純文学の筆致とうんち
SNSを眺めていた。
正確には、上から下にスクロールし、興味のある投稿を見逃しては舌打ちをしていた。
ふと、一つの投稿が目に入る。
純文学っぽい書き方。
純文学っぽいとは。
純文学っぽい書き方って何?
「うんちが出たよ」
今、ふと頭に浮かんだこの言葉。
5歳児の脳みそかと罵倒したくなる。
いや、5歳児だってもう少しマシなことを言うだろう。
「うんちが出たよ」
じゃあ、この言葉は純文学っぽくないのか。
「うんちが出たよ」
男は後ろを振り返った。
下品な言葉が聞こえた気がした。
日曜日の銀座、歩行者天国。
銀座の街も変わってしまった。
そう嘆いている最中だった。
「うんちが出たよ」
また聞こえた。
あたりをぐるりと見渡す。
真っ昼間の銀座。
そんな下品な言葉を敢えて口にする人間がいるのか。
いるのだとしたら、そいつがこの銀座の街を変えたんだろう。
前からジャージを着た老人が歩いてくる。
銀座の街でジャージを着る。
ここから見えるデパートには、ブランドものが所狭しと並んでいる。
世界の選ばれしデザイナーたちによって生み出されたものだ。
銀座の名に相応しい人間たちが、ブランドの名が刻まれた紙袋を手に持ち闊歩する。
それが銀座だ。
それが銀座だった。
その銀座を、この年寄りはジャージで。
「うんちが出たよ」
まただ。
また。
振り返る。
下品な言葉の出所はどこだ。
外国人観光客が横を通り過ぎていく。
誇り高き銀座の街。
外国人の目には、どのように映っているのか。
「うんちが出たよ」
まただ!
もういい加減にしてくれ。
「うんちが出、もういい加減にしてくれ!」
ハッとした。
俺だ。
俺だった。
銀座の街に相応しくない言葉を発していたのは。
なぜだ。
なぜ。
確認したかった。
この銀座の街で。
この美しく品格のある街で、下品な言葉はより下品に聞こえるのか。
「うんちが出たよ」
歩行者天国に膝をつく。
溢れた涙が、アスファルトにジワリと染み込んでいった。
ここは誇り高き街、銀座。
うんちが出たよ。




