秋と修羅
かにえRといふ現象は仮定された、いや仮定されたと言っていいのか。
宇宙に浮かぶゴミの、ひとつの青い、いや青くないか。
とりあえず宇宙のゴミです。
(あらゆる透明な幽霊の集合体とは)
宇宙ゴミ、所謂スペースデブリ。
デブリって。
日本語だとなぁんかちょっと失礼ですね。
いや、デブ(失礼。しかしおのれを含む)をデブリと呼ぶのは愛らしい気がする。
スペースデブリ、2026年現在で15,800トンもあるらしい。
使用済みロケットとか、運用を終えた人工衛星とか。
小さいものから大きいものまで。
かにえRは、そのうちのひとつのゴミです。
地球にいますけど。
地球だって宇宙に浮かんでいる星に過ぎない。
だからかにえRは宇宙のゴミの一つ、スペースデブリなのだ。
宮沢賢治が有機交流電燈のひとつの青い照明なら、かにえRは、スペースデブリのひとつなのだ。
意味がわからなくてもいい。
わかって欲しいわけではないからだ。
自認がスペースデブリでも生きていていい。
それがこの世界なのだ。
スペースデブリは、わずか数センチの破片でも人工衛星を破壊するらしい。
デブリ同士が衝突して破片が爆発的に増えることを「ケスラーシンドローム」というらしい。
もし、他のデブリとかにえRが衝突したら。
バラバラになって、ケスラーシンドロームが深刻化するのだろうか。
しかし、かにえRがバラバラになるということは、それぞれのパーツに別れるということだ。
指、手、足、頭、胴体、etc.
しかし、宇宙の中ではそのパーツすらもデブリと呼ばれる。
つまり、かにえRという存在はもうすでにいない。
地球にいるけど、スペースデブリだから。
バラバラになる前から、かにえRはスペースデブリだった。
そんなことを、部屋で一人呟いた。
頭をぶん殴られ、後ろを振り返る。
「だ、誰だ」
「わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈の……」
「ひとつの青い照明だろ」
そう言って、味噌の付いたキュウリを齧るそいつを睨みつける。
「あらゆる透明の幽霊ってのは何?」
「……」
キュウリを齧る音が、ただ部屋に響く。
「答えはないってか」
また、ボリッという音が聞こえた。
「味噌は何の味噌だい」
「……」
「ケスラーシンドロームは知ってる?」
「……」
かにえRといふ現象は仮定された、いや仮定されたと言っていいのか。
宇宙に浮かぶゴミの、ひとつの青い、いや青くないか。
とりあえず宇宙ゴミのゴミです。




