8日目
8日目
今日、八潮のカラオケ屋に、本物のギャルがいた。
年齢は、多分そこまで変わらない。
おそらく、小学生くらいからギャルなんだろう。
親もきっとギャルなんだと思う。
かにえRは、平成の世のド田舎に生まれた。
「ヤンキー(またはギャル)にあらずんば人にあらず」
そんな環境で育った。
しかし、うちの親は厳しかった。
ヤンキーの父親に惚れて駆け落ちしかけた母親から生まれたのに、ヤンキーにも、ギャルにもなれない。
なりたかったかどうかは、正直わからない。
でも、「ヤンキー(またはギャル)にあらずんば人にあらず」の環境の中で生き抜くためには、中学生のあの時期、ギャルになることが必要だった。
しかし、かにえRは、ヤンキーにもギャルにもなれず、ギャルの金魚のフンとして生きた。
スカートは短くできない。
化粧もできない。
髪を染めることもできない。
それでも、私には、面白さがあった。
あったと思う。
あったと思いたい。
ちょっと変なやつ、という金魚のフンポジションを獲得し、生きてきた。
そのせいかはわからないが、大人になってからも、ギャルになりたいという小さな火が、心の隅で静かに燃えていた。
ギャルになれば、認められるかもしれないという願いなのかもしれない。
今、私はギャルではない。
でも、私が思い描くギャルに近い見た目ではあった。
髪が明るいとか、その程度だが。
それだけでも、強くなれた気がしていた。
何かに認められたような気すらあった。
でも今日、八潮のカラオケ屋で、本物のギャルを見た。
長い爪でドリンクバーのボタンを押し、子どもの名前を大声で呼ぶ。
「おい、お前何飲むんだよ! おい、聞いてんのか! まじでめんどくせぇなぁ!」
そう叫ぶ、ギャル。
私はそのすぐ後ろで、コップを片手に、肩をすくめた。
ギャルに怒られている子どもでもないのに。
怖い、と思った。
ギャルが怖い、と。
本物のギャルの前では、私はただの人間だった。




