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かにえRの犬も喰わない話  作者: かにえR


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デカすぎる命


時々、ゾウさんが見たくなるんです。


下ネタではありませんよ。


象、象さんです。


動物園とかにいる、象。


去年、市原ぞうの国に行ったんです。


ゾウさんがたくさんいました。


デッカい命。


あまりにもデカすぎる命に、ただただ驚き、平伏しました。


柵の前。


五百円で買った、お麩が入ったバケツを持ったまま、ただゾウさんを見ていました。


でも、ふと気づいたんです。


かにえRがゾウさんを見ているんじゃない。


ゾウさんが、かにえRを見ている。


いや、かにえRの懐にあるお麩を見ていたのかもしれない。


でも、ゾウさんがかにえRを見ている。


見ていた。


見られていた。


ゾウさんに見つめられ、耐えきれず、お麩を柵の中に投げたんです。


でも、お麩って軽いんですよ。


柵の中にも、ゾウさんの長い鼻にすらも届かないところに落ちたんです。


そしたら、そしたら!


ゾウさんは、鼻息でお麩を吹き飛ばし、壁にバウンドさせて自分に近づけたんです。


そのあと、また、かにえRをジッと見たんです。


バケツの中には、まだ四本くらいお麩が残っていて。


その四本を、いっぺんにゾウさんに向けて投げたんです。


四本あったって、お麩は軽い。


ゾウさんはまた、鼻息で壁にバウンドさせて、お麩を自分に近づけた。


そしてまた、ジッとかにえRを見つめたのです。


そのデカすぎる命に恐れ戦き、慌てて階段を駆け下りました。


平面に降りて、しばらく息を整えたあと。


真ん中のステージでショーがあると聞いて、椅子に腰掛けたんです。


デカすぎる命がサッカーをして、絵を描いて。


絵なんて、すごかった。


大きなキャンバス。


長い鼻に筆を持って、桜を描いたんです。


デカすぎる命にとって、それは本当に桜なのか。


かにえRにとって、それは桜だけど。


だって、桜って、本当にピンクと茶色ですか?


わからない。


気づいた時には、二千円を握りしめ、デカすぎる命の前にいました。


さっき見たデカすぎる命よりも、少し小さいデカすぎる命。


その鼻に金を握らせると、レインボーのゾウのぬいぐるみと交換してくれる。


ぬいぐるみを抱きしめ、席に戻る。


すると、後ろにいた女の子が突然泣き出したんです。


「私もぬいぐるみが欲しい」


すると、その子の両親は口々にこう言った。


「二千円だよ。おもちゃ屋さんとかでもっと可愛いぬいぐるみ買ったほうがよくない?」


たしかに。


たしかにそうかもしれない。


胸の中にいる、フワフワしたレインボーのゾウを少し撫でる。


「あのゾウさんのぬいぐるみは、ここでしか買えない。おもちゃ屋さんのぬいぐるみが欲しいんじゃない。ゾウさんから貰えるぬいぐるみが欲しいの!」


そう言って、泣き叫ぶ女の子。


あぁ、わかる。


わかる気がする。


わかる気がするから、今、レインボーのゾウを抱いている。


わかるよ。


わかる。


いつの間にか、女の子はいなくなっていた。


レインボーのゾウを買ってもらえたかどうかは、わからない。


帰り際、デカすぎる命にレインボーのゾウを見せつける。


もう、目は合わなかった。


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