にそっくりの場所だ。
ガツェ隊長が続きを促すように腕を広げた。
「つまり、ヴァインさんのおっしゃるように子供の遊具だとしたら数が少なすぎるし、ロシェさんのおっしゃる軍事目的だとすると基地や部隊が見当たらない、ということになります」
「なぁ、何人乗りなのかの予測はついてるのかい?」
ヴァインさんが聞いた。
「いえ、それも確認できませんでした」
「全くの謎の物体ということですね」
「わからないことを調べるのも我々の仕事だ。今日はあの黒い飛行体の調査に取り掛かるぞ!」
「「はっ!」」
こうして僕たちは、謎の黒い飛行体の調査に出かけることとなった。
* * * * * * * * * *
僕は、昨日飛行体を目撃した崖の近くにガツェ隊長とヴァインさんを案内した。
「あの辺りで・・・」
と指し示そうとした瞬間に通信機が鳴った。
「ラヴェル殿?どうした?」
ラヴェルさんの通信は僕たち3人に聞こえる形になっていた。
「飛行体の基地が見つからなかった訳が判明しました。あの飛行板はかなりコンパクトに折りたたんで中央部の流線形の部分に収納していることがわかりました。崖の中腹のほんの小さな張り出し部に停泊していました。」
「垂直フック式の停留ではないのだな?」
「ある程度の水平な場所が必要なようです」
「飛び立つ時はどうなんだい?」
「張り出しから飛び降りると同時に飛行板を広げています」
「すごい技術ですね。ギミックが多くなれば故障も増えるものだと思いますが、このあたりには残骸や部品が全く落ちていない。故障の少ない証拠でしょうね」
僕たちはそれぞれ意見を言い合った。
* * * * * * * * * *
それから僕たちは、謎の飛行体の運転者に会うために頑張った。
でも、結果は惨敗だった。
声をかけても反応はなく、崖を登って会いに行こうとすると、飛び立ってしまった。
「ヴァイン、ロシェ、これはダメかもしれんな」
手元が暗くなり、照明の用意をどうするか話し合っている時に隊長が言ってきた。
「あの飛行体を操縦している方々は、我々に絶対に会いたくない、もしくは、会ってはならないと厳命されているのかもしれん」
「たしかに、徹底的に拒否されている実感があります」
「まだ一度も飛行体から降りた姿を見ることも出来ていませんね」
僕たちは3人そろって崖の上、飛行体の駐留所がある場所を見上げていた。
「これ以上、お会いしようと追いかけまわすようなことをするのは、ご迷惑になるのではなかろうか」
ガツェ隊長が言った。
我々は謎の飛行体との接触を断念することにした。
太陽系第三惑星。
ここはもしかしたら、とても難しい星なのかもしれない。
「さ!そう決まったなら、飯食って寝ようぜ!ガツェ隊長、明日からはほかの方々に会いに行くんでしょ?」
ヴァインさんが明るい声を上げた。
「そうだな。飯にしよう」
「僕、腕を振るいますよ」
僕たちは明日のためへの活動に心も体も切り替えることにした。
《地球人の皆さんへ》
今回の『黒い飛行体』の正体はこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓




