トンネル掘りの職人たち(嘘)
前回ペースアップできるとのたまっておきながらの今回。誠に申し訳ありません。次回は早めにUP出来るよう頑張りますのでどうかよろしくお願いします
昨日の今日で吃驚なのだけれど、冒険者達は土を掘る作業に熱中していた。何がそんなに情熱を燃やすのか判断はつきかねるけれど、義姉さん曰く。
「あんなの子供が砂場でずっと遊んでいるのと変わらないわよ。それより、洸ちゃん。このまま一緒に」
「そうはさせないよお姉ちゃん! ほらほらお兄ちゃん、あたしと一緒にいけない、ふぎゃ!!」
「灯、いい度胸してるじゃない。人の目の前で何をしようとしてたのかしら?」
「そんなのお兄ちゃんの誘惑に決まってるじゃん。邪魔しないで、ベーー」
この後のキャットファイトは見るに耐えなかったなあ。と、全然関係のない話になっちゃった。兎に角、砂遊びと同じ感覚らしい。確かに大人でも砂浜でゴツいお城作る人いるしね。(注:偏見ありby作者)
もっとも遊びというには少々……いやかなり危険なことをしている。具体的に何をしているかというと……。
『燃やし尽くせ、フレイムブラスト!!』
『かの物質を爆散させよ、フレイムボム!!』
『いっちゃえ~~、ファイアプチブロージョン!!』
等々、彼らは魔法で掘ろうとしているのだ。例に挙げたのは火属性の魔法だけれど、他の四大属性も使われている。
が、今のところ効果が上がることなく、一向に掘り進められていない。精々5メートル程だろうか。
「意外と削れないわね。もっと派手に穴が開いていくのかもと思ったんだけど……」
キャットファイトの影響で髪はボサボサ、服も着崩れている義姉さんが純粋に驚きの声をあげる。確かに漫画とかだと簡単に空いちゃうもんね。
「でも、実際のトンネル掘りなんかも時間掛けてやってるし、前見た番組だとダイナマイト10本も使って5メートルも進まないとか」
「あら? それは車も通れる大きさだからじゃないかしら? 人一人……というわけにはいかなくても、数人が通る穴なら出来そうじゃない」
ふむ、言われてみると義姉さんの考えも間違ってはいないように思える。しかし、その考えには一つ大きなミスがある。
「ん~~お姉ちゃんの言うことは解るのだけどあの魔法じゃ無理じゃないかな。何だろうプチブロージョンて」
そう、義妹の言う通り魔法の程度が低いのだ。プチブロージョンは置いておいて、他のフレイムなんたらとかは聞いた感じ強そうだ。なのに威力はしょぼしょぼ。あれならもっと強力に使えそうなのに、なんだかわざと低威力に抑えているようにも見える。
「おそらくは魔法の規模を大きくしますと自分達が巻き込まれてしまうのではないでしょうか。彼我の距離はそれほど開いている訳でもありませんので」
フローラが僕の疑問にも答えるかのように義妹へと説明している。
確かに言われていることは理解できる。穴を掘れても自分たちにまで被害が出てしまったら元も子もないのだから。
実際に炎が土壁に当たってその辺り一面を一瞬火の海へと変えたり、大量の水が土を削り取った後、手前側まで逆流したり、風で狭い部屋の中が撹拌されて埃まみれになったりと本当に色々自分達自身で被害を被っている。
暫く眺めていると、義姉さんが飽きたように欠伸をした。まぁ、確かにずっと見てる分には面白いものでもないしね。
「あふ……うーん。洸ちゃん、他のフロアを使わせてもらっていいかしら?」
そして、そんな事を提案してきた。
「そりゃ、空いているし別に構わないけど、何に使うの?」
「ん、少し鍛錬をしようかなぁって思って、ね。灯も来る?」
義姉さんが義妹に聞く。その義妹はというと、よっぽど退屈していたのだろう。即座に笑顔でうんと頷いた。
「ということで洸ちゃん、私と灯、それとサシャも連れて行くわね。この3人で、そうね……広間になっている部屋で鍛錬してくるわ。さ、行きましょう」
「はーい。じゃあお兄ちゃん、行ってくるねー」
ぶんぶんと手を振りながら義姉さんについていく義妹。その後ろからとぼとぼとサシャもついていった。
3人の姿が見えなくなると、ここぞとばかりにリアが寄ってきた。
「マースーター。お邪魔虫もいなくなった事ですし、一緒に遊びませんかー?」
昨日あれほど遊んだのにまだしたりないらしい。が、義姉さん達が鍛練しているのに僕が遊ぶわけにもいかない。なので、断ろうとすると、後ろからスッと手が伸びてリアの耳を捻りあげた。
「いた、いたたたた! フローラ姉さん、そこは本当に痛い!!」
「お馬鹿なことを言うからです。マイマスターはお忙しいのですから、貴女も暇であるならば宵達と一緒に鍛練なさい」
「わ、分かったから。み、耳放して~」
痛くて泣いているリアには悪いけれど、ついつい苦笑してしまう。その後、リアも渋々義姉さん達の元へと向かっていった。
部屋に残ったのは僕とフローラだけだが、別に何かするでもなく、画面を2人して見つめる。
たまにフローラが紅茶を入れてくれたり、スコーンを持ってきてくれたりと甲斐甲斐しく世話をしてはもらってるけど。
画面の中の冒険者たちは飽きもせずに何度も何度も魔法を放っている。いや、その努力は認めるよ? なにせ穴は10メートルほど空いてるし。幅は人2人分くらい。よくやるよね。
「あら?」
不意にフローラが声を上げる。その何かおかしなものを見たかのような声音に少し興味が湧いた。振り返って聞いてみる。
「どうしたの?」
「あ、いえ。マイマスターがお気になさる事では御座いません。不用意に声を出してしまい申し訳ありませんでした」
「いやいや、そんな事言われると逆に気になるよ。何が見えたの?」
重ねて問うと、フローラは折れてくれたのか画面の隅を指差した。
「あちらに魔法を放ち終えた冒険者が座りこんだのです。恐らくは魔力の枯渇が原因ではないかと思われます」
見ると確かにローブを着て魔法使い然とした冒険者が座っている。俯いているせいで顔は見えなかったが、俯いている事を考えるとしんどいのだろう。
「うーーん。フローラの言う通り魔力の枯渇でしんどくなってるだけかな……」
周りを見ると他にもちらほら同じように壁にもたれて倒れ込んでいる冒険者の姿が目に入る。
「ええ、ですからマイマスターがお気になさる事ではありませんと……」
「あはは、ごめんごめん。でも結構倒れてる人多いね」
「はい。魔力を枯渇した場合、最悪昏倒してしまいますが、大体は頭痛や眩暈などの症状を引き起こします。ですが、暫く安静にし魔力回復に努めることで症状は大分和らぎます。ですから、冒険者の方々はああして休まれているのでしょう」
「なるほどねぇ」
暢気にそんな会話をしながら画面を見ていると、また一人その場に蹲っていた。
「しかし、なんでまた皆限界まで魔力を捻りだすのかな」
「私見になりますが、それでもよろしければ申しますが?」
独り言のつもりだったのだけれど、フローラが僕の言葉に反応した。私見とはいえ、予想が付くのか。外れていようと別に構わないので頷きを返す。
彼女も頷きを返してから話しだした。
「では……前提と致しまして、マイマスターのご準備成されたダンジョンは現在のところ冒険者を襲う魔物や配下が居ないという事があります。また、彼らの目的は勿論マイマスターのダンジョンを攻略する事ですが、現状土に阻まれて攻めいる事が出来ません。
この二点を踏まえて上での予想でございますが、おそらくは腕試しを行っているのではないでしょうか?」
「腕試し?」
「はい、魔力を全て捻りだす状況というのは実はそうそう御座いません。ですので、彼ら冒険者は自分自身の限界を知らないでいる事が多いのです。ですが、それは危険なことなのはマイマスターもお分かりになるかと存じます」
「つまりは魔力の限界がどの程度なのかを把握していないから、いざという時に魔力が枯渇して倒れる可能性があると、そういうこと?」
「はい。ですが、今回マイマスターがご用意なさいましたダンジョンは最悪倒れましてもそれほど危険があるわけでも御座いませんので限界を知る丁度いい機会と捉えているのだと思います」
なるほどなぁ。確かに腕試しにはいいのかもしれない。もっともそれも後何日続けられるかだけどね。開通した時が楽しみだな。




