エロ漫画のセーラー服くらい薄い
激安スーパーで買ったビニール袋が、エロ漫画のセーラー服くらい薄っぺらかった。
何を言っているかわかるだろうか。
激安スーパーで買ったビニール袋が、エロ漫画のセーラー服くらい薄っぺらかった。
人生で見たビニール袋の何よりも薄っぺらい。
感動すらある。
「俺に重いものなんか入れてみろ。すぐに千切れるぞ。いや、何も入れなくても千切れてやる」
そんな意思すら感じる。
人生みたいだ。
「何が人生だよ」
薄っぺらすぎて、カサカサという音すら鳴らないビニール袋がそう言った。
「エロ漫画のセーラー服くらい薄っぺらいお前に言われたくないね」
「はっはっは。どうせ、お前が言った『人生みたいだ』の人生は、お前以外の人生を指しているんだろ」
「長いよ。エッセイにしては、そのセリフは長すぎる。あと、あまりにも説明的すぎる。作者が考えたみたいなセリフはやめてくれないか」
「あぁ、気色悪いヤツだな君は!」
「悪口で誤魔化さないでくれ。もう一度言ってみろ。エッセイだぞ、これは」
「あー、はいはい。はいはい。わかりました、わかりました。自分の人生を薄っぺらいと思ったことなんてないくせに、俺の薄っぺらさを見て人生みたいだって言った。それが気色悪いって言ってんだよ」
「自分の薄っぺらさを認めてるんだ」
「おい、話を逸らすな。どうなんだよ。俺の答えは。エッセイとしてどうなんだ。それに俺は、自分の薄っぺらさを認めている。認めてるってのもおかしな話だ。薄っぺらいのが俺なんだから」
「薄っぺらいのが、俺?」
「おい! エッセイとしてはどうなんだと聞いている」
「えーっと、うーん、はい。いいと思います」
「きちんと考えろ。お前、何という名前だ」
「かにえRです」
「かにえR? 馬鹿げた名前だ。お前らしいな。自分の人生が薄っぺらいことを認められないお前にぴったりな名前だ」
「そうだな」
「おい、何を納得しているんだ。さっきの威勢はどうした。おい、かにえRよ。エロ漫画がどうこう言っていたお前はどこに行った」
「あ! そうだった。エロ漫画のセーラー服くらい薄っぺらいお前! 風呂場のゴミ箱に使ってやる。小さいゴミ箱だ。ゴミを押し込んでる間な、もうお前なんて関係なくなるんだ。下に押し込まれて、ビニール袋のお前は見えなくなる。別になくてもいい。でも、ゴミ箱の内側にゴミが付くのが気持ち悪い。だから、だから」
「別にいい。どうせ俺は薄っぺらい。物を入れたら千切れてしまう。何の意味もないゴミ箱の中で生きるのが、きっと丁度いい」
「そんなこと言うなよ。そんなこと。そ、そんなこと……」
「同情してるのか。それなら自分の人生の薄っぺらさを嘆いたらどうだい。まぁ、認められたらの話だけどね」
「エロ漫画のセーラー服くらい薄っぺらいって言うのか。私の人生が!」
「エロ漫画のセーラー服がどれくらい薄っぺらいか、俺にはわからない。見たことがないから」
「えっ、見たことないの?」
「あぁ、見たことがない」
「えっ……ちょっと待って。スマホ、スマホ。あ、まぁ、エロ漫画は電子書籍派でしてね。はは、ははは」
「へぇ」
「こ、こんな感じでさ。薄っぺらい。薄っぺらいだろ! 薄っぺらい」
「へぇ、薄っぺらいな。俺とどっちが薄っぺらい」
「あー、どっちだろうか。うーん、僅差であんたか」
「あんた? あんたって」
「じゃあ、どう呼んだらいいんだよ。ビニールHとか?」
「お、いいじゃないか。かにえRとビニールH」
「私はHは嫌だけど、気に入ったならよかった」
「気に入ったわけではない。でも、まぁいいだろう」
「じゃあ、ビニールH。君の家はここだ。洗面台の引き出しの中」
「へぇ、綺麗にしてるな」
「こっちの引き出しはね。こっちは見せられない」
「見たくもない。じゃあ、ここでしばらく休むよ」
「時々、会いにきてもいい? まぁ、朝晩は君の中にゴミを捨てるけど」
「まぁ、いいだろう。昼間は会わなくて済むんだな」
「そう。昼間はね。でも、時々会いにいってしまうかも」
「勘弁してくれ」
「ふふ。ふふふ。じゃあ、閉めるよ」
「あぁ、今は昼か。じゃあ、また夜」
「うん、夜ね。また会おう」




