便所と文学賞
毎日、寝る前に便所を掃除するというタスクを日常に追加した。
かにえRは基本的に三日坊主だ。
しかし昨日、寝る前の便所掃除が四日目に突入した。
なぜ、寝る前に便所掃除しようと思ったか。
SNSで「成功する人間は寝る前に便所掃除をしている」という投稿を見たからだ。
べ、別に成功したいわけではない。
別に。
別に、こないだ応募した文学賞を受賞したいとか、そんなことは別に、別に思っていない。
別に。
ただ、実験がしたかった。
寝る前に便所掃除する人間が成功するのかどうか。
なぜそんなことを実験したいのか。
理由は父にある。
かにえRの父親も、同じことを言っていたからだ。
「金持ちは毎日便所掃除している」
しかし、こちらはもっと過激派だ。
父は毎朝、素手で便所掃除をしていた。
一年以上続けていたと思う。
「便器を舐められるくらい、俺の家の便所は綺麗だ」
朝飯を食べるかにえRの横で、父は便所掃除用の青いバケツを掲げ、笑った。
父が便所を素手で磨き始め一年が経った頃、父の事業は失敗し、多額の借金を抱えることとなった。
しかし不思議なもので、毎日素手で便所掃除をし、事業に失敗して多額の借金まで抱えたのに、父が便所に当たることはなかった。
成功し、金持ちになることを夢見て便所掃除をしていたのに、それが叶わないどころか大失敗したにもかかわらず、
「便所、てめぇこの野郎!」
とはならない。
きっと成功していたら、こう言うはずだ。
「毎日素手で便所掃除をしたからだ! 便所の神様、ありがとう!」と。
それなのに、なぜか失敗した時は、
「便所、毎日掃除したのにお前は! お前なんていらねぇ! ゴミ捨て場まで歩いていけ!」
と、便所のせいにはしない。
不思議だ。
それどころか、
「便所掃除が足りなかったんだ。もっとピカピカに磨くべきだった」
となったりする。
実際、父はそう言った。
そう言って、便所掃除をやめた。
不思議だ。
毎日便所掃除をするかにえRが文学賞を受賞したら(今のところ三つ)、便所のおかげにするのか。
受賞できなかったら、便所掃除が足りなかったと嘆くのか。
それが知りたい。
それが知りたかった。
結果が楽しみですね。




