前世で村を焼いた話
書くことが何も浮かばない。
もう尽きてしまったのか。
仕方がないので、前世でかにえRがある村を焼き尽くした話をしたいと思う。
それは、自転車で信号待ちをしている時だった。
歩道で、自転車にまたがり、遠くを見つめていた。
信号は、まだまだ赤で、変わりそうになかった。
突然、怒鳴り声がして、顔を上げる。
車で左折してきたジジィが、開いた窓から真っ赤な顔で怒鳴ってきたのだ。
なんて言っているのか、まったくわからない。
唾を飛ばし、怒鳴っている。
後ろの車にクラクションを鳴らされても、ジジィの怒りはとどまることを知らない。
その瞬間、思った。
もしかして、このジジィは、前世で私に村を焼かれたのかもしれない、と。
私を見た瞬間に記憶が蘇り、怒鳴り散らしたのだろうか。
このジジィは前世、その村で静かに暮らす青年だったんだろう。
春に咲く桜を、楽しみに待つような。
夏には、川で汗を流し、秋は落ち葉で焼き芋を焼き、厳しい冬には老いた母のために手袋を編んでいた。
そんな彼の村を、前世の私は跡形もなく焼き尽くしてしまったのだろうか。
悪いことをした。
前世の私よ、教えてくれ。
なぜ、ジジィの村を焼いた。
いや、焼いていない。
交通ルールも無視していない。
青信号になり、自転車のペダルに足をかける。
ふと後ろを振り返ると、ジジィが乗った車が見えた。
ジジィ、来世でまた会おう。
次は、桜を一緒に見ようよ。
焼き芋を食って、手袋を編もう。
焼け野原の上で。
そんなことを思い、家までの道を走った。




