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かにえRの犬も喰わない話  作者: かにえR


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満腹糞太郎


雑貨屋の前を歩いていると、POPが目に入った。


『今話題のハムスターのぬいぐるみが限定入荷!』


足を止め、そのぬいぐるみを見る。


もう四体しか残っていない。


お姉さんが、一つを手に取り、ジッと眺めている。


思わず、かにえRも手に取った。


柔らかい。

毛並みもいい。


顔をジッと見る。


その瞬間、『満腹糞太郎』という名前が浮かんだ。


かにえRの手の中にいるそいつは、もう『満腹糞太郎』だった。


今話題のハムスターのぬいぐるみでも、限定入荷されたハムスターでもない。


そいつはもう、『満腹糞太郎』だった。


かにえRが手に取ったのを見たお姉さんが、慌てたように満腹糞太郎の兄弟たちの顔を確認する。


でも、かにえRはもう選ぶことができなかった。


だって、手の中にいるそいつだけが、『満腹糞太郎』だったから。


ニギニギと握りしめ、レジに向かう。


千七百円くらいだった。


千二百円くらいかと思った。

値札も見ていなかった。


でも、仕方ない。


こいつはもう『満腹糞太郎』なのだから。


今話題のハムスターのぬいぐるみでも、限定入荷されたハムスターでもない。


袋も貰わず、カバンに放り込む。


家に帰り、カバンから出し、顔の毛をピンク色のハサミでトリミングする。


目が毛で隠れて見えなかったから。


チョキチョキとハサミでトリミングされている間、満腹糞太郎は、マヌケな顔でかにえRを見ている。


本当は、本物のハムスターが飼いたい。


満腹糞太郎みたいな色の。

きなこ餅みたいなハムスター。


飼いたい。


でも、今は誰かの命を背負うことは難しいような気がした。


ハムスターの小さな、小さな命でさえも。


トリミングを終えた満腹糞太郎を眺める。


少し、顔の真ん中に変な線が入ってしまった。


でも、ますます『満腹糞太郎』になった。


作業台の上に、満腹糞太郎を置く。


マヌケなツラで、こっちを見ている。


パソコンを開き、このエッセイを書く。


満腹糞太郎は、真っ黒の目ん玉で、こちらを見つめていた。


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