お婆ちゃんの手作り食堂のベーグル
お婆ちゃんの手作り食堂のベーグル
冷凍していたコストコのベーグルが、最後の一個になってしまった。
買いに行こうと思えば行ける。
妹を誘って。
ペーパードライバーだから運転ができないかにえR。
同じくペーパードライバーだったのに、突然運転できるようになった妹。
妹の運転する軽自動車に乗って、コストコに行く。
妹の好きなアイドルの曲を聴きながら。
そして、コストコでベーグルを買うのだ。
コストコのベーグルは好きだ。
割と、昔から。
そういえば昔。
十年前とか?
吉祥寺で、お婆ちゃんの手作り食堂みたいなところに行った。
ビュッフェ形式で、いろんなお惣菜が机いっぱいに並べられていた。
その皿の一つに、小さく切ったベーグルがあった。
トングで掴んだ瞬間。
そして、口に入れた瞬間、思う。
これ、絶対にコストコのベーグルだ!
って。
お婆ちゃんの手作り食堂のベーグルが、コストコのベーグルだった。
お婆ちゃんの手作り食堂のベーグルが、コストコのベーグルだったんだ。
大切なことだから二回言った。
でも、お婆ちゃんの手作り食堂のベーグルがコストコのベーグルだったんだよ。
大量生産の、コストコのベーグルだったんだ。
どうしてわかったか。
多分、コストコのベーグルを食ったことがある人なら、わかると思う。
グルテンの暴力とでもいいますかね。
グルテンがなんだか知らんけど。
とにかく、普通のベーグルよりも密度が高い。
お婆ちゃんが食べたら、窒息するくらい。
だから、余計におかしかった。
グルテンの暴力みたいな、アメリカの権化みたいなベーグルを、吉祥寺に住むお婆ちゃんが作るわけがない。
だって店員のお婆ちゃんたちは、吉祥寺に住んでいて、サンロード商店街をトコトコ歩いてくるわけで。
いや、三鷹とかかもしれない。
というか、そもそもお婆ちゃんの店員なんて、あの店にいただろうか。
覚えていない。
思い出せない。
思い出せないまま、レンジでチンしすぎてカチカチになった最後のコストコのベーグルを、前歯で噛みちぎった。




