Survey log 6 「神官(仮)」
〈登場宇宙人紹介〉
~実働部隊(地上に降りて実質の調査や交渉する)~
ロシェ・・・主人公。青年武官
ガツェ隊長・・・実働部隊のリーダー。外交特務官。
ヴァイン・・・先輩武官
~ラボ船(高度36000kmの静止軌道上で調査し、地上部隊のサポートをする。40人ほど)~
ラヴェル・・・ラボ長。ラボ船及び調査団全体の統括官。
タックヮ・・・博物学者。分類分析官。ロシェたちの星の隣の隣の星の出身
ファモリアス・・・医療衛生班。
〈用語紹介〉
ヴィヴィックス・・・軍部支給の水冷スーツ。Vein-Variable Cooling Suit(可変血管型冷却スーツ)の略。
《地球人の皆さんへ》
宇宙人達の使っている言語には日本語に訳せないものが多くあります。地球人の皆さんにわかりやすいように、固有名詞などは現代の日本語に直してあります
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「まずはどこから調べましょうか?」
聞いた僕の目に飛び込んできたのは、難しい顔をして腕を組むガツェ隊長とヴァインさんの姿だった。
「どうしました?」
「うむ。調査が大事なことはわかるが、まずは謝罪を考えるべきかと思ってな」
「俺も賛成です。禍根を残して良かったことなんて今まで一度もなかった」
ガツェ隊長とヴァインさんの意見はもっともなものだった。
そこで、ラボ長のラヴェルさんから提案が入った。
「では、神官の方々・・・ではないかもしれないが、とにかくあの集団を追いかけるのはどうでしょう?集団でしたから見つけるのも容易でしょうし」
「そうだな。あの見事な筋肉の方のもとへも案内が頼めるかもしれん」
そんなわけで僕たちは支度を始めた。
今日のミッションは、謝罪であり、調査であり、上手くいけば外交だ。
とにかく最大限の礼装をしていくことは必須だということになった。
着るのはいつものヴィヴィックスだが、念入りにワックスを塗り込んだ。
ワックスを塗ることによって、筋肉がよりくっきりと際立った。
これなら、一目見て、僕たちの社会的な立ち位置も伝わることだろう。
「では出かけようか」
「「はっ!」」
僕たちは神官(仮)の集団を追いかけるべく、宇宙船から外に出た。
* * * * * * * * * *
外に出ると、太陽が少し斜めになったくらいだった。
「皆さん、聞こえますか?」
分類分析官のタックヮ君の声がヘルメットの中で聞こえた。
「ああ、問題ない。どうした?何かあったか?」
「先程の神官のような方々の集団を見つけました。ナビします」
バイザーの内側に、進むべき方向が示された。
息が切れたり、汗だくになったりするのは、初対面の相手に悪い印象を与えることがあるからと、僕たちは軽いランニング程度の速度で進んだ
走ること30分近く。
とうとう神官(仮)の集団に追いつくことが出来た。
見晴らしのいい草原に彼らはいた。
彼らの集団は賑やかだった。
踊るような仕草をしている者、のんびりしている者、歩き回る者、数人で話し合っている者、実に様々だった。
「タックヮ君、彼らの言語の解読は進んでいるか?」
「サンプルが足りません。調べてください。期待しています」
なんだろう?タックヮ君の言葉に圧力を感じる。
あれだ、武官採用試験の時に「この程度のトライアル、全員が難なくパスすると信じているぞ!」と笑った試験官と同じ圧力だ。
「おっかねぇ」
ヴァインさんも小さな声でつぶやいていた。
ダメですよ。小声でもヘルメットの中での発言はマイクに拾われますって。
「よし!ではミッションを開始する!」
ガツェ隊長が重々しく宣言した。
その声を聞いて、ヴァインさんと僕は隊長の左右斜め後ろへと素早く移動した。
隊長を頂点とする三角形の陣形だ。
ガツェ隊長は、たくましい腕を背中に回して直立不動の姿勢をとった。
隊長は、一度胸を張ってから、大きく前に進み出た。
隊長はこの後、挨拶と渡航の目的を申し述べるはずだった。
外交特務隊としての正式な手順だ。
しかし
「ケケケケケケケケケケ」
「クワクワクワクワクワクワクワ」
さっきまで賑やかながら穏やかな空気で満ちていた神官(仮)の集団から、笑い声のようなアラーム音のようなそんな音が大音量で流された。
その瞬間、神官(仮)の集団の空気が一瞬にして変わった。
そして彼らは走り出した。
それは凄まじいスピードだった。
今朝のヴァインさんの本気の疾走も速くて付いていけなかったが、それの比ではなかった。
あっという間に走り去ろうとする彼らを、今度こそ僕らは追いかけた。
* * * * * * * * * *
どのくらい走っただろうか?
僕たちの足は自然に止まっていた。
そこには一体の神官(仮)の方の遺骸が横たわっていた。
「亡くなって・・・いらっしゃるのですよね?」
「明白だな」
その遺骸には生命活動を途切れさせてから、時間が経過していると思われる特徴がいくつも見受けられた。
「ロシェさん、大丈夫ですか?」
タックヮ君のとても平坦な声が聞こえた。
「え?大丈夫ってどういう意味?」
「失礼ながら、あまり、死に触れた経験が無いのではありませんか?大丈夫ですか?」
「大丈夫さ。僕だって武官だ」
言ってはみたものの、僕は動揺していた。
タックヮ君の言う通り、僕は生き物の死骸を見たのは初めてだった。
しかも、この死骸は長い間、野外に放置されたままに見える。
「何故、弔わないのでしょう?」
呟くように言った僕の肩を、ガツェ隊長が掴んで言った。
「ロシェ、調査だ」
「隊長?」
「我々は、この遺骸を調べねばならない。それが我々の仕事だ。出来るな?」
ヴァインさんを見ると、サンプルケースと必要器具の準備をしているところだった。
「はい」
今やれることがあるのが救いだった。
少なくとも、手を動かしている間は、泣く暇なんてないだろうから。
《地球人の皆さんへ》
今回の『神官(仮)』の正体はこちら
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26'11/1にはSurvey log 1 ~3までを公開。
11/2~11/7までは1話づつ公開いたします。
その後は毎週土曜日公開いたします。




