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かにえRの犬も喰わない話  作者: かにえR


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9日目


9日目


街の小さな診療所。

爺さんの医者。

患者も、年寄りが多かった。


ふと、時計を見上げる。


十時五十九分。

もう、十一時か。


そんなことを思いながら、またスマホに目を落とした。


静かな待合室。

みんな、くたびれた顔で順番を待っていた。


カチッと音がして、時計の長針が十二を指した。


なんとなく、時計を見上げる。


その瞬間、時計の真ん中あたりがパカッと開いた。


仕掛け時計か。

最近じゃ、珍しいな。


そして、時計からオルゴールが聴こえる。


聴いたことがある。

聴いたことがあった。


その曲は、B'zの「今夜月の見える丘に」。


周りを見渡すが、隣の爺さんも、前に座る婆さんも、くたびれたような顔で順番を待っているだけだった。


私だけが、そのオルゴールに気づいている。


街の小さな、寂れた診療所。

くたびれた顔をして、診察を待つ人々。

B'zの「今夜月の見える丘に」が流れる仕掛け時計。


そのアンバランスさに。

その、ちぐはぐな空間に。

かにえRは、“エモ”を感じた。


“エモ”が何かは、わからない。


いや、ノスタルジック……。

だとしたら、“エモ”ではなく、“ノス”になるのだろうか。


いや、そんなことはどうでもいい。


隣の爺さんも、前に座る婆さんも、アンニュイな表情に見える。


それにつられるように、私も足と腕を組み、天井を見上げる。


アンニュイな表情で、病院にありがちな天井を見つめる。

ひじきみたいな、やつ。


今日の昼ごはんは、ひじきがいいかもしれない。

帰り道、コンビニで買って、家で食べようか。


そんなことをボーッと考えていたら、いつの間にかオルゴールは止まっていて、仕掛け時計も元の姿に戻っていた。


また、周りを見渡す。


隣の爺さんも、前に座る婆さんも、またくたびれた顔に戻っている。


それにつられるように、私も足と腕を組むのをやめる。


ひじきのことも、すっかり忘れてスマホの画面を見つめる。


病院の帰り道、コンビニで昼ごはんを買う。

おしゃれなパン屋が近くにあったが、そんな気分にもなれなかった。


惣菜コーナー。

ひじきが目に入る。


あ、そうだ。

ひじきだった。


ひじきを買って、家までの道を歩く。


イヤホンからは、B'zの「今夜月の見える丘に」が流れていた。

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